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森羅万象ー日本で感じるアフリカの山ー

イベント概要

  • 日 時 :2008年9月20日(土)
  • 講師 :船尾修さん(登山家・写真家)
  • 集合:9:30 京王高尾山口駅

日本は、古来から美しい自然に恵まれています。その美しい自然のひとつに雄大な山々があります。登山好きの方はそのいくつかに登られたこともあると思います。険しい道のりを経て頂上に到達したときの喜び、すがすがしさはひとしおですね。さて、アフリカの山はどうでしょう。アフリカの自然をイメージすると広大なサバンナや砂漠といった平地を思い浮かべる人も多くいるのではないでしょうか。みなさん。アフリカにも美しい山は沢山あるのです。
今回はアフリカを30カ国以上旅されアフリカの山の魅力を知り尽くしている写真家であり登山家の船尾修さんと共に高尾山に登りながらハイキングを兼ねたレクチャーを行います。午前中は高尾山に登り頂上で昼食、その後下山し、スライドを用い船尾さんの写真を見ながら懇談会を行います。 高尾山の豊な動植物と触れ合いながら日本とアフリカの山の違いやアフリカならではの魅力など、これまで世界各国の山を登ってきた船尾さんのお話しを聞いてみませんか。きっと自然との共生のあり方が見つかるはず…。

講師プロフィール

船尾修さん
筑波大学生物学類卒業後、出版社に就職。社会人山岳会に所属し、登山にのめりこむ。2年半で退職し、旅に出る。この頃、写真に興味をもち独学。アルバイトで資金を作り、世界各地の岸壁や高峰を登る。その後フリーランスのフォト・ジャーナリストとして活動。これまでに訪れたアフリカの国は32カ国と1地域。代表的なアフリカの5000M峰、キリマンジャロ、ケニア山、ルエンゾリをはじめ、アフリカ辺境の知られざる山々にも広く足跡を印している。2001年1月より大分県国見町に移住し、米をつくりニワトリを飼う自給自足生活を試みながら、[日本の原風景]の撮影・取材を通して、[日本人とは何か]という新しいテーマにも取り組んでいる。2006年よりパキスタン北部地震復興支援のNGO「ウジャマー・ジャパン」を主宰。 登山記録:『アフリカ―豊饒と混沌の大陸 赤道編・南部編』や写真集:『UJAMAA―船尾修写真集』、近著『循環と共存の森から―狩猟採集民ムブティ・ピグミーの知恵』など本も多く出版。 詳しくは船尾修オフィシャルサイトへ:
http://www.funaoosamu.com/

イベント報告

講師に加え参加者8名、スタッフ6名、計15名となりました。講師の船尾さんは写真家であり、登山家で、これまでアフリカ30カ国と1地域を旅し、世界中の山に数々の記録を残しています。心配されていた台風も晴れ男・船尾さんのおかげで、当日は見事に晴天で気持ちよく汗をかきながら高尾山へ登り、その後スライドで写真を見ながら珍しいアフリカの自然を知り、そして環境問題を考えるといった内容盛りだくさんの濃い企画となりました。

<第1部>高尾山

山頂までの約1時間半ポイントを選んで、小休憩をとりながら船尾さんにアフリカと日本の山に関する小話をしていただきました。

まずは、ケーブルカー乗り場横からスタートし、琵琶滝を目指します。琵琶滝では「アフリカの水」に関するお話、次にお地蔵さんの並ぶ開けた場所へ移動、ここでは「アフリカの宗教」についてのお話を聞きました。そこからしばらくは3号路をひたすら歩き、イノシシの看板の前で「アフリカの動物」のお話を聞きました。その中から2つのお話をご紹介します。

山登りのはじめに

●アフリカの山と宗教 日本で登山がスポーツとして認知され始めたのは戦後のことです。修験道や密教の興隆からもわかるように、かつてより日本人にとって山は「聖域」として考えられ、人間を超えた大きなものが存在しているとされてきました。 宗教観として、神仏習合(神様と仏様の両方を重んじる)の考えを持つ私たちはアミニズム的な感性を持っているともいえるでしょう。地域の人々がグループになり、親睦を兼ねてお参りに行く「講」と呼ばれるならわしも残っています。

アフリカ人にとって山とは「聖域」であると同時に狩や採集の場でもあります。しかし「登山」という感覚はあまりなく、キリマンジャロなどのメジャーな山以外に観光客が登山に行くことがあまり理解できないそうです。 アフリカでは植民地時代の影響を受け、キリスト教やイスラム教を信仰する人が多く現地宗教と融合して根付いています。 またピグミーと呼ばれる民族は森に入る前に火を焚き、森の神様に対する合図をします。煙をくすぶったり、日本でいう榊と同じように木の枝を用いて祈りを捧げる場面などは日本の風習と非常に近いものを感じます。

●アフリカの山と動物 アフリカで見たもっとも珍しい動物はルワンダの国立公園で見たマウンテンゴリラです。マウンテンゴリラは絶滅危惧種の一種で、現在はこの地域でしか生息していません。その背景にはルワンダの歴史的背景があります。ルワンダで起きたジェノサイドや内戦により、多くの難民が山へ逃げ込み、ゴリラを食用としたことによって生息場所を失われていってしまいました。ゴリラに遭遇できる可能性は低く、公園に入れば簡単に見られるというものではないのですが、トラックハンターと共にゴリラの寝床の跡や糞を頼りにして5頭くらい見ることができました。

ケニア山でクライミング中に見た野生の象が怖くて荷物を置いて、もと来た道を逃げた話、ルウェンゾリ山で遭ったカメレオンの話や、知床半島でクマに遭い食料を盗られた話なども聞くことができました。

頂上で、記念撮影&昼食休憩をとり、下山開始です。帰り道は行きとは違うルートをとり、薬王院を通って行く1号路です。予定時刻をかなり回っていた為、途中からリフトを使って下山しました。 電車とバスを乗り継ぎ、高尾の森わくわくビレッジの会議室に移動して、スライドを見ながら船尾さんのお話を聞きました。

山頂で撮影

電車とバスを乗り継ぎ、高尾の森わくわくビレッジの会議室に移動して、スライドを見ながら船尾さんのお話を聞きました。

<第2部>講演会

船尾さん美しい写真は、どれも貴重なものばかりで、実体験に基づいたエピソードも加わってとても臨場感のあるお話を聞くことができました。

まず、アフリカの主な山にキリマンジャロ、ケニア山、ルウェンゾリ(ウガンダ)と呼ばれるアフリカ三山(5000M以上)とラスダシャン(エチオピア)が挙げられます。船尾さんはキリマンジャロには30回以上も登られています。中でも船尾さんの思い出に残るオススメの山はルウェンゾリ山だそうです。

●キリマンジャロ 標高は5,895M(Cf.富士山3,776M)です。山のてっぺんにあるウフル・ピークが山頂です。4~5日かかって頂上に到達します。基本的な体力があれば誰でも登頂できる山です。ただし、標高5000以上になると空気濃度が1/2にまで下がるため、激しい高山病にかかり、運動能力に影響がでてきます。そのため、実際にウフル・ピークに到達できる人は5割しかいません。晴れて山頂に到達するとゴールドの登山証明書を手にすることができます。

会議室に移動して話しを聞く

●珍しい動植物 アフリカの山には日本では決して見ることのできない、固有の動植物がたくさん生存しています。ネズミのようなハイラックス(実は象の仲間)もそのひとつです。 ケニア山麓で見られるエバーラスティングフラワーはとても美しく、1年中見ることができるドライフラワーのようなものです。少し乾燥した標高3500~4000Mあたりの土地に咲いています。人間の背丈くらいあるセネシオやロベリアといった植物、そして人間は食べることのできないコーヒー豆の野生種などもあります。 アフリカの山が面白いのは、1日に約1000Mずつ登って行くと熱帯雨林⇒草原地帯⇒苔地帯⇒植物や微生物の存在しない土地と植生がドラマチックに変化していく様を見ることができることです。4つの山の中で最も植生が美しいのはルウェンゾリです。

●消滅していく自然 キリマンジャロをはじめとして、アフリカの山は温暖化の影響を受け20年以内には氷河が消失すると言われています。現地でガイドをしているアフリカ人たちもキリマンジャロに雪がなくなってしまったら観光客が来なくなってしまうのでないかと懸念しています。 環境破壊や温暖化の問題というのは話を聞くだけではいまいち実感がわかない部分もありますが、船尾さんの写真を見ると一目瞭然で、20年前と今を比べると明らかに氷河が後退している、雪がなくなっているという状況を目にすることができました。

こんなにも美しい自然をいつまでも見ることができるようにするために、私たちにできることを考えていきたいです。

【参加者からの質問や感想を紹介します】
参加者:オーストラリアのエアーズロックのように、アフリカでも山を神聖視するような文化はありますか。

船尾さん:民族によって違ってきます。例えばキリマンジャロの下の方の草原に行くとマサイ族が住んでおり、彼らは山を神聖なものと考えているという話を聞いたことがあります。彼らにとって山は放牧で移動する際の重要な目印でもあるのです。エアーズロックのように山に対してものすごく精神性を求めるということはあまり聞いたことがありません。 特にチャガ族にとってはポーターという仕事が貴重な現金収入になりますが、(山は)自分たち自身では登るものではないと言っていました。神聖視というよりは、登ってはいけない場所と考えているようです。

参加者:貴重なお話をありがとうございました。今日の講演を聞くまではアフリカに高い山があることも、氷河がある山があることも知りませんでした。年々、後退してく氷河の写真をあからさまに目の当たりにして、食い止められるものであれば食い止めたいし、一人ひとりの心がけで変えることができればいいのにと感じました。でも、そうやって努力したとしても20年が30年に延びるだけだと考えるとむなしくなります。話を聞きながら色々なことを考え、本当に勉強になりました。

【ここでアンケートに寄せられたメッセージを紹介します】
◆アフリカの魅力を伝えていただきありがとうございます。自然体で好きなことを仕事にしている姿がいいなと思いました。(20代女性)

◆いわゆる「アフリカ」ではないアフリカを知ったような気がしました。(40代女性)

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