「すべての人に健康を」は、1978年、旧ソ連・カザフ共和国のアルマアタでWHOとユニセフが共催した「第1回プライマリー・ヘルスケア国際会議」で提唱されたコンセプトです。アルマアタ宣言は、南の世界(途上国)で人々が自らの命と健康を守り、作り出すプライマリー・ヘルスケアの運動のきっかけとなりました。アフリカ日本協議会の国際保健プログラムは、この「すべての人に健康を」を実現するために、政策提言とネットワーキングに取り組んでいます。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への取り組み

UHCってなに?
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は、すべての人が、高い医療費に悩まされることなく、必要とする質の高い保健・医療サービスを受けることができることを意味します。国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)のゴール3(保健)にも、UHC達成というターゲット(SDGs3.8)があり、それぞれの国の社会・経済・政治状況を踏まえながら、UHCの達成に向けて取り組んで行くことになっています。AJFは、2013年頃から、このUHCに関する取り組みに直接かかわっています。

<詳しく知りたい方へ>
UHCとは:AJF『NGOのためのユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ハンドブック』をご覧ください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000079718.pdf
UHCを進める国際機関のガバナンスに参加するAJF
政府、市民社会、国際機関、民間企業が連携してUHCを進める国際的な調整機関が「UHC2030」(事務局:スイス・ジュネーブ)です。UHC2030への市民社会の参画は、「市民社会参画メカニズム」(CSEM)というネットワークが担っており、AJFはそのメンバー団体の一つです。市民社会はUHC2030の運営委員会に3つの議席(北の世界(=先進国)の市民社会、南の世界(=途上国)の市民社会、そして保健に関して脆弱な立場におかれたコミュニティ)を持っています。AJF国際保健ディレクターの稲場雅紀は、2021年~22年の2年間、UHC2030の「北の世界」代表運営委員として、同機関のガバナンスに関わっています。
<詳しく知りたい方へ>
UHC2030ウェブサイト(英語) https://www.uhc2030.org/
市民社会参画メカニズム(CSEM)ウェブサイト(英語) https://csemonline.net/
日本のUHCの現実は?
2019年9月、ニューヨークの国連本部で「UHCに関するハイレベル会合」が開かれ、野心的な宣言が採択されました。その検証を行うフォローアップ会合は2023年に開催されますが、それに向けて、宣言で約束されたUHCの課題が各国でどれだけ実現できるかが大事です。UHC2030は、「UHC誓約進捗状況調査」(State of UHC Commitment Survey)というプロジェクトを立ち上げ、政府のレポートのみならず、市民社会の団体や保健課題に取り組むコミュニティなどが、各国の保健・医療アクセスにかかわる状況を調査して報告することを呼びかけました。世界各国の市民社会は、このプロジェクトに参加し、各国のUHCの状況を検証して報告し、同プロジェクトでは、世界UHCデー(12月12日)に、世界の報告をまとめて「統合報告書」を発表しています。
<詳しく知りたい方へ>
UHC2030「UHC誓約進捗状況調査」について(英語)
https://www.uhc2030.org/what-we-do/voices/accountability/state-of-uhc-commitment/
2020年の統合報告書(英語)
https://www.uhc2030.org/fileadmin/uploads/uhc2030/Documents/Key_Issues/State_of_UHC/SoUHCC_synthesis_2020_final_web.pdf
アフリカ日本協議会は、2021年、UHC2030の「UHC誓約進捗状況調査」に参加し、特に日本社会の中で弱い立場に置かれている人々やコミュニティにおける保健・医療へのアクセスの状況を調査しました。そこで分かったのは、UHCの達成に相対的に近い状況にある日本においても、弱い立場にあればあるほど、保健・医療へのアクセスにかかる労力やコスト、時間は大きくなる、という現実でした。レポートはこちらから見ることができます。
UHC誓約進捗状況調査
https://ajf.gr.jp/globalhealth/healthforall/report/
■AJFのユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの取り組みは下記ページで紹介しています。![]()
HIV/AIDSなど三大感染症への取り組み
なぜエイズ・三大感染症に取り組むの?

AJFがエイズに関する活動を始めたのは、2000年です。このころ、アフリカをはじめとする途上国では、エイズがまさに「パンデミック」として猛威を振るっていました。HIVの増殖を抑制し、エイズの発症を抑える画期的な「多剤併用療法」は1996年に実用化されていましたが、一人当たり年間治療費が200万円と極めて高額で、途上国の多くの人々には入手不可能だったのです。高価格の秘密は製薬企業の知的財産権でした。「命の格差」をなくそうと、南の世界と北の世界のHIV陽性者や市民社会が連携して立ち上がり、大きな社会運動が展開されました。結果として、2002年までに、知的財産権を突破する「強制実施権」の発動の自由が世界貿易機関(WTO)で認められ、世界どこでもエイズ治療薬にアクセスできる体制を作っていく方向性が確立したのです。AJFはこの運動に日本から参画し、アフリカやアジアのHIV陽性者の運動との連携・協力関係もできました。
一方、世界の多くの地域で、HIVは特に、差別や偏見にさらされ、社会的・経済的・政治的・文化的に弱い立場に置かれたコミュニティの間で集中的に感染拡大してきました。差別をなくし、HIV/AIDSという病気を理解し、医薬品の値段を下げ、検査・医療にアクセスできるようにする…エイズの課題は、最も厳しい状況にある人々を含む「すべての人に健康を」の課題そのものです。
・関連記事
抗エイズ治療へのアクセス:その過去・現在・未来
https://ajf.gr.jp/globalhealth/aids-treatment/
「治療アクセスと知的財産権の闘い」の歴史と現在
https://ajf.gr.jp/globalhealth/aids-treatment/history/
世界のエイズの状況と市民の取り組みを伝える

AJFでは、2000年以降、世界のエイズの状況や市民の取り組みを、ウェブサイトで伝えてきました。また、アフリカやアジアのHIV陽性者やHIVの影響を受けたコミュニティのリーダーたちを日本に招へいし、生の声を聴いてもらうという取り組みもしてきました。
また、2004年に創刊した、世界のエイズ問題の最新情報を伝えるメールマガジン「グローバル・エイズ・アップデート」は、2000年代以降の世界のエイズの歴史や取り組みを知る貴重な情報源となっています。
・AJFのHIV/AIDSに関するニュース・情報記事(旧サイトへ/2017年2月まで)
ニュース・インデックス(時系列)
https://ajf.gr.jp/lang_ja/db-infection/index.html
事項別インデックス
https://ajf.gr.jp/lang_ja/db-infection/content_index.html
国別インデックス
https://ajf.gr.jp/lang_ja/db-infection/country_index.html
・メールマガジン「グローバル・エイズ・アップデート」登録はこちら
https://www.mag2.com/m/0001690047
・「グローバル・エイズ・アップデート」の記事をウエブで公開しています。
http://blog.livedoor.jp/ajf/
南の世界の三大感染症対策に資金を供給する「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)

グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)は、南の世界の三大感染症対策に資金を供給する国際機関として2002年に発足しました。同基金の特徴は、基金の意思決定から現場にいたるまで、三大感染症の当事者や市民社会が主要なアクターとして参画していることです。このシステムによって、グローバルファンドは大きな成果を上げてきました。アフリカ日本協議会は、グローバルファンド発足当時から同基金を支持し、必要な資金が確保できるように政策提言やアドボカシーに取り組んできました。

・グローバルファンドへの市民社会の参画について、日本語でパンフを作成しました。「グローバルファンドと市民社会」
https://ajf.gr.jp/wp-content/uploads/2020/09/CRGpamphlet.pdf
・グローバルファンドのウェブサイト(英語)
https://www.theglobalfund.org/en/
・より詳しい記事など:グローバルファンド日本委員会(外部サイト)
https://fgfj.jcie.or.jp/
グローバルファンドに関する政策提言や資金確保等に向けて取り組む世界規模のネットワークが「グローバルファンド提言者ネットワーク」(GFAN)です。AJFはGFANの日本のメンバーとして積極的に活動に取り組んできました。また、アジア太平洋やアフリカのGFANネットワークとの連携・協力も行っています。
・グローバルファンド提言者ネットワーク(GFAN)(英語)https://www.globalfundadvocatesnetwork.org/
・GFANアジア太平洋(英語)https://gfanasiapacific.org/
・GFANアフリカ(英語)https://wacihealth.org/gfan-africa/
UHC達成に向け世界の市民社会と緊急提言実施
UHC実現のための新たなイニシアティブ「ヘルス・ワークス」と日本に設立される「UHCナレッジ・ハブ」への提言を関係省庁に提出
2025年10月に世界銀行・世界保健機関(WHO)、日本政府が共同で発表したイニシアティブ「ヘルス・ワークス」は、今後2030年までに新たに15億人の保健サービスへのアクセスを確保使用というものです。また、日本政府はこの12月6日にUHC実現のための保健財政の研修機関「UHCナレッジ・ハブ」を公式に設立します。これに向けて、アフリカ日本協議会が代表を務める「グローバルヘルス市民社会ネットワーク」と、UHC推進のための国際機関「UHC2030」のための「市民社会参画メカニズム」(CSEM)は共同で提言書をまとめ、日本政府(財務省、厚生労働省)に提出、意見交換の機会を持ちました。提言書はこちらです。
◎「ヘルス・ワークス」についての提言書 (日本語版) (英語版)
◎「UHCナレッジハブ」についての提言書 (日本語版) (英語版)
Civil Society Policy Recommendation to Achieve UHC Submitted to the Government of Japan
Financial Ministry and Health Ministry Received the Global Civil Society Recommendation on World Bank’s “Health Works” Initiative and “UHC Knowledge Hub” in Japan
The “Health Works” initiative, jointly announced in October 2025 by the World Bank, World Health Organization (WHO), and the Government of Japan, aims to secure access to health services for an additional 1.5 billion people by 2030. Additionally, the Government of Japan (GoJ) will officially establish the “UHC Knowledge Hub,” a training institution for health financing to achieve UHC, on December 6. In preparation for this, Japan Civil Society Organizations Network on Global Health which is chaired by Africa Japan Forum, and the “Civil Society Engagement Mechanism” (CSEM) for the international organization “UHC2030,” which promotes UHC, jointly developed two policy recommendation papers for them. They submitted it to Japanese Ministry of Finance (MOF) and Ministry of Health, Labor and Welfare (MHLW) in November and held meetings to exchange the views on UHC. The proposal document is available here.
Policy Recommendation on “Health Works” (English)
Policy Recommendation on “UHC Knowledge Hub” (English)












