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誰にとっての食料危機か!?

11月10日国際問題セミナー「食と環境」基調報告

『アフリカNOW 』No.24&25(1997年発行)掲載

執筆:ンディ・マティ・ンドイ(U.S.E.)

1、食料安全保障とは

ローマで食料安全保障の会議がもたれたとき時、食料安全保障の定義が決まった。そこでは、食料が供給量と需要量という点で語られた。しかし、80年代に入ってその定義が変わった。必要量を供給するためどのような価格政策をとっていくのか、という問題になった。そして、健康な生活を送るためにはどの種類のものが、どのくらい量必要か、という栄養ニーズの問題が考えられるようになった。
食料安全保障とは、どのくらい食料が確保できるかと、需要がどのくらいあるか2つを併せて考えることである。
問題と解決方法を考えれば、食料危機の一番の被害者である農村の人たちのなすべき方法が見つかる。

2、セネガルの説明

セネガルは大きく10の地域に分かれており、土壌の質は地方によってばらつきがある。南部は豊饒な土地。中央部は「落花生盆地」と呼ばれており、肥沃度の高い”沃土”である。北部(セネガル川流域)は堅い土壌で、稲作に向いている。
1960年に300万人の人口が、1980年には700万人、1990年には800万人になっている。人口増加率3%。
人口抑制が政策になっている。人口の58%が20歳未満。男女比では女性が多く、そのほとんどが働いている。
経済は、農業、工業、慣行が3つの柱で、中でも第1次産業が重要である。しかし、その第1次産業の生産量は減っている。
農業については降雨量が大きなポイントとなっている。雨量は南部の方が多いが、北部のセネガル川流域では、川の水を使っている。
米の生産量は減っており、都市部での消費用に、米や小麦の輸入量が増えている。
全輸出額の中で水産業関連の占める割合は、1960年5%、1991年には25%。
工業は競争力を持っていない。リン鉱石を輸出することで外貨獲得をしている。
観光が第3の産業ではあるが、ホテルの客室の占有率が低下している。航空運賃が高いので、観光が落ちているのだ。
貿易は輸出振興政策をとってきた。
CFAフランの切り下げが行われ、フランスフランとCFAフランの交換レートが1対50から1対100になった。
財政政策では、公企業を抑制し民間企業の振興をしている。こういった政策は世界銀行・IMFによる政策(構造調整プログラム)によっている。しかし、この政策によって経済がよくなったわけではなく、逆にさまざまな問題が引き起こされている。輸出振興、教育・失業者に対する支出削減などがとられ、人々の生活に響いている。
就学率は89年に57%が91年には54%になっている。人口増加による就学率の低下(特に女性)がみられる。
非識字率は71~3%と識字率が低い(特に女性)。セネガル政府が6つの国内言語の振興政策をとっており、識字政策をNGOと共にとっている。母語を文字にできないのは、自立のために大いなるハンデキャップになっている。
保健衛生に関しては、セネガルでは病院のネットワークが脆弱である。健康問題はアフリカ全体の課題である。出産の際の女性の死亡率が高く、乳幼児死亡率も6,8%(1991年)
失業率も高い。20から40歳の50%が失業。

3、食料状況

主食は、穀物と動物(肉魚)の2つである。タロイモや落花生、タマネギなどの野菜の栽培もされている。
アフリカの主食は穀物が多く(調理方法は地域によって違う)、そのほとんどが国内栽培で、輸入は多くない。ミレットや米、トウモロコシ、フォニオ(本科の一年草。ケシ粒のような実を食べる)と呼ばれる物が作られている。
セネガル北部はセネガル川の水を利用した、潅漑稲作が盛んである。中央部はミレット、南部は米とミレット、栽培面積は多くないがフォニオも作られている。
130万トンが穀物の生産量で、200万トンが消費されている。つまり自給率65%。
需要予想と生産があわない。人口が増えているが、生産が増えないため輸入に頼っている。自国で必要な物を自国で生産できない。
主食の生産という面でも、危機にさらされている。小麦や米の生産については我々の技術水準では問題解決につながらない。

4、食料問題の原因と解決方法

・なぜ生産量が少ないのかを環境の視点からみるとする。干ばつにより土地が砂漠化(土地が塩類集積)する。それでもさらに耕作することにより、劣化が進み、作物の生産料が低下するということだ。
・農民は土地を肥やそうとしたり、作物を変えたりするがうまくいかない。
・経済状況はアフリカ全体にかかる問題である。国際市場に参入ができず、自給用作物生産より輸出作物生産を重視しているが、利益追求が豊かさにつながらない。
以前、食べ物に関しては、生産者間に協力関係があった(穀物生産者と漁業などの物々交換。固い協力関係があった)が、利益追求型の農業になったおかげで、こうした協力関係が崩れた。

また、利益追求型の農業は自給率をあげることに結びつかない。それは、生産者(小規模農家)がお金を借りられないといったことや、土地政策も現実に沿っていないなどの問題があるからだ。CFAの切り下げでコストが上がったことも打撃である。
この様な問題が相まって食料不足が生じた。
手作業の農業であり、生産におけるロスも多い(生産物のロスは15%)。農民が都会に行って働くようになった。また、小麦や米を輸入することで嗜好が変化し、国民がそれを望むようになった。そして、構造調整プログラム導入によって通貨が切り下げられ、実質所得が低下したことで人々の購買力が減り、消費指向の変化も生まれた。
さて、動物蛋白質のニーズに関して、畜産はどのように働いているか。
牛の飼養の頭数は増えていない。セネガルでは動物蛋白質の年間消費は年間1人あたりわずか10キロ未満。牛乳は伝統的な手法で生産消費(自家用)されている。家畜生産の増加がないのは、餌があまり作れないことも理由である。
食肉の輸入は輸入量全体の68%。関税が高いので以前より輸入量は減っている。しかし、牧畜民は自分たちの家畜を売ることはしない。
漁業の役割も大きい。沿岸漁業が盛んで、その90%以上が自家消費されている。約38万トンが(1993年)年間漁獲量。ただし輸出も多く、国内のマーケットにはあまり出回らない。問題は加工。漁獲量の25%は加工できず失われる。
女性は1日18時間以上働いているが、栄養事情は悪い。栄養摂取においては、量と質両方とも悪化している。
東アフリカには食料関連の国際機関もある。すべての機関はアフリカの食料危機を述べており、栄養プログラムはどの政策を出している。
しかし、様々な政策を試みているのに、栄養事情のレベルは一向によくならない。生産高も耕作面積も増えず、人々が疲れているだけだ。
これは、政策にアフリカの農村の人々が関わっていないことが一つの原因である。
複雑な問題だが、農業、畜産、漁業、それぞれに携わる人たちが、手を携えてやらなければならない。

・セネガルで活動しているNGOはいろいろあり、様々な側面から活動しようと協力しており、農民参加のプログラムなどが作られている。

一つの例は、穀物銀行である。食料の少なくする端境期のつなぎとするために作られ、世界市場より安く穀物供給しており、経済的に貢献した。
しかし、こういった活動は一時的な問題の解決はできるが、恒久的な問題は解決できない。農村の問題は複雑で簡単には解決しない。
文化、経済、環境、社会問題などいろいろな問題がある。経済問題は穀物銀行で少し解決したが、まだまだ問題は山積している。
NGOの活動だけでは問題の一部を解決するだけだ。NGOは資金の限界があり、このため本来解決できたかもしれないこれらの問題が、全体では解決できないでいる。
また、農村の人々の物の見方、考え方を変えることが難しい。例えば、環境の問題を提起しても伝統的に環境に対応する概念がないため、農民側から解決方法が出きていない。

・問題が複雑で、村ごとに違う。問題点の検証は大切だが、それだけでは解決できない。あらゆるレベルの解決策を、世界レベルで考えなくてはならない。地方ごとの問題解決策も必要だが、全体として、調和を実現しなければならない。
食料援助でも、従来と違った食料生産に対する援助を考えてほしい。
アフリカの国の間のやりとりと、知恵の交流も大切だ。国内では自給率アップも人々を抱き込んだ形でやらなくてはいけない。政府の押しつけではなく、人々が自分たちに関連のあることだと考えてやることが重要だ。耕地面積を広げられるように、国、NGO、都市住民、農民が一緒にやることも、そして、農業分野に投資することも大切である。
世界の政策が農村の人々を助けるものとなるように、世界、国、地方、でもっとロビー活動をしてほしい。
農村は具体的方策を必要としている。保健、教育、経済も大切であり、人口の都市流入を減らしたり、昔の相互扶助・助け合いを復活することも必要だ。


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