今知る世界の食料危機 No.10(COVID-19の影響)

国連食糧農業機関(FAO)は、Novel Coronavirus (COVID-19)というページで、新型コロナウイルスに関する情報を提供しています。

そこで、2017からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、Answers to frequently asked questions(よくある質問と回答)のQ&A: COVID-19 pandemic – impact on food and agriculture(食料農業分野への影響)についてのQ9までの参考訳を作成し、紹介していくことになりました。

「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、food@ajf.gr.jpへご連絡ください。

※2020年9月26日、10月10日、11月14日、12月12日時点翻訳

Q1:COVID-19は世界の食料安全保障に悪影響を与えますか?

このパンデミックに生命と生活の両方が危険に晒されています。
パンデミックが起こっている一部の国では感染拡大が鈍化しており、症例数は減少してきましたが、他の国ではCovid−19は再発または、急速に感染が拡大し続けています。これはなおも世界的な取り組みを必要とする世界的な問題です。

私たちが直ちに行動を起こさない限り、何億人もの子供と大人に長期的な影響を及ぼす世界の食料緊急事態に陥る危険があります。

これは主として食料アクセスの欠如によるものです。所得が下がると、送金がなくなり、場合によっては食料価格が上がります。深刻な食料不安の影響を既に高いレベルで受けている国々では、それはもはや食料アクセスの問題というだけでなく、しだいに食料生産の問題となっています。

COVID-19は飢餓や栄養不足人口が増加し続けている時に襲ってきました。最新の国連の推定によれば、パンデミックによる景気後退の結果、2020年には少なくとも更に8,300万人、多ければ1億3,200万人の人々が飢餓に陥る可能性があります。

これに加えて、6億9,000万人の人々が今日、飢餓に直面しています。同時に、1億3,500万人が深刻な食料不安に苦しみ、緊急の人道支援を必要としています。

人々が飢餓や慢性的栄養不足に苦しんでいる場合、必要な食料(通常の活動的生活をするのに消費する十分なカロリー)を長期間入手不可能であることを意味します。これは人々の未来に長期的な影響を及ぼし、ゼロハンガー達成に向けた世界的な取組に対して障害が存在し続けます。人々が危機的レベルの深刻な食料不安を経験する場合、それは生命と生活を危険に晒す可能性のある散発的で突発的な危機を原因として、短期的に食料アクセスが制限されることを意味します。しかし、もし深刻な食料不安に直面している人々が必要な支援を得られたら、飢えることもなく、慢性的な飢餓になることもありません。

これだけは明確です。世界にはすべての人のために十分な食料がありますが多くの人々が未だ飢餓に苦しんでいます。私たちの食料システムはうまく機能しておらず、パンデミックは事態を更に悪化させています。世界銀行によれば、パンデミックによる経済への影響は1億人の人々を極度の貧困に陥らせる可能性があります。

失業率の急増、所得の損失と食料価格の上昇は、先進国と途上国双方の食料アクセスが危うくしており、食料安全保障に長期的影響を及ぼすでしょう。

更に、パンデミックは国の景気を後退させる可能性があり、各国は食料システムと食料安全保障へのより長期的な影響を和らげる緊急対策を講じる必要があります。

今年は通常と違い、生産者が作付けできないもしくは、十分に作付けできない可能性があると言う深刻な懸念があります。もし、今年の生産者の作付けを支援しなければ、今年後半と2021年の食料不足に繋がるでしょう。

同様に緊急な問題は、すでに私たちの食料システムに負荷を与え、世界中の食料不安を引き起こしている、紛争、自然災害、気候変動、害虫、動物の病気などの既存の危機に対するパンデミックの複合的な脅威です。

最新のIPC分析は、既に他の危機で苦しんでいる国々の深刻な食料不安の悪化を懸念しています。

食料の緊急事態を回避するために緊急ですべきことは:最も脆弱な人々を守り、国際的な食料サ プライチェーンを存続させ、食料システム全体におけるパンデミックの影響を緩和し、可能な限り食料生産を守り強化し、パンデミックのそのさきを見据え、創造的復興及び食料の回復性を高めることです。FAOは、せと際にいる人々を引き戻すために多くのことができると信じています。

Q2: 現在のパンデミックによって、どういった人々の食料安全保障と生活が脅かされていますか?

最新の国連の予測 (SOFI 2020) によると、2019年には6億9,000万人の人々が飢餓状態となり、2018年から1,000万人増加、5年間では6,000万人の増加となりました。価格の上昇と手ごろな価格での入手が困難になることも、数十億人の人々が健康的もしくは栄養のある食事ができなくなることを意味します。

地球全体で、報告書が予測しているように、COVID-19パンデミックは、2020年末までに1億3,200万人もの人々を慢性的な飢餓に陥らせる可能性があります。

更に、2019年には、7,500万人の子どもが慢性的な栄養不足のために※発育阻害に陥っており、1,700万人が急性栄養不足による※消耗症を患っていました。これは、逼迫および危機的な栄養不良が、2017年にグローバル報告書が創刊されて以降最悪の水準だということです。また一方では、4月に公開された「食料危機に関するグローバル報告書」 によれば、2019年末時点で、55の国と地域の1億3,500万人の人々が急性の食料不安を経験したことがあると推定されました。

※訳者注

ユニセフ:https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_act01_02.html

コトバンク発育阻害:https://kotobank.jp/word/発育阻害%28スタンティング%29-1733644

コトバンク消耗症:https://kotobank.jp/word/消耗症-767355

最近では、 FAOとWFPによる2020年7月の分析では、パンデミックのドミノ効果が既存の飢餓人口を増加させるため、COVID-19による食料危機の最前線にある27か国ー免疫のある地域はないーを特定しました。

この分析は、これらの「ホットスポット国」が、今後数ヶ月で深刻な食料不安に陥る人々の増加を含め、大幅な食料安全保障悪化リスクが高いーいくつかのケースでは既に悪化しているーことを警告しています。

こうした理由から、FAO特にたとえばアフリカの角地帯での サバクトビバッタ の大発生 、 イエメン サヘル地域を含め飢餓やその他の危機にある脆弱なコミュニティへのパンデミックの影響を懸念しており、また、小島嶼発展途上国のような食料輸入に依存している国々や石油など一次産品の輸出に依存している国々への影響をも憂慮しています

例えばスーダンでは2020年7月から9月において、危機や更に深刻な食料不安を経験している人々の数は史上最高の960万人を 記録しています。(IPC予想– 2020年6月−12月)

ソマリアでは、危機またはそれ以上の経験をした 人々の数はCOVID-19以前の推定値と比べてほぼ3倍 になると予想されます。(FSNAU 2020年5月)

アフガニスタンでは、 1,320万人が深刻な食料不安 に直面しており(IPC3−4)COVID-19の関連の対策実施以降、約100万人増加しています。(IPC予想 2020年5月−11月)

一次産品(食料、原材料、燃料)の輸出に大きく依存している国もまた、現時点でそしてこの先も先進国での大きな需要減退の影響を受けることになります。アフリカの国々が生産物(石油、綿花など)を輸出できなくなると国家収入は減少していきます。また、観光業を主要な収入減としている小島嶼や地域にとって、観光業が休業状態になりしかもワクチンもしくは治療が実用化されるまでその状態が続くもしくは回復が遅々として進まないことは、さらに厳しいことです。小島嶼や地域の多くは石油にも依存しています。そうした国々・地域はすでに20%減少した海外送金にも依存しており、気候危機での影響を受けやすく、また食料も輸入に頼っています。

食料危機に直面することの多いグループには、 小規模農民、 移民インフォーマルセクターで働く人々遊牧民、そして漁民が含まれ、これらの人々は土地を利用すること、家畜の世話をすること、漁をすることを妨げられることがあります。また、これらの人々は、生産物を販売したり必要な投入財を購入したりするために市場へアクセスすること、食料価格の上昇と限られた購買力という条件の下で争うことが困難になります。インフォーマルセクターで働く人々は収穫や加工の場で仕事を失ったり収入が低下したりして大きな打撃を受けています。

数百万の子ども達もまた、これまで学校で得ていた給食を食べることができなくなっており、しかもこの子ども達の多くは健康保険など公的な社会的保護につながっていません。

農業だけでなく、他のセクターが及ぼす特別な影響も予想されます。漁業は、3億の人々の1人当たり平均動物性たんぱく摂取の20%以上、発展途上国の一部では50%以上を供給しており、また水産物は最も国際的に流通している食料品の一つなのです。ですので、漁業民コミュニティの生計、食料保障、栄養そして交易へのインパクト、特に漁業セクターに大きく依存している国々の漁業民コミュニティへのインパクトはきわめて大きいと想定されます。

COVID-19は労働力を削減させ、所得と生計および労働集約型の生産(農業、漁獲/養殖)に影響を与える可能性があるため、開発途上国は特にリスクにさらされています。特に懸念される地域はサブサハラアフリカで、そのほとんどの国が食料危機を経験しており、農家と牧畜民の両方にとって重要な時期ー種子やその他の投入財を入手したり農場へ作付けにいく必要があるときーにパンデミックが広がっているためです。

Q3: COVID-19の状況が、今、そして将来の、食料生産、農業と漁獲/養殖のサプライチェーン、市場にとって指し示すものは何でしょうか?

サプライチェーンは生産者、消費者、農業と漁業の投入財、加工と貯蔵、輸送と取引等を含み、網の目のように複雑です。
危機の始まりにおいて、多くの国々が物資や人々の国内外の移動を制限したため、食料供給網は引き締められました。結果として、課題は食料がないことでなく、容易にアクセスできないことでした。次に、食料供給に関連した全ての不透明性を心配して、いくつかの国々は、食料の輸出を制限し、この状況をより困難にしました。
これらの保護主義的な手段は、国内通貨安で食料生産者にとって輸出するほうがより有利になり、国内の食料価格が上がることを避けるために一部で導入されました。その結果として食料価格が高騰すれば、貧困を悪化させ、社会や政治的不安定性を招く重大な影響をもたらした可能性があります。
幸いなことに、過度な保護主義は避けられ、当初課された制限の多くが取り除かれ、国々は全体として抑制された合理的なアプローチを採用しました。
世界的に、食料供給は適切で、市場はこれまで安定的でした。例えば、世界の穀物貯蓄は十分にあるレベルで、小麦やその他の2020年の主要な主食穀物の予想は楽観的です。しかし、食料供給網の混乱は続き、状況は様々で、まだ多くの知られていないことがあります。

食料生産
高価値の商品(すなわち果物や野菜)の生産の減少は既に起きているようですが、それらはロックダウンやヴァリューチェーンの混乱のため、まだ目立っていません。他の危機により既に影響を受けている国で、FAOが現在行っている現地調査は、小規模生産者は投入財ー種子や肥料などーへのアクセスに関して多くの課題―投入財の価格上昇、深刻に減少している世帯収入、また/もしくは市場でそれらの投入財が不足していることーに直面していることを示しています。
アフガニスタンのようないくつかの国々において、これらが国の生産にどの程度影響するかはまだ分かりませんが、アフガニスタン政府とFAOの調査では今年、穀物、果物、野菜、乳製品のような食料の50%以上が減少することを予想しています。農民、商人、加工・製粉機所有者、農業スタッフを含むアフガニスタンの18州の1,300人以上が調査に参加しました。
減少した食料生産は食料の入手可能性に深刻な影響を及ぼします。作付けが減少すると、収穫も減少し、これは多くの場合最も深刻な食料不安に直面しており、サプライチェーンの末端にいる農家自身とそのコミュニティーが十分に栄養のある食料にアクセスできないことを意味します。
漁業(養殖も含む)及び養殖セクターでは、想定される影響は様々で大変複雑になる可能性があります。天然漁業にとって、漁船が動かせなくなることは(市場の制限や崩壊、また船上では守ることが難しい衛生的手段のため)漁獲物の供給一般、もしくは特有の種類の魚の入手可能性の観点から、ヴァリューチェーン全体を通したドミノ効果を生じさせます。さらに、天然漁業と養殖にとって、輸送制限や国境封鎖に伴う物流の問題やレストランやホテルの需要低下は、かなりの市場変化を起こし、価格に影響します。

畜産
パンデミックは、中国で起こったのと同じように、動物の飼料へのアクセスの減少や屠場の(ロジスティックスの制限や労働の減少により)減少した能力のため、畜産セクターにインパクトを与えています。FAOの調査から、既に他の危機によって影響を受けている国々では、畜産セクターがパンデミックの影響を特に受けやすいことは明らかです。例えば、ジンバブエでは、動物の飼料の供給は、Covid-19対策としての移動制限等と、飼料業者が原料やスタッフへアクセスできないことにより混乱しています。アフガニスタンでは、遊牧民クチが牧草へのアクセスの制限と、適切な飼料の不足と価格の上昇、確かな獣医サービスへのアクセスの減少によりひどくインパクトを受けています。3分の1近くが季節移動を阻害もしくは制限され、地域的な緊張が生じています。

輸送
輸送ルートの封鎖は特に、新鮮な食料供給網を妨げ、※食料ロス・廃棄のレベルの増加を招きました。とても傷みやすく、そのため比較的限定された時間に売られ、加工され、貯蔵されなければならない新鮮な魚と養魚製品は特に危機にあります。輸送制限や検疫は農家や漁師の市場へのアクセスを阻みがちであり、彼らの生産能力を制限し、その商品を売ることを妨げます。
労働不足は生産や特に労働集約的産業(例 高価格作物、肉、魚)の食料加工を混乱させます。

※訳者注

FAO食料ロス・廃棄:http://www.fao.org/japan/news/detail/jp/c/1240898/

フードロスチャレンジプロジェクト:http://foodlosschallenge.com/foodloss.htm

市場
レストランや屋台の閉鎖によって、多くの生産者や加工業者の主要な市場が失われ、それは一時の過剰供給を生み出し、魚や肉セクターで見られる上流に向けた生産の停止を引き起こします。途上国では、新鮮な食品に対する都市の需要と供給は、移動制限や、商社や消費者による回避行動により、どちらも減少しています。

Q4: パンデミックは、世界の食料(特に主要食料品に関して)の生産と需要にどのような影響を与えるでしょうか?

COVID-19の発生当初から、食料需要は大幅に増加してきました。

生産量および需要量は主要食料品の種類によって異なります。例えば、パンデミックによって不確実な要素があるにも関わらず、FAOの2020/2021年の最初の予測では、穀物需給の状況は良好となっています。

一方、世界の総食肉生産量は、動物の病気、COVID-19に関連する市場の混乱、長引く干ばつの影響などにより2020年は1.7%下落すると予想されています。

また、魚介類にも引き続き大きな影響を与えると見られており、特に今年は生鮮品や外食産業で人気のある種類に影響があるでしょう。供給側については、漁船団が出港を見合わせているほか、養殖業者も養殖魚等を大幅に減らしています。

このパンデミックは、特に世界のエビ・サケ生産にも深刻な打撃となるでしょう。例えばインドでは、養殖エビの生産量が30~40%落ち込むと見られています。

また、冷蔵および冷凍エビの世界的需要はどちらも相当減少しており、2020年のサケの需要は最低でも15%落ち込むと見られています。小売りの売り上げ、特に生のサケやマスは大きく落ち込んでおり、しばらく回復の見込みはありません。

全体を通して、食料市場は今後数か月かそれ以上、COVID-19によって先行きの見通せない状態が続くでしょう。しかし、農業・食料セクターは他のセクターに比べればパンデミックによる危機への対応・回復力の強さを示すのではないでしょうか。

世界の主要貿易食料品の2020-2021年生産・市場動向に関する最新の予測はこちらから

OECD-FAO 農業概況2020-2029(2020年7月)によると、長期的にはパンデミックによって今後数年間は需要が抑制され、食料安全保障を蝕んでいくことになると見られています。

Q5: パンデミックは食料価格にどのような影響を与えているでしょうか?

食料の国際価格は、植物油と乳製品がけん引して、2か月続けて7月も上がり続けました(最新の分析)。しかし、肉とコメの価格は下がりました。

取引されている主な食料の国際価格は、こちらを参照

国レベルの市場、特に飢えやその他の危機にさらされている国々では、国内の物流や輸入の問題で、価格が上昇している食料があります。

例えば、アフガニスタンでは、食料価格が20%上昇しました(6月の推定)。イエメンでは、いくつかの地域で4月以降、食料価格の35%上昇が記録されています。シェラレオネでは、主要な 食料農産物の価格は、すでに長期的な平均値を優に上回っています。シリアでは著しい価格の上昇(主要食料で40から50%に達する上昇)が見られ、3月中旬以降、基本的な物資の不足が報告されています。

FAOはパンデミックの中長期的な影響を懸念しています。失業率がすでに上昇し、COVID-19の経済への影響がさらに拡大することが予想されているように、世界中の経済、特に最も脆弱な国の経済が大幅に停滞し、食料を輸入に頼る国では食料を購入するための資金調達に苦労することになるでしょう。

Q6: このパンデミックが世界経済に与える影響は何でしょうか。

世界経済に影響するいくつかの要因があります。
まず初めに、市場は世界総生産の16%を占める中国経済に密接に連結しています。したがって、今、中国に対する打撃が、世界経済に対しても大きな影響を及ぼします。

2番目に、患者と死亡者が出たことによる供給への打撃があり、移動の制限といった封じ込めの政策や、供給網の制限により経済活動するための費用が増加していること、貸付の締め付けもまた経済に影響し、経済成長の縮小や景気後退を招くでしょう。6月、OECDは2020年の世界経済成長予想をマイナス6%に引き下げ、失業率は2019年の5.4%から9.2%に上昇すると見込んでいます。OECDはまた、経済生産高は7.6%下落し、2021年は2.8%下落する双発シナリオを予想しています。世界銀行は、2020年に8,900万から1億1,700万人が極端な貧困に追いやられ、世界GDP成長率をマイナス5.2%と予想しています。IMFは6月の更新で世界GDP成長率をマイナス4.9%と示しており、これは計12兆4,000億ドルの生産損失を意味します。
3番目に、高まる不透明感、警戒的な振る舞いの広がり、封じ込め政策、また消費能力を落ち込ませる金融コストの上昇のため、需要もまた落ち込むでしょう。
最後に、米ドルに対する交換レートの大幅な引き下げがあり、これはまた輸入に依存する国々に影響するでしょう。
国際食料市場は、これらの事態の変化と関係ないわけではありません。しかし、観光や製造、エネルギー市場のような、物流崩壊と需要の落ち込みによりさらされる他のセクターよりも影響は少ないようです(出典;Market Monitor, AMIS, March 2020)。しかし、フードバリューチェーンは複雑で、貿易と輸送の重要性を考えるとこれらは大きな弱点となりえます。
COVID-19は、FAOの食料価格指数が最初に示したように、国際経済のデフレ的なショックを明らかにしましたが、短期では腐敗しやすい商品の費用が上がることにより健康的な食事の実質的な費用が上昇するかもしれず、低所得家庭には特に不利な影響があり、SDGsの達成に向けた代償を大きくさせます。

Q7: 食料安全保障と栄養に関するパンデミックのリスクを軽減するためのFAOの推奨事項は何ですか?

世界の食料システムを変革し、より回復性、持続可能、公平なものにしながら、食料安全保障と栄養へのCOVID-19の悪影響を最小限にするために、FAO は7つの主要な優先分野での迅速な行動を求めています。

・COVID-19の世界的な人道的対応計画を強化する

・意思決定のためのデータの改善する

・貧困削減のための経済的包摂と社会的保護の確保する

・貿易と食品安全基準を向上する

・小規模農家の回復を後押しする

・※ワンヘルスアプローチの強化により、次の人獣共通感染症拡大を予防する

・食品システムの変革を引き起こす

※訳者注

one health approach:ヒトの健康を守るため動物や環境にも目を配って取り組もうという考え方

Q8:  農業者や農業者組織を保護し、食料危機になる健康危機を防ぐために、私たちは今後数カ月の間に彼らをどのように支援すべきでしょうか。

今後数カ月の間に農業者や彼らの組織を支援するには、国内及び国境を超えた季節労働者や輸送業者の移動を認めることが重要です。他の良い取組みとしては、例えば、農家が市場に行くことなく彼らの農産物を納品できる倉庫での受取システムをもつプラットフォームのような保管施設を作り出すなど、生産者に近い収集センターを割り出すことでしょう。もし可能であれば、市場の内外で厳格に物理的な距離を取る措置を実施しながら、地元の市場を開放させておくのを認めることです。また可能であれば、品質と食料の安全性を維持するための適切なインフラを確保すると同時に、市場をより広い敷地に移転することです。

このパンデミックに関する更なる情報や政策戦略はこちらから確認できます。

http://www.fao.org/documents/card/en/c/ca8466en

Q9 : FAOはCovid-19の拡大にどのように対応してきましたか。

パンデミックの始まりの時に、FAOは各国に以下のことを提唱しました。国際貿易は開放したままにすること、地域内の貿易を増やすこと、社会保護の事業規模を拡大すること、農産物のサプライチェーンを活発なままに保つこと、農業活動を維持すること。そうすることで、国々は2007–2008年の金融及び食料危機の過ちを回避することできるということ。国々が全体的に慎重で合理的なアプローチを取る中で、これは、過度な保護主義を回避し、当初課されていた制限の多くを取り除くという重要な役割を果たしました。国々が情報に基づいた決定を行い、Covid-19の影響を抑えられるように、FAOはフードバリューチェーン、市場、食料価格に関する情報を提供し、分析と解決策を提案してきました。

私たちは、また、すでに食料や他の危機に見舞われていて、Covid-19の影響が壊滅的となる可能性のある国々での取組みも強化しています。これには次のものが含まれます。現金及びバウチャー事業の拡大、組織がより効果的に対応できるよう飢餓に関するデータ収集と分析の改善、農業者が来たる作付け時期の機会を生かせるよう事業規模を拡大することを含めた食料生産の維持、収穫、保管、小規模な食品加工や保存など生産後の作業に対する支援の強化、フードサプライチェーンが機能し続けるよう生産者を市場に結びつけること、そしてフードサプライチェーンの維持に関わる人々がCovid-19の感染リスクに晒されないよう意識啓発することです。

この取組みを実施するために、FAOは、移動制限に対応し、ウイルスの感染拡大防止の努力に資するよう、脆弱な農村コミュニティに対して携帯電話を通じた現金支援を提供するなど、革新的な介入の規模を拡大しています。

Q10: FAOはスタッフを守り、飢餓と闘うという使命を果たし続けるために、どのような措置を講じていますか。

パンデミックの影響への対処には、現場の状況が急速に変化する可能性があることから、慎重なオペレーション計画が求められます。FAOの関心は、主に、農業や漁業中心の生活が影響を受けている脆弱な農村部や海岸部の人々や、すでに高いレベルの飢餓が起きている場所の人々の食料安全保障を強化することに焦点を当てることになります。

FAOは、様々な事業継続のシナリオを考慮し、スタッフと受益者の安全と健康を確保する必要があります。これを確実にするために、事業危機対応の策定が国レベルで現在進行中です。FAOの活動は、国レベルでWHOや公衆衛生当局と共に計画されているため、調和が図られており、パンデミックの封じ込めの取組を支援しつつ、スタッフと受益者の安全と健康を守ります。

国々やコミュニティが飢餓に打ち勝つのを支援する私たちの取組は終わっていません。ウイルスにより、職場に行くことを阻止された者もいましたが、私たちの仕事が止められたわけではありません(詳細はこちら)。FAO – News Article: FAO prioritizes staff wellbeing in the fight to contain COVID-19

Q11: 食料システムを再構築するために、COVID-19後にはどんな機会がありますか。また、パンデミックから学んだ教訓はなんですか。

今回の危機は、食料システムの中で不均衡なところとビジネスがこれまで通り継続することができないということを浮き彫りにしました。世界食料安全保障委員会は、現在、食料システムをよりレジリエントで持続可能なものに再構築し、変えていくため、栄養のための食料システムの任意のガイドライン作成に取り組んでいます。また、同委員会は、省察を加えた、食料システムと栄養へのCOVID-19の影響に関する中間報告を出版しました。FAOはまた、COVID-19のようなパンデミックに対処できるようになるだけでなく、SDG2と1の進捗を加速させると同時に、自然とのあらゆるトレードオフを最小限にしつつ、どのように食料システムを変えていくべきかについて積極的に取り組んでいます。

Q12: 主要な国際的食品会社は、低ー中所得国における差し迫った食料へのアクセスの欠如に対処するのにどのような役割を果たしているでしょうか?

FAOは、各国がCOVID-19拡大の食料供給に対するインパクトに対処する危機委員会を、農業省、畜産、及び食料供給、交通、経済、貿易などの省庁を巻き込んで立ち上げることを提言しました。戦略が市場運営者によって適切にかつ十分に実施されることを確かにするために、この危機委員会は、食料供給網の全ての当事者の代表を含む、より広い範囲の関係者諮問委員会を通じて、民間セクターを巻き込むことが肝要です。より詳しくは、FAOのブリーフ(http://www.fao.org/3/ca8466en/CA8466EN.pdf)を参照ください。

Q13: 各国は、今後起きうる危機への対応力を高めるため1つの方法として、輸入への依存度を下げる政策に向かうでしょうか?

野菜については、地元のものが多くなるかもしれませんが、主食(コメ、メイズ)、果物、肉などはすでに多くが世界規模で輸送されているため、その流れが変化することはあまりないでしょう。今後は、食料供給チェーンの短い域内貿易の改善を期待しています。農業者にとっては市場が増え、投入財(タネ、肥料)や生産物(食料品)のどちらにもアクセスがよくなることでしょう

今知る世界の食料危機 No.16(2021年9月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.15(2021年7月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.14(2021年3月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.13(2020年12月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.12(2020年9月号)⇨

今知る世界の食料危機 No.11(2020年7月号)⇨

⇦ 今知る世界の食料危機 No.9(2020年3月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.8(2019年12月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.7(2019年9月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.6(2019年7月号)

⇦ 今知る世界の食料危機No.5(2019年3月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.4(2018年12月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.3(2018年9月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.2(2018年6月号)

⇦ 今知る世界の食料危機 No.1(2018年3月号)


世界の食料 国別状況 あ行

ウガンダエスワティニエチオピアエリトリア

世界の食料 国別状況 か行

カーボヴェルデカメルーンギニアケニアコンゴ共和国コンゴ民主共和国)

世界の食料 国別状況 さ行

ザンビアシエラレオネジブチジンバブエスーダンセネガルソマリア)

世界の食料 国別状況 た行

タンザニアチャド中央アフリカ)

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ナイジェリアナミビアニジェール)

世界の食料 国別状況 は行

ブルキナファソブルンジ)

世界の食料 国別状況 ま行

マダガスカルマラウイマリ南スーダンモーリタニアモザンビーク)

世界の食料 国別状況 ら行

リビアリベリアレソト)