国連食糧農業機関(FAO)は、Global Information and Early Warning System(GIEWS)というページで、世界の食料危機に関する情報を提供しています。
2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。
2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。
そこで、数年前からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。
「今知る世界の食料危機 No.8」では、2019年12月に公開された”Crop and Prospects #4 Dec 2019”の該当ページを紹介します。
「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、food@ajf.gr.jpへ連絡ください。
外部からの支援を必要としている国
アフリカ (32カ国)
食料生産・供給総量の異常な不足
中央アフリカ共和国-紛争、避難、食料供給の制約
・2018年9月以来、深刻な食料不安に直面する人々は減少し続けている。最新のIPC評価によると、推定160万人がフェーズ3:「危機」もしくはそれ以上であった。2019年9月にはこのうち約37万5,000人がIPC評価フェーズ4:「緊急事態」と推定され、主に国内避難民が密集する地域にいる。
ケニア共和国-連続した雨季の降雨不足
・2018年10月から12月にあたる小雨季の降雨不足と2019年3月から5月にあたる大雨季の厳しい乾燥気候により、主として北部、東部地域で約310万人が厳しい食料不安に直面している。
・10月の激しい降雨により11月初旬に約14万4,000人が洪水の被害を受けた。
ソマリア連邦共和国-紛争、社会不安、連続する雨季の天候不順
・2018年10月から12月の「Deyr」の季節の降雨不足と2019年4月から6月の「Gu」の季節の大半の極端な乾燥の影響により、主に農牧民と牧畜民コミュニティの約210万人が緊急支援を必要としていると推定される。
・10月の激しい雨により、11月中旬に洪水があり、約54万人に影響をあたえ、その内37万人は移動を強いられた。
ジンバブエ共和国-穀物生産の減少と食料価格の高騰
・2019/20年度、食料不安に直面する人々は著しく増加している。その数は、2020年1月から3月期の終わりには、前年比でほぼ倍の550万人にのぼる見込みである。
・2019年の穀物生産が急激に減少したため、食料不安は悪化し、主要食料価格の著しい上昇と経済の低迷により収入の減少が引き起こされている。天候不順の為、2020年の生産見通しも良くなく、2期連続の穀物生産減少の可能性が高い。
広範囲な食料アクセスの欠如
ブルンジ共和国-社会不安、経済の悪化、一部地域での作物生産不足
・市場、農作業、暮らしの混乱が、限られた人道支援や食料輸入能力の低下と相まって、引き続き食料保障に悪影響を与えている。2018年後期では約172万人が厳しい食料不足に直面したと推定された。(最新の入手可能な情報)
チャド共和国-社会不安
・「Cadre Harmonisé」によれば、約59万4,000人が2019年10月から12月期に食料不安に直面すると予想された。
・約43万8,000人の難民に加え、北東部での軍事衝突により17万280人近くが国内避難民となっている。
コンゴ民主共和国-紛争、東部および南部地域での避難民受け入れによるコミュニティの負担
・7月にイトゥリ州で起こった暴動の拡大により、約30万人がイトゥリ州および北キブ州に避難していた。結果として150万人の国内避難民が2019年10月時点で北キブ州におり、受け入れコミュニティのすでに限られていた資源にとって負担となっている。
・エボラウイルス病(EVD)は拡大し続け、深刻な問題となっている。WHOは11月時点で3、291人が感染し、そのうち2,193人近くが死亡したと報告した。
ジブチ共和国-連続する雨季の降雨不足による牧畜民の暮らしへの影響
・降雨不足の雨季が続いた影響で、2018年(最新の入手可能な情報)、農村部では約15万人が厳しい食料不安に直面したと推定された。
エリトリア-経済的制約による食料不安人口の増加
エチオピア連邦民主共和国-干ばつが地域の生計システムへ及ぼす影響
・2019年年初から年半ばにかけてのKaran/Belg/Gu/Gennaの雨季の降雨不足により、主に東部の農業地域と北部、南東部の農牧畜地域で、2019年はじめに670万人が厳しい食料不安に直面していたと推定された。
・10月の激しい降雨により洪水が起こり、11月中旬時点で南部および東部の約20万5,000人が避難している。
ニジェール共和国-社会不安
・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、2019年10月から12月期の終わりには約140万人が緊急支援を必要とすると推定される。
・近隣諸国の紛争により、21万8,261人の難民を受け入れ、その内16万1,359人はナイジェリアから、5万6,000人はマリからの難民である。一方18万7,359人が国内避難民となっていると推定される。
ナイジェリア連邦共和国-北部での終わらない紛争
・「Cadre Harmonisé」の分析によれば2019年10月から12月期に約400万人が食料支援を必要とすると推定された。
・持続する社会不安により230万人あまりが国内避難民となっている。人道支援にアクセスできない地域は,食料危機がさらに悪化している。
南スーダン共和国-紛争、内戦、深刻な経済低迷
・継続的な人道支援にも関わらず、不十分な食料供給、経済の低迷、貿易の不振、食料価格の高止まりにより、人口の大半がまだ食料危機の影響を受けている。
・厳しい食料危機に直面する人々の数は、2019年9月から12月の間に635万人から454万人に減少したとみられている。しかしながら、9月と10月の豪雨による洪水で90万人が影響を受け、そのうち42万人が避難を余儀なくされ、作物と家畜に被害があったため、食料不足人口は引き続き高止まりするとみられている。
・2019年10月の国内避難民は147万人と推定された。
厳しい局地的食料不安
ブルキナファソ–北部での社会不安
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、主に北部での社会不安のため、2019年10月から12月期に食料支援を必要とする人々の数は120万人と予想された。
・2万6,000人の難民、多くはマリからの難民が国内に暮らすと推定される。一方で48万6,000人の国内避難民がいる。
カーボヴェルデ共和国-2019年農牧収穫期の不作
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2019年10月から12月期にかけて約1万人(全人口の約2%)がフェーズ3「危機」もしくはそれ以上の厳しい状況にあると推定された。
カメルーン共和国-国内闘争と難民の流入による受入れコミュ二ティへの負担
・極北州では国内避難民の数が2018年11月の24万6,000人から2019年10月には27万1,000人に増えた。
・北西州と南西州では、2019年10月時点で約54万2,000人が国内避難民となった。
・そのほかに、国内にはナイジェリアから10万9,000人、中央アフリカ共和国から29万3,000人の難民を抱えている。
コンゴ共和国-難民の流入による受入れコミュニティの限られた資源の更なる圧迫
・コンゴ民主共和国からの2万人と中央アフリカ共和国からの2万2,000人の難民がいると推定される。
・主に北部州および東部州の受入れコミュニティは食料不足と限られた生活手段にさらされ、難民の食料は基本的に人道支援に頼っている。
エスワティニ王国-局地的な生産不足
・2019年10月から2020年3月の間に約23万2,400人への人道支援が必要になると予想され、2018年・2019年の同時期の予想16万6,000人から増加している。
・悪天候による穀物収穫量の減少が食料保障の悪化の主な理由となっている。
ギニア共和国-局地的な生産不足
・2019年10月から12月に、約7万2,000人が食料支援を必要としたと推定されている。
レソト王国-穀物生産の減少
・2019年10月から2020年3月に、43万3,410人(農村人口の約30%)が食料不足人口と予想され、前年より増加している。
・気候条件による穀物生産の減少が食料保障の悪化の主な原因となっている。
リベリア共和国-高い食料価格
・「CadreHarmonisé」分析によれば、約4万1,000人が2019年6月から8月期にかけてフェーズ3「危機」以上にあると推定されている。 約8,700人の難民を受け入れている。
リビア-社会不安
・人道支援を必要としている人々の数は、82万人(人口の11%)と推定され、そのうち30万人が食料援助を必要としている。 難民、難民申請者、国内避難民は、食料危機に最もさらされやすい人々である。
マダガスカル共和国-食料へのアクセスの減少
・100万人近くの人々が食料へのアクセスが不安定であると評価されており、そのほとんどが降雨不足に悩まされやすい南部地域にいる。ただし、この数は前年の推定値を下回っており、2019年の穀物の収穫量が増えたことにより、食料へのアクセスがしやすくなったことを反映している。
マラウイ共和国-地域的な生産不足
・農業生産が好調のため、暮らしや食料アクセスが改善し、2019/20年の食料不安に直面していると見込まれる数は減少した。
・しかし、地域的な生産不足にある南部のいくつかの州を中心に、約110万の人々が、2019年10月から2020年3月の間支援を必要としている。
マリ共和国-中央および北部での絶え間なく続く危機
・この国は約2万7,000人の難民、約19万9,000人の国内避難民、約7万4,000人の帰還民がおり、人道支援に依存している。
・最新の「CadreHarmonisé」分析によれば、国内紛争が続いているため、2019年10月から12月期までの間に約64万8,000人が食料援助を必要としていると推定された。
モーリタニア・イスラム共和国-牧草の減少
・最新の「CadreHarmonisé」分析によれば、2019年10月から12月期までに、約29万9 ,000人が食料支援を必要としていると推定された。主にマリからの難民、約5万8,000人が、国内に居住している。
モザンビーク共和国-サイクロンによる被害と生産不足
・2つの大きなサイクロンのインパクトと深刻な降雨不足により、中央および南部のいくつかの州で食料不安が増加している。合計で、推定190万人が食料不安であると推定されている。
セネガル共和国-局所的な降雨不足
・最新の「CadreHarmonisé」分析によれば、2019年10月から12月期までに約35万9,000人が支援を必要としていると推定されている。
・主に、モーリタニアからの難民、1万4,500人が、国内に居住している。
シエラレオネ共和国―食料価格の高騰と低い購買力
・2019年10月から12月に、約25万4,000人が深刻な食料不安に陥っていると推定されている。
スーダン共和国-紛争、社会不安と高騰する食料価格
・2019年6月から8月までに、深刻な食料不安にさらされている、主に国内避難民と紛争影響地域にある共同体で暮らす人の数は、580万人と推定される。高騰する食料価格に余裕を失った家計もまた懸念の対象である。
・9月初旬現在、約42万6,000人が洪水の影響を受けている。
ウガンダ共和国-局地的な生産不足及び難民の流入
・2019年初頭、テソ地域東部とカラモジャ地域北東部で、約50万人が厳しい食料不足に陥るとみられている(最新の情報による)。
・南スーダンからの難民約85万5,000人と、コンゴ民主共和国からの難民約39万人が複数の難民キャンプに収容されており、人道支援に頼っている。
ザンビア共和国−農業生産不作と食料価格上昇
・主として2019年の穀物生産不作と食料価格上昇の結果として、230万人が食料不足に陥り支援を必要としていると推定される。
・地域ごとに見ると、長引く乾燥気候のために収穫が減少した南部と西部が最も広範な食料危機に見舞われている。
アジア(8ケ国)
食料生産・供給総量の異常な不足
シリア・アラブ共和国-紛争
・約650万人が食料危機に直面しており、食料および生計への支援を必要としていると推定される。さらに250万人が食料危機に直面しており、危機を乗り切るために生計への支援を必要としている。
・国際的食料支援が実施されているものの、シリアからの難民が近隣諸国の受け入れコミュニティの生活資源をも脅かしている。
広範囲な食料アクセスの欠如
朝鮮民主主義人民共和国-2019年主耕作期の生産不足と経済不振
・年初の降雨不足、潅漑用水不足、その後の一部地域での洪水により生育中の作物に損害が出て、2019年の主耕作期の作物生産は5年平均を下回ったと推定される。
・4月10日に行われた、FAO/WFP緊急食料安全保障評価ミッションによれば、1,010万人(人口の4割)が緊急の食料支援を必要と推定されている。
イエメン共和国-紛争、貧困および食料価格・燃料価格の高止まり
・2019年4月に最も困難に陥っている45地域のうち29地域で実施されたIPC緊急対応地域分析によると、同地域で2018年12月に報告された155万人という推定値から減少があって、125万人が極度の食料不安に直面していた(IPC評価のフェーズ3:「危機」およびフェーズ4:「緊急事態」が組み合わさった状態)。継続的な食料支援がなければ、約2,000万人が食料不安に直面すると見られる。
厳しい局地的食料不安
アフガニスタン・イスラム共和国-紛争と避難民
・2019年8月から10月までに1,023万人(全人口の三分の一)が厳しい食料不安に直面し、そのうち780万人はIPC評価のフェーズ3「危機」に、240万人はフェーズ4「緊急事態」にあった。紛争と自然災害が続き、限定的な経済活動が、最も貧しい家庭の危機対応能力を弱めている。
バングラデシュ人民共和国-多数の難民流入が受け入れコミュニティに負担をかけている
・UNHCR(2019年9月)によれば、ミャンマーからの約91万5,000人のロヒンギャ難民がバングラデシュ内の主にコックスバザール県で暮らしている。多くの難民は2017年8月後半のミャンマー・ラカイン州での暴力再発を受けてバングラデシュに逃げた。難民が多数であることは、地域の社会資源への大きな圧力ともなっており、その結果、人道支援を受け入れた共同体の必要にも応じることが求められている。約33万6,000人のバングラデシュ人が支援を必要としていると推定される。
イラク共和国-紛争
・180万人と推定される人々が国内避難民となっている。
・おおよそ177万人、多くは国内避難民と帰還民が食料支援および生計支援を必要としている。
ミャンマー-カチン州、シャン州、ラカイン州の一部の地域での紛争
・ラカイン州、チン州、カチン州およびシャン州北部で今なお紛争が続いているため、特に2017年以降、国内避難民が大量に発生した。紛争により、自由な移動が阻まれ生計活動に従事することもままならないため、国内避難民の多くは厳しい食料不足の影響をうけている。
パキスタン・イスラム共和国-避難民
・この国には未登録も併せて140万人に近いアフガニスタンの難民がいる。これらの人々の大半が人道支援を必要としており、受け入れコミュニティのすでに限られた資源に負担をかけている。
ラテンアメリカ・カリブ海 (2カ国)
広範囲な食料アクセスの欠如
ベネズエラ・ボリバル共和国-厳しい経済危機
・長引く厳しい経済危機の中、ベネズエラからの難民と移民の数は460万人に達すると推定されている。彼らは南米やカリブ海の近隣諸国に定着している。受入国でのこれらの難民と移民に対する人道支援のニーズは大きい。 ・ハイパーインフレのため、購買力は激減し、世帯の食料アクセスを厳しく制限している。加えて、2019年の穀物生産は主に農業投入財不足を反映して、既に低い水準にあった前年より減少すると予想されている。
厳しい局地的食料不安
ハイチ共和国-続く干ばつと高いインフレ
・干ばつの穀物生産(特にトウモロコシ)への影響と、コメや主食を含む輸入食料価格の高騰により、2019年10月時点で約367万人が厳しい食料不安に直面し食料支援を必要とすると予想された。
世界の穀物需給概況
2019年世界の穀物生産は史上最高レベルに向かう
2019年の世界の穀物生産予想は、11月の予想から0.4%増で、史上最高の27億1,400万トンとなっており、減少していた2018年の生産量を約5,700万トン(2.1%)上回っている。主に中国(本土)、ロシア、ウクライナでの収量予想が前回より高くなり世界の粗粒穀物の生産予想が上方修正されたことを反映して、前月より生産予想が増加した。
現時点で、世界の粗粒穀物生産は14億3,300万トン近くになると予想される。前年から1.7%(2,450万トン)増だが、2017年の史上最高値にはわずかに及ばない。
2019年世界の小麦生産予想は、前月からわずかに増加し、前年を4.8%(3,480万トン)上回る、7億6,640万トンとなっている。前月比の修正の大部分は、EUでの生産予想の上方修正によるものであり、これは米国での生産減予想を補ってなお余りある。来年の収穫に向けた2020年の小麦作付けは北半球諸国では順調である。米国では冬小麦の播種が11月の末にほぼ終わり、昨年より早いペースだが、平均的な時期に沿っている。以前の指標によれば、低価格が予想されるため、作付け面積が縮小しており、また作付け後の状態は例年よりも順調でない。EUでは、作付け前は降雨不足であったが、11月に適度な降雨があり、土壌水分レベルが回復し、冬小麦がうまく定着した。アジア東部とEU西部では乾燥が続き、冬小麦の初期成育を妨げる可能性が高まっている。ロシアでは冬小麦の状態は良好で、輸出の成長を刺激する目的とした政府の継続的な支援と相まって、作付け面積が増えたようだ。一方で、ウクライナでは限られた雨と平均より暖かい気温のため主要生産地域で播種が妨げられた。
南半球では粗粒穀物が現在播種され、小麦は年内に播種される。播種作業を妨げる不適な降雨があるものの、堅調な輸出需要に支えられた穀物価格の高騰によりアルゼンチン、ブラジルではトウモロコシは広範囲で作付け面積を維持すると予想される。
同様に、アフリカ大陸で最大のトウモロコシ生産国である南アフリカでは、トウモロコシの作付け面積の増加を促進する、生産者に有利な穀物価格(収益になる)が予想されており、5年間の平均を超える地域も出てくる兆候がある。 ただし、短期的な天気予報では、降雨量が減少する予想が示されており、2020年の生産見通しが減産になる可能性がある。
FAOの2019年世界のコメ生産予想は11月の予想から160万トン増の5億1,500万トンとなり、2018年史上最高値より0.5%減である。悪天候と灌漑用水の供給が制限され、今月のタイとベトナムの裏作の生産見通しを減少させた。しかし、今期アフリカのコメ生産増加を先導すると予想されるエジプト、ナイジェリア、マダガスカルをはじめとするアフリカ諸国とパキスタンの地域ベースの生産量が上方修正され増加した。
2019/20年度の世界の穀物利用は前月からほぼ変わらず、27億900万トンである。2018/19年度より2,100万トン多く記録的である。2019/20年度の小麦利用は前月からわずかに減少し、7億5,800万トンだが、2018/19年度より1.4%上回る。2019/20年度の粗粒穀物の利用は14億3,400万トンで、トウモロコシの飼料利用の減少より、他の粗粒穀物、特に大麦の飼料利用の増加予想が多いため、昨期からわずかに上回ると予想される。
2019/20年度FAOの世界コメ利用率の最新予想が約100万トン増加したことにより、以前予測されていた食物摂取量より多くなり、現在では5億1,700万トンを記録している。2020年に期末を迎える世界の穀物在庫に関する予想では、前月から1,400万トン(1,6%)増え、8億6,300万トンとなった。昨期からはわずかに減少し、3番目に高い記録となった。穀物の利用に対する在庫率は比較的高い31%に近づき、これにより十分な供給状況が明白となった。世界の小麦在庫予想は主要輸出国数カ国での在庫予想が増加したため、前月から300万トン増加し、2億7,800万トン近くとなった。粗粒穀物の合計は、中国(本土)や、中国ほどではないがアメリカでのトウモロコシ生産量の上方修正を反映して、前回の見通しより約1,000万トン多くなり、4億300万トンをわずかに超えた。小さな上方修正はあったが、コメ輸入国、特に中国(本土)とインドネシアの在庫減少により、2019/20年度期末の世界のコメ在庫は記録的であった期首から0.8%下がり1億8,200万トンとなった。
2019/20年度の世界の穀物貿易予想は4億1,600万トンとなっており、前月からわずかに増加した。2018/19年度より、1.3 %(550万トン)上昇した。2019/20年度(7月/6月)の世界の小麦貿易予想は1億7,200万トンで、昨期の急減から2.3%上昇した。世界の最新の予想は前月の予想と変わらない一方で、個々の国を見るといくつかの国では修正が生じた。アルジェリアの小麦輸入は、世界市場からの軟質小麦の購入を600万トン以上から400万トンに制限するという最近の政府の決定を反映して、ほぼ100万トン減少した。一方で、主要な小麦輸出国であるカザフスタンは国内生産の減少により少なくとも150万トンの小麦を輸入したとみられる。2019/20年度(7月/6月)の世界の粗粒穀物貿易予想は前月から200万トン増加し、2018/19年度の記録的な水準に近い1億9,750万トンである。今月の上方修正は主にブラジルとウクライナからの輸出が、米国の輸出減少を相殺してなお余りあるほどに増加したことによるもの。一方で、2020年(1月ー12月)の世界コメ貿易予想は、アフリカ数カ国での国内供給が改善されたことや、ナイジェリアによる非公式な流入を抑制する努力もあり、100万トン減少し、4,700万トンとなった。修正された予想は、2020年の世界コメ貿易が2019年に減少した水準からわずかに(約2.5%)回復する可能性が高いことを示唆している。
低所得・食料不足国の食料事情
悪天候が低所得で食料が不足しているアフリカ諸国での生産を制限したが、アジア諸国では生産は上昇している2019年の低所得で食料が不足している国々の総穀物生産のFAOによる予測は4億7,640万トンで、2018年の平均生産高より上のレベルとなった。安定した経年結果は、主にアフリカ諸国での低下を相殺すると予想されるアジア諸国での生産増加を反映している。アジアの低所得で食料が不足している国々では、顕著な生産増加は2019年のシリア・アラブ共和国で、処々に降った降雨のお陰で、種まきの拡大につながり、改善された食料保障の条件として記録された。この年次の増加にも関わらず、国家レベルの収穫高は、紛争の影響を反映して、まだ危機以前(2002―2011年)よりだいぶ低いレベルにとどまった。望ましい天候条件は、アフガニスタンにおける穀物生産を引き上げ、一方で、イエメンでは、紛争は農業セクターをひどく弱め続け、生産を制限した。極東地域の、アジアの穀物生産が大きい諸国では、生産高はバングラデシュとベトナムの平均レベルにとどまった。すべての低所得で、食料が不足している国々の中で、極めて大きな穀物生産国であるインドでは、全収穫高が平均を大きく超えるものと予想されており、これは小麦の豊作により支えられている。対照的に、多くのアフリカの低所得で食料が不足している国々では、主に悪天候のため、穀物生産は低下することが予測される。サブサハラアフリカの中で、最大の生産減少は、東アフリカで予想されている。特に、ウガンダやケニア、タンザニア連合共和国で、年の前半に干ばつにより第一耕作期の生産高が低減した。一部の国々では穀物生産見込みを押し上げた、第2耕作期の豊富な降雨は、一方でスーダンや、南スーダンの生産高を減ずるような洪水を広範に引き起こした。南部アフリカ諸国での2019年の穀物収穫は年の前半に終えたが、厳しい降雨不足と2度のサイクロンの影響で、レソト、モザンビーク、ジンバブエでは穀物生産の急激な低下が予想された。概ね望ましい天候に恵まれ、マダガスカルとマラウィでは平均より高い収穫が得られ、生産の立ち直りが進んだ。収穫が進行中の西アフリカでは、主に望ましい降雨に恵まれ、2019年の穀物生産は平年を上回ると予測されている。天候が穀物に不適であった、モーリタニア、セネガル、ガンビア、ギニア・ビサウの一部では、地域的な穀物生産の減少が予測されている。さらに、継続する食料不安や、大規模な人口移動により、チャドやマリで農業活動が阻害されている。アフリカ中央部では、概ね穀物生産条件に恵まれ、引き続く紛争や社会不安にも拘わらず、生産が増加している。
中米とカリブ諸国では、6~8月期の長引いた乾燥気候と高温により、ニカラグアとハイチで穀物生産が予想より減少した。しかし、ハイチの収穫はまだ平均を凌ぐことが見込まれる。
サブサハラアフリカで、収穫の減少は、輸入のニーズを高める
全体的に、低所得で食料が不足している国々の、2019/20市場年度の総穀物輸入必要量は、2018/19年度の輸入量と比べて、7,130万トン増加することが予想されている。輸入量の予測される増加の大部分は、天候により収穫が減少するアフリカ諸国によるものである。ジンバブエとケニアでは、収穫が最近5年間の平均を下回り、国内在庫が低水準で、生産不足を国内だけでは補えないことにより、輸入ニーズの顕著な増加が見込まれる。アジアの数か国では、輸入量の減少が予想される。すなわち、バングラデシュ、ネパール、ウズベキスタンでは、より多くの国内の収穫が国の供給量を増加させ、結果的に輸入ニーズを低下させた。同様に、中東諸国の豊作により、2019/20年度の輸入必要量が縮小した。
今知る世界の食料危機 No.10(covid-19の影響)⇨
(カーボヴェルデ、 カメルーン、 ギニア、 ケニア、 コンゴ共和国、 コンゴ民主共和国)
(ザンビア、 シエラレオネ、 ジブチ、 ジンバブエ、 スーダン、 セネガル、 ソマリア)
(マダガスカル、 マラウイ、 マリ、 南スーダン、 モーリタニア、 モザンビーク)