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NGOの連携と市民の力で何がかちとられたのか

What NGOs & CSOs gained through the activities on TICAD4

『アフリカNOW』82号(2008年10月発行)特集記事

斉藤龍一郎と谷村美能里さんに聞く 聞き手:星野智子

斉藤龍一郎(さいとう りょういちろう):AJF事務局長。TNnet運営委員。
谷村美能里(たにむら みのり):ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ) アドボカシー担当。TNnet運営委員。国際基督教大学卒業。2002年にWVJ入団。新規支援者開拓担当を経て、出産育児休暇後、2007年に現職として復帰。国際NGOワールド・ビジョンのTICADIV・北海道洞爺湖サミットへ向けたグローバルなアドボカシーに、ホスト国側から精力的に参画した。
星野智子(ほしの ともこ):AJF理事。G8サミットNGOフォーラム環境ユニット運営委員。


星野: AJF理事の星野智子です。昨年初めに、2008年に日本で開かれる北海道洞爺湖G8サミット(以下、G8サミット)向けて2008年G8サミットNGOフォーラム(以下、NGOフォーラム)が立ち上がったときから環境ユニットの運営に関わってきました。今年はTICADⅣの開催年でもあることから、大きな二つの国際会議として注目していました。どちらにもNGOと政府の対話の機会をもつなど、積極的な取り組みがあったと思います。TICADⅣに向けた取り組みの中でTICADⅣ・NGOネットワーク(TNnet)がどういった成果をあげたのか、市民社会がTICADⅣにどのように関わることができたのか、聞きたいと思っています。TNnetは、2003年のTICADⅢに向けた取り組みを踏まえてつくられたと聞きましたが。

斉藤: TICADⅢに向けてACT2003というNGOネットワークが作られ、TICAD外務省・NGO定期協議を行いました。また、アフリカ4ヵ所で開かれたTICAD地域会合に招へいされるNGOの推薦リストを作成し、TICADⅢへの提言書をまとめました。エチオピア、カメルーンで開かれた地域会合にはACT2003のメンバーも参加しました。TICADⅢ本会合の約2ヵ月前の2003年8月3日には、アフリカからNGOメンバー9人を招いて、国際シンポジウム「アフリカのNGOがやってくる」を開催しました。TICADⅢ前日の9月28日には、明治学院大学国際平和研究所と共催で、来日したNGOメンバーを交えた公開討論会も開催しました。TICADⅢ全体会合のプログラム「市民社会との対話」でACT2003代表の小峯さんがスピーチをしました。
もともと期限を定めてつくられたACT2003は、TICADⅢ終了後、1993年以来のTICADに向けた市民の取り組みをまとめた報告書を残して解散しました。前述の公開討論会でアフリカのNGOから、直前になってTICADに向けた提起をしようといわれても困るという問題提起があったこともあり、2004年にTICADⅣに向けた活動を目指してTICAD市民社会フォーラム(TCSF)が発足しました。
TCSFは、アフリカ3カ国でのパートナーシップ・セミナー開催、アフリカ・アラート通信およびアフリカ政策市民白書の発行、2006年2月のTICAD平和の定着会議および2007年3月のTICAD持続可能な開発のための環境とエネルギー閣僚会議への参加などの活動を行いました。また、世界銀行や在東京のアフリカ外交団と協力して、アフリカの大使が語るコーヒー・アワーを継続して開催してきました。2007年3月に、TCSFがアフリカに関わる活動をしているNGOに呼びかけて、TICADⅣへのアフリカ・日本の市民社会参加、人びとに役立つTICAD、TICADを契機としたアフリカへの関心の高まりをめざすネットワークとしてTNnetが立ち上がりました。
TNnetは、趣意書に賛同するNGOが参加するネットワークです。TCSFが事務局を担い、参加団体による月例全体会合でネットワークとしての決定を行ってきました。当初、2007年10月にアフリカのNGOメンバーが来日する機会を活用して開催するシンポジウムに向けた準備、外務省とNGOの定期協議実施が活動の柱でした。5月にはTICAD外務省・NGO定期協議会(以下、定期協議会)が始まりました。10月のシンポジウムのテーマを「国連ミレニアム開発目標達成のためにTICADができること」とすることも決めました。 振り返ってみると、TICADⅢには関わったことのないメンバーが多いなかで、ACT2003が作った報告書とTICADⅢに関わったメンバーの記憶をたよりに、手探りで定期協議会にのぞみ、シンポジウムの詳細を決めていきました。この過程で、全体会合での議論をよりスムーズに進めるために運営委員会が設けられ、TCSF、AJF、ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)、ハンガー・フリー・ワールド(HFW)、ほっとけない世界のまずしさ、日本リザルツの6団体が運営委員として、議題の整理や全体会合の進行、定期協議会でのNGO側の発言を分担するようになりました。
2007年10月と11月のTICADⅣ地域準備会合での市民社会セッション開催とNGO代表によるゲストスピーチ実施により、12月に開かれた第5回定期協議会のときには、TICADⅣ本会合への市民参加の形態は、NGOの推薦リストを受けたオブザーバー参加承認とゲストスピーカーによる本会合でのスピーチになることがほぼ固まりました。また、目賀田アフリカ審議官(当時)から「(NGOは)具体的な目標を持って、具体的な提言をしていただきたい」との発言もあり、TNnetとして具体的な課題に即した提言をまとめてアドボカシーを行うことが求められる時期に入っていました。
こうした状況を受けて運営委員会は議論を重ね、より具体的に市民社会としての提言をまとめアドボカシーを行った第二ステージに入ることを決めました。そして2008年1月18日に勉強会「TICADとは? 市民社会の関わりのこれまでとこれから」を行い、引き続き開催した全体会合で、参加団体に政策チームもしくはPRチームに参加することを求めたのです。

谷村: 私自身は、ちょうど第二ステージに入る頃、前任者からTICADⅣに向けたアドボカシーを引き継ぎ、TNnet運営委員としてTNnetに参加するようになりました。すでに、日本政府はTICADⅣ、G8サミットに向けて保健、教育、水に関するイニシアティブを出していました。TNnetの第一ステージでは、政策論議に深入りしない、個別イシューを取り上げない、という雰囲気があったそうですが、日本政府が具体的なイニシアティブを打ち出しているのはアドボカシーのチャンスだというNGOフォーラムからの呼びかけもあって、TNnetもアドボカシーに向けて動き出したのでした。
今年1月の勉強会の後、私は政策チームのメンバーとしてアフリカと市民の提言”Voices 2008″をまとめる作業に入りました。横浜宣言の内容が決まると予想された3月半ば過ぎにガボンで開かれたTICADⅣ閣僚級準備会議(以下、ガボン閣僚会議)に間に合わせるために、子どもが寝付いた後でパソコンに向かい、チームメンバーと分担してアフリカのNGOとも連絡を取り合い、A4版20ページにおよぶ英文の”Voices 2008″をまとめました。
風邪がはやる季節だったので、舩田さんと二人で、子どもが熱っぽい心配だといったやりとりもしながら、作業に取り組みました。時差の関係で、夜中に出したメールに対しては、アフリカ側からすぐに返信があるのに、日中にメールを出しても返信は夜中か翌日という状態でした。

星野: 提言の内容はどうやって決まったのですか。

谷村: 昨年の9月にナイロビで、10月には東京でアジア・アフリカNGOワークショップが開かれ、市民社会の提言がまとめられていました。10月にTNnetが主催したシンポジウムでも、TICADⅣの3つの柱・4つの協力分野に対応して、NGO代表が経済成長・MDGsの達成・平和の定着・環境に関するプレゼンを行いました。今年1月に始まった作業は、これらをもとに提言としてより効果的なものに整理して、教育、平和の定着や環境などの不十分な点を日本およびアフリカのNGOと協議して書き込んでいくというものでした。TNnetは、アフリカの市民社会の声をTICADに届けることも目的に掲げていましたが、伝言ゲームのようにこれがアフリカの声ですと出しただけでは効果がありません。日本側から効果的な提言を行うために必要な情報を提供し、また日本の市民社会の提言を交えながら提言をまとめていくことが必要です。

星野: 環境に関しては、私たちのところにも呼びかけがあったのですが、残念ながら、NGOフォーラム環境ユニットは余力がなくて対応できなかったのです。提言をまとめる力になったのは何でしょうか。

谷村: TNnetを代表してTICADⅣ地域準備会合に参加したメンバーとアフリカのNGOが、現場で話をしながら提言をまとめスピーチの内容を練り上げたという共通の体験が大きな力になりましたね。一本化したまとまった提言の必要性は日本側から投げかけたのです。

星野: 提言を一緒に作ったアフリカのNGOは、どんな団体なのですか。また、提言は効果がありましたか。

斉藤: TNnetがまだ立ち上がっていない昨年2月に、ナイロビで開かれた世界社会フォーラム(WSF)でTCSFはワークショップを開催しました。このワークショップを出発点に立ち上がったCivic Commission for Africa(C-CfA: 市民アフリカ委員会。2005年グレンイーグルスG8サミットに向け当時の英ブレア首相が立ち上げたCommission for Africaの市民版を意味する)、TNnet参加団体がそれぞれに協働しているNGO、アフリカ連合(AU)に向けて「アフリカ諸国は予算の15%を保健に」というキャンペーンを行っているNGO連合など、さまざまなNGOやNGOネットワークと一緒に”Voices 2008″をまとめました。

谷村: 提言を提出したガボン閣僚会議の後、私たちの間ではガボン・ショックというのがあったのです。この会合に出された「横浜宣言」案文と「横浜行動計画」骨子のいずれも、予想以上に問題が多かったのです。TICADⅣの成果がG8サミットにも反映するというのであれば、このままではいけないということで、NGOフォーラムの貧困開発ユニットと一緒になって、政府のさまざまなレベルの関係者に向けてアドボカシーを行いました。こんなことしか書かれていない「横浜宣言」と「横浜行動計画」であれば誰も参照しない、G8も参照できない、と訴える一方で、保健については具体的に何をなすべきかを書いてみせました。「横浜宣言」に「市民参加」が書き込まれ、「横浜行動計画」に具体的な内容の別表が付されたのは、TNnetとNGOフォーラムが一緒に取り組んだアドボカシーの「成果」だと思います。

星野: G8サミットとTICADⅣが日本で同じ年に開かれるというので、アフリカへの注目が集まりましたが、TNnetは、G8サミットに向けた行動にどのように関わったのですか。

谷村: ガボン閣僚会議のときは、保健が大きな課題の一つでしたので、NGOフォーラム貧困開発ユニット保健医療ワーキンググループがアフリカのNGOと一緒に参加してアドボカシーを行いました。それ以前から課題となっていたNGOフォーラムとの共同が具体的に始まったのです。この会議の直後の4月に、G8サミットの一環として東京でアフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)が開かれました。このときNGOフォーラムとTNnetが一緒になって、アフリカから参加するNGOメンバーの数を増やし、また参加する時間と機会を増やすために努力しました。
私自身、NGOフォーラム貧困開発ユニットでも活動していたので、4月に京都で開かれたシビルG8のときは、昼間はシビルG8分科会の司会をして、夜は冨田さん、舩田さん、稲場さんたちとTICADⅣに向けた打ち合わせをしていたのです。寝る時間もありませんでした。シビルG8にも、TNnetが招いたアフリカのNGOが参加しました。このときに来日したC-CfA議長のグスターブ・アサーさんは、そのまま1ヵ月、日本にいてアフリカ市民社会の声を日本の中で伝えてくれました。メディアへの登場も多く、TICADⅣへの関心を高めたと思います。
TICADⅣ終了後、私自身は参加しませんでしたが、G8サミット時には、国際メディアセンターにTNnetを代表して冨田さんがアフリカのNGOメンバー2人と詰めて、記者会見などを行いました。G8サミットでもアフリカは大きなテーマの一つでしたので、質問や取材も多かったと聞いています。

星野: TNnetはNGOとだけ一緒に取り組んだのですか。

斉藤: 昨年10月のシンポジウムは、TNnetと国連開発計画(UNDP)との共催でした。国連機関はTICAD外務省・NGO定期協議にもオブザーバーで参加していましたし、さまざまな形で接触がありました。

谷村: 運営委員がそろってガボン大使館を訪問し、在京アフリカ外交団と話し合いの場を持ったこともあります。在京アフリカ外交団は、TICADⅣ直前の第7回定期協議会の後の官民連携協議会にも参加して発言してくれました。

斉藤: 前回までと違って、TICADⅣの会場が横浜だったので、横浜市がTICADⅣに向け、小学校全校に20万枚のアフリカ理解リーフレットを配布し「一校一国」運動を実施する、国連機関や市内の大学と共同でのシンポジウムを開催するなど、非常に積極的な取り組みをしました。

谷村: 横浜NGOネットワーク(YNN)がTNnetに参加したこともあり、TICADⅣ直前の5月25日に開催したPeople’s TICADでは、横浜市の協力も受けています。People’s TICADといえば、PRチームの活躍も紹介しなくてはいけませんね。TICADⅣ本会合に向けて政策チームがアドボカシー活動に追われている一方で、PRチームの活躍があったからPeople’s TICADが実現したのです。
また、PRチームがアフリカン・フェスタ2008のプログラム委員会で強く主張し、また実際に作業を担ったおかげで、アフリカン・フェスタのメインステージでTICADⅣの課題を紹介するセッションが開かれました。外務省から業務を受託したアフリカン・フェスタ事務局が最初に出した案は、歌って踊ってそれだけ、というものだったのです。PRチームのメンバーが司会を務め、政策チームのメンバーがTICADⅣの4つの協力分野について解説したセッションは、立ち見も出ていたそうです。

星野: TICADⅣではフォローアップ・メカニズムも決まりましたが、TNnetは今後どのようにフォローしていきますか。

斉藤: TICADⅣの開催後の6月27日に行った最後の定期協議会で、木寺アフリカ審議官(当時)は、フォローアップ・メカニズムに関する質問に対して「フォローアップ・メカニズムには、市民社会が参加するとは書かれていない」と即答していました。共催者およびアフリカ諸国が集まってTICADⅣでのプレッジ(公約)の進捗状況を検証する場に参加できなくとも、日本そしてアフリカの市民社会からの評価、要望を伝える場を追及して行かなくてはなりません。一方、同じ場で、「ODAを実施する立場から」と前置きして別所国際協力局長(当時)は、「援助の効果的、効率的な実施のためにNGOとも話をしていきたい」と発言していました。TICADⅣに向け、日本政府がアフリカ向けODA倍増をプレッジ(公約)したことを受け、どのようにODA倍増を進めていくのか、実際に倍増されるのか、そして市民社会がこのODA倍増とどのように関わっていくのか、について協議の場を持つことになり、7月24日と8月7日にTNnetの運営委員が中心となって外務省国際協力局と意見交換を行いました。
TNnetは9月30日に最後の会合を持ち、活動を終了することになっています。TICADⅣフォローアップの取り組み、アフリカ向けODA倍増に関わる働きかけのいずれも、TNnetの成果を引き継ぎアフリカでのMDGs達成をめざすネットワークが担うべき課題です。

谷村: TNnetはTICADⅣに向けた取り組みを行うネットワークという限定があったので、がんばれた部分もあったように思います。今年7月のG8サミットに関わる取り組みが終わって、今はちょっと放心状態です。TICADⅣやG8サミットに関わる取り組みのために後回しにしていた仕事にも追われています。
現在、アフリカに関わるNGOのネットワークはありませんし、アフリカを課題にした外務省とNGOの定期協議も定期協議会以外にはないので、ネットワークの必要性は理解できます。ネットワークとして活動してきたからネットワークを作るというのではなく、目的、活動内容、活動の期限あるいは到達目標を明確にしていくことが重要です。

星野: G8サミットでもアフリカが大きなテーマになりました。そこで語られたことやプレッジ(公約)されたことも含め、アフリカ開発・支援の課題について市民も息長くフォローしていくことが求められていると思います。市民社会にとって、何が一番の課題でしょうか。

谷村: TICADⅣに関連して非常に多くのアフリカ報道がありました。多くの人は、メディアによる報道を通してアフリカ開発・支援の課題に接していると思います。ですから、メディアへの働きかけが重要です。TICADⅣそしてG8サミットのフォローアップ・プロセスにもメディアが注目し、適切な報道を行うよう働きかけていく必要があります。

星野: NGOフォーラムも活動を始めた後で参加するNGOが増え、また課題も明確になってきたということで、選挙による役員選出を含む第二期への移行を行いました。TNnetも運営委員会立ち上げ、参加問題から政策アドボカシーへの転換を明確化する第二ステージへの移行に伴い政策チームとPRチーム立ち上げ、そしてNGOフォーラムとの連携を深めつつTICADⅣ、G8サミットに向けて活動を続けてきたことがわかりました。アフリカでのMDGs達成が困難視されているからこそ、TNnetの成果を引き継いでアフリカ開発・支援の課題に取り組んでいくことが必要でしょう。気候変動への対応などの課題にも、今後多くの方の参加を呼びかけていきたいと考えています。

2008年8月15日
ワールド・ビジョン・ジャパン事務所にて

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