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「ルワンダの悲劇はなぜおきたのか~環境破壊と政治危機~」を聴いて

『アフリカNOW 』No.22(1996年発行)掲載

「もっと知りたいこの国のこと」シリーズとして、8月6日、青山の地球環境パートナーシッププラザANNEXで東京大学教授であり、アフリカ日本協議会理事でもある石弘之氏の講演会が開かれた。”環境”という切り口で、ルワンダをはじめとしたアフリカの現状の問題点を紹介したこの講演会を報告する。


今回話の焦点になったのはルワンダが含まれるアフリカ中央部。民主化し生活水準も上がってきた南部アフリカや石油の恩恵を受けられる北アフリカと違い、この地域が経済的にも大きな問題を抱えているという。
アフリカの中央部には世界最貧国、後発開発途上国40ヵ国中23ヵ国がある。ただし、このような貧しい国ではわずかな人々が国の富の大半を握っているので、年収などの統計はあまり意味を持たない。一方では、自家用機を持っている人がいれば、もう一方では年収が90ドル以下の人たちがいる。そういう国では平均を取っても何にもならない。平均で云々というのには気をつけなければならない。
この地域の問題が吹き出した典型的な国が、今日のルワンダ、ブルンジである。
200年前のマルサスの人口予想は、人口は急激に増え、食料生産は増えないから、早晩食料生産が人口増加についていかなくなると予言した。しかし、過去5000年のうち、今世紀が最も気候が順調な世紀である。気候が順調ということは食料生産が順調ということであり、実際に生産が拡大した。また、農業などに技術革新が起き、食料生産は過去60年間で2倍以上に増え、いくら人口が増加しても賄われると考えられ、マルサスの予測は当たらないと思われた。
しかし、ここで大きな問題が提起された。人口が増えれば食料が足りなくなるという図式ではなく、人口が増えれば自然に対する圧力がかかるという図式だ。
例えば、マキのために木を切り森林が減る、食料生産のための畑が増える、休ませなければならない畑に生産を強いる、などで生態系に圧力がかかる。
人口と食料の間に、環境という問題が入ってくる。人口爆発と環境崩壊、農業崩壊はそれぞれ関連している。そして、畑がやせると土地の奪い合いが起き、それが民族間の争いへとつながってゆく。

昨年のアフリカの人口は7億2800万人。毎年増加率は2.8%。この増加率では、25年で人口が倍になるということだ。この増加率はかつてない高率である。アフリカには広大な土地があるので、人口密度は低い。だが、人間の活動に適した土地は20%くらい。アフリカは広いが、狭いともいえるわけだ。
今のアフリカの人口が2000年には8億8160万人、2025年には14億9580万人になると予測されている。1950年当時、アフリカの人口は世界人口の8%でしかなかったが、現在は12%になり、2025年にはおよそ20%になるという。
これからアフリカは本格的な人口爆発期を迎えるといえるだろう。これから、世界で人口爆発地になるのはアフリカとインド東大陸であり、この地域の対策が、今後の世界的な課題になるだろう。
1950年前後に、アフリカで人口爆発が始まるが、この時いくつかの要因があった。一つにはDDTの散布でマラリアの原因となるツェツェバエが減った。その後も1980年にかけてマラリア対策が行われ、盛んに天然痘撲滅などのワクチン摂取が行われるようになった。そして、乳幼児の死亡率が減った。
それ以外にも、人口爆発のためのプラスアルファがあったかもしれない。
アフリカは多産多死から多産少死となった。これは、少産少死への移行過程であるが、いつ移行するかは見えてこない。また、14歳未満の人口が今44%いる。これは将来の父母の予備軍であるため、ますます人口が増えていくと考えられる。

さて、アフリカは古い大陸である。地殻変動がない。そのうえ、バクテリアや虫の死骸などの養分のある表土の部分が薄い。この表土は木や作物が発育するのに大切なものだが、アフリカの大きな雨は時にこの表土をえぐってしまう。かつては、この雨から表土を守る樹木があった。それが消失しているため、表土が流され、土地が荒れ、砂漠化していく。また、日中と夜間の温度差が激しいのも土壌の劣化に拍車をかけている。特に、熱帯雨林では木は生態系の要になるものだ、しかし、人口爆発によって木が薪として消費されている。加えて、人が増えると家畜も増えていく。家畜は草をえさにしている。家畜も砂漠化の一因となっている。

ルワンダでは1994年から95年にかけて、50万人から100万人が虐殺され、200万人ぐらいが国を脱出し、難民化した。アフリカではこのような悲劇はよく起こるが、これだけの人が虐殺されたのは、第2次大戦以降、ポルポトの虐殺以来である。
この虐殺は、今までルワンダの複雑な人種構成から説明されることが多かった。ルワンダでは90%がフツ族、9%がツチ族、1%がトゥワ族といわれている。このフツとツチが今回争っている。もともと彼らはそれぞれが住み分けをしていた。
ルワンダの人口は1950年に200万人、1960年に300万人、現在は800万人となっている。人口爆発は即、農地の減少につながる。1960年には1世帯あたりの農地面積は2ヘクタールであったが、現在は0.7ヘクタールまで落ちている。これは、アフリカでは生存限界以下。アフリカは土壌状況、気候状況がよくないため、大体1ヘクタールないと食べていけない。
その一方で放牧地も減っている。農地が増えると、必然的に放牧地が減る。かつて50万ヘクタールあったのが20万ヘクタールになっている。これも内戦の遠因になっている。
広大な放牧地を押さえていたツチ族の土地に、農耕民であり人口爆発を起こしたフツ族が侵入していった。これが、この国の紛争の背景にある。また、森林面積も減少した。1960代には森林面積が国土の70%だった。1985年には1万8000平方キロあった。森林が減ると、農地の荒廃が進む。1984年から1991年にかけて農民一人当たりの摂取カロリーは2055キロカロリーであったが、現在では1055キロカロリーに減っている。これはかなり低い。援助で賄うしかない。1980年にルワンダは食料輸入国、被援助国になっている。
ルワンダはモノカルチャーの国である、コーヒー豆が国の経済の大きな核になっている。しかし、1980年代以降、世界的にコーヒー豆が過剰生産となり、価格が暴落した。コーヒーの輸出額が1985年には1億4400万ドルあったのが、1993年には3000万ドルになった。生産量が変わらないのに、輸出額は減ったということは、収入が減ったということになる。
国の経済はたちまち混乱した。1969年(ママ)にはルワンダフランの40%切り下げが行われた。そのために、国民1人あたりの年収は1985年に290ドルあったものが、1990年には180ドルに減ってしまった。これはアフリカでもワースト5に入るものだ。
人口が爆発し環境はぼろぼろになる。畑はだめになり、必要カロリーが採れなくなる。頼みのコーヒー豆は暴落してしまう。それが、今回の内戦の序曲になる。

ルワンダの3つの部族はそれほど明確に分けられていなかった。ツチもフツももともと西アフリカから移動してきたバンツー系の人々だ。
100年前に移植してきたベルギー人が、ツチ族を統治の道具として使った。軍隊にはツチ族しか入れず、ヨーロッパにも留学させた。人種分断の統治を進めるため、人種証明書を作った。御用学者が勝手な基準を作って、ツチ、フツと分けていった。 そのため、ツチ族となった人々は根拠のない特権意識を持つようになった。
1958年には、被抑圧民族であったフツ族がクーデターを起こし、61年位独立を果たした。その時、10万人以上のツチ族が国外に逃れ、抵抗戦線を結成した。
1980年代に食料生産がうまくいったのは、ツチ族の持っていた放牧地を農地に転換したためである。しかし、度々国外に逃れたツチ族が国境に攻撃をしかけるため、不安定化していった。そして、1984年からの大虐殺が始まる。
この虐殺の大きな要因になったのは土地問題だ。人口爆発を起こして、もうあまり土地が無いとなると、ツチ族の持っている土地を奪うのは一番手っ取り早い方法になるわけである。
国内の内戦で、ルワンダで100万人が難民化した。1980年代のアフリカの飢餓のとき、700万から800万人が環境難民化したといわれる。戦争でも環境問題でも人々は難民化する。

石氏は、このような人口爆発があって、土地が不足して、自然環境が悪化して、食料が不足し、それが抗争の引き金となり国家が崩壊するのは、21世紀型環境問題ではないかと語った。
現在、人口密度が高いルワンダ、ハイチ、バングラディッシュはそれぞれ問題を抱えている。
人口が増えるということは、抽象的になんとなく大変だなと誰もが思っているが、人口が増えるということでルワンダが象徴しているような、さまざまな政治問題が吹き出してくることになる。
これからも、人口増加がさまざまな形で、地球のあちらこちらで緊張を生み出していくかもしれない。

(文責:アフリカ日本協議会)


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