今知る世界の食料危機 No.12(2020年9月号)

国連食糧農業機関(FAO)は、Global Information and Early Warning System(GIEWS)というページで、世界の食料危機に関する情報を提供しています。

2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。

2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。

そこで、2017からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。

「今知る世界の食料危機 No.12」では、2020年9月に公開された”Crop and Prospects #3 Sep 2020”の該当ページを紹介します。

「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、food@ajf.gr.jpへご連絡ください。

外部からの支援を必要としている国

アフリカ (34カ国)

食料生産・供給総量の異常な不足

中央アフリカ共和国ー紛争、食料供給制約による避難
・総合的食料安全保障レベル分類 (IPC)によれば、深刻な食料不安に直面する人々 (IPCフェーズ3:「危機」もしくはそれ以上)の数は240万人と推定され、この人数は、COVID-19パンデミック以前の予測であった作物の収穫量が減る時期 (2020年5月〜8月)の210万人と比較して15%増えた。

ケニアー洪水とサバクトビバッタ
・2020年4月から7月にかけて、2019年後半の洪水による生計手段の喪失やサバクトビバッタによる作物や牧草地の局所的な被害により、主に北部、東部の地域で、約98万人が深刻な食料不安に直面していることが推定された。

ソマリア連邦共和国ー洪水、社会不安、サバクトビバッタ、COVID-19パンデミック、牧畜民の生活を脅かす長引く雨季の影響
・2020年7月から9月にかけて、約350万人が緊急支援を必要とすると推定される。懸念される主な地域は、洪水の影響を受けた南部の河川地域、都市の避難民居住地、南部のベイ地域とバコール地域の一部、中央部のムドゥグ地域とガルグドゥード地域の一部と、北部のサナーグバリ地域とウグイガルベード地域の一部である。

ジンバブエ共和国ー景気低迷、平均以下の穀物収穫、食料価格の高騰
・COVID-19パンデミックの前に、2020年の上半期に430万人が食料不安に直面すると推定された。
・家計の収入と食料供給を減少させるようなパンデミックの影響とそれにかかわる封じ込め対策によって、2021年4月から次の収穫まで、現在の食料不安は高まり続けると予想される。
・2年連続で穀物収穫量が平均以下である影響を反映し、高い食料価格が続くことは、食料安全保障においてもまたストレスである。

ブルンジ共和国ー洪水、地滑り
・2020年6〜8月に、3月以降の豪雨による洪水や土砂崩れによる生計手段の喪失により、約85万人が深刻な食料不安に直面したと推定された。

チャド共和国ー社会不安
・COVID-19パンデミックによる人道的対応計画の改訂後、作物の収穫量が最も減る2020年8月には590万人が深刻な食料不安であると推定された。
・チャド湖地域での社会不安の影響で約23万6,000人が国内難民のままである。さらに、紛争が続いているため、中央アフリカ、ナイジェリア、スーダンからの約47万6,000人の難民を受け入れている。

コンゴ民主共和国ー社会不安の永続化、COVID-19パンデミックに関連する制限措置
・2020年7月に実施した最新のIPC分析によると、2,180万人(分析された人口の30%以上)が、COVID-19パンデミック以前に予測されていた60%を上回る深刻な食料不安であると推定された。

ジブチ共和国ー連続する雨季の降雨不足
・2020年1月には降雨不足の雨季が続いた影響で、約17万5,000人が食料不安に直面していると推定された。
・最も食料不安の影響を受けたディキルとオボックでは、人口の45〜50%が極度の食料不安に直面していた。

エリトリアーマクロ経済の課題による食料不安人口の増加

エチオピア連邦民主共和国ー高い食料価格、洪水、サバクトビバッタ、COVID-19パンデミック、前の干ばつの影響
・約850万人がSNNP(南部諸民族州)、オロミア州、ソマリ州で7月と9月の間に重大な食料不安であると推定された。
・食料不安の主な要因は、「Belg」(雨季)の平均以下の収穫、サバクトビバッタによる局所的な作物と牧草地の損失、食料価格と収入に影響するCOVID-19パンデミックの制限措置の悪影響である。
・約17万5,000人が7月と8月の集中豪雨による洪水の影響を受けている。

ニジェール共和国ー社会不安
・2020年4月に実施された複数の組織によるCOVID-19の影響評価によれば、深刻な食料不安にさらされている推定270万人を含む推定560万人が食料危機の影響を受けた。
・社会不安のため、推定26万5,500人がディファ, タホアと ティラベリ地方に避難している。加えて、主にナイジェリアとマリからの難民約22万7,800人を受け入れている。

ナイジェリア連邦共和国 ー北部での終わらない紛争
・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、2020年6月から8月期に約700万人が人道支援を必要とすると推定された。
・アダマワ北東州および、ボルノとヨベにおける紛争、北部の西側から中央地帯にかけての地方組織の対立および自然災害により、260万人以上が国内避難民となっている。人道支援にアクセスできない地域では、最悪の食料危機状況に直面している。

南スーダン共和国ー深刻な経済低迷、社会不安、長期にわたる紛争2019年農牧収穫期の不作 
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2020年6月から8月期にかけて約1万人(全人口の約2%)がフェーズ3「危機」もしくはそれ以上の厳しい状況にあったと推定された。
・継続的な人道支援にも関わらず、不十分な食料供給、経済の低迷、食料価格の高止まりにより、人口の大半がまだ食料危機の影響を受けている。
・5月から7月には約648万人(全人口の55%)が厳しい食料危機に直面していると推定された。最も高い食料危機にあるのはジョングレイ州で、その地方は洪水による被害が甚大で、人口の70%近くが厳しい食料危機に直面すると報告されている。2020年7月の国内避難民は160万人と推定された。
・7月以来の激しい雨により洪水が起こり、9月初旬時点で約60万人が影響を受けている。

厳しい局地的食料不安

ブルキナファソー北部での社会不安
・政府により更新された「Cadre Harmonisé」の結果によれば、2020年6月から8月期に、約328万人が外部からの食料支援を必要としたと推定される。
・紛争のため約100万人が避難し、そのうち50%はセンター・ノルド地域に暮らす人々であった。また主にマリからの難民約2万人は未だサヘル地域に暮らしている。

カーボヴェルデ共和国ー2019年農牧収穫期の不作 
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2020年6月から8月期にかけて約1万人(全人口の約2%)がフェーズ3「危機」もしくはそれ以上の厳しい状況にあると推定された。

カメルーン共和国ー社会不安
・FAO、WFPおよび農業農村開発省による最近の分析では、約490万人(人口の18%)が急速に悪化する食料不安状態にあり、最後の“Cadre Harmonise”(2020年3月)の報告より2倍以上の数字であった。この増加はCOVID-19のパンデミックによる影響に加え、続く紛争とそれによる国内避難民の影響による結果である。

コンゴ共和国ー難民の流入
・最近の社会・人道行動・国家連帯省とWFPの調査によると、COVID-19パンデミックによる社会経済への影響の結果、ブラザヴィルでは約7万人(この町の人口3分の1以上)が食料危機にあったと推定された。
・その上、コンゴ民主共和国からの2万1,000人と中央アフリカ共和国からの2万2,000人の難民がこの国に暮らしている。受入れコミュニティは食料不足と生計手段の制約に直面し、難民の食料は基本的に人道支援に頼り続けている。

エスワティニ王国ー局地的な生産不足、収入創出活動の減少
・2020年10月から2021年3月の間に、約36万6,000人が食料不安で人道支援を必要とするとされ、これは最近の数字、33万人よりも高い。この悪化は、局地的な生産不足、食料価格の高騰、COVID-19のパンデミックが経済低迷を誘発したことにより、収入創出活動が消失したことを反映している。

ギニア共和国ー局地的な穀物生産不足
・2020年6月-8月期に、約26万7,000人が食料支援を必要とすると推定される。加えて5,000人を超える難民がこの国に居住していた。

レソト王国 ー局地的な生産不足、収入創出活動の消失
・2020年7月から9月に、農村地域の約38万人が深刻な食料不安に直面したと予測され、2020年10月から2021年3月には58万2,000人に増加する見込みである。この悪化は、食料価格の高騰、COVID-19のパンデミックが経済低迷を誘発したことにより、収入創出活動が消失したことを反映している。

リベリア共和国ー高い食料価格
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、約4万1,000人が2020年6月から8月期にかけてフェーズ3「危機」以上にあると推定されている。 約8,700人の難民を受け入れている。

リビアー社会不安、政治不安、石油価格の低迷
・2020年、人道支援を必要としている人々の総数は、90万人と推定され、そのうち34万人が食料援助を必要としている。 難民、難民申請者、国内避難民は、食料危機に最もさらされやすい人々である。この数字は、地元の通貨価値の低下、食料価格の上昇、およびCOVID-19が臨時的な雇用機会を抑制したことにより上昇したとみられる。

マダガスカル共和国ー南部での収穫量の減少、食料価格の高騰、限られた収入の機会
・2020年の4月から6月の間に、約55万4,000人が厳しい食料不安に直面していたと推定される。これは2019年の同時期より約30%高い。食料不安の蔓延は、南部地域における、主に生産量の減少、食料価格の高騰、限られた収入の機会により、食料供給と食料へのアクセスが厳しくなっていることに起因する。
・最新の予測にCOVID19パンデミックの影響は考慮されておらず、2020年の第3四半期から2021年初頭にかけて、食料不安の状況はより深刻で、悪化することが予想される。

マラウイ共和国ー地域的な生産不足と景気低迷による所得の損失
・直近の公的な数字によると、2020年には270万人が食料不安に陥っていたとされ、そのうち190万人が農村部に、残りの80万人が都市部に住んでいる。2020年は穀物生産が好転したにも関わらず、COVID19パンデミックの直接的・間接的な影響で、所得の損失や食料供給網の混乱から食料へのアクセスが制限され、厳しい食料不安が続いている。

マリ共和国―社会不安
・国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、2020年8月には680万人(人口の3分の1)が深刻な食料不安に陥っていると推計された。
・中部と北部では26万6,000人以上が避難生活を送っている。さらに、約4万3,000人の難民を受け入れている。

モーリタニア・イスラム共和国
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2020年6月から8月期に約60万9,000人が援助を必要としていたと判断されている。
・支援を必要とする、主にマリからの難民約6万5,000人が国内に居住している。

モザンビーク共和国―景気低迷、主食食料生産の地域的な不足、北部地域の不安定な治安
・COVID19パンデミック以前に、約200万人が食料不安に陥っているとみられていた。
・所得の損失と食料サプライチェーンの混乱を考慮したCOVID-19パンデミックの悪影響で、食料不安状況は、2020年第3四半期から2021年初頭にかけてより厳しく、さらに悪化する可能性があると予想される一方、南部地域での生産不足も、劣悪な食料安全保障状況を悪化させる要因となっている。
・北部のカボ・デルガド州の治安悪化は、約25万人を避難させ、人道支援に深刻な支障をきたしている。この州では、2020年7月時点で、約31万人が深刻な食料不安に陥っていたと推定されている。

ナミビア共和国―農業生産量の不足
・COVID-19パンデミック以前に、2020年4月から9月の間に約35万4,000人が食料援助を必要としていたと予測されており、2020年の生産回復によるプラスの影響を反映して、2019年10月から2020年3月の期間の予測を20%近く下回っていた。
・しかし、COVID-19パンデミックの負の影響が、主に所得と雇用の喪失を通じて、2020年第3四半期から2021年初頭にかけて食料不安を悪化させる可能性がある。

セネガル共和国―局地的な穀物生産の不足
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によると、2020年6月から8月期に約76万7,000人が支援を必要としていたと推定されている。
・主にモーリタニアからの難民、推定1万4,500人が国内に居住している。

シエラレオネ共和国-食料価格の高騰
・2020年6月から9月の期間中、約130万人が深刻な食料不安に陥っていたと推定されている。

スーダン共和国―紛争、社会不安、COVID-19、食料価格の高騰
・2020年6月から9月の間で深刻な食料不安人口は960万人と推計された。食料不安の影響を最も受けている地域は、南コルドファン州とブルーナイル州、そして大ダルフール地域の大部分である。

ウガンダ共和国―局地的な生産不足、難民の流入、洪水
・2019年初頭、テソ州東部とカラモジャ州北東部では、約50万人が深刻な食料不安に陥っていると推定されていた(最新の入手可能情報)。
・南スーダンからの難民約88万2,000人と、コンゴ民主共和国からの難民約41万6,000人がキャンプにおり、人道支援に頼っている。

タンザニア連合共和国―局地的な作物生産の不足
・2020年5月から9月の間に緊急支援を必要とする人口は約49万9,000人と推定され、主に北東部のマニャラ州とキリマンジャロ州、中央部のドドマ州とシンギダ州では、2019年の収穫が長引く乾期の影響を受けて穀物の生産量が大幅に減少している。

ザンビア共和国―局地的な生産不足、食料価格の高騰
・2020年の穀物生産量の増加は食料供給を改善し、食料安全保障にプラスの影響を与えると期待されている。
・しかし、国の南部では、2年連続で生産量が不足しており、これらの地域では高いレベルの食料不安が続いている。さらに、COVID-19パンデミックの影響は国内全域で食料不安を悪化させており、その影響で、支援を必要としている人口は、230万人が深刻な食料不安に直面していた昨年と同程度のレベルにとどまっていると考えられる。

アジア(9カ国)

食料生産・供給総量の異常な不足

レバノン共和国―金融・経済危機
・2020年8月4日、ベイルート港で爆発事故が発生し、バルクターミナルや主要穀物サイロなど港の一部が破壊され、同国が直面している多面的な危機に別の次元を加えた。
・財務省によると、2020年4月時点でレバノン国民の約45%(243万人相当)が貧困状態にあり、そのうち22%が極度の貧困状態にあった。この数字は、経済危機の深化に伴うインフレと失業の増加、COVID-19関連の対策の影響と相まって、雇用機会と所得が制約されるため、さらに上昇する可能性が高いと考えられる。

シリア・アラブ共和国ー内戦、停滞する経済
・WFPの脆弱性分析マッピング(2020年7月)によると、930万人が食料不安の状態にあり、更に220万人が食料不安に陥る可能性がある。
・国際食料援助が提供されているが、シリア難民はまた近隣諸国のホストコミュニティの資源を圧迫している。

広範囲なアクセスの欠如

朝鮮民主主義人民共和国ー低い食料消費レベル、食事の多様性の不足、経済不振、洪水
・人口の大半が低いレベルの食料消費と大変貧弱な食事の多様性にあえいでいる。
・特にCOVID-19パンデミックの世界的インパクトからの経済不振は、人々の食料不安に対する脆弱性を高めた。
・8月と9月初めの数度の台風による洪水により多くの人々が被災し、南部で家畜と食料供給に損害を与えた。

イエメン共和国ー紛争、貧困、洪水、高い食料価格及び燃料価格
・全人口の80%以上、約2,430万人が何らかの人道支援を必要としている。食料安全クラスターは、2020年6月から12月に2,010万人が食料安全保障と農業支援を必要としており、そのうち1,000万人が緊急に必要としていると推計している。これらの数字は収入の機会の制限と仕送りの減少と共に増加することが予想される。

厳しい局地的食料不安

アフガニスタン・イスラム共和国ー紛争、避難民の発生、停滞する経済
・COVID-19パンデミックの影響により、インフォーマル労働機会と仕送りが減少したため、食料安全保障の状況は最近数ケ月で悪化した。2020年の4月から5月の間に、約1,090万人(人口の35%)は極端な食料不安にあり、緊急の人道的行動を必要とすると推計された。これらは約740万人がIPC評価のフェーズ3「危機的レベル」、350万人がフェーズ4「緊急事態」であることを含む。

バングラデシュ人民共和国ー経済不振、モンスーンによる洪水
・COVID-19パンデミックの国家経済に対するインパクトの結果、収入や仕送りの低下により、食料不安の状況は悪化することが予想される。
・2020年5月の熱帯サイクロンアムファンに続いた7月の数回の洪水は、少なくとも500万人の生計に被害を与え、農業セクターに損害を招き、家屋やインフラ設備を壊した。
・UNHCRの最近(2020年8月)の数字によると、約86万人のミャンマーからのロヒンギャ難民はバングラデシュの主にコックスバザール県に住んでいた。難民の多くは受け入れコミュニティだけでなく、既存の施設やサービスに負担をかけている。

イラク共和国ー紛争、低い石油価格、停滞する経済
・約410万人、主に国内避難民と帰還民は人道支援を必要としている。極端に食料不安に陥っている人々の数は約92万人と推計され、主に国内避難民と帰還民の170万人は食料不安に脆弱で、その大半はディヤラ、ニネべ、サラアルディン、アンバーとカークック州に集中している。

ミャンマーー経済不振、チン、カチン、シャン、カイン、ラカイン州の各地での紛争
・COVID-19パンデミックのインパクトによる収入と仕送りの低下は最も脆弱な世帯の食料不安の状況を悪化させると予想される。
・ラカイン、チン、カイン、シャン州での継続する紛争は特に2017年から人々の大規模な避難を引き起こした。2020年6月時点で、その大半は女性と子供である推計23万5,000人が国内避難民となり、これらの中で最も多くの人がラカイン州とカチン州に避難している。

パキスタン・イスラム共和国ー避難民の発生、主食作物(小麦)の高価格
・同国は140万人近くの登録・未登録のアフガン難民を受け入れている。これらの人々の大半は人道支援を必要としており、既に限られた受け入れコミュニティの資源に負担をかけている。
・国の主食作物である小麦と小麦粉の価格は、今年初めから高いレベルで、食料へのアクセスを制限している。
・約118万人が、カイバル・パクトゥンクワの行政的に統合された地域で、現在食料不安のIPCフェーズ3「危機的レベル」とフェーズ4「緊急事態」にあると推定される。

ラテンアメリカ及びカリブ海地域(2ケ国)

広範囲の食料アクセスの欠如

ベネズエラ・ボリバル共和国ー深刻な経済危機
・同国からの難民と移民の総数は520万人と推定され、最も多くの人々がコロンビア(180万人)とペルー(83万人)に定住している。難民と移民の人道支援ニーズは甚大である。
・2019年の第3四半期に行われたWFPの食料安全保障分析によると、約230万人(全人口の8%)は同国で、主に高い食料価格の結果、深刻な食料不安に陥っている。

厳しい局地的食料不安

ハイチ共和国ー長引く干ばつと高いインフレ率
・2020年の主耕作期の低い穀物生産と、高い食料価格、及び経済低迷により、2020年8月から2021年2月の期間、約400万人が深刻な食料不安に直面しているため、緊急の食料支援が必要であると推定される。仕送りの低下と収入の減少、COVID19パンデミックは、既にひどい食料不安の状況をさらに悪化させると予想される。

世界の穀物需給概況

世界の生産予想は引き下げられたが、2020/21年度の穀物供給は十分なまま

FAOは、2020年の世界の穀物生産予想を、前回の7月の予想と比較して、9月には2,500万トン(0.9%)引き下げた。見通しは悪化しているものの、予想される世界の穀物生産高は依然として27億6,500万トンで史上最高であり、2019年の見通しを5,800万トン上回っている。

今回のこの生産予想の低下は、世界の粗粒穀物予想が減少した結果であり、前回の7月の予想から2,350万トン減少し、現在は14億9,600万トンとされている。減少の大部分は、米国でのトウモロコシの生産予想の2,630万トンの下方修正に関連しており、作付けは前年比では未だ増加しているものの、以前の予想よりも少なく、中西部での最近の暴風雨被害が作物の損失と収量の見通しの悪化を引き起こしている。しかしながら、全体としては、収量は依然として、前年の低い水準から回復すると予想されており、同国の生産高は2019年より10%多い、3億8,000万トンと予想されている。生産予想は、収量の見通しを悪化させた悪天候を理由として、欧州連合とウクライナでも低下し、また、インドネシアでも、最近公表された公式統計に合わせて、過去の生産予想と2020年の予想が下方修正された。これらの減少分は、アルゼンチンとブラジルのトウモロコシ生産予想の上方修正、それも両国は史上最高レベルの収穫高を期待しているものではあるが、その上方修正を相殺する以上のものである。2020年の世界の大麦生産予想は、欧州連合での収量低下の見通しにより、120万トン減少し、現在は1億5,420万トンとなっている。対照的に、世界のソルガムの生産高は、インド、メキシコ及び米国での増加の予想を受けて、現在、前年より6%多い6,000万トン近くに達すると予想されている。世界のコムギ生産高は7月以降140万トン減少し、今年の生産高は7億6,010万トンとなり、好調だった2019年をわずかに下回っている。この減少は主に、アルゼンチン、欧州連合及び米国での生産予想がそれぞれ130万トン、400万トン、110万トン低下した結果であり、ブラジル、カナダ、ロシア連邦及びウクライナの上方修正を上回っている。7月のコメ生産予想に対し、コロンビア、フィリピン及び米国での限定的な地域ベースでの増加は、ラオス人民民主共和国とベトナムでの生産に対するより下方的な予想を相殺した。その結果、2020年の世界のコメ生産高は、2019年の減少水準から1.7%増加し、史上最高の5億900万トン(精白米ベース)と引き続き予想されている。2020/21年度の世界の穀物利用予想は、7月から1,100万トン増加し、2019/20年度の水準から6,310万トン(2.4%)増加して、27億4,600万トンとなっている。当月の増加の見通しと上方修正は、主に粗粒穀物の全利用における増加の予想を反映しており、7月から840万トン上方修正し、現在は2019/20年度の水準を5,150万トン(3.6%)上回っている。粗粒穀物の飼料利用、特にトウモロコシに関して予想される増加は、2019/20年度の水準から3,140万トン(3.8%)で、年間の増加予想の最大の要因となっている。一方で、産業利用に関しては、エタノール需要が回復したため、昨年の不振から回復し、現在、1,640万トン(4.2%)増加すると見られ、増加予想にも貢献している。2020/21年度のコムギの全利用予想もまた、7月以降引き上げられたが、わずかに(200万トン増加で)7億5,600万トンになり、2019/20年度のレベルから300万トン増加した。この増加の背景には、食料消費の増加が主な要因としてあるが、小麦の飼料需要は抑制されたままであり、その産業利用は停滞する可能性がある。2020/21年度の世界のコメ利用は5億1,100万トンで、7月の予想から60万トン増加し、2019/20年度の水準を1.7%上回っている。コメの非食料利用はシーズンを通じて回復すると予想されているが、むしろ、コメの食料利用の増加予想は、人口増加による消費量の増加を上回る、大量供給と食料支援プログラムによる食料摂取の増加によって牽引されると予想されている。2020/21年の世界の穀物利用量は7月以降1,100万トン増加し、現在は2019/20年の水準と比べて6,310万トン(2.4%)増の27億4,600万トンに達している。今月の増加予測と上方修正には、7月以降、840万トン上方修正され、2019/20年を5,150万トン(3.6%)上回る粗粒穀物の総利用量の増加が概ね反映されている。飼料用の粗粒穀物、特にトウモロコシは2019/20年比で3,140万トン(3.8%)増加するとみられ、年間を通じた成長見込みを押し上げる最大の要因となっている。しかしながら、昨年低迷した工業用が、エタノール需要の持ち直しにより1,640万トン(4.2%)増加すると見込まれることも、需要拡大予測に一役買っている。2020/21年の総小麦利用量の見通しも7月以降、微増(200万トン増)ではあるが7億5,600万トンに引き上げられ、2019/20年比で300万トン増である。食料消費量の増加がこれらの需要増の主な原動力で、コムギの飼料用の需要は引き続き抑えられ、産業利用は停滞するだろう。2020/21 年の世界のコメ利用量は 5 億 1,100 万トンで、7 月の予想から 60 万トン増加し、2019/20 年の水準を 1.7%上回っている。コメの非食料利用はシーズンを通じて回復すると予想されているが、むしろ、コメの食料利用の増加予想は、人口増加による消費量の増加を上回る、大量供給と食料支援プログラムによる食料摂取の増加によって牽引されると予想されている。2021年シーズン終了時までの世界の穀物在庫の予測は、7月以降3340万トン削減され、8億9,550万トンに落ち込んでいるが、それでも期首の水準を1,460万トン(1.7%)上回り、過去最高となっている。

今月の世界穀物在庫量の下方修正および世界の穀物利用率予測の引き上げにより、2020/21年の世界の穀物在庫対利用率は31.8%に低下し、7月からわずかに減少して過去4年間で最低となったが、歴史的観点からは依然として比較的高い水準にある。世界の在庫に対する下方修正の大部分は、生産量の減少により米国のトウモロコシ在庫が2,400万トン減少すると予想されることによるものだ。このトウモロコシ在庫の減少により、世界の粗粒穀物在庫の見通しは4億3,210万トンとなり、7月から3,090万トン減少したが、当初の水準を1,080万トン(2.6%)上回っている。2021年シーズン終了時の世界のコムギ在庫量は、わずかに下方修正(160万トン)されたものの、期首より570万トン(2%)増加して2億8,220万トンに達し、過去2番目の高さになると予測される。しかし、この予想増加量のほとんどは、中国(本土)の小麦在庫が前シーズンより1,100万トン増加すると予想されることに起因している。一方、世界のコメの在庫は、7月の100万トンの下方修正の後、1億8,100万トンで1%低下したが、過去3番目に多い在庫量となった。今回の修正は、主に輸入国、特に中国(本土)の備蓄量の減少を反映したもので、中国は年間の在庫減少予測の大部分を占めると想定される。一方、主要なコメ輸出国の2020/21年の輸出量はさらに引き上げられ、7年ぶりの高水準になると予測される。

FAOの2020/21年の世界穀物貿易予測は、7月時点の予測から710万トン増の4億4,140万トンとなり、2019/20年の水準を630万トン(1.6%)上回った。2020/21年(7月/6月)の世界のコムギ貿易量の予測は、7月の予測から290万トン増の1億8,150万トンに引き上げられ、2019/20年の記録的な水準をわずかに(0.3%)上回っている。2020/21年のこれまで以上に堅調なコムギの輸入需要は、オーストラリアとロシア連邦からの出荷量増加で満たされ、EUによる輸出量の減少を相殺するとみられている。2020/21年(7月/6月)の粗粒穀物の世界貿易予測も390万トン上方修正され、2019/20年比で約400万トン(1.9%)の貿易拡大が見込まれ、過去最高を記録するとみられている。トウモロコシの世界貿易量が当初の予想を上回ったことが、今月の上方修正の要因となっている。これは、主要輸出国で大量に供給される中、特にアジアでの強い輸入需要を反映したものである。7月から40万トンの下方修正が行われたが、輸出可能な供給量が十分であること、アフリカの需要が再燃していることにより、(暦年)2021年のコメの国際貿易量は年間で6%拡大し、4,700万トンになると予想されている。

低所得・食料不足国の食料事情

アフリカとインドの生産高の大きさが低所得・食料不足国の穀物生産量を押し上げる。

低所得・食料不足国における2020年の穀物総生産量についてのF A Oの予想は、4億9,600万トンであり、前年より1,000万トン多く、5年間の平均より7%高い。これは、今年のインドと東部及び南部アフリカのいくつかの国での増加によるもので、穀物総生産量は5年連続で増加となると予想される。

南部アフリカでは、主耕作期の穀物の収穫が最近終わった。全体として良好な気象条件に支えられて、マラウイでは収穫面積及び収量が増加し、豊作となり、また、マダガスカルとモザンビークでも、概ね例年と同じではあるが、平年をやや超える穀物生産量となった。ジンバブエでは、干ばつによる減産となった2019年と比べて2020年は増産となったが、不規則な降雨と農業投入財へのアクセスを阻害する経済的な困難のために、今年の穀物生産高はいまだ平年よりかなり低いと推定される。東アフリカでは、2020年の主耕作期の穀物は収穫中か、北部や中部の一部地域ではこれから始まろうとしている。スーダン、タンザニア共和国及びケニアでは、収量の増加をもたらすと予想される豊富な降雨を反映して、平年を超える収穫が見込まれる。しかしながら、激しい雨は鉄砲水を引き起こしたり、局地的な穀物の減少の原因となったりもした。サバクトビバッタの大発生による牧草や穀物への影響は、大規模な駆除活動によって小さくなったが、この害虫の影響をもっとも受けたソマリア、ケニア、エチオピアの農村地域の生計にとってはいまだ懸念材料となっている。西アフリカでは、中部の一部地域で主耕作期の穀物の収穫が行われている。2020年の西アフリカの総生産量は、高水準だった2019年と比べると減少すると予想されるが、例年並みの作付けと高収量の見込みのため、平年以上を維持する。中部アフリカでは、主要な生産国であるカメルーンやコンゴ民主共和国を含むいくつかの国での紛争に加えてCOVID-19の封じ込め策が農業生産の成長を阻害したこともあり、生産量は例年とほぼ変わらず、平年に近いレベルになると予想される。

アジアでは、低所得・食料不足国(LIFDCs)の中で最大の穀物生産国であるインドの大規模な小麦、トウモロコシ、コメの生産と、バングラデシュでの豊作によって、穀物の総生産量は増加し、2020年は平均をはるかに上回るレベルになると予想される。これらの生産量への期待は、雨季の平均以上の降雨によって支えられている。インド、バングラデシュ、朝鮮民主主義人民共和国、ネパールの一部では洪水を引き起こし、局地的な作物の損失を引き起こしたものの、全体的に良好な収量の見通しとなった。シリア・アラブ共和国でも治安状況の改善と好天が相まって、2年連続で収量の増加となり大幅な増産が見込まれている。対照的に、穀物生産は一部のCISアジア諸国、特にウズベキスタンで減少すると予測される。ウズベキスタンでは、収穫量と作付け量が前年の豊作時のレベルと比較して減少したが、それでも平均に近いままとなった。

穀物の輸入は、全体的な生産量の増加にもかかわらず増加

2020/21市場年度のLIFDCの穀物輸入量は、年間350万トン増加し、7,320万トンと推定され、5年間の平均を約4%上回る。輸入需要の増加は、生産不足が予想される西アフリカ諸国でのより大きなニーズに起因している。南部アフリカでは輸入の顕著な増加が見込まれている。これは生産量が依然として平均を大きく下回っているジンバブエとそれよりも程度は少ないマダガスカルの大規模な輸入に起因している。2020年に予想される生産の減少を反映して、アジアのいくつかの国、特にアフガニスタン、朝鮮民主主義人民共和国、ネパールでも輸入が増加すると予測されている。

今知る世界の食料危機 No.16(2021年9月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.15(2021年7月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.14(2021年3月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.13(2020年12月号)⇨

⇦ 今知る世界の食料危機 No.11(2020年7月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.10(covid-19の影響)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.9(2020年3月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.8(2019年12月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.7(2019年9月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.6(2019年7月号)

⇦ 今知る世界の食料危機No.5(2019年3月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.4(2018年12月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.3(2018年9月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.2(2018年6月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.1(2018年3月号)


世界の食料 国別状況 あ行

ウガンダエスワティニエチオピアエリトリア

世界の食料 国別状況 か行

カーボヴェルデカメルーンギニアケニアコンゴ共和国コンゴ民主共和国)

世界の食料 国別状況 さ行

ザンビアシエラレオネジブチジンバブエスーダンセネガルソマリア)

世界の食料 国別状況 た行

タンザニアチャド中央アフリカ)

世界の食料 国別状況 な行

ナイジェリアナミビアニジェール)

世界の食料 国別状況 は行

ブルキナファソブルンジ)

世界の食料 国別状況 ま行

マダガスカルマラウイマリ南スーダンモーリタニアモザンビーク)

世界の食料 国別状況 ら行

リビアリベリアレソト)