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「女性性器切除(FGM)とは何か」を考える映画&トーク開催

悪習は自分たちの手で廃絶せねば!とアフリカ女性は立ち上がった

『アフリカNOW 』No.22(1996年発行)掲載

6月8日(横浜)、9日(東京)でドキュメンタリー映画「戦士の刻印/女性性器切除の真実」の上映ならびにトークの会が催された。映画は、黒人に対する差別を描いた「カラーパープル」でピューリツァ賞などを受賞したアリス・ウォーカーさんらが製作したもので、”女性性器切除”に反対する内容。1994年、カイロ国連人口会議で上映され、賛否両論の激しい議論を巻き起こした。今回の上映会の主催は今年1月に東京で発足した「FGMに反対する女たちの会」。日本では初めての試みながら2日間4回の上演会に500人以上が参集し、女性たちの関心の高さを示した。

昨年の北京女性会議でも取り上げられた女性性器切除(Female Genital Mutilation=FGM)とは、文字どおり女性の性器(主としてクリトリスと外陰部)を切り取ること。切除後に縫い合わせることもある。従来、女子割礼と呼ばれてきた行為だが、男子の割礼がペニスの包皮に切り込みを入れるだけなのに比べてはるかに危険度が高く、形態も同様。そのため、この慣習の廃絶を求めるアフリカ人の中からFGMという表現が使われるようになった。アフリカ、アラビア、アジアの一部など約40ヵ国で、現在も”伝統””文化”という名の下に続けられており、年間200万人の女児、女性が受難に合っている(国連人口基金「世界人口白書」1995年)。目的は”女性の体を清めること”だという。

幼い女の子が、ある日、母親を含めた女性たちの手で特別な小屋に連れて行かれる。そして股を広げた姿で押さえつけられ、治療師(多くは女性)によって性器を切りつけられる…。消毒も麻酔もなく、カミソリや鋭い石などを何人にも使い回しにするため、感染症、合併症、出血多量などで死に至るケースもある。死亡しないまでも賢不全、月経困難症、精神障害などを起こし、女の子たちはその後の人生において、心と体に大きな傷を負うことになる。

FGMは、日本人や欧米人の目から見れば驚くべき女性への虐待行為である。しかし、古代のフェニキア、ヒッタイト、古代エジプトの時代から行われてきた慣習であるために、欧米のフェミニストたちは「民族固有の文化を否定することになる」と対策を講じられずにきた。一方、該当国においては、FGMの被害者が子どもであるために人権問題として明確にすることができずにいた。またこれらの国々には家父長制が強く、FGMをしなければ結婚できない、村八分にされる、売春婦とみなされるなどの社会的制裁があるため、これに反対する女性たちの声が外部的には聞こえてこなかった。

しかし近年、アフリカ各国の女性たち自身がこの慣習の廃絶に立ち上がり始めた。男性社会や宗教団体からの激しい攻撃を受けながら、「FGMは文化ではなく拷問だ」と主張し、組織化を計り、世界に向かって訴えようと動き出した。2000年に及ぶ女性抑圧の歴史に、生命を賭けて抗議し始めたといえよう。

「戦士の刻印」は、こうした動きを伝えるドキュメンタリー映画。アリス・ウォーカーさんがFGMをテーマにした小説「喜びの秘密」を執筆するかたわら、女性映像作家のプラティバ・パーマーさんとともに世界各地を取材し、インタビューを重ねて製作した。FGM廃絶を求めて立ち上がったアフリカ女性や、「伝統だから仕方がない」と4歳の娘の性器を切除させる母親、あるいは施術を行う女性にマイクを向けて、その実体に迫っている。

切除を逃れてフランスに渡った女性は「自分のせいで母親が離婚され、村からも追い出された」と涙を流し、FGMが地域において一家父長制と一体化している困難さを語った。オランダの女医は、緊急病棟に運び込まれた移民の少女が局部から多量に出血していることに驚き、運動に加わった。そして声高に訴える、「FGMは拡散している。もはやアフリカやアラブだけの問題ではない」と。

こうした動きを受けて、日本女性たちも行動を始めた。ウォーカーさんの作品の翻訳者で、映画の日本語監修をしたヤンソン柳沢由美子さんを中心に「FGMに反対する女たちの会」が結成されたのだ。現在、日本国内での仲間づくりをすすめている。

映画上映に続くトークで、ヤンソンさんは自分自身の体験をふまえて問題の根深さを語った。

「1980年、コペンハーゲンの第2回世界女性会議のNGO会議でのことでした。FGMをめぐってアメリカの白人と黒いチャドルをまとったアラブの女性が激しい口論をしていたのです。アラブの女性が”欧米のフェミニストに、この問題に口出しされたくない!”と言い張ったことを、今でもはっきりと覚えています。」

ヤンソンさんはこのとき初めてFGMの存在と、それがクリトリス切除を意味することを知り、ショックを受けたという。

「その場にいた世界の女性たちの多くもまた、初めての女性器切除というものを知って驚き、立ちすくみました。しかし、2ヵ国の女性の激しい口論を目の当たりにして、これを批判することは民族の伝統や文化を否定することになると考え、行動を起こすことをしなかったのです。」

そして90年代に入るまで、FGMのことは世界の女性運動の中でタブーとなってしまった。国際会議においても取り上げられないまま、10年以上の時が流れた。

「しかし世界が沈黙する中で、アフリカの女性たちはこの間、着々と運動の準備をしていました。そして1984年、アフリカの26の当該国が集まってアジスアベバにインター・アフリカン・コミッティー(IAC)というNGOを結成し、それぞれの国内委員会を作ってFGMの廃絶を求める運動を開始したんです。また同じ頃、アフリカからの移民が中心になって、ロンドンに少数者の権利国際組織が作られました。そしてイギリスを始め、移民を抱える国々に、国内でのFGMを禁止する法案づくりを働きかけていったのです」

そして昨年秋、ヤンソンさんは2度目のショックを受けることになった。ニューヨークへワークシャープにいった折り、FGMを施された女性たちの”術後”の写真を見たのだ。

「成功例という写真は、股の間がぺろんとしていて何もない、ただ穴が空いた肉体があるだけ。鳥肌が立つほどむごいものでした。そして失敗例を見ると、これはまさに戦慄そのもの。局部がただれてケロイド状になった人、性器が足に癒着した人、股の間がひきつれてキノコ状になってしまった人…。これは文化ではない、意図的な拷問だ、とはっきり感じました」

こうして「FGMに反対する女たちの会」が生まれたという。

ヤンソンさんの話にもあるように問題は簡単ではない。廃絶への活動は賛否両論がある。しかし、毎日約6000人の女の子たちが望まぬ慣習を強いられているという現実は、あまりにも強烈だ。秘密の儀式であった女性性器切除の実体が明らかにされつつある今、私たち日本人はこの問題に無関心でいいのか。判断は個々人に委ねられるが、関心を持った人のために”会”の活動を以下紹介したい。

テーマは”立ち上がったアフリカ女性といかに連帯していくか”。そのための活動として、資金援助のための募金、広報普及のためのニュースレター発行、また関係行政機関への働きかけなどを計画している。11月30日には、アフリカで活躍する人たちを招き、東京と福岡で国際シンポジウムを開く予定。映画は今秋に東京都中野区のBOX東中野で公開、ビデオも発売している。

※年会費は3000円。

(報告/日本中近東アフリカ婦人会・佐藤安紀子)

※本文にもある通り、FMGに反対する活動には賛否両論があります。その一つとして、現代アラブ文学研究者の岡真理さんが書かれた「『女子割礼』という陥穽、あるいは、フライディの口」(「現代思想⑤」青土社、1996 Vol24-6に掲載)があります。


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