今知る世界の食料危機 No.14(2021年3月号)

国連食糧農業機関(FAO)は、Global Information and Early Warning System(GIEWS)というページで、世界の食料危機に関する情報を提供しています。

2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。

2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。

そこで、2017からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。

「今知る世界の食料危機 No.14」では、2021年3月に公開された”Crop and Prospects #1 Mar 2021”の該当ページを紹介します。

「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、food@ajf.gr.jpへご連絡ください。

外部からの支援を必要としている国

アフリカ (34カ国)

食料生産・供給総量の異常な不足

中央アフリカ共和国ー紛争、避難

・2020年12月27日の選挙に関連した武装暴力により、12月中旬以降、24万人以上の国内避難民が発生した。2021年2月初旬までに、その半数は帰宅したが、11万7,000人が避難したままで、加えて10万5,000人が国を出て、多くがコンゴ民主共和国へ向かった。

・最新の総合的食料安全保障レベル分類 (IPC)によれば、深刻な食料不安に直面する人々 (IPCフェーズ3:「危機」もしくはそれ以上)の数は2020年9月から2021年4月に190万人になると推定され

ケニア共和国ー洪水、砂漠トビバッタ

・2020年10月から12月の期間で、国土のほとんどを占める農村部の乾燥地帯および半乾燥地帯では約85万人が厳しい食料不安に直面していると推定されるが、好ましい雨季が続いたため、2019年末の310万人からは減少した。一方で、パンデミックが社会経済的に脆弱な世帯の生活に影響を及ぼしているため、都市部では食料安全保障の状況が悪化し、100 万人が食料不安に陥っていると推定される

ソマリア連邦共和国ー洪水、社会不安、砂漠トビバッタ

・2021年1月から3月にかけて、約160万人が緊急支援を必要とすると推定される

ジンバブエ共和国ー平年以下の穀物収穫、食料価格の高騰と景気低迷

・2021年3月末までに338万人が緊急の人道支援を必要としていると推定される。

2020年農業生産の減少、著しい食料価格の高騰、景気低迷の影響で収入機会の喪失が主な原因である。

広範な食料アクセスの欠如

ブルンジ共和国ー洪水、地滑り

・主に洪水や土砂崩れによる生計手段の喪失、そして脆弱な家計の生活に対するパンデミックの社会経済的影響の結果として、2020年10月から12月に、約133万人が深刻な食料不安に直面したと推定された。

チャド共和国ー社会不安

・最新の「Cadre Harmonisé」によれば、約114万人がフェーズ3:(「危機」もしくはそれ以上)にあると推定されており、2021年6月から8月には生計活動が混乱するラク州とティベスティ州の不安定な状況が続いているため人口の移動が発生している。

・チャド湖地域での社会不安の影響で約33万6,124人が国内避難民のままである。さらに、紛争が続いているため、中央アフリカ共和国、ナイジェリア、スーダンからの約48万8,801人の難民を受け入れている。

コンゴ民主共和国ー社会不安の永続化

・2020年9月に実施したIPC分析によると、2021年前期、1,960万人(分析された人口の33%)が、深刻な食料不安にあると推定される。これは2020年7月から12月間の高推定値を10%下回った。この減少は主に、経済活動の緩やかな回復と今年のこの期間における食料入手可能性の改善によるものである。

・2021年初旬の隣国中央アフリカの紛争で、北ウバンギ、南ウバンギ、 低ウエレの北部の州に約 9万2,000 人の難民が流入した。

ジブチ共和国ー洪水

・主に洪水や土砂崩れによる生計手段の喪失、そして脆弱な家計の生活に対するパンデミックの社会経済的影響の結果として2021年1月から8月間で約19万4,000人が深刻な食料不安に直面していると推定される。

エリトリアーマクロ経済の課題による食料不安人口の増加

エチオピア連邦民主共和国ー高い食料価格、洪水、サバクトビバッタ、社会不安、前の干ばつの影響

・約1,290万人がSNNP(南部諸民族州)、オロミア州、ソマリ州で、2021年1月から6月の間に深刻な食料不安であると推定される。食料不安の主な要因は、サバクトビバッタによる局所的な作物と牧草地の損失、高い食料価格、収入と食料価格に影響するCOVID-19パンデミックの制限措置の悪影響である。2020年11月に紛争が勃発した後、ティグレ州では人道支援のニーズが急激に高まっている。

ニジェール共和国ー内戦

・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、農業や市場の取引活動の広範な混乱をもたらした治安に関わる事案の増加により、世帯が生計を立てる機会や彼らの食料安全保障が損なわれており、2021年6月ー8月期に約170万人が人道支援を必要としていると推定された。

・ディファ、タウア、ティラベリ地域で内戦によって避難民となった人の数は29万8,458人と推定されている。さらに、ナイジェリアとマリ出身者を中心に難民23万3,131人を受け入れている。

ナイジェリア連邦共和ー北部地域での終わらない紛争

・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、特に北東、北西及び中北部地域において、新たな避難民を引き起こしている、悪化する紛争の結果として、2021年6月ー8月期に約1,290万人が人道支援を必要としていると推定された。

270万人以上が東北部のアダマワ州、ボルノ州、ヨベ州での紛争および北部の西側から中央地帯にかけての地方組織の対立と自然災害により国内避難民になっていると推定される。人道支援の介入が届いていない地域では、最悪の食料危機に直面している。

南スーダン共和ー経済低迷、社会不安、洪水、長期にわたる紛争により長引く影響

・継続的な人道支援にも関わらず、不十分な食料供給、経済の低迷、高い食料価格、広範囲に及ぶ洪水及びCOVID-19に関連した制限措置のマイナスの影響により、人口の大半が食料不安の影響を受けている。2020年12月ー2021年3月期は、約582万人(全人口の48%)が厳しい食料危機に直面すると推定された。

・2年連続の広範囲にわたる洪水の結果として、家計に深刻な損失を引き起こし、人口の78%が深刻な食料不安にあると推定されており、11,000人がIPCフェーズ5「大惨事」のレベルに直面しているジョングレイ州とその近隣のピボール行政区については、特に懸念されている。

厳しい局地的食料不安

ブルキナファソー北部の社会不安

・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2021年6月ー8月期に、約270万人が人道支援を必要としていると推定された。センター・ノルド地域とサヘル地域においては、不安定さが避難民を発生させ続けており、食料安全保障の状況を一層悪化させている。

・紛争のため約107万人が国内避難民となっており、そのうち50%はセンター・ノルド地域に暮らす人々である。また、マリ出身者を中心とする約2万250人の難民はいまもサヘル地域に暮らしている。

カーボベルデ共和ー干ばつの長引く影響

・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2020年6月ー8月期に約1万人(全人口の約2%)がフェーズ3「危機」もしくはそれ以上の厳しい状況にあったと推定された。

カメルーン共和国ー社会不安、避難民

・2020年10月の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2020年10月ー12月期に約270万人が深刻な食料不安(フェーズ3「危機」もしくはそれ以上)であると推定され、昨年のレベルを上回っている。これは主に、紛争、社会政治的混乱、洪水及びCOVID-19に関連する経済的打撃によるものである。

・極北地域では、ボコ・ハラムによる侵略が去年と比較して2020年には55%増加し、新たな避難民を引き起こした。

コンゴ共和国ー洪水

・政府は2020年11月3日、北部の豪雨による国内避難民の発生と広域にわたる作物と家畜の喪失を引き起こした洪水のあと、人道緊急事態を宣言した。これらの地域では、12月末時点で、洪水で被害を受けた人々の数は168,000人と推定された。

・リクアラ地方は、中央アフリカ共和国から27,000人の難民とコンゴ民主共和国から21,000人の難民を受け入れている。

エスワティニ王国ー局地的な生産減少、収入創出活動の減少

・2020年10ー2021年3月期で約36万6,000人が食料不安により人道支援が必要と推定され、2019/20年の同時期を上回っている。状況の悪化は局地的な生産減少、高い食料価格、COVID-19による経済低迷が引き起こした収入創出活動の喪失を反映している。

ギニア共和国ー局地的な穀物生産量の不足

・2020年6月-8月期は約26万7,000人に食料支援が必要と推定されている。さらに、5,500人の難民を抱えている。

レソト王国ー局地的な生産量の不足、収入創出活動の喪失

・約58万2,000人が2020年10月ー2021年3月期に深刻な食料不安に陥ると推定されており、2019/20年の同時期よりも10%多い。こうした状況の悪化は、高い食料価格とCOVID-19に誘発された経済の低迷による収入創出活動の喪失を反映している。

リベリア共和国ー高い食料価格

・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、主に輸入されたコメや全体的なインフレによる著しい物価上昇による高い食料価格により、約55万人が2021年6月ー8月期にフェーズ3「危機」またはそれ以上と推定されている。さらに約8,200人の難民も受け入れている。

リビアー社会不安、経済・政治不安、高い食料価格

・2021年の「人道的ニーズの概要」によれば、人道支援が必要な人は合計130万人(人口の23%)、そのうち70万人に食料支援が必要と推定された。人道支援を必要とする人々の半数は、国内避難民、同国で暮らしているもしくは同国を通過する移民である。

マダガスカルー南部での収穫量の減少、限られた収入の機会

・南部、南東部地域では推定135万人が食料不安にあり、少なくとも2021年4月までは人道支援が必要になる。これらの地域では、深刻な食料事情が子どもたちの急性栄養失調の割合の高さにも反映されている。

・COVID-19パンデミックの影響、特に景気低迷による収入の減少、また平均以下の穀物生産量が続ていること、2021年に広範囲に渡った干ばつが食料不安の主要な原因である。

マラウイ共和国ー地域的な生産不足と景気低迷

2020年10月から2021年3月の間に推定262万人が食料不安に陥ったとされ、そのうち200万人は農村部に住み、残りの60万人は都市部に住んでいる。

2020年は穀物生産量が増加したものの、COVID19パンデミックの影響により、収入が減少して食料へのアクセスが制限され、厳しい食料不安が続いている。

マリー社会不安 

・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によると、紛争の劇化によって人々の避難が続き、あわせてパンデミックや気象異常の影響を受けた結果、2021年6月から8月の間に、約95万5,000人がフェーズ3:「危機」以上の状態になると推定されている。

・中部および北部では、31万1193人以上が避難している。また、約4万7,000人の難民を受け入れている。

モーリタニア・イスラム共和国ー農耕牧畜作期の作柄不良

・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によると、2021年6月から8月の間に人道支援を必要とされるのは約41万人にのぼると見られている。これは、トラルザ州、ブルクナ州、ゴルゴル州、ギディマカ州、アサバ州の飼料生産が不足した結果である。

・支援を必要とする主にマリからの難民約6万7,622人が居住している。

モザンビーク共和国ー景気の低迷、主食用作物生産の地域的な不足、北部地域の不安定さ

・推定290万人が、少なくとも2021年3月まで緊急人道支援を必要としている。パンデミックによる景気低迷に関連する収入減の悪影響および南部地域の主食用作物生産の落ち込みを反映している。北部地域の不安定化が続いており、生活環境の悪化が著しく大量の人々が避難している。

ナミビア共和国ー主食用作物の生産量の局地的不足と、経済低迷

・2020年10月から2021年3月の間に、約44万1,000人が食料不安に陥り、人道支援を必要とすると予測されている。

・食料は十分かつ安定的に供給されているが、主に所得と雇用の喪失などのCOVID19パンデミックの負の影響により、世帯の食料へのアクセスが制限されている。

セネガル共和国ー局地的な穀物生産の不足

・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によると、悪天候(干ばつや洪水)が穀物および飼料生産に与えた影響から、2021年6月から8月の間に、約85万人が人道支援を必要とすると推定されている。

・主にモーリタニアからの難民、推定1万4,500人が国内に居住している。

シェラレオネー食料価格の高騰

・2021年6月から8月の間に、高い食料価格や購買力の低下によって世帯の食料へのアクセスが急激に制限されることから、約130万人が深刻な食料不安に陥ると推定される。

スーダンー紛争、社会不安、洪水、食料価格の高騰

・2020年10月から12月期、深刻な食料不安人口は710万人と推計された。

ウガンダー洪水、難民の流入

2020年9月から2021年1月、カラモジャ地方、都市部、難民居住区、難民受入コミュニティで、約200万人が深刻な食料不安を抱えている。首都カンパラなど従来から食料が確保されていた都市部でも、COVID-19ウイルスの蔓延を抑制するために導入された制限措置により、60万人以上の人々が食料不足に陥っている。

・南スーダンからの約89万1,000人、およびコンゴ民主共和国からの42万3,000人が難民キャンプで受けいれられており、人道支援に頼っている。

タンザニア共和国ー局地的な主食用作物の生産不足

・2020年5月から9月の間で、主に北東部のマニャラとキリマンジャロ地域、中央部のドドマとシンギダ地域で、約49万9,000人に緊急支援が必要と推定された。これらの地域では、2019年の収穫において、長引く乾季の影響を受け、穀物の生産量が大幅に減少した

ザンビア共和国ー局地的な穀物生産の不足

・COVID19パンデミックの影響により、国全体の食料不安が深刻化しており、その結果、2020年は穀物の生産量が多く、価格が下がったにもかかわらず、支援を必要とする人の数は昨年と同程度のレベルに高止まりしている。2020年10月から2021年3月の間に、推定200万人が支援を必要としている。

アジア(9カ国)

食料生産・供給総量の異常な不足

レバノン共和国ー財政的及び経済的危機

・2020年8月、国連西アジア経済社会委員会は、人口の55%以上が貧困状態にあり、2019年の28%から増加していることを推測した。

世帯の購買力が低下しているため、現在の数値はより高くなっていると思われる。

シリア・アラブ共和国ー内戦、停滞する経済

・全国的な食料安全保障評価では、2019年末と比べて540万人多い、約1,240万人(全人口の60%)が食料不安に陥っていると推定されており、その主な原因は生計機会の制約と経済の急速な悪化にあると推測されている。

・一部の国際的な食料支援は行われているが、シリア難民は近隣諸国のホストコミュニティの資源を圧迫しているのも事実である。

広範囲の食料アクセスの欠如

朝鮮民主主義人民共和国ー食料消費レベルの低さ、食生活の多様性の低さ、経済不振、洪水

・国民の大部分は、食料消費量が少なく、食生活の多様性が非常に乏しい状態にある。

特にCOVID19パンデミックの世界的インパクトからの経済不振は、人々の食料不安に対する脆弱性を高めている。

・2020年8月から9月初旬にかけて発生した複数の台風による洪水により、2020年には南部地域で多くの人々が被災した。

イエメン共和国ー紛争、貧困、洪水、高い食料価格及び燃料価格

・2021年1月から6月の間に、食料不安人口(IPCフェーズ3以上)は300万人近く増加し、1,620万人になると予測される。

このうち、IPCフェーズ3:「危機」に該当する人は1,100万人、IPCフェーズ4:「緊急」に該当する人は500万人、IPCフェーズ5:「大惨事」に該当する人は4万7,000人に増加すると予測される。

厳しい局地的食料不安

アフガニスタン・イスラム共和国ー内戦、人口移動、停滞する経済

・2020年11月から2021年3月の間に、約1,315万人(全人口の5分の2以上)が深刻な急性食料不安に陥り、緊急の人道支援を必要としていると推定される。

そのうちIPCフェーズ3:「危機」に該当するのは852万人、IPCフェーズ4:「緊急」に該当するのは430万人である。

バングラデシュ人民共和国ー経済的制約、モンスーンによる洪水、主食用作物の価格高騰

・COVID19パンデミックの影響による収入と仕送りの減少のため、食料不安・貧困レベルが上昇した。

・2020年を通して繰り返された洪水は、農業分野にダメージを与え、家屋やインフラを破壊し、食料不安の状況をさらに悪化させた。

・UNHCRの最新情報(2021年1月)によると、ミャンマーからのロヒンギャ難民約86万人がバングラデシュのコックスバザール県を中心に避難している。

・2021年1月には、同国の主食である米の価格がほとんどの市場で過去最高に近い水準に達し、食料へのアクセスが制約された。

イラク共和国ー内戦、原油価格の下落、経済の停滞

・2021年の「人道的ニーズの概要」では、410万人が人道的支援を必要としており、そのうち240万人が急性の人道的ニーズを抱えていることが確認された。極端な食料不安を抱える人は約43万5,000人、食料不安に陥りやすい人は73万1,000人と推定されている。

ミャンマーー紛争、政情不安、経済的制約

・2020年2月1日の軍事政権発足後の政治危機により、国中で緊張と不安が高まっていた。

・現在の不透明な政治状況は、国内に居住する脆弱な世帯やロヒンギャ族の国内避難民の脆弱な状況をさらに悪化させる可能性がある。

ラカイン州、チン州、カチン州、カイン州、シャン州で続く紛争は、特に2017年から大規模な避難を引き起こした。

・女性や子どもを中心に、推定23万5,000人が国内で避難しており、これらのIDPのうち最大の割合は、ラカイン州とカチン州に避難している。

COVID19パンデミックのインパクトによる収入と仕送りの低下は、脆弱な世帯の食料不安の状況を悪化させている。

パキスタン・イスラム共和国ー人口流出、経済的制約

・同国は140万人近くの登録・未登録のアフガン難民を受け入れている。

これらの人々のほとんどが人道的支援を必要としており、受け入れ先コミュニティの限られた資源に負担をかけている。

・収入を得る機会が失われているため、貧困レベルが上昇している。

ラテンアメリカ及びカリブ海地域(2ケ国)

広範囲の食料アクセスの欠如

ベネズエラ・ボリバル共和国ー深刻な経済危機

・同国からの難民・移民の総数は540万人と推定され、最も多くの人々がコロンビア(170万人)、ペルー(100万人)、チリ(45万7,000人)に定住している。

難民と移民の人道的ニーズは大きい。COVID19の影響で受け入れ国での収入創出機会が失われたことにより、移民の食料不安は2020年に悪化したと報告されている。

受け入れる国の経済の回復が遅れることが予想されるため、移民の生活はわずかにしか回復しないと考えられる。

・2019年第3四半期に実施されたWFPの食料安全保障分析によると、約230万人(国内総人口の8%)が同国で、主に高い食料価格の結果、深刻な食料不安に陥っている。

厳しい局地的食料不安

ハイチ共和国ー農業生産量の減少、社会的及び政治的混乱

・2021年3月から6月にかけて、約440万人が深刻な食料不安に直面し、緊急の食料支援を必要としていると推定される。

2020年の主耕作期の穀物生産量の減少と食料価格の高騰により、食料不安レベルが高い。

COVID19のパンデミックと社会政治的混乱の中での仕送りの減少と収入の喪失は、すでに劣悪な食料不安の状況を悪化させる可能性が高い。

世界の穀物需給概況

2020年の世界の穀物生産予想は大幅に引き上げられ、2021年初期の穀物生産の見通しは明るい

FAOが発表した2020年の世界の穀物生産量の最新予測は、3月に前月から1,700万トン引き上げられ、前年比1.9%増の27億6,100万トンとなった。これは主に、最近発表されたオーストラリア、EU、カザフスタン、ロシア連邦の公式データから、世界のコムギ 生産予測が750万トン増加したことを反映している。世界の粗粒穀物生産の推定値も690万トン増加したが、その大半は、最近の公式データでトウモロコシの生産量が予想を上回った西アフリカと、収量が増加したルーマニアのトウモロコシ生産量推定値が上方修正されたEUに集中している。世界の粗粒穀物生産量の見通しは、オーストラリアとロシア連邦における収量の増加を反映して、オオムギの生産量が上方修正された。また、世界のコメ生産量の見通しは260万トン上方修正され、2019年の修正値を2.1%上回った。3月のこの上方修正は、主にインドの生産量に対する期待が高まっていることを反映している。インドでは、冬季(ラビ)の裏作の作付けが前年を大幅に上回ったと報告されている。また、タンザニア連合共和国とイラン・イスラム共和国の生産量も引き上げられ、その他の国々の小幅な下方修正を補っている。

2020/21年の世界の穀物利用量の見通しは、FAOが2月に発表したものより430万トン多い27億6,600万トンに引き上げられ、2019/20年の水準を2%(5,400万トン)上回った。今回220万トン上方修正された2020/21年の世界のコメの消費量は、主に食用に牽引されながらも、特に飼料用などの非食用の緩やかな回復に支えられて、前年比2%増の5億1,400万トンとなり、過去最高水準になると予想さる。オーストラリアとEUではオオムギの飼料用途の増加が予想され、さらにアフリカではトウモロコシの食用の消費が予想以上に多いことから、2020/21年の世界の粗粒穀物利用量の最新予測は、2019/20年比で360万トン増の14億9,700万トンとなり、2.8%の増加となった。今月、 コムギの2020/21年の利用量予測が若干下方修正されたものの、世界のコムギ利用量は前年比0.5%増の7億5,450万トンとなっている。

FAOの2021年までの世界の穀物在庫予測も、2月の予測に比べて3月は900万トン増量され、8億1,100万トンとなった。今回の上方修正にもかかわらず、2020/21年の世界の穀物在庫は当初の水準よりも0.9%(760万トン)減少し、その結果、世界の穀物在庫対利用率は2019/20年の29.6%から2020/21年には28.6%に低下し、7年ぶりの低水準となる見込みである。生産量の増加に加えて利用率が低下したことにより、世界のコムギ在庫量の見通しは、前月から770万トン増加し、期首の水準を5.4%上回る2億9200万トンとなった。また、2020/21年末時点の世界の米の在庫量の見通しについても、主にインドの公的な国内調達の好調さを反映した在庫量の増加により、期首の豊富な在庫量と同水準になるとしている。世界の粗粒穀物在庫は、先月より若干増加したものの、米国と中国(本土)のトウモロコシ在庫の大幅な減少が予想されることから、開始時の水準から6.4%減少すると予想している。

FAOが発表した2020/21年の世界の穀物貿易予測は、前月から4億6,400万トンに引き下げられたものの、2019/20年に比べて5.5%(2,400万トン)増加している。粗粒穀物の総貿易量は、2020/21年(7月/6月)に8.9%(1,870万トン)拡大して2億3,000万トンになると予測さるが、EUからのトウモロコシの輸入需要が弱まっていることを理由に、FAOが2月に報告した数字と比較して270万トン減少した。2020/21年(7月/6月)の世界のコムギ貿易量は、中国(本土)、トルコ、パキスタンの輸入増加により今月200万トンの上方修正が行われ、現在のところ前シーズンを1.2%(230万トン)上回る1億8,660万トンとされている。FAOの2021年(1月〜12月)の世界のコメ貿易量の予測は、2020年比7%増の4,800万トンとほぼ変わらず、3年ぶりの高水準となっている。

2021年作物の早期見通し

今後の見通しは今のところ、2021年の世界の穀物生産量は小幅に増加することが示唆されている。北半球のコムギの大部分はまだ休眠中であり、南半球の国々はまだ作付けを行っていないが、FAOが発表した2021年の世界のコムギ生産量の予備予測では、3年連続で年間7億8,000万トンに増加し、新記録を達成すると指摘されている。2021年の世界のコムギ生産量は、3年連続で増加し、過去最高の7億8,000万トンになると予想されている。この増加の大部分はEUによるもので、コムギの作付けは昨年の低水準から回復し、2021年には5%以上増加すると予想されている。2021年のEUのコムギ生産量は、収穫量の増加と相まって、約9%増の1億3,700万トンになると予想される。同様に、イギリスの生産量は、作付面積の拡大と収量の増加により、前年の低水準から回復し、1,400万トンを超えると予想される。ロシア連邦では、生育期初期の乾燥した天候の影響により、2021年のコムギ生産量の見通しは、前年の豊作に比べて低下した。1月に降った雪のおかげでこの懸念は一部和らいだが、それでも2021年の生産量は700万トン減少すると予想される。ウクライナでは、全般的に好天に恵まれ、十分な積雪により作物の凍結を防ぐことができたため、2021年のコムギ生産量は平均に近いレベルまで緩やかに増加すると予想している。アジアでは、インドやパキスタンをはじめとするいくつかの主要生産国で、政府の支援や好天に支えられ、平均以上の生産量が見込まれている。中国(本土)のコムギの作況も良好で、2021年の生産量は平均に近い水準で推移すると予想している。しかし、中近東諸国では、いくつかの国で異常な乾燥により収穫量が減少しているため、生産量の見通しはまちまちである。米国では、2020年10月以降の天候不順により収量見通しが低下しており、総作付面積の拡大が見込まれるものの、2021年の生産量は昨年の5,000万トンに近い水準で推移すると予想されている。カナダでは、コムギの大部分が夏に生産され、まだ作付けされていないため、生産量は収量の低下によりわずかに減少し、3,300万トンになると公式に予測されている。

粗粒穀物の生産は、南半球の国々では今後数ヶ月のうちに2021年の収穫が予定されているが、赤道以北の国々ではまだ作付けが行われていない。南米では、アルゼンチンとブラジルの2020年のトウモロコシ生産量は、大規模な播種が予想されるため、平均を大きく上回る水準になると予想されているが、天候があまり良くないため、収量や全体的な生産量の見通しは抑えられている。南部アフリカでは、異常気象により局地的に作物の損失が発生したものの、生産量の見通しはおおむね良好である。地域の主要生産国である南アフリカでは、価格主導でトウモロコシの作付量が増加し、ほぼ理想的な天候に恵まれていることから、2021年のトウモロコシ生産量は過去最高に近い水準になると予想されている。

低所得・食料不足国の食料事情

2021年の穀物生産の初期の見通しは概ね好ましいものである

低所得食料不足国の間では、南部アフリカとアジアでは2020年の最後の四半期に2021年の穀物の作付けが始まった一方で、東アフリカ、中部アフリカ、西アフリカでは播種の作業がまだ始まっていない。作付けが行われた地域では、異常な乾燥が穀物に不利に働いた中近東アジアの国々を除いて、主に良好な気象条件を反映して2021年の生産の見通しは概ね好ましい。

南部アフリカでは、レソト、マラウイ、ジンバブウェにおいて2021年の作物生産の予想は好ましい。しかしながら、マダガスカル南部やモザンビーク北部では、作期の初めから相当な降雨不足が記録されており、生産高を減らしそうだという懸念がある。モザンビーク北部における紛争も生産高の見込みを減らす原因となっている。

東部アフリカでは、3月ないし4月から大半の作物が作付けされるだろう。気象予報では、3月から5月にかけての雨季の降水量はほとんどの地域で平年並みか平年以上となるとされており、生産高の初期の見込みを押し上げている。しかしながら、南スーダンやエチオピアのティグライ州を含む、紛争の影響を受ける地域では、農業活動に対する妨害によって作付け作業や農業投入財へのアクセスが妨げられるだろう。

西アフリカでは、2021年の穀物の播種も3月ないし4月に始まるだろう。リプタコグルマ地域の一部やチャド湖地域では2020年後半から治安状況が改善したが、紛争の影響が農家の生産能力を減らしつづけ、結果的にこれらの地域で2021年の生産高を抑えることが予想される。同様に、中央アフリカの紛争が続き、農業活動が妨げられている。

アジアでは、植え付けの拡大と良好な天候条件を反映して、インドでは2021年の小麦の収穫は豊作と予想され、生産高は2020年に達した記録的なレベルを上回るほどだ。中近東では、シリア・アラブ共和国とアフガニスタンの雨量不足が2021年の小麦の生産予想を抑えた。

2020年の生産は主にアジアに集中して増加した。

2020年の低所得食料不足国の総作物生産のFAOの予想は5億240万トンで、平均を大きく上回り、それは2019年の生産高より1,500万トン近く大きい。より高い生産高は主に植え付けが増加したアジア、特にインドでの生産増によるもの、また改善された安全保障条件が生産増加を促したシリア・アラブ共和国での生産の好転に関連している。生産の好転は西アフリカの国々、特にブルキナファソ、ニジェール、セネガルでも記録された。

輸入は2020/21年度に平均レベル以上に増加すると予想される

低所得食料不足国による2020/21市場年の総穀物輸入は7,410万トンの平均以上のレベルで、1年間で440万トン多くなると予想される。増加した量は主に、2020年の国内の穀物生産高に関する初期の懸念やCOVID-19パンデミックの影響が、国々に十分な供給を確保するようにさせた西アフリカや南部アフリカでの強い輸入需要を反映する。中央アフリカや東アフリカ諸国では、輸入は成長する国内消費ニーズと歩調を合わせるように緩やかに増加することが予想される。アジアの低所得食料不足国、特にバングラデシュでの飼料や食料双方の需要の高まり、またアフガニスタンやウズベキスタンでの2020年の穀物の収穫高の減少により、穀物輸入は増加することが予想される。

アフリカの食料生産

2020年アフリカでの穀物生産量は平均を超えた2億1,280万トンと予想され、年間700万トン多い。この増加のほとんどは、気象条件に恵まれた南部アフリカにおける生産の回復を反映したものである。

東アフリカでは、全体の生産量は微増もしくは2020年と変わらない。しかしソマリアにおいては、洪水と害虫(訳者注:サバクトビバッタ)の大量発生により収穫量は平年を下回る。

西アフリカでは、2020年穀物生産量(収穫量)は微増し、新たな記録に達した。

異常な干ばつが原因で、北アフリカでは平年を下回る生産量と推定され、また中部アフリカでは紛争と洪水の影響により、平均に近い生産量にとどまった。

2021年の穀物生産については、南部アフリカでは4月から収穫が始まる見込みで、サイクロンや異常な干ばつの影響を受ける地域があるものの、気象条件が良く、生産見込みは良好である。北アフリカでは、第二四半期に収穫が予定されているが、その見通しはまちまちで、今後数ヶ月の降雨の必要性が高まっている。西アフリカ、東アフリカ、中部アフリカにおける2021年の作付けは、4月から始まる。

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ナイジェリアナミビアニジェール)

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ブルキナファソブルンジ)

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マダガスカルマラウイマリ南スーダンモーリタニアモザンビーク)

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