国連食糧農業機関(FAO)は、Global Information and Early Warning System(GIEWS)というページで、世界の食料危機に関する情報を提供しています。
2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。
2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。
そこで、2017からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。
「今知る世界の食料危機 No.16」では、2021年9月に公開された”Crop and Prospects #3 Sep 2021”の該当ページを紹介します。
「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、food@ajf.gr.jpへご連絡ください。
外部からの支援を必要としている国
アフリカ (33カ国)
食料生産・供給総量の異常な不足
中央アフリカ共和国-紛争と人口移動
・最新の食料安全保障レベル分類(IPC)によれば、2021年4月から8月の収穫量の細る時期に社会不安が高まるため、IPCフェーズ3( 危機)以上の深刻な食料不足人口が230万人になると推定される。
・およそ140万人が国内または隣国で避難民となっている。
ケニア共和国-不十分な雨
・2021年8月から10月にかけて、約210万人が深刻な食料不安に陥ると推定される。これは、2021年3月から5月にかけて発生した「長雨」が、主に北部と東部の牧畜、農牧および限界農耕地域の作物と家畜生産に与えた影響を反映したものである。
ソマリア連邦共和国-不十分な雨、社会不安
・220万人が、2021年7月から9月にかけて、IPCフェーズ3(危機)およびIPCフェーズ4(緊急)の深刻な食料不安に陥ると推定される。これは主に、4月から6月の「グ」シーズンにおける不順な雨が作物と家畜の生産に深刻な影響を与えたことと、2021年初頭からの紛争の高まりによるものである。
広範な食料アクセスへの欠如
ブルンジ共和国-異常気象
・2021年6月から9月の間に、約104万人が深刻な食料不安に陥ると推定されているが、これは主に、ブジュンブラ・マイリ―、ルモンゲ、マカンバ各州で約4万人が避難した、タンガニーカ湖の水位上昇とルフィジ川の氾濫によって引き起こされた生計手段の喪失によるものである。
チャド共和国-社会不安
・最新のCadre Harmoniseの分析によると、ラックおよびティベスティ地域では、生計活動を妨げ、人口移動を引き起こすような不安定な状況が続いており、2021年6月から8月にかけて、約180万人がフェーズ3(危機)以上になると推定されている。
・チャド湖地域の治安の悪さから、約40万人が避難している。また、中央アフリカ共和国、ナイジェリア、スーダンを中心とした52万人の難民が、紛争のために国内に居住している。
コンゴ民主共和国-社会不安の永続化
・2021年3月のIPC分析によると、2021年8月から12月の間に2,620万人が深刻な食料不安に陥ると予測されている。これは、COVID-19パンデミックの地域経済への影響と、東部州で進行中の紛争により、避難民が発生したためである。2021年5月6日に東部の北キブ州とイトゥリ州で出された戒厳令は、現在も続いている。
ジブチ共和国-洪水
・2021年1月から8月の間に約19万4,000人が深刻な食料不安に陥っていたと推定されている。これは主に洪水や地滑りによる生計の損失と、COVID-19パンデミックによる脆弱世帯の生計への社会経済的な影響によるものである。
エリトリア-マクロ経済の課題による食料不安人口の増加
エチオピア連邦民主共和国-高い食料価格、洪水、サバクトビバッタ、ティグライ州における紛争
・2021年7月から9月にかけて、ティグライ州、アムハラ州、オロミア州、南部諸民族州の西部および中央部の穀物が不足する地域では、約740万人が深刻な食料不安に陥ると推定されている。特にティグライ州では、2020年11月に始まった紛争の生計への影響により、約40万人がIPCフェーズ5(大惨事)レベルの食料不安に直面すると推定されている。
ニジェール共和国-紛争
・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、農業や市場の取引活動の広範な混乱をもたらした治安に関わる事案の増加により、世帯が生計を立てる機会が失われ、2021年6月ー8月期に約228万人が人道支援を必要としていると推定されている。
ナイジェリア連邦共和国-長引く北部地域での紛争
・「Cadre Harmonisé」最新号の分析によれば、特に北部の州において、さらなる避難民を生み出している紛争悪化の結果として、2021年6月ー8月期に約1,282万人が人道支援を必要としていると推定された。290万人以上が北部州で紛争および自然災害により国内避難民になっていると推定される。人道支援の介入が届いていない地域では、最悪の食料危機に直面している。最近の豪雨による洪水により、影響の出た地域で支援が届くのがさらに難しくなった。
南スーダン-経済低迷、社会不安、洪水と長期にわたる紛争により長引く影響
・継続的な人道支援にも関わらず、不十分な食料供給、経済の低迷、高い食料価格、2020年に発生した広範囲に及ぶ洪水により、人口の大半が食料不安の影響を受けている。2021年4月ー7月期は、約720万人(全人口の60%)が厳しい食料危機に直面すると推定されている。
・特に懸念が大きいのは、ジョングレイ州、北バハル・アル・ガザール州、ワラブ州および近隣のピボール行政区の世帯で、人口の60-85%の人が深刻な食料不安にあり、10万8,000人がIPCフェーズ5「大惨事」のレベルに直面している。
ジンバブウェ-高い食料価格と経済停滞
・主に経済停滞の影響により広範囲にわたる高値と収入の減少による食料へのアクセスが限られることにより、約300万人が2022年1月から3月までの間に人道支援を必要としていると推定される。しかしこの数字は、世帯の食料供給を押し上げた農業生産量の大幅な増加により2021年の同時期の数字より低い。
・2021年の穀物生産量が平均を大きく上回り食料の安全保障が改善した。前年比で約半数ではあるものの、推定180万人が広範に渡る高い食料価格と経済停滞による収入減の影響で7月-9月に食料不安にあるとされる。
厳しい局地的食料不安
ブルキナファソ-北部の社会不安
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2021年6月ー8月期に、約287万人が人道支援を必要としていると推定された。センター・ノルド地域とサヘル地域においては、不安定な状況にあるため避難民となる人があとをたたず、食料安全保障の状況を一層悪化させている。
・約142万人が避難し、主にマリからの約2万2,500人の難民がサヘル地域に暮らしている。
カメルーン-社会不安、避難民
2021年3月の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、2021年6月ー8月期に約190万人が深刻な食料不安(フェーズ3「危機」もしくはそれ以上)と推定され、これは主に、紛争、社会政治的混乱及びCOVID-19に関連する経済的打撃によるものである。
・深刻な食料不安にある人の約42%が北西部や南西部の人であり、2021年8月時点で100万人以上が国内で避難生活を送っていた。
コンゴ共和国-難民の流入
・中央アフリカ共和国からの難民が約2万1,000人、コンゴ民主共和国からの難民が約2万8,600人居住している。受入コミュニティは食料不足に直面し、生計を立てる機会も限られており、難民は基本的に継続的な人道支援に依存して食料を確保している。
エスワティニ-経済低迷と収入の減少
・2021年4月から9月期に約20万9,000人が食料不安にある。これは、2021年の平均以上の収穫の良い影響を反映して、1月から3月期の34万7,000人から減少した。しかし、主にCOVID-19パンデミックの経済に対するインパクトにより、世帯はまだ食料アクセスの制限に直面し続けている。
ギニア-COVID-19パンデミックに連鎖した収入の減少
・主にパンデミックの影響による食料アクセスの制限により、2021年6月-8月期は約68万3,000人に食料支援が必要と推定された。さらに、主にコートジボワールとシエラレオネからの6,000人の難民を抱えている。
レソト-経済停滞と収入減少
・2022年1月から3月期の農閑期に食料不安にあると推定される人の数は31万2,000人で、2021年に推定された数の約半分である。改善された見通しは、主に世帯の穀物供給を押し上げた2021年の国内穀物生産の増加によるものである。しかし、2021年の経済の回復の遅れは、その食料アクセスに負の影響を与え、世帯収入を抑制し続けている。
リベリア-高い食料価格と経済停滞
・最新の「Cadre Harmonisé」の分析によれば、高い食料インフレ率とCOVID-19パンデミックの経済に対する負の影響により、約94万人が2021年6月ー8月期にフェーズ3「危機」またはそれ以上と推定された。支援を必要とする約8,200人の難民も受け入れている。
リビア-社会不安、経済・政治不安、高い食料価格
・2021年の「人道的ニーズの概要」によれば、人道支援が必要な人は合計130万人(人口の23%)、そのうち70万人に食料支援が必要と推定された。人道支援を必要とする人々の半数は、国内避難民または同国で暮らしているもしくは同国を通過する移民である。
マダガスカル-南部での干ばつ、限られた収入の機会
・南部および南東部地域では、推定114万人が食料不安に陥り、緊急の人道支援を必要としている。この数字は、2021年10月から2022年3月の間に130万人に増加すると予測されている。2021年の農業生産への深刻な干ばつの影響、COVID-19パンデミックの影響、特に経済減速による収入減が食料不安の主な要因となっている
マラウイ共和国-経済停滞と収入減少
・推定110万人が食料不安を抱えており、2021年10月から2022年3月の間にこの数字が150万人に増加すると予測されている。しかし、食料不安に苦しむ人々の数は、260万人が人道的支援を必要としていると評価された2021年1月から3月までの推計値を大きく下回っている。現在の状況が改善しているのは、2021年の穀物の大豊作により、COVID-19パンデミックの悪影響が一部緩和されたことによる。
マリ-社会不安
・最新の「Cadre Harmonisé」分析によると、紛争の激化によって人々の避難が続き、あわせてパンデミックや異常気象の影響を受けた結果、2021年6月から8月の間に、約131万人がフェーズ3:「危機」以上であると推定されている。
・中部および北部では、約28万8,000人が避難している。また、約4万7,000人の難民を受け入れている。
モーリタニア・イスラム共和国-局地的な生産不足と収入減少
・最新のCadre Harmoniséの分析によれば、主要作物の局地的な不足と畜産品の不足、COVID-19パンデミックとその経済的影響という負の影響により、約45万7,000人が2021年6月から8月の間に人道支援が必要と評価された。
・ほとんどがマリ出身の約7万2600人の難民は、人道支援を必要としている。
モザンビーク共和国-主要作物の地域的な不足、北部地域の不安定さ
・少なくとも2021年9月末までに170万人が人道的支援を必要としていると推定される。カボ・デルガドでは、最も深刻なレベルの食料不安が発生しており、2021年の穀類生産に悪影響を与えた紛争による生計への影響や降雨量の不足を反映して、推定22万7,000人がIPCフェーズ4(緊急)レベルの食料不安に直面している。
ナミビア共和国-経済停滞と収入の減少
・2021年は、前年度に比べると食料安全保障の状況は改善した。しかし、COVID-19パンデミックの負の影響、主に収入と雇用の喪失が引き続き各世帯の食料へのアクセスを制限している。
セネガル共和国-局地的な穀物生産の不足と収入減
・最新の「Cadre Harmonisé」分析によると、2021年6月から8月期に、約49万人が人道支援を必要とすると推定され、2020年同期の76万6,000人から減少となった。現在の食料不安は悪天候(洪水)が穀物生産に負の影響を与えたことによる局地的な生産の減少、およびCOVID-19パンデミックの影響を受けたもっとも脆弱な世帯の収入減によるものである。
・モーリタニア出身者が大半を占める推定1万4,500人の難民が人道支援を必要としている。
シエラレオネ-食料価格の高騰
・2021年6月から8月の間、高い食料価格や購買力の低下によって世帯の経済的な食料へのアクセスが急激に制限されたことから、約176万人が深刻な食料不安であると推定された。
スーダン-紛争、社会不安、急激に高騰する食料価格
・2020年の洪水から続く家計の損失、食料価格の高騰、また紛争のために、2021年6月から9月の間の深刻な食料不安人口は980万人と推計されている。
ウガンダ-異常気象
・カラモジャ州では、2021年8月から2022年1月にかけて、約18万8,000人(人口の16%)が深刻な食料不安に陥ると推定されている。これは主に、不規則な雨を特徴とする連続した雨季が作物や家畜の生産に悪影響を及ぼした結果である。
・国内では、南スーダンからの約93万2,000人の難民と、コンゴ民主共和国からの約43万6,000人の難民をキャンプで受け入れ、人道支援に頼っている。
タンザニア共和国-局地的な主食用作物の生産不足
・2020年5月から9月の間で、主に北東部のマニャラとキリマンジャロ地域、ドドマ中央部とシンギダ地域で、約50万人に緊急支援が必要と推定された。これらの地域では、2019年の収穫において、長引く乾季の影響を受け、穀物の生産量が大幅に減少した
ザンビア共和国-収入の減少と穀物生産の局地的な不足
・推定158万人が2021年10月から2022年2月にかけて人道支援が必要になると予測されており、2020年から2021年の同時期の食料不安人口200万人より減少した。2021年の農業生産量が多かったことが主な原動力となって状況が改善した。しかし、COVID-19パンデミックの影響が世帯の食料への経済的アクセスを制限し、穀物生産量の局地的な不足があるため、今年の改善レベルは限定的となった。
アジア(9カ国)
食料生産・供給総量の異常な不足
シリア・アラブ共和国-Comingsoon
広範な食料アクセスへの欠如
朝鮮民主主義人民共和国-Comingsoon
レバノン共和国-財政及び経済的危機
・2021年9月、国連西アジア経済社会委員会は、収入よりも健康や教育、公共サービスへのアクセスが重要としており、2021年には国民の82%が多次元貧困にあり、2019年の42%から増加していると推定した。
イエメン共和国-紛争、貧困、洪水、高い食料価格及び燃料価格
・2021年1月から6月の間に、IPCフェーズ3:「危機」またはそれ以上である食料不安人口は300万人近く増加し、1,620万人になると予測された。このうち、IPCフェーズ3:「危機」に該当する人は1,100万人、IPCフェーズ4:「緊急」に該当する人は500万人、IPCフェーズ5:「大惨事」に該当する人は4万7,000人に増加すると予測された。
厳しい局地的食料不安
アフガニスタン・イスラム共和国-内戦、人口移動、停滞する経済
・2021年3月から5月には、国民の3分の1にあたる約1,090万人がIPCフェーズ3:「危機」およびIPCフェーズ4:「緊急」であると推定された。このIPC分析は、2021年8月に外国の軍隊が撤退する前に行われており、2021年の6月から11月にIPCフェーズ3:「危機」またはそれ以上の人々は950万人に減少すると推定されていた。しかし、この状況は悪化しているだろう。
バングラデシュ人民共和国-経済的制約、難民の流入
・COVID-19パンデミックの影響による収入と仕送りの減少のため、食料不安・貧困レベルが上昇している。
・UNHCRの最新情報(2021年7月)によると、ミャンマーからのロヒンギャ難民約87万人がバングラデシュのコックスバザール県を中心に避難している。
イラク共和国-内戦、原油価格の下落、経済の停滞
・2021年の「人道的ニーズの概要」では、410万人が人道的支援を必要としており、そのうち240万人が急性の人道的ニーズを抱えていることが確認された。極度の食料不安を抱える人は約43万5,000人、食料不安に陥りやすい人は73万1,000人と推定されている。
ミャンマー-紛争、政情不安、経済的制約
・2021年2月1日の軍事政権発足後の政治危機により、国中で緊張と不安が高まり、結果、人々の新たな移動が起こった。UNHCRの最新情報(2021年7月)によると、軍事政権発足後には、2020年12月時点で37万人いた国内避難民に加えて、20万人が避難民として加わった。国内避難民の大半はラカイン州、チン州、カチン州、カイン州、シャン州に暮らしている。現在の不透明な政治状況は、国内に居住する脆弱な世帯やロヒンギャ族の国内避難民の脆弱な状況をさらに悪化させる可能性がある。
・COVID-19パンデミックの影響により収入と仕送りが低下し、脆弱な世帯の食料不安の状況を悪化させている。
パキスタン・イスラム共和国-人口流出、経済的制約及び主食作物の高価格
・同国は140万人近くの登録のアフガン難民及び約60万人の未登録のアフガン難民を受け入れている。これらの人々のほとんどが人道的支援を必要としており、受け入れ先コミュニティの限られた資源に負担をかけている。アフガニスタンにおけるタリバン政権発足後、この数字は大幅に上昇し、受け入れコミュニティの既に厳しい食料不安状況にさらに負担を強いている。
・COVID-19パンデミックの経済に対する影響により、収入を得る機会が失われているため、貧困レベルが上昇している。
・国の主食作物である小麦の価格は、2021年8月にはほとんどの市場で記録的なレベルに達し、食料へのアクセスを制限している。
ラテンアメリカ及びカリブ海地域(2ケ国)
広範な食料アクセスへの欠如
ベネズエラ・ボリバル共和国-深刻な経済危機
・同国からの難民・移民の総数は560万人と推定され、最も多くの人々がコロンビア(170万人)、ペルー(100万人)、チリ(45万7,000人)に定住している。難民と移民の人道的ニーズは大きい。COVID19の影響で受け入れ国での収入創出機会が失われたことにより、移民の食料不安は2020年に悪化したと報告されている。受け入れる国の経済の回復が遅れることが予想されるため、移民の生活はわずかにしか回復しないと考えられる。
・「同国からの難民と移民の関連機関調整プラットフォーム(R4V)」によると、食料支援を必要としているベネズエラ人の難民及び移民(移動中もしくは一時的を含む)の人数は、2021年に326万人と推定されている。
厳しい局地的食料不安
ハイチ共和国-農業生産量の減少、社会的及び政治的混乱、自然災害による悪化
・2021年3月から6月にかけて、約440万人が深刻な食料不安に直面し、緊急の食料支援を必要としていると推定された。2018年から2020年の穀物生産量の減少と食料価格の高騰により、食料不安レベルは高く、COVIDー19のパンデミックと社会政治的混乱の中で収入を喪失することで、状況を悪化させている。8月に南部地方をおそった自然災害(マグニチュード7.2の地震とハリケーン)は生産的資産とインフラを破壊し、備蓄食料の消失、さらには影響を受けた世帯の生計の悪化を引き起こした。これらの地域では、2021年9月から2022年2月に急性食料不安人口が93万2,000人から98万人に上昇すると推定される。
※tropical storm:発生地により呼び名が変わる。
世界の穀物需給概況
世界の穀物生産と在庫は下方修正されたが、2021/22年度の全体的な供給は依然として十分である
主要生産諸国での長引く干ばつのため、2021年生産予測は前回7月の予測から2,930万トン減少し、27億8,800万トンとなった。この減少にもかかわらず、世界穀物生産は、2020年1月の生産高と比較して0.7%(1,870万トン)増加すると予測されている。
主要な穀物では、2021年世界コムギ生産予測に最大の下方修正があり、7月から1,520万トン減少の7億6,950万トンで、前年の生産高からは0.7%(570万トン)少ない。この減少は主に、米国、カナダ、それほどではないがカザフスタンの収量予測に対する長引く干ばつの悪影響と、ロシア連邦の悪天候によって以前の予測より冬作物の損失の増加や、収量の減少となったことを反映している。この減少は、継続的な好天に支えられたブラジルとEU、ウクライナでの生産予測の上方修正を相殺する以上のものだった。2021年FAOの世界粗粒穀物生産予測は1,370万トン減少したが、コムギとは対照的に、前年のレベルを1.3%(1,950万トン)上回り、14億9,900万トンである。今月の減少の約半分はブラジルと米国で予測されるトウモロコシの生産に関連しており、続く降雨不足により収量予想が低下している。ブラジルでの生産量は前年比から減少すると予測されるが、米国の生産量は依然として前年より高くなると予測されている。アルゼンチン、EU、ウクライナのトウモロコシ生産予測は、前述の減少量には及ばないが、継続的な好天により収量予測が改善されたため、引き上げられた。一方、最近の圃場評価では、アルゼンチンのトウモロコシの作付面積が以前に推定されていたよりも大きいことが示されている。2021年の世界のオオムギ生産予測も米国とカナダでの収量予想の低下により、600万トン削減された。 FAOの2021年の世界のコメ生産予測は7月から40万トン下方修正され、5億1.900万トン(精米ベース)となり、これは依然として2020年の水準を0.9%(480万トン)上回っており、史上最高である。この修正は主に、日本と米国での生産者取り分の減少、およびイランでの灌漑用水不足により、以前に予測されていたよりも顕著な面積減少傾向に起因する。これらの減少は、記録的な豊作が報告されたベトナムの上方修正を相殺した。
2021/22年度世界穀物利用予測は28億900万トンで、7月から170万トン下がったが、2020/21年度のレベルからは1.4%(4,010万トン)高く、史上最高を記録している。コムギ利用予測は220万トン下がり、7億7,700万トンとなったが、2020/21年度からは2.4%(1,850万トン)高い。今月は、供給が逼迫し、コムギの価格上昇のためトウモロコシとの競争力が低下し、コムギの飼料利用は縮小されたが、2021/22年に予想された飼料利用の増加が、昨年比でコムギ利用量が増加する予測の主な理由である。2021/22年度の粗粒穀物総利用予測は、15億1,100万トンとなり、7月の予測から、ほぼ変わらず、2020/21年度の予測から0.9%(1,390万トン)増加した。この増加は主に、2021/22年度に予測されるトウモロコシの利用率の上昇、特に飼料および工業用途の利用と、ソルガムの利用のわずかな増加に起因するが、大麦の利用は、主に飼料および工業用途の低下により2021/22年度に減少すると予測される。2021/22年度の世界のコメ利用量は5億2,050万トンで、2020/21年度から1.5%(770万トン)増加し、7月の予想からほとんど変化なし。 日本やイラン、ベトナムなどの様々な国の縮小されたコメの食料利用の見通しは、主にベトナムの工業および飼料利用の予測精度の向上によって大部分が補填された。
2022年期末までの世界の穀物在庫の予測は、7月から2,700万トン減少して8億900万トンになり、期首から0.9%(700万トン)下回りわずかな減少となった。2021/22年度の世界の穀物在庫利用率は28.1%で、2020/21年度の29%から低下したが、歴史的な観点からは比較的十分な供給レベルを示している。今月の1,280万トンの削減に続き、世界の小麦在庫は期首から2%(580万トン)減少して2億8,400万トンになると予測されている。下方修正と前年同月比の減少は、主に主要な輸出国に集中しており、カナダ、米国、ロシア、カザフスタンでの生産見通しの低下がきっかけとなっている。これらの修正により、米国の小麦の最終在庫は、過去8年間で最低レベルに達する予測だが、カナダでは過去40年間で最低レベルに達する予測である。世界の粗粒穀物在庫の予測は、今月1,430万トン減り3億3,900万トンに引き下げられ、期首から0.6%(200万トン)減少となった。下方修正の大部分を占める世界のトウモロコシ在庫は、主に米国とブラジルでの生産見通しの低下を反映して1,010万トン減少し、ウクライナではより大きな輸出が見込まれている。コメについては、伝統的なコメ輸入国、特にフィリピンと日本での在庫予測の上方修正により、タイなどの輸出国の持ち越し予測の引き下げが補われた。その結果、2021/22年度期末の世界のコメ在庫は、1億8,510万トンで、記録上2番目に高いレベルを示している。FAOの2021/22年度の穀物の世界貿易予測は4億6,600万トンで、7月の予測から620万トン減少し、2020/21年度の記録レベルを1.3%(620万トン)下回り、コムギと粗粒穀物貿易の縮小が予想され、世界のコメ貿易の予想される拡大を上回る。2021/22年(7月/ 6月)の世界のコムギ貿易の予測は1億8,500万トンで、7月から430万トン削減され、現在、2020/21年度の記録的なレベルから1.4パーセント(270万トン)の減少を示している。2020/21年度の輸入量と比較して、2021/22年度の中国(本土)、モロッコ、パキスタンによるコムギ購入量は、生産量と在庫が多いことから、縮小すると予測されている。輸出側では、生産見通しが低下すると予測されるため、2021/22年度に米国、ロシアと、特にカナダからのコムギの出荷量が減少すると見られる。カナダでは潜在的に19年ぶりの最低レベルになると予測されている。今月の粗粒穀物の世界貿易予測は2億3,230万トンで、7月から230万トン減少した。 この減少は、EUの高い生産予測による輸入需要減少と、供給逼迫の結果としてブラジルおよび米国でのトウモロコシの輸出が当初の予定より減少しているため、世界的なトウモロコシ貿易量の減少により引き起こされている。中近東アジア、ヨーロッパ、中央アメリカ、カリブ海に位置する国々の輸入予想がさらに抑制された結果、2021年(1月から12月)のFAOの7月のコメの世界貿易予測は60万トン減り4,760万トンとなった。このレベルは、世界のコメの流通の2020年のレベルを4.4%超える。予想される輸入の伸びはすべてアジア東部と西アフリカによる。
低所得・食料不足国の食料事情
アジアでは干ばつにより生産量が伸び悩むが、低所得・食料不足国(LIFDCs)の穀物総生産量は2021年も引き続き平均を上回る予測である。
低所得・食料不足国(LIFDCs)の穀物生産に関するFAOの最新の予測は、2021年には平均を上回る1億9,260万トンであり、昨年の産出量を約300万トン下回っている。
穀物生産が前年比で減少すると予測されているのは、アジアでの生産量が少ないためである。 この地域で最も生産量が減少しているのは、アフガニスタンとシリアと推定されており、降雨不足が収量を低下させ、穀物の収穫量を平均以下のレベルにまで引き下げた。両国の困難な社会経済状況もまた、農業の生産能力を弱体化させ続けている。降雨不足はまた、ウズベキスタンの作物にも影響を与え、収穫量は平均を下回ると推定された。アジア地域のその他の国々では、穀物生産は平均に近いレベルから平均以上のレベルと予測されている。
アフリカでは、穀物生産量は2021年は平均以上のレベルと予測されており、年間ベースでは実質的には変化していない。東アフリカと西アフリカの国々では、2021年の主耕作期の穀物の収穫が進行中であり、12月末には完了すると予想されている。双方の小地域では、穀物生産は2021年に平均を上回ると予測されているが、前年よりは減少する。予想される前年比の生産減少は、作物への被害を引き起こした大雨や洪水の影響を受けており、不規則な季節的降雨により、収量の見通しが下降した国もあった。双方の小地域の数カ国における、今なお続く不安と紛争もまた、影響を受けた地域の農業生活を混乱させ、生産を抑制させ続けた。
南部アフリカでは、2021年に大幅な生産増加が見込まれ、総生産量は平均をはるかに上回っている。この増加は、悪天候や紛争の影響を受けたマダガスカルとモザンビークでの生産量のわずかな減少を相殺する以上に、ジンバブエとマラウイでの大幅な増産によって支えられている。中部アフリカの穀物生産は、継続する紛争が農業活動を妨げ続けており、2021年は年間ベースでは実質的に変化はなく、5年間の平均と同様であると予測されている。
中央アメリカとカリブ海諸国では、2021年8月にハイチに被害をもたらした地震と熱帯低気圧「グレース」が農業活動に混乱を引き起こし、ほとんどの主食用作物の生産見通しを低下させ、地域の食料安全保障の状況を大幅に悪化させた。ニカラグアでは、概して良好な天候により、生産量は前年比でわずかに増加し、平均を上回るレベルになると予測されている。
アジア諸国での需要の高まりによる、2021/22年の輸入のわずかな増加
2021/22市場年度における低所得・食料不足国(LIFDCs)の穀物輸入の合計は、5,980万トンと推定されており、5年間の平均を6%上回り、年間ベースで2%増加している。輸入需要の緩やかな増加は、主にアジア諸国での大量輸入の予測によるものであり、特にアフガニスタンとシリアにおいて、外部からの供給で補われる必要のある国内生産の不足による。
西アフリカでは、洪水や紛争の影響による局地的な生産の減少が予想されることから、輸入も増加すると予想される。対照的に、南部アフリカでは、輸入需要は前年よりも大幅に低く、2021年の地域内収穫量の増加を反映し、5年間の平均も下回っている。
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(カーボヴェルデ、 カメルーン、 ギニア、 ケニア、 コンゴ共和国、 コンゴ民主共和国)
(ザンビア、 シエラレオネ、 ジブチ、 ジンバブエ、 スーダン、 セネガル、 ソマリア)
(マダガスカル、 マラウイ、 マリ、 南スーダン、 モーリタニア、 モザンビーク)