国連食糧農業機関(FAO)は、Global Information and Early Warning System(GIEWS)というページで、世界の食料危機に関する情報を提供しています。
2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。
2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。
そこで、数年前からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。
「今知る世界の食料危機 No.6」では、今年7月に公開された”Crop and Prospects #2 July 2019”の該当ページを紹介します。
「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら,food@ajf.gr.jpへ連絡下さい。
外部からの支援を必要としている国
アフリカ (31カ国)
食料生産・供給総量の異常な不足
中央アフリカ共和国-紛争、避難、食料供給の制約
・2018年12月の国内避難民は64万1,000人だったが、2019年4月では61万2,000人と推定された。切迫して悪い状況ではあるが、この数値はわずかに改善している。
・暴力的な衝突と共同体間の緊張が続き、避難をさらに大規模で広範なものにし、これが食料保障に悪影響を与えている。
ジンバブエ共和国-穀物生産の急減少
・2019年は天候不順による穀物生産の減少、主食の食料価格への打撃や厳しい経済環境により収入を生み出す機会が減少し、食料不安はさらに悪化する。
・2019年はじめには300万人近くの人々が食料不安に直面していた。
広範囲な食料アクセスの欠如
ブルンジ共和国-社会不安、経済の悪化、一部地域での作物生産不足
・市場、農作業、暮らしの混乱が、限られた人道支援や食料輸入能力の低下と相まって、引き続き食料保障に悪影響を与えている。食料不安が最も深刻な地域は西部のマカマ州、ルタナ州、ルイギ州およびカンクゾ州で、これらの地域は2018年の豪雨により、洪水と土砂崩れで作物を損失している。
・2018年後期では約172万人が厳しい食料不足に直面していると推定されている。(最新の入手可能な情報)
チャド共和国-社会不安
・「Cadre Harmonisé」によれば、約64万1,000人が2019年6月から8月期に食料不安に直面すると予想された。
・約46万2000人の難民に加え、北東部での軍事衝突によって、13万人近くが国内避難民となっている。
コンゴ民主共和国-紛争と東部および南部地域での避難民発生、そして難民の流入が受け入れコミュニティの負担になっている
・IDPは合計450万人と予想される。加えて、ルワンダからの難民21万7,000人、中央アフリカからの難民17万2,000人、南スーダンの難民10万人、ブルンジの難民4万5,000人を受け入れている。
・エボラウイルス病(EVD)の感染拡大により1571人が亡くなった。さらに、EVD感染拡大は市場の機能マヒを引き起こし、影響を受けている地域の家々の食料アクセスに悪影響を及ぼしている。
ジブチ共和国-連続する雨季の降雨不足による牧畜民の暮らしへの影響
・降雨不足の雨季が続いた影響で、2018年(最新の入手可能な情報)、農村部では約15万人が厳しい食料不安に直面していると推定された。
エリトリア-経済的制約による食料不安人口の増加
エチオピア連邦民主共和国-干ばつが地域の生計システムへ及ぼす影響
・2016年から2017年にあった干ばつの累積する影響と、2018年の10月から12月にあったDeyr/Hagey2つの雨期の降雨不足により、主に南東部の農牧畜地域で、2019年はじめに813万人が厳しい食料不安に直面していると推定された。
ニジェール共和国-社会不安
・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、2019年6月から8月期に約120万人が緊急支援を必要とすると推測された。
・近隣諸国の紛争により、25万4,000人が国内避難民となっており、17万8.000人の難民が暮らしている。
ナイジェリア連邦共和国-終わらない紛争と社会不安
・「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2019年6月から8月期に約495万人が食料支援を必要とすると推測された。更に、国内避難民は190万人と推測された。
・長引く社会不安は、主として食料や収入の供給源に影響を与え、脆弱な世帯への食料アクセスに制限を与えている。人道支援にアクセスできない地域は、最悪の食料保障環境に直面している。
南スーダン共和国ー紛争、内戦、深刻な経済低迷
・継続的な人道支援にも関わらず、食料危機はまだ人口の大半に影響を与えている。5月から7月に厳しい食料危機に直面する人々の数は696万人と予想され、人口の約60%にのぼる。この悲惨な食料危機は、継続的な社会不安、ひっ迫した供給、経済の低迷、貿易の不振と食料価格の高止まりの結果である。
・加えて、2019年5月に国内避難民は178万人と推定された。
厳しい局地的食料不安
ブルキナファソ–北部での社会不安
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、主に北部での社会不安のため、2019年6月から8月期に食料支援を必要とする人々の数は68万7,000人と予想された。
・2万5,000人の難民、多くはマリからの難民が国内に暮らすと推定される。一方で14万8,000人の国内避難民がいる。
カーボヴェルデ共和国-2018年農牧収穫期の不作による食料事情の悪化
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2019年6月から8月期にかけて約9,000人(全人口の約2%)がフェーズ3「危機」もしくはそれ以上の厳しい状況にあると推定される。
カメルーン共和国-国内闘争と難民の流入によるコミュ二ティへの負担
・中央アフリカ共和国からの難民の数は2019年4月に27万9,000人と推定された。
・2016年10月から続く国内闘争によって英語話者地域の北西州と南西州の約44万4,000人が国内避難民となった。
コンゴ共和国ー難民の流入が、国内コミュニティのすでに制限されている資源を圧迫している
・コンゴ民主共和国からの2万4,000人の難民が国内で生活していると推定される。
エスワティニ王国ー局地的な生産不足
・気候条件が悪いため、穀物生産は減少する見込みで、2019/20年度に食料不安になる人々を増加させると予想される。
・2019年1月から3月にかけて24万7,000人が人道支援を必要としたと推定された。
ギニア共和国ー局地的な生産不足
・2019年6月から8月に、約28万9,000人が食料支援を必要としたと推定された。
ケニア共和国ー連続した雨季の降雨不足
・2018年10月から12月にあたる小雨期の降雨不足と2019年3月から5月にあたる大雨期の深刻な日照りにより、主として北部、東部地域で約200万人が厳しい食料不安に直面している。
レソト王国ー穀物生産の減少
・気候条件による穀物生産の減少により2019/2020年度の食料不安は高まる見込みである。
・2018年12月と2019年1月の間に約27万3,000人が食料不安にさらされたと推定された。
リベリア共和国-高い食料価格
•約4万1,400 人が食料支援を必要としていると推定される。
リビア-社会不安
•人道支援を必要としている人々の数は、82万人(人口の11%)と推定され、そのうち30万人は食料支援を必要としている。難民、難民申請者、国内避難民は食料危機にもっともさらされやすい人々である。
マダガスカル共和国-南部のいくつかの地域で食料へのアクセスの減少
•国家レベルでは、2019年の穀物収穫量の増加が全体の食料安全保障状況を改善すると見込まれる。しかし、南部のいくつかの州では、毎年続いている低い農業生産により影響を受け、状況が悪いことが予想されている。
マラウィ共和国-地域的な生産不足と価格高騰
•国家レベルでは、2019年に穀物生産が増加したが、南部地域では、悪天候が収穫を減少させ、食料安全保障状況を悪くすると予想されている。
•2018年10月から2019年3月までの期間に食料が不足すると見込まれる人々の数は330万人と推定される。この数字は減少すると予想されるが、南部のいくつかの県では、食料支援の高いニーズが続くと予想される。
マリ共和国-中央および北部での絶え間なく続く危機
•この国には約2万7,000人の難民、約10万6,000人の国内避難民、7万4,000人の帰還民がいて、主に人道支援に依存している。
•最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、国内紛争が続くため、2019年6月から8月期の間に、約54万9,000人が食料支援を必要とすると推定された。
モーリタニア・イスラム共和国-牧草の減少
•最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2019年6月から8月期にかけ、約60万7,000人が食料支援を必要とすると推定された。
•主としてマリからの難民約6万人が国内に居住している。
モザンビーク共和国-サイクロンによる被害と生産不足
•2つの大きなサイクロンのインパクトと深刻な降雨不足は、南部と中部のいくつかの州で食料不安の極端な増加を招いている。結果として、2019年1月から3月にかけ、200万人近くが食料危機にあると推定された。
•穀物生産は2019年に減少し、農家世帯への食料供給を減少させることが予想される。一方、価格の高騰が食料へのアクセスを減少させている。
セネガル共和国-局地的な降雨不足
•最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、約34万1,000人が2019年3月から5月期にかけ、食料支援を必要とした。
•加えて、主としてモーリタニアからの難民、推定1万5,000人が国内に居住している。
シエラレオネ共和国-食料価格の高騰と低い購買力
•2019年6月から8月にかけて、約12万4,000人が深刻な食料危機におちいると推定される。
ソマリア連邦共和国-紛争、社会不安、連続する雨季の天候不順
•2018年10月から12月の「Deyr」の季節の降雨不足と2019年4月から6月の「Gu」の季節の大半の極端な乾燥の影響により、主に農牧民と牧畜民コミュニティの約220万人が緊急支援を必要としていると推定される。
スーダン共和国-紛争、社会不安と高騰する食料価格
• 2019年1月から3月に深刻な食料不安にさらされている、主に国内避難民と紛争影響地域にある共同体で暮らす人々は576万人と推定される。高騰する食料価格に余裕を失った家計もまた懸念の対象である。
ウガンダ共和国―局地的な生産不足及び難民の流入
・2018年の作物生産の大幅な減産により、東部テソ地域と北東部のカラモジャ地域で、約50万人が厳しい食料不足に陥るとみられている。
・南スーダンからの難民約83万8,000人と、コンゴ民主共和国からの難民約35万2,000人が難民キャンプにおり、人道支援に頼っている。
アジア(8ケ国)
食料生産・供給総量の異常な不足
シリア・アラブ共和国―紛争
・約550万人のシリア人が食料危機に直面しており、何らかの食料支援を必要としている。加えて、イドリブ県の50万から80万人が食料危機に直面している。
・国際的食料支援が実施されているものの、シリアからの難民が近隣諸国の受け入れコミュニティの食料不安を高めている。
広範囲な食料アクセスの欠如
朝鮮民主主義人民共和国―2018年主耕作期および裏作の生産不足と経済不振
・昨期の異常気象により、2018年の食料作物総生産量はほぼ例年並みであった前年の水準を下回り、2008/09年以来の最低であったとみられている。
・3月29日から4月12日にかけて行われた、FAO/WFPによる2019年合同評価ミッションによれば、1,010万人(人口の4割)が食料不足に置かれ、緊急の食料支援が必要とされている。
イエメン共和国―紛争、貧困および食料価格・燃料価格の高止まり
・2018年12月から2019年1月期に1,590万人(人口の53%に相当)が深刻な極度の食料不安に直面している(IPC評価のフェーズ3:「危機」もしくはそれ以上)。その中の6万3,500人がフェーズ5:「大災害」のレベルにある。
厳しい局地的食料不安
アフガニスタン・イスラム共和国―紛争と避難民
・2018年12月の人道ニーズ概況報告(HNO)は、一年前の同時期より600万人多い1,350万人がIPC評価のフェーズ3「危機」と見込んでおり、そのうち360万人はフェーズ4「緊急事態」にある。続く紛争、自然災害及び限定的な経済活動が、生存ラインギリギリの農家も含む、最も貧しい家庭の危機対応能力を弱めている。
バングラデシュ人民共和国―多数の難民流入が受け入れコミュニティに負担をかけている
・UNHCRによれば、2019年5月時点で、ミャンマーからの約91万人のロヒンギャ難民がバングラデシュ内の主にコックスバザール県で暮らしている。多くの難民は2017年8月後半のミャンマー・ラカイン州での暴力再発を受けてバングラデシュに逃げた。
イラク共和国―紛争
・180万人と推定される人々が国内避難民となっている。
・おおよそ240万人が食料不足に陥っている。
ミャンマー―カチン州、シャン州、ラカイン州の一部の地域での紛争
・2019年5月現在、ラカイン州で16万人、カチン州及びシャン州北部で10万6,500人が、継続する紛争で国内避難民となっている。これらの避難民は、厳しい食料不安に苦しみ、また一時的な住居に入っており、必要最低限の暮らしを維持するための人道支援を必要としている。
パキスタン・イスラム共和国―避難民の発生と一部地域での穀物生産不振
・バロチスタン州及びシンド州の一部での2018年から2019年にかけての継続する干ばつによる穀物の減産と家畜の被害が食料危機を悪化させ、深刻な栄養不良が増える原因となっている。
・この国には未登録も併せて140万人に近いアフガニスタンの難民がいる。これらの人々の大半が人道支援を必要としており、受け入れコミュニティのすでに限られた資源に負担をかけている。
ラテンアメリカ・カリブ海 (2カ国)
広範囲な食料アクセスの欠如
ベネズエラ・ボリバル共和国―厳しい経済危機
・長引く厳しい経済危機の中、ベネズエラからの難民と移民の数は370万人に達すると推定されている。彼らは南米やカリブ海の近隣諸国に定着している。受入国でのこれらの難民と移民に対する人道支援のニーズは大きい。
・同国において、ハイパーインフレを考慮すると、購買力は激減し、世帯の食料アクセスを厳しく制限している。加えて、2019年の穀物生産は主に農業投入財不足を反映して、既に低い水準にあった前年より減少すると予想されている。
厳しい局地的食料不安
ハイチ共和国―続く干ばつと高いインフレ
・干ばつの穀物生産(特にトウモロコシ)への影響と、コメや主食を含む輸入食料価格の高騰により、2019年5月から6月にかけて約260万人が食料支援を必要とすると予想されている。
世界の穀物需給概観
トウモロコシ減産が主因となって2019/20年度の穀物需給はひっ迫
2019年の世界の穀物生産予想は、6月の予想とほとんど変わらず、2018年比1.2%増の26億8500万トンとなっている。前年比で増産となったものの多くは小麦で、現時点では前年水準から5.6%増となるほぼ7億7100万トンと予想される。世界の小麦生産に関する最新の予想は、例外的な収量増によって記録的な生産となると見られるインドでの上方修正を反映している。それに対し、FAOが13億9800万トンと予想する2019年の世界の粗粒穀物生産は、世界のトウモロコシ生産減が大麦の生産増を上回るため、2018年に若干及ばない。
春に異常な降雨があって作付けが遅れまた収量低下になると見られる米国で、トウモロコシ生産減少の大部分が生じると見られる。中国(本土)および東アフリカ・南部アフリカでの減産も予想されており、アルゼンチンでの生産増予想はあるものの、トウモロコシ生産予想は全体として減少した。世界のコメ生産(精米ベース)に関するFAOの予想は5億1600万トンとなっており、6月の予想からほとんど変化がなく、昨年の高水準に迫っている。中国(本土)、ブラジルそして米国では前年比での減産が予想されるが、インドおよびタイでの生産増がそれを上回ると予想される。
2019/20年度の世界の穀物利用は6月の予想をわずかに上回り、現時点の予想では2018/19年度から1.0%増の27億800万トンを超えることになる。小麦の全利用は、食用利用の増加が主因となって2018/19年度を1.5%上回ると予想される。それに対し、今月一部の国々、特にブラジルおよびメキシコでトウモロコシの全体としての利用予想がさらに下方修正されたことから、粗粒穀物の全消費の前年からの増加は縮小し、わずか0.6%増となる。2019/20年度の世界のコメ利用に関する予想は、アジア・アフリカでコメの食用利用が増加したことが主因となって、2018/19年度から1.4%増の5億1800万トンと変わっていない。
2019年に期末を迎える世界の穀物在庫に関する予想では、トウモロコシ在庫が減少したことが主因となって、現時点で6月の予想より在庫は若干減少し、期首から2700万トンすなわち3.2%減の8億2800万トンになる。中国(本土)および米国でトウモロコシの在庫が大きく減少したことから、トウモロコシの在庫は期首比12.4%減の約3億1100万トンとなり、全粗粒穀物の在庫を3億7100万トンへと9.1%減少させると見られる。しかし、2019/20年度の世界の小麦在庫は、中国(本土)、EUおよびロシア連邦で豊作が予想されることに下支えされて4.5%(1200万トン)増すると見られる。それに対して、FAOは、フィリピンおよび米国での在庫の下方修正を反映させて、2019/20年度のコメ在庫の予想を6月の予想から40万トン減の1億7900万トンへと引き下げた。最新の予想では、コメ在庫は全体として記録的な水準であった期首から1.1%減となる。全体としては、2019/20年度の穀物の利用に対する在庫率は29.6%と比較的高水準を保つものの、粗粒穀物に関しては6年ぶりの低水準となる24.7%に下落すると予想される。
2019/20年度の世界の穀物貿易は、6月の予想から若干から増加し、2018/19年度比で2%(830万トン)増の4億1500万トンになると予想される。この増加は、オーストラリア、EUおよびロシア連邦の小麦輸出余力が増加し、低水準であった2018/19年度比で小麦貿易が3.9%増加すると予想されるという、小麦貿易の回復を反映している。世界の粗粒穀物貿易は、2018/19年度推定水準近くにとどまると見られるが、EUでは2018/19年度からトウモロコシ在庫の大きな繰り越しがあることからトウモロコシ輸入が前年比で大きく減少すると予想される。トウモロコシの輸出に関しては、今期、米国の輸出余力は限られているが、南米から米国の減少分を上回る豊富な供給があると見られる。2019年の世界のコメ貿易は3%ほど減少すると予想されるが、FAOの暫定的な予想では、2020年のコメ貿易は反発し、史上最高となる4890万トンに達する可能性がある。
低所得・食料不足国の食料事情
2019年の低所得・食料不足国における生産は下落が予想される
FAOの低所得・食料不足国における穀物生産量予想は4億7,020万トンで、前年の豊作に比べて下落するが、依然として平年を上回っている。
年間生産量の下落は主に、南東部のアフリカ諸国の一部における生産量予想の悪化を反映している。モザンビークとジンバブエにおいて、2年連続して、気候不順と、降雨不足が長引いたことにより、生産量に打撃を与えている。特にジンバブエでは生産量が平年より下落すると予想された。しかしながら、マダガスカルとマラウイでは有効な降雨があり、平年作が見込まれる。
アフリカ東部では年初の干ばつにより第一収穫期の生産は落ち込み、主耕作期の初めに雨が少なかったため作付が影響をうけ、生産量は一部の国で低くなる予想である。ケニア、ソマリア、スーダンでは平年よりも生産量は低いと見込まれ、前年比で最も減少する。西アフリカ諸国では、気候不順により作物の生産量は減少すると見込まれる。アフリカ中央部では続く紛争と内戦が、農業活動を衰退させ続け2019年の収量は減少するとみられる。
アジアを見ると、2019年のアジア東部の小麦生産量予想はまだら模様である。インドでは作付の縮小を相殺する以上の単位当り収量が記録され、2019年の小麦生産量は平年を上回る見込みである。対照的にパキスタンでは、第一収穫期の灌漑水の供給不足と降雨不足で生産量は減少した。アジア西部では概して良好な気象条件であったにも関わらず、シリアアラブ共和国およびイエメンでは、続く紛争と投入財の不足により、農業分野は衰弱し、穀物生産量を減少させている。
気候不順の打撃を受けた東アフリカや南部アフリカでは輸入需要が拡大している。
2019年全体の出来高の傾向を反映し、2019/20市場年度における低所得・食料不足国が輸入する穀物総計は7,360万トンと予想され、年次換算で約330万トンの増加となる。現在実施している対策により2018/19年度は輸入量が減り、2012/13年度以来、初めて前年を下回った。
2019/20年度の食料輸入増予想は、不順な気候による収穫量の減少を補うため、南部アフリカでの強い輸入需要と関係している。同様に、東アフリカの多くの国でこれまで以上の輸入が予想され、特にケニアでは、平年を下回った昨年から輸入量が上昇する見込みである。一部のアジア諸国では輸入額は減少すると予想され、特にバングラデシュでは生産が回復し、国内での利用可能量が補強され、輸入需要は減少している。
今知る世界の食料危機 No.10(covid-19の影響)⇨
(カーボヴェルデ、 カメルーン、 ギニア、 ケニア、 コンゴ共和国、 コンゴ民主共和国)
(ザンビア、 シエラレオネ、 ジブチ、 ジンバブエ、 スーダン、 セネガル、 ソマリア)
(マダガスカル、 マラウイ、 マリ、 南スーダン、 モーリタニア、 モザンビーク)