「公正な医療アクセスを世界のすべての人に!」連絡会 ご参加・ご協力の呼びかけ 

新規医薬品・医療技術への途上国の平等なアクセスを阻む知的財産権保護を緩和し
新型コロナ克服の取り組みや新たなパンデミックへの備えを世界全体で進めよう
=世界の市民社会は動いている:日本の市民社会への呼びかけ=

■連絡会へのご参加・ご協力のお願い (登録フォーム:https://forms.gle/9UJzzurvZPaCPBRm6
■ウェビナー開催と資料集 映像完成記念上映会「新型コロナが映すいのちの格差—公正な医療アクセスを求める世界の市民社会」(2023年2月7日開催)までアップ!
■呼びかけ団体について
■2022年5月12日 緊急開催!コロナ時代のグローバルヘルスへの日本の取り組みに関する緊急院内集会
■2022年3月18日 WTOでのコロナ関連知的財産権免除提案についての「暫定合意」案に対する見解
■2022年3月11日 ウェビナー「3.11に考える持続可能性への新しい道」=コロナ危機と震災復興= 開催
■2022年2月21日 WTO一般理事会(2/23-24)に向け政府に要望書提出
■2021年5月26日 プレスリリース 茂木外務大臣の答弁について

■2021年5月14日 日本政府への要望書に賛同をお願いします
■2021年5月5日 米国の政策を変えた市民社会の取り組み
■2021年2月17日 日本政府と公式対話を持ち、要望書を提出

(2021年2月15日更新)「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の世界的流行は、変異ウイルスの登場などもあり、深刻な状況が続いています。東アジアに始まり、欧米を席巻したCOVID-19は、中東・北アフリカ、中南米、南アジア、サハラ以南アフリカなどの中所得国・低所得国(途上国)にも拡大し、2月中旬の段階で1億人以上の感染、230万人以上の死者をもたらしてきました。

COVID-19は世界の社会、経済、環境に多様かつ甚大な影響を及ぼしており、その対策も多岐に及びます。世界はこの1年足らずの間に新規医薬品の研究開発、社会・経済的影響の緩和のためのIT技術の開発と適用、その他様々な既存技術の活用を行ってきました。COVID-19は異次元のグローバルな脅威であり、開発された新規医薬品への世界全体の平等なアクセスを含め、COVID-19の克服のための手段は世界に開かれたものとしてあるべきです。2020年10月2日、南アフリカ共和国およびインド政府は、世界貿易機関(WTO)の「貿易関連知的財産権協定」(TRIPs)理事会に対して、各国が医薬品、診断薬、有望なワクチン候補等の製造を拡大できるようにするため、知的財産権保護を定めるTRIPs協定の特定条項を放棄することを要請しました。この提案には、アフリカからケニア、エスワティニ王国、モザンビーク、ジンバブウェ、エジプト、ラテンアメリカからボリビアとベネズエラ、アジアからモンゴルとパキスタンが共同提案国として名を連ね、100か国以上の支持をもって、現在、WTOのTRIPs理事会で審議されています。

私たちは、日本の市民社会が、COVID-19に関連して、途上国における医薬品への平等なアクセスを阻む要因となっている、知的財産権を含む貿易ルールの問題について、より強い関心を払うこと、日本政府を含む先進国および一部の新興国政府に対して、COVID-19という異次元のグローバルな危機に際して、医薬品を始め、これを克服するための新規技術への平等かつオープンなアクセスを保障するように求める世界の市民社会の運動に合流することを、強く呼びかけます。呼びかけの理由は以下の通りです。

(1)COVID-19の流行に際して、米国をはじめとする先進国はその資金力により個人防護具(PPE)や医薬品を大量購入するとともに、開発系製薬企業が開発するワクチンの事前大量買い取り契約を結び、これらの市場を独占しています。結果として、世界の大半を占める途上国・新興国が、これらの物資を確保するうえで大きな支障が生じています。

(2) こうした問題を解決するため、4月24日、WHOおよび保健に関わる国際機関、民間財団が連携して、新規医薬品の開発と途上国における平等なアクセスの確保を一体で手掛ける「ACTアクセラレーター」(COVID-19関連製品アクセス促進枠組み)が発足しました。また、WHOとコスタリカのリーダーシップおよび世界37か国の支持により、COVID-19に関する新規技術に関わる知的財産権をプーリングし、途上国における安価な供給につなげる仕組みとして「C-TAP」(COVID-19関連技術アクセス・プール)も発足しました。しかし、ACTアクセラレーターは2月16日の段階で、本年末まで272億ドルが足りないという、巨大な資金不足に直面しており、C-TAPについては、多くの先進国から支持を得られず、製薬企業からも公に拒絶の表明があるなどして、機能が発揮できない状況が続いています。

(3) こうした状況下で、COVID-19への取り組みを世界全体で推し進めるには、ACTアクセラレーターなどの革新的な仕組みを十全に活用するのみならず、途上国・新興国自身の資源動員と、医薬品の開発や製造、普及の能力と意欲の拡大が不可欠です。

(4) COVID-19の脅威は、世界の社会・経済・環境の持続可能性の低下と強く結びついています。COVID-19は「最後のパンデミック」ではありません。世界は今後も登場するパンデミックへの準備度を向上させるとともに、パンデミックのリスクを拡大する様々な非感染性疾患やその他の基礎疾患等に対するレジリエンス(対応力、復元力)を増大させる必要があります。そのためには、COVID-19の教訓を踏まえ、知的財産権をはじめとする、国際保健に関わる諸制度を柔軟に変革していく必要があります。

WTOのTRIPs理事会において、途上国・新興国の多くが南ア・インド政府の要請を歓迎したのに対して、残念なことに、日本をはじめ、米国、西欧諸国など先進国の多くは、これを拒否する姿勢を示しました。グローバルな異次元の危機としてのCOVID-19の一刻も早い克服のために、また、今後のパンデミックに備え、真に持続可能で健康な社会・経済・環境を創っていくために、私たち市民社会は可能なあらゆる手段をとって働きかけていく必要があります。私たちは今後、この課題を前に進めるために、以下の取り組みをしていく予定です。

(1) インド・南ア政府のTRIPs協定の知的財産権関係の一部条項の放棄の呼びかけに否定的な立場をとっている日本政府の政策を変えるための政策提言・働きかけ
(2) COVID-19に関わる新規医薬品やその他の技術の途上国・新興国への平等なアクセスを阻害している知的財産権など貿易ルールの問題に関する情報提供や啓発などの取り組み、可能な形でのキャンペーンなど

ごく最近、市民社会の取り組みによって、貿易ルールを変えた実例があります。去る11月15日に妥結された「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」の交渉では、TRIPS+の条項を求める日本など先進国に対し、後発開発途上国(LDC)を含むASEAN諸国の政府・市民は、知的所有権の保護強化によって医薬品アクセスが阻まれないよう、粘り強い働きかけを行ってきました。その努力の結果、TPP協定にあったような医薬品特許に関わる条項の多くは取り入れられませんでした。これは、限定的ではあるにせよ、途上国・新興国の人々が、貿易協定における知的財産権がいかに途上国・新興国の医薬品アクセスを阻害するかについて理解し、運動を進めてきた成果であると言えます。また、日本政府も、南ア・インド政府の呼びかけには反対する一方、医薬品に関する世界全体での平等なアクセス自体については、その重要性を一定程度認識し、G7、G20などでは、COVID-19に関わる「特許プール」の必要性などについて積極的に発言しています。医薬品への平等なアクセスを求める途上国・新興国の市民社会の運動に連帯するためにも、私たちは、COVID-19に取り組む日本の市民社会関係者の皆様に、この問題に関心を持つこと、COVID-19の克服のために取りうる手段を途上国にも開いていく取り組みに協力することを強く訴えるものです。

今後のご参加・ご協力の方法等

上記趣旨に基づき、COVID-19や新たなパンデミックに関わる公正な医療アクセスを、グローバルに実現するための政策提言や発信、情報流通に取組むための市民社会の連絡会として「公正な医療アクセスを世界のすべての人に!」連絡会*を設置します。ご参加・ご協力を希望される方は、以下の登録フォームにアクセスし、必要事項を御記入ください。

*「新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!」連絡会 は2023年8月1日より「公正な医療アクセスを世界のすべての人に!」連絡会 に改称しました。

登録フォーム: https://forms.gle/9UJzzurvZPaCPBRm6

事務局:(特活)アフリカ日本協議会 国際保健部門(担当:稲場、廣内)
メール:ajf.globalhealth@gmail.com
関連情報:https://ajf.gr.jp/covid-19/

 

(報告)TRIPs協定知的財産権保護免除提案について
日本政府と公式対話会合を持ちました。

(2021年2月17日)

南アフリカ共和国・インド等11か国による「新型コロナ(COVID-19)に関連する知的財産権保護の免除」提案(以下、「南ア・インド等提案」)は、世界貿易機関(WTO)のTRIPs(貿易関係知的財産権協定)理事会で審議されています。2月23日のTRIPs理事会、3月1-2日の一般理事会、3月10-11日のTRIPs理事会に向けて、審議が継続されることになっています。これを踏まえ、世界の市民社会は、この提案に反対している主要先進国などに対して、COVID-19の収束に向けて「独占でなく共有」「競争でなく協力」を掲げて、この提案への支持、もしくは少なくとも反対しないことを求めて、働きかけを進めています。

日本政府は「南ア・インド等提案」に反対の立場をとり続けていますが、私たち「連絡会」も、日本政府がこの提案について、支持もしくは、少なくとも反対をしない形に方針を変更することを求めて、日本政府に対して働きかけていこうと考え、呼びかけ団体にて「要請書」を作成しました。この提案には、2月17日までに、呼びかけ団体7団体に加え、日本国内で56団体、海外でも56団体の賛同を頂きました。賛同いただいた団体の皆様に心より感謝いたします。

「連絡会」では、賛同団体の募集と同時に、外務省、経済産業省、財務省などと非公式の協議を行ったうえ、2月17日(水)、政府との公式対話を開催しました。市民社会側からは、呼びかけ団体から国境なき医師団(MSF)日本、アジア太平洋資料センター(PARC)、アフリカ日本協議会(AJF)が参加。政府側からは、外務省の経済局知的財産室長、国際協力局(地球規模課題審議官組織)国際保健政策室長、経産省の通商機構部・国際知的財産制度調整官らが参加しました。

対話では、まず要望書を説明したのち、出席した3団体の代表が発言、政府側が回答を行いました。対話は1時間以上にわたって続きました。政府は「南ア・インド等提案」への反対姿勢は堅持しましたが、世界全体でのCOVID-19に対する公正な医療アクセスの必要性については、市民側と共通認識を持つと言明。途上国へのワクチン供給の多国間枠組みであるCOVAXへの支援を含め、積極的な取り組みを行っていくことは表明しました。私たち連絡会としては、日本政府に対して、引き続き「南ア・インド等提案」への支持を訴えていくほか、世界全体での「公正な医療アクセス」の実現に向けて提言を継続していく所存です。

 提出した要請書本文はこちら 

  日本語版PDF   英語版(English)PDF

質問等ございましたら、連絡会事務局までお問合せ頂けると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

連絡会事務局
(特活)アフリカ日本協議会 (担当:稲場・廣内)
メールアドレス:ajf.globalhealth@gmail.com


ウェビナー資料集
この課題について、より深く知るためのオンラインセミナーを、Zoomで開催していきました。当日の記録・資料は下記ページをご覧ください。
 
 

呼びかけ団体
(特活)アジア太平洋資料センター(PARC) 共同代表 内田聖子
(公財)アジア保健研修所(AHI) 事務局長 林かぐみ
(特活)アフリカ日本協議会 共同代表理事 津山直子・玉井隆、国際保健ディレクター 稲場雅紀
(特活)国境なき医師団日本 会長 久留宮隆
(特活)シェア国際保健協力市民の会 共同代表 本田徹
世界民衆保健運動(People’s Health Movement) 日本代表幹事 宇井志緒利
(公社)日本キリスト教海外医療協力会 会長 畑野研太郎

連絡会への参加呼びかけ PDF[794KB]


米国の政策を変えた市民社会の取り組み
ピープルズ・ワクチン連合のG7諸国世論調査とアジアからの声

(2021年5月5日)

5月5日、米国のキャサリン・タイ通商代表は、バイデン・ハリス政権が世界貿易機関(WTO)に討議されている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)収束まで、COVID-19に関わる知的財産権を一時免除する」というインド・南アフリカ他61ヶ国の提案を支持する、と公式に発表しました。公式発表に関する詳細は以下のアフリカ日本協議会の記事をご覧ください。
https://ajf.gr.jp/covid19_05may21_2/

米国の政策転換は、COVID-19に関する公正な保健・医療アクセスのグローバルな保障に向けた大きな一歩を示すものです。一方、日本を含め、米国以外の先進国は、一部を除いて態度を表明しておらず、今後も働きかけを行っていく必要があります。

米国の政策転換をもたらした大きな要素として、COVID-19の深刻さに加え、世界の市民社会が連携して米国を含む先進国政府に働きかけを強めたことがあります。保健・人道支援・人権などに取り組むオックスファム、アクションエイド、アムネスティなどの市民社会組織や国連合同エイズ計画(UNAIDS)などの国際機関、現役および引退した国家指導者や宗教指導者などでつくる「ピープルズ・ワクチン連合」(People’s Vaccine Alliance)は、昨年「利益のためのワクチンでなく、人々のためのワクチンを」(People’s Vaccine, not for Profit Vaccine)という声明を発表して以降、COVID-19関連の知的財産権の一時免除に向けて積極的にキャンペーンや提言を展開してきました。去る4月14日に、ブラウン英元首相、オランド仏元大統領ら現役および引退した国家指導者らと梶田隆章氏らノーベル賞受賞者157人がバイデン大統領に「コロナ収束に向け知財権免除を」求める書簡を送ったのは、この「ピープルズ・ワクチン連合」のイニシアティブによるものです。

「ピープルズ・ワクチン連合」は、G7英国サミットに向けて、英国の調査会社「ユーガブ」(YouGov)などと連携して、G7諸国で世論調査を行い、G7諸国の市民の10人に7人が、製薬企業によるCOVID-19ワクチンの独占に反対し、製法やノウハウの共有によってワクチンを「国際公共財」とすることを支持している、という事実を明らかにしました。5月5日、この世論調査についてのプレスリリースが発表されました。日本語訳はこちらをご覧ください。

<プレスリリース G7諸国世論調査 結果発表>
G7諸国の10人に7人が、新型コロナ・ワクチンへの製薬企業の独占権をなくし、新型コロナ・ワクチン製造のノウハウを共有すべきとの主張に賛成   PDF [978KB]

また、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの市民社会も同連合に合流し、アジアでは「ピープルズ・ワクチン連合アジア」が発足。日本を含むアジア諸国政府に対して、COVID-19ワクチンなど保健・医療への平等なアクセスのために、WTOにおいて知的財産権免除の提案を支持することを呼びかけています。

アジア諸国政府への書簡(ピープルズ・ワクチン連合アジア) PDF [703KB]

私たち連絡会も、同連合のオンライン会議や取り組みに日本から参加しています。