国連食糧農業機関(FAO)は、Global Information and Early Warning System(GIEWS)というページで、世界の食料危機に関する情報を提供しています。
2017年度まで、国際農林業協働協会が発行する季刊誌「世界の農林水産」に、GIEWSの資料の一部(”Crop and Prospects”および”Food Outlook”)を紹介するページが設けられていました。
2018年度、同誌は紙面リニューアルを行い、この紹介ページはなくなりました。
そこで、2017からAJFが呼びかけて行っている「FAOの資料を読む学習会」参加メンバーが中心となって、”Crop and Prospects”の「外部からの支援を必要としている国」「世界の穀物の需給概況」「低所得・食料不足国の食料事情」の3項目の参考訳を作成し、紹介していくことになりました。
「今知る世界の食料危機 No.20」では、2022年12月に公開された”Crop and Prospects #3 Dec 2022”の該当ページを紹介します。
「FAOの資料を読む学習会」、「今知る世界の食料危機」の作成に関心を持ったら、info@ajf.gr.jpへご連絡ください。
外部からの支援を必要としている国
アフリカ (33カ国)
食料生産・供給総量の極めて深刻な不足
中央アフリカ共和国ー紛争、避難、高騰する食料価格、洪水
・2022年11月に発行された最新の食料安全保障レベル分類(IPC)によれば、2022年9月から2023年3月までに、IPCフェーズ3(危機)以上の人は270万人にのぼると推定された。そのうち、200万人がIPCフェーズ3(危機)で、64万2,000人がIPCフェーズ(緊急)にあたる。これは主に、避難民を発生させた洪水や農作物への被害、農地へのアクセスが困難であることと同様に、社会不安や食料価格の高騰によるものである。
・2022年の最終四半期には、約48万4,000人が国内避難民となり、74万6,000人 の難民が近隣諸国(主にカメルーン、コンゴ民主共和国、チャド)に収容された。
ケニア共和国ー干ばつ状態
・2020年後半以降、雨期の降雨不足が続いたことにより、2022年10月から12月にかけて、約440万人が深刻な食料不足に陥ると推定されている。これは、主に北部と東部の牧畜・農耕・限界農業地域での作物や家畜の生産に影響を与えた。
ニジェール共和国ー紛争、穀物生産の不足
・最新の「Cadre Harmonisé(CH)」分析によれば、2022年10月から12月までに約204万人が人道支援を必要とすると推定された。これは、紛争の悪化や食料費の前年比価格の上昇による。2023年6月から8月の端境期に、287万人が深刻な食糧不安に直面しているように、2023年は状況が悪化している。
・2022年10月現在、内戦により、ディファ、タフア、ティラベリ地方を中心に約37万5,000人が避難している。さらに、ニジェール共和国は、主にナイジェリアやマリからの難民約29万5,000人を受け入れている。
・2022年の雨季に降った大雨は深刻な洪水を引き起こし、全国で約32万5,000人が影響を受け、食料不安の状況を悪化させたと言われている。
ソマリア連邦共和国ー干ばつ状態、社会不安
・2022年8月には、人道支援を緊急に拡大しなければ、2022年10月から12月にかけてベイ地方のバイドア地区とブルハカバ地区で飢饉が発生すると予想された。
・2020年後半から雨期の降雨不足が続いたことにより、作物や家畜の生産に深刻な影響を与え、2021年初頭からの紛争の激化により、IPCフェーズ5(大惨事)に直面する約30万人を含む、推定670万人が同じ期間に深刻な食料不安に直面すると予想された。
ブルンジ共和国ー異常気象、高騰する食料価格
・2022年10月から12月のあいだに約140万人が食料不安(IPCフェーズ3[危機])に陥ると推定されている。これは主に、2月から5月にかけての中央・南東部の地域で不順な降雨による豆類の生産への影響、COVID-19パンデミックによる長引く社会経済的な影響、そして食料価格の高騰によるものである。
チャド共和国ー社会不安、穀物生産の不足
・最新の「Cadre Harmonise(CH)」の分析によると、ラックおよびティベスティ地域で不安定な状況が続いていること、生計活動や食料流通に洪水関連の混乱が起きていることから、2022年10月から12月にかけて約81万人がCHフェーズ3(危機)以上の深刻な食料不安に直面している。収穫量の細る時期の2023年6月から8月の間に150万人が深刻な食料不安に直面することが推定されるため、2023年においてこの状況は悪化していくことが予想される。
・2022年10月時点で、チャド湖地域の治安の悪さから、約38万人が避難している。また、主にスーダン、中央アフリカ共和国、カメルーン、ナイジェリアからの紛争による難民57万5,000人が同国内に滞在し、人道支援を必要としている。
・2022年11月上旬時点で、前例のない洪水によって、約46万5,000ヘクタールにわたり穀物が壊滅状態となり、全土にわたって110万人以上が影響を受けたため、食料不安が悪化するリスクが高まっている。
コンゴ民主共和国 ー東部の社会不安、高騰する食料価格
・2022年10月のIPC分析によると、2022年7月から12月の間に2,640万人が切迫した食料不安に直面し、IPCフェーズ3「危機」以上になると推定されている。これは、東部州の北キヴ、南キヴ、イトゥリでの紛争が長引いてることによるものであり、避難民の発生や主食の価格高騰を引き起こし続けている。
・2022年10月31日時点、難民として92万2,000人以上が近隣諸国に受け入れられており、その内の半数はウガンダにいる。
ジブチ共和国ー不順な天候、高騰する食料価格
・2022年7月から12月の間に、約19万2,000人が深刻な食料不安であるIPCフェーズ3「危機」及びそれ以上に陥ると推定されている。これは主に2021年と2022年の雨不足が放牧地や牧畜民の生計に影響を与えたこと、食料価格の高騰によるものである。
エリトリア
・マクロ経済の課題により食料不安に対する人々の脆弱性が高まった。
エチオピア連邦民主共和国ーティグライ州における紛争、南東部の干ばつ状態、食料価格の高騰
・人道的対応計画2022年によれば、公式に推定2,040万人が食料不安にあるとされている。
・紛争の影響を受けた北部ティグライ、アムハラ、アファール地域では、紛争による生計活動への影響により、国民総数のうち、1,300万人が深刻な食料不安に直面している。
・2020年下旬に始まった干ばつが南部の南西州、SNNP(南部諸民族)州、ソマリ州とオロミア州の南部ボラナゾーンの数百万人に影響を与えており、もっとも深刻な影響を受けたソマリ州のみで、410万人が深刻な食料不安に陥ると推定されている。
マラウイー穀物生産の局地的な不足、 食料価格の高騰
- 2022年10月から2023年3月にかけて、推定382万人が深刻な食料不安、IPCフェーズ3(危機)を経験すると予想される。この数字は、2022年1月から3月までの推定値の倍以上である。
- 状況の悪化は、食料価格の高騰と、特に南部の地域で2022年の穀物生産量が天候により局地的に不足したことによるものである。
ナイジェリア連邦共和国―部地域での紛争、穀物生産の局地的な不足、食料価格の高騰
- CH分析によると、北部の州における治安の悪化や紛争、局地的な主食の生産不足、 食料価格の高騰と所得の減少によりCHフェーズ4(緊急事態)の約78万人とCHフェーズ5(大災害)の約3,000人を含む、1,700万人が2022年10月~12月の間に人道的食料支援を必要としている。状況は今後さらに悪化し、2023年6月~8月の間には、2,530万人が深刻な食糧不安に直面すると予測されている。これにはCHフェーズ4(緊急事態)の約187万人と、CHフェーズ5(大災害)の約4,000人が含まれている。
- 2022年3月時点(最終データ)では、 約316万人が国内避難民と推定され、そのほとんどが北部の州である。
- 2022年11月時点で、洪水により約330万人に影響を与えた。北東部の州を中心に、食料難、栄養失調、暴力などの影響を受けている地域の状況をさらに悪化させている。
南スーダンー景気低迷、洪水、市民不安
- 持続的な人道支援にもかかわらず、食料不安は依然として多くの国民に影響を及ぼしている。インフレの激化、食料不足、農業生産の停滞、連続する洪水、そして2020年以降、地方政府レベルで組織的暴力が激化している。2022年12月から2023年3月の間に総人口の半分以上である約630万人が被災すると予想される。
- 特に懸念されるのは、ジョングレイ州とピボール行政区の世帯だ。IPCフェーズ5(大災害)の33,000人を含む人口の約3分の2が深刻な急性食料不足に直面すると予想されている。
ジンバブエー食料価格の高騰
- 政府の査定に基づくと2023年1月から3月の間に 380万人の人々が人道的な支援を必要としていると予想される。この数字は、2022年第1四半期に推定されたレベルよりも高くなっている。
- 食料難の状況が悪化しているのは、食料価格の高騰と景気後退の影響による所得の減少により、食料へのアクセスが悪いことが主な原因である。2022年の穀物生産量の減少も状況を悪化させた。
ブルキナファソー北部における内戦不安、避難民の集中、食料価格の高騰
- 最新のCH分析によると、2022年10月から12月の間に、約262万人が急性食料不安に陥り、人道支援を必要としていると推定され、そのうち約34万2千人がCHフェーズ4(緊急事態)、約1,800人がCHフェーズ5(大災害)に該当する。2023年6月から8月の端境期に350万人が深刻な食料不安に直面すると予測されており、状況は2023年に悪化すると予測されている。これには、CHフェーズ4(緊急事態)の約56万4450人、CHフェーズ5(大災害)の約2万人が含まれる。
- 中北部地方(行政区)およびサヘル地方では、不安定な情勢が引き続き人口移動の原因となっており、2022年10月現在(最新データ)、約176万人が避難し、支援を必要としている。また、サヘル地方には、マリを中心に3万5,000人近くの難民が居住している。
カメルーンー社会不安、食料価格の高騰
・2022年11月のCH分析によると、紛争、社会政治的不安、食料価格の高騰の結果、2022年10月から12月にかけて、約360万人がCHフェーズ3(危機)以上の急性食料不安に陥ると推定された。
・2022年10月31日時点で、北西部と南西部の国内避難民(IDP)の数は約59万8,000人、極北地域のIDPの数は約37万8,000人と推定された。
コンゴ共和国ー難民の流入
・2022年8月31日時点で、中央アフリカ共和国から2万9,200人、コンゴ民主共和国から2万2,200人の難民が、主にリクアラ州とプラトー州に居住していると推定された。受け入れ地域は既存の食料不足と限られた生計の機会に直面しており、難民の食料安全保障は継続的な人道支援に大きく依存している。
エスワティニー食料価格の高騰、経済の低迷
・IPCの最新の分析によると、少なくとも2023年3月までは、約25万9,000人が急性食料不安に直面すると予想されている。これは前年と比べて改善されている状況である。
・2022/23年の食料不安は、食料価格の高騰と経済成長の鈍化により、家計の収入を得る機会が減少することに起因している。
ギニアー所得の減少
・2022年10月から12月にかけて、約65万人が食料支援を必要とすると推定された。これは主に、COVID-19パンデミックの経済的影響による食料アクセスの制約と高い食料価格が原因である。2023年には状況が悪化し、6月から8月の端境期に約92万3,000人が深刻な食料不安に直面すると予想されている。これにはCHフェーズ4(緊急事態)の約2,500人が含まれる。
・2022年11月時点で、約4万8,000人が洪水の影響を受けた。
・また、主にシエラレオネからの約2,200人の難民がこの国に滞在している。
レソトー食料価格の高騰、経済の低迷
・IPCの最新の分析によると、2022年10月から2023年3月にかけて、約32万人がIPCフェーズ3(危機)レベルの急性食料不安に直面すると予想されている。これは2022年初頭の状況に比べて少し改善されている。
・食料不安の状況は、主に食料価格の高騰と、食料を入手する家計の経済力を圧迫している経済回復の遅れによるものである。
リベリア共和国 ー食料価格の高騰、経済の低迷
・最新のCH分析によると、食料価格の高騰やパンデミックによる景気悪化からの回復の遅れにより、2022年10月から12月にかけて約37万3,000人がCHフェーズ3(危機)以上になり、そのうち約7,500人がCHフェーズ4(緊急事態)であると推定されている。2023年6月から8月の端境期に、約53万人が深刻な食料不安に直面し、状況は悪化することが予測されている。これには、CHフェーズ4(緊急事態)の約2万1,350人が含まれる。
・2022年10月時点で、同国は約1,660人の難民を受け入れていた。
・2022年11月時点で、約9万人が洪水の影響を受けている。
リビア ー社会不安、経済・政治的不安定、食料価格の高騰
・「2022年人道的ニーズ概要」では、80万人(人口の10%)が人道支援を、そのうち50万人が食料支援を必要としており、その中には国内に居住、または通過している国内避難民や移民が含まれるとされている。
マダガスカル共和国ー 異常気象、経済回復の遅れ
・2023年1月から3月にかけて、南部および南東部の地域では、2022年に連続して発生した干ばつやサイクロンの影響により、推定220万人がIPCフェーズ3(危機)以上のレベルの深刻な食料不安に直面すると予測されている。この数字は、2022年初頭に推定された164万人を上回っている。
マリ共和国ー社会不安、食料価格の高騰
・最新のCH分析によると、紛争の悪化、異常気象、食料価格の高騰などにより、2022年6月から8月にかけて、CHフェーズ3(危機)以上の状態にある人が約63万2,000人、うちCHフェーズ4(緊急事態)の人が約1万5,000人と推定された。2023年の6月から8月の端境期には125万人が深刻な食料不安に直面すると予測されており、状況は悪化することが予想される。これは CHフェーズ4(緊急事態)の10万人以上、CHフェーズ5(大災害)の約1600人を含む。
・2022年8月時点で、約42万5,000人が国内避難民となっており、そのほとんどが同国の中部と北部を中心に国内避難民が発生している。また、ニジェール、モーリタニア、ブルキナファソを中心とした約5万6,000人の難民を受け入れている。
・2022年11月時点で、約8万人が洪水の影響を受けている。
モーリタニア・イスラム共和国 ー農業生産量の不足、経済低迷
・最新のCH分析によると、食料価格の高騰と所得の減少により、2022年10月から12月の間に、CHフェーズ4(緊急事態)の約5万6,000人を含む約44万人が人道支援を必要としていると分析されている。2023年には状況が悪化すると予測されており、2023年6月から8月の端境期に約69万5,000人が深刻な食料不安に直面すると予測されている。これには、CHフェーズ4(緊急事態)の約10万6,000人が含まれる。
・2022年9月時点で、約5万4,000人が洪水の影響を受けている。
・2022年8月時点で、主にマリ共和国からの難民約10万人も人道支援を必要としている。
モザンビーク共和国ー北部地域の治安悪化、異常気象の影響
・ 2022年のサイクロンと熱帯低気圧は、特に中央の諸州で多くの人々に影響を与えたが、北部のカボデルガド州の社会不安は引き続き生活に影響を与え、最も深刻な深刻な食料不安が維持されている。
・2021年12月の最新のIPC分析では、2022年4月から9月の間に140万人が深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していると予測された。
ナミビア共和国ー局地的な穀物生産不足、経済低迷、食料価格の高騰
・2022年の食料価格の高騰と局地的な天候不順による穀物生産量の不足により、推定75万人が支援を必要としていた2022年と比較して、2023年1月から3月の期間に深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面する人の数が同程度になると予想される。
セネガル共和国ー食料価格の高騰、洪水、収入の減少
・最新のCH分析によると、2022年10月から12月にかけて、約87万6,000人が人道支援を必要としており、約3万人がフェーズ4(緊急事態)であると推定された。その主な理由は、異常な食料価格の高騰と、洪水の生計や食料市場に対する深刻な影響、そして収入減少である。状況は2023年に悪化すると予想され、それは142万人が2023年6月から8月の農閑期に深刻な食料不安に直面すると予想されるからである。これは約8万7,000人がCHフェーズ4(緊急事態)にいることを含む。
・2022年11月の時点で、約2万6,000人が洪水の影響を受けていた。
・10月の時点で、モーリタニアを中心とする推定1万2,000人の難民が人道支援を必要としていた。
シエラレオネ共和国ー食料価格の高騰、収入の減少
・食料価格の高騰と購買力の低下により、約79万人が2022年10月から12月の間に深刻な食料不安に直面すると予想され、家計の食料への経済的アクセスが急激に制約されると予想される。この状況は2023年に悪化すると予想され、それは約111万人が2023年6月から8月の農閑期に深刻な食料不安に直面すると予想されるからである。これは約2万人がCHフェーズ4(緊急事態)にあることを含む。
・2022年9月現在、約1万7000人が洪水の影響を受けている。
スーダン・イスラム共和国ー紛争、社会不安、食料価格の高騰、穀物の供給逼迫
・ 2021年の収穫が平均を下回ったことに伴う穀物の供給の逼迫、食料価格の高騰、地域間紛争などが原因で、2022年10月から2023年2月にかけて深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)人口が770万人と予測される。
ウガンダ共和国ー異常気象、治安の悪化、食料価格の高騰
・ カラモジャ地方では、2022年8月から2023年2月にかけて人口の25%にあたる約31万5000人が深刻な食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面していることが最新のIPC分析で示されている。穀物や家畜生産にとっての雨季の雨不足が続き、作物や家畜の生産に悪影響を及ぼしていること、家畜の盗難が頻発し資産の損失が起きていること、また食料価格が高騰していることなどを反映している。
・南スーダンからの難民約847,000人、コンゴ民主共和国からの難民約467,000人が難民キャンプに受け入れられ、人道支援に頼っている。
タンザニア連合共和国ー主食の生産量の局所的な不足、食料価格の高騰
・ 最新のIPC分析によると、2022年5月から9月にかけて、主に北東部のマラ、アルーシャ、キリマンジャロ、タンガ地域に位置する約59万2,000人が人道支援を必要としていると推定されるが、これは、2021年の「ヴリ(小雨季)」シーズン、2022年の「マシカ(大雨季)」シーズンの雨不足による作物損失を反映している。また、食料価格の高騰によって、家計の食料への経済的アクセスが制約されている。
ザンビア共和国ー穀物生産量の減少、食料価格の高騰
・ 2022年10月から2023年3月にかけて、推定195万人が食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)を経験すると予想され、2021/22年の推定160万人と比べて増加した。
・食料不安の高まりは、平均以下となった穀物の収穫量と食料価格の高騰が家計の食料の入手とアクセスに悪影響を及ぼしていることと関連している。
アジア
食料生産・供給総量の極めて深刻な不足
シリア・アラブ共和国ー内戦、経済危機
・入手可能な最新の全国食料安全保障評価では、2021年に全人口の60%に当たる約1200万人が急性食料不安に陥っていると推定され、わずかに減少している。
イエメン共和国ー内紛、貧困、洪水、食料と燃料価格の高騰
・2022年10月から12月の間、IPCフェーズ3(危機)以上の人数は、約1,700万人または人口の53%と推測される。最も懸念されるのは、IPCフェーズ4(緊急事態)に分類されている610万人と紛争により国内避難民となっている430万人である。
アフガニスタン・イスラム共和国ー内戦、避難、停滞する経済
・最新のIPC分析では、2022年6月から11月にかけて、IPCフェーズ3(危機)およびIPCフェーズ4(緊急事態)の人数が1,890万人と推定された。
バングラデシュ人民共和国ー経済的制約、難民の流入、洪水、輸入食品の価格高騰
・COVID-19の影響による収入喪失により、食料不安と貧困が悪化している。
・ミャンマーからのロヒンギャ難民約100万人がコックスバザール地区とバサンシャル島を中心に居住している。
・5月から7月の洪水は犠牲者を出し、農業インフラを損傷させたり破損し、家畜や食料ストックの損失を引き起こすなど、多くの人々に影響を与えた。
・重要な食料品である小麦粉、パーム油の国内価格は2022年10月に高騰した。
ミャンマー連邦共和国ー紛争、政情不安、経済的制約、主要主食食料の高騰、2022年の農業生産高の減少
・2021年2月1日の軍事占領後の政治危機により、国中で緊張と不安が高まり、避難民が発生した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の最新の数字(2022年11月)によると、国内避難民(IDPs)の数は約144万人と推定されている。IDPの多くは、ラカイン州、チン州、カチン州、カイン州、シャン州に居住している。現在の不透明な政治状況は、脆弱な世帯や国内に居住するロヒンギャ難民の脆弱な状況をさらに悪化させる可能性がある。
・国内で最も消費されている品種である「エマタ」米の国内価格は2022年10月に記録的な水準となり、主要な主食へのアクセスが制約された。
・COVID-19パンデミックの影響による収入減も、脆弱な世帯の食料安全保障状況に影響を与えている。
パキスタン・イスラム共和国ー深刻な洪水、農業生産量の減少、経済的制約、主食の価格高騰
・深刻なモンスーンの洪水と地滑りにより、農作物、家畜資産、農業インフラ、食料備蓄が広範囲に破壊され、3300万人の生計が途絶えた。
・バロチスタン州、シンド州、カイバル・パクトゥンクワ州の28地区で実施された最新のIPC分析によると、2022年7月から11月にかけて、約600万人が高レベルの急性食料不安(IPCフェーズ3[危機]以上)に直面すると予測された。
・同国の主食である小麦粉の価格は、2022年10月にほとんどの市場で高騰し、主要な主食へのアクセスが制約された。
ラテンアメリカ・カリブ海地域(2カ国)
広範な食料へのアクセス不足
ベネズエラ・ボリバル共和国ー経済危機
・ベネズエラからの難民・移民の総数は710万人と推定され、最大の人口はコロンビア(248万人)、ペルー(149万人)、エクアドル(50万2,200人)、チリ(44万8,100人)、ブラジル(36万5,400人)に位置している。残りの70万人はラテンアメリカとカリブ海の他の国に広がっており、約100万人がこの地域外に位置している。難民・移民に対する人道的ニーズは大きい。2022年10月に発行された「2022年難民・移民ニーズ分析」によると、食料支援を必要とするベネズエラ難民・移民の数は、2022年に316万人と推定されている。
ハイチ共和国ー農業生産量の減少、社会政治的混乱、自然災害
・2022年3月から6月にかけて、約456万人が深刻な急性食料不安に直面し、緊急の食料支援を必要としていると推定された。高レベルの食料不安は、2018年から2021年にかけて穀物の収穫量が連続して減少し、食料価格が上昇した結果であり、社会政治的な混乱と社会不安の悪化によって深刻化している。社会不安の悪化と困難なマクロ経済状況の中で、収入を得る機会がないことが、食料不安を高めると考えられる。
北アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア(1カ国)
広範なアクセス不足
ウクライナー紛争
・8月版「ウクライナ・フラッシュ・アピール2022」によると、戦争により人道支援と保護を緊急に必要としている人は、国内避難民の約650万人を含む1,770万人と推定される。
世界の穀物需給概況
世界の穀物生産、在庫、貿易は3年ぶりの低水準に落ち込む見通し
世界の穀物生産量は過去3年間、年平均5,600万トン増加してきた。しかし、FAOは12月、2022年の世界の穀物生産量予想を720万トン下げ、前年比2%(5,700万トン)減の27億5,600万トンとした。この前月比の引き下げは、主にトウモロコシと、影響としては小さい小麦の生産量を見てのものである。
2022年の世界の粗粒穀物生産量は、12月に行われた約500万トン下げを受け、14億6,200万トンとされ、2021年の実績と比較して3.1%減少すると見られている。この減産は、主にウクライナにおけるトウモロコシの収穫見通しの低下を反映したものだ。ウクライナでは戦争の影響で収穫後作業の経費が著しく嵩み、多くの農家が圃場を未収穫のままにせざるを得ない状況となっている。また、セルビアでは干ばつで収量が大幅に減少しており、最新の公式データでは収穫量が前回予測より少ないことが確認されている。逆に、トルコとパラグアイではわずかに上方修正されている。2022年の世界の小麦生産量は、今月270万トン下げて7億8,120万トンとなったが、それでも過去最高を更新したことに変わりはない。前月比の減少は、大部分がアルゼンチンで長引く雨不足が収量を悪化させ、生産見通しが低くなっていることによる。一方、英国とカザフスタンでは予想を上回る収量が見込まれ、生産量の見通しが上方修正された。2022年の世界のコメ生産量は、2021年の過去最高記録を2.4%下回る5億1,280万トン(精米ベース)になると予想されている。これは11月の予想をわずかに上回っており、主にマダガスカルがこれまでの予想以上の生産であったことと、コンゴ民主共和国、マレーシア、ベネズエラ・ボリバル共和国の生産量が過去にさかのぼって修正されたことによる。
北半球諸国では、2023年産冬小麦の作付けが進んでいる。投入資材価格に対する懸念から、世界の作付け予想に不確実性が生じているが、作物価格の上昇で平均を上回る面積を維持することができるかもしれない。米国では、冬小麦の作付けが急ピッチで進み、11月中旬にほぼ終えた。現在、冬小麦の約4分の3の面積が干ばつの影響を受けており、グレートプレーンズ(中西部の平原)南部では来年初めまで乾燥状態が続くと予測されているが、その他の地域では多少の改善が期待される。欧州連合では、冬小麦の播種が概ね良好な気象条件の下で行われており、作物の初期生育は問題ない。しかし、イタリア北部の一部など、年初に降雨不足となった一部の地域では、降雨量の増加が望まれている。ウクライナでは、戦争によって畑へのアクセスが制限され、深刻な投入資材不足が続いているため、小麦の作付けが過去5年平均より40%減少すると予想されている。ロシア連邦では、豊富な雨量が圃場準備を妨げ、また国内価格が相対的に低いことから、冬小麦の作付け面積が昨年より減少し、平均に近い水準になると予測される。アジアでは、中国(本土)およびインドで、政府により小麦の最低支援価格が引き上げられ、高い国内価格により小麦の作付けが平均を上回っていると見られる。パキスタンで6月から8月にかけて発生した大規模な洪水の影響で、通常12月までに作付けが完了する小麦の作付面積が減少する可能性がある。
南半球の国々では、2023年の粗粒穀物の播種が始まっている。ブラジルでは、国内価格の高騰とシーズン初めの好天に支えられ、トウモロコシの作付面積は過去最高になるとの公式予測が発表された。南アフリカでは、暫定的な作付計画によれば、トウモロコシの作付面積は昨年より緩やかに減少するが、平均を上回る水準にとどまるものと思われる。南アフリカおよび近隣諸国の天候は、これまでのところ良好であり、作物の早期生育を支えている。
2022/23年の世界の穀物利用率は27億7,700万トンと予測され、11月の予想とほぼ変わらず、2021/22年から0.7%(2,100万トン)減少すると指摘されている。2022/23年の粗粒穀物の総利用率の予測は、11月の前回予測からわずか(120万トン)下げて1億8,400万トンとなり、前シーズンから1.3%減少する見込みである。この減少の主な要因は、トウモロコシを中心とした飼料用大麦、ソルガム、およびトウモロコシの工業用用途が縮小すると予想されるためだ。2022/23年の世界の小麦利用率の予測は、先月と変わらず7億7,500万トンで、2021/22年の水準からわずかな増加(0.2%)を示唆している。これは、飼料用と、量としては少ないが、その他の用途の減少が予想されるのに対し、食用小麦の利用が増加すると予測されているからである。2022/23年の世界のコメの利用量は、11月時点より約60万トン多い5億1,900万トンと予測されるが、2021/22年のピーク時から0.6%減少している。
2023年のシーズン終了時点における世界の穀物在庫の予測は、11月の予測から110万トン縮小され、8億3,900万トンとなり、前シーズンから2.2%(1,850万トン)減少し、ここ3年間で最低水準となることが示された。この水準だと、世界の穀物在庫対使用比率は2021/22年の30.9%から2022/23年の29.3%に低下し、2013/14年以来の最低水準となるが、依然として比較的良好な供給状況であると言える。粗粒穀物の総在庫は、主にウクライナのトウモロコシの在庫が生産量の見込みを下回ることから下方修正され、当初予想より210万トン減少すると見られる。今月の修正により、粗粒穀物在庫の予測は3億4,500万トンとなり、当初予想より6.1%減少した。これは主にトウモロコシの世界在庫が6.8%減少したことに起因する。世界の小麦在庫の見通しは、前月の見通しである3億トンに近く、期首の水準を2.4%上回ると予想している。増加の大部分は中国(本土)とロシア連邦に集中すると予想され、インド、欧州連合、ウクライナ、米国など他の数カ国での減少を上回るとみられる。FAOは、コメの輸入業者が保有する備蓄の予測を合計50万トン上方修正した結果、2022/23市場年末の世界のコメ在庫は、2021/22年のピークから1.6%減少するものの、史上2番目に高い水準である1億9,400万トンと予想している。
2022/23年の世界の穀物貿易は4億7,200万トンと予想され、11月の予想から270万トン増加したが、それでも2021/22年の記録レベルから1.9パーセント(920万トン)縮小する見込みであることが示された。12月に230万トンの上方修正を行ったものの、2022/23年(7/6月)の粗粒穀物の世界貿易は、2021/22年の水準から2.6%減少し、2億2,500万トンになると予測されている。今月の増加は、世界のトウモロコシ貿易が210万トン上方修正された結果であり、主にブラジルの輸出ペースが引き続き好調であることと、国内生産の減少を補うために欧州連合で予想される輸入需要の増加を反映している。2022/23年(7/6月)の小麦の世界貿易は、1億9,400万トンと予測され、2021/22年の水準から0.8%減少するとみられている。最新の世界予測は11月の数値に近いものの、12月には一部の国の輸出予測に修正が加えられた。オーストラリアとロシア連邦の出荷予定量は、供給が順調で輸入需要が高いことを理由に主に上方修正され、アルゼンチンの輸出は国内生産量の見積もりが引き下げられたことを受け、欧州連合は競争激化を理由に下方修正が行われた。FAOの2023年(1/12月)のコメの国際貿易予測は、2022年の5,450万トンから5,290万トンに据え置かれ、年間2.9%の減少が予測されているが、これはインド、ブラジル、パキスタン、ウルグアイ、アメリカによる出荷の減少予測を主に反映している。
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