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持続可能な開発に向けたSDGsケニア・フォラームの活動

Activities of SDGs Kenya forum for sustainable development

『アフリカNOW』111号(2018年8月31日発行)掲載

執筆:フローレンス・シェブオ・ムリ
Florence Syevuo Muli:ケニヤッタ大学修士(国際関係・外交学)。2013年から貧困をなくすためのグローバル・コール(GCAP)のケニアでのリーダーを務める。2016 年にSDGs ケニア・フォーラムを創設し、事務局長に就任。TICAD VI では、アフリカ市民社会のサイドイベントの開催、ケニア政府との連携、日本の市民社会との橋渡しなどを担った。


私は、持続可能な開発目標(SDGs)に関するケニアでの取り組みを皆さんに紹介します。皆さんご存知のように、SDGs は世界に平和と繁栄をもたらし、地球の豊饒さを持続させていこうとする世界的な議論から出てきたものです。現在、ケニアでまたアフリカ各地でSDGs への関心と取り組みを進めようという機運が高まっています、そしてまたTICAD(アフリカ開発会議)プロセスのような国際的な合意形成プロセスへの関心も高まっています。というのは、すべての人々に届く開発を実現するためには、アフリカ人自らが開発プロセスを自分自身のものとしなくてはならないからです。

今回は、(1)アフリカにおけるSDGs、(2)SDGs ケニア・フォーラム、(3)ハイレベル・パネル(1)・レポートに向けた取り組み、(4) 政府レポートのモニタリング、(5) SDGs に関する意識啓発、(6) 3 つの次元の統合、(7)SDGs に関するレビューと私たち自身による取り組み、について説明します。

皆さんご存知のように、世界にはSDGs の17の目標を通して対応することが求められる様々な問題、あまりにひどい事象があります。残念なことにアフリカはそのすべての目標において、貧困、教育へのアクセス、飢え、保健システムへのアクセス、男女平等、安全な水および水処理へのアクセスなど、数百万のアフリカ人が直面する状況に対応しなければなりません。これまでのアフリカにおける開発パラダイムを振り返ると、最も貧しい人々を絶望のうちに置き去りにする不平等が常に繰り返されてきました。現在、アフリカの人口は12億人を超えています。人口増加率は高く、そのために起きている課題もとても多い。世界はこの人口増加に対して取り組んでいかなくてはなりません。例えば、アフリカにはすごくたくさんの若者がいますが、若者に焦点をあてた取り組みはごく限られており、それも(SDGs に関する)国家計画の一部として実施されていないのです。もう一つ重要な問題は、国レベルでも、地域レベルでも、国際的にも草の根の人々に目が向けられていないということです。草の根のコミュニティは、開発アジェンダに関して最小限の声を上げる機会すらないのです。

アフリカの多くの国々での政策および法的な取り組みに関して言えば、政府も様々な関係機関も国家計画や省庁の役割を改善しようと試みています。しかし市民社会から見れば、草の根のコミュニティがすべての取り組みに効果的に関わって行くことを保証するためには、もっと多くのことがなされなければならないのです。基本的な問題は、どのようにしてこれらの出発点となり、必要としている人々に向けて求められている取り組みを確実にするために協力しあっていけるのかということです。アフリカ大陸に関わる様々な課題に関する議論は今も続いています。それぞれの国や国際的なレベルで、貧困と政策決定は今日においても問われて続けています。どのようにして経済成長を続け、そしてアフリカ全域で貧困をなくしていくことができる安定した制度的なあり方を確実に実現できるのかが問われています。この問いこそが、アフリカ大陸において最も問われなければならない問いのひとつなのです。

現在、市民社会や学術界、メディアをはじめ、主要な役割を担う人々が集まり、SDGs のためにパートナーシップを組み、モニタリングと評価に向けて協力し合っています。しかし、より具体的な取り組みが必要です。アフリカ大陸において、すべての関係者が倫理的な原則に基づいて協力関係を作っていくための圧倒的な取り組みが確実になされるためにはどうすればよいのか、ということが問題なのです。民間セクターは通常は利益を求めてアフリカへやって来るのであって、人々のエンパワーメントにために来ているわけではありません。私たちは、関係者による取り組みを第一に、最も周辺化されているすべてのアフリカの人々の優先的な利益にしていくためにどうすればよいのでしょうか。

ここで、アフリカ大陸各地でSDGs に関わって進められているいくつかの取り組みをごく簡単に紹介します。アフリカには、SDGs に先立って、持続可能な開発に向けて作られた「アジェンダ2063」があります。アフリカの多くの国は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「アジェンダ2063」をそれぞれの国のこれからに向けた青写真の中で調整しようとしています。多くの/すべてのアフリカの国は、それぞれの開発アジェンダを持っています。たとえば、ケニアには「ビジョン2030」があります。ですから、アフリカのすべての国々は、それぞれの開発アジェンダを「アジェンダ2030」そしてアフリカ独自のアジェンダである「アジェンダ2063」に合わせて調整しています。ここに、日本を含むアジアの国々が手伝うことのできるポイントがあります。それは、アフリカ諸国が直面する国際的、地域的、そして国レベルの諸課題への取り組みを調整する支援をすることです。

もう一つ取り組みが開始されていることとして、アフリカ大陸にいくつものSDGs に関するフォーカル・オフィスができました。政府の省庁が設けたフォーカル・オフィスもあり、省庁レベルでもSDGs 達成をめざす政治的意志ができます。ケニアでは、地方分権化・国家計画省(Ministry of Devolution and Planning)が設けています。これらの開発アジェンダが国家開発計画に反映されれば、政府レベルで予算が付されることになります。

また、政府、市民社会、民間セクター、学術界そしてメディアといった様々な関係者が一堂に会するSDGs 委員会も設けられています。ケニアでは、「インター・エージェンシー委員会」と呼ばれており、地方分権化・国家計画省(のSDGs ユニット)が主宰し、SDGs 達成をめざすすべての関係者が参加しています。この協力関係を通して、私たちははじめて、周辺化された集団を念頭に置いた「誰一人取り残さない」(leave no one behind)ためのコミュニティ対話を行いました。その中で、私たちは周辺化された人々の中でも課題を抱えた集団に注目し、市民が声をあげていくことを促すためにSDGs を広め、関心を高めることをめざしました。今では政府もこれらの取り組みに関心を示し、人々の声を集め、誰一人取り残さないすべての人々の参加を実現するために協力していこうとしています。こうした動きは、どのように物事が進み、どのようにして協力関係を作り、お互いに学び合っていくのかを具体的に示しているという点でも重要です。

SDGs ケニア・フォーラムは、2015年にSDGs が採択された後、それまでポスト2015に関する取り組みを行ってきた市民社会組織が集まってつくられました。この点は、日本のSDGs 市民社会ネットワークと同じだろうと、私は考えています。SDGs ケニア・フォーラム設立の中心的な目標は第一に、開かれた声、開かれたプラットフォーム、考えの近い協力者のグループや政策提言に焦点を置いたグループをつくることができるために、調整されたアプローチをつくり出すことです。第二に、地域の人々が中心となる活動、人々自身が開発アジェンダを主導し、自らのものとしていくことのできる取り組みを促すことも目的です。さらに、エビデンスに基づいた開発の取り組みを妨げるデータ・ギャップを最小化するための活動のあり方を模索しています。まとめると、私たちは、国際機関にも国内のコミュニティに基盤を置く組織(CBO)にも開かれた一つのプラットフォームに結集し、SDGs という一つの目標に向けて、大きな組織も小さな組織も共に得るものがあるという状況をどうやって作って行くのかを念頭に置いて活動しています。これまでに、100近い組織、一国レベルの組織、国際的な組織そしてCBO が、私たちのネットワークに加わっています。適切な働きかけとプログラムを持ってのぞめば、さらに多くの組織が参加し、さらに多くの経験や知見を反映させることができると考えています。

SDGs ケニア・フォーラムを通して人々の関与を高めるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。先ほど紹介したコミュニティ対話を行った中で私たちは、ケニアの多くの人々が今日に至るまで、2015年に終了したMDGs(国連ミレニアム開発目標)についてまったく耳にしたことがなかったことを知りました。コミュニティは、対話を主導する地域のプラットフォームを必要としているのです。SDGs ケニア・フォーラムは現在、コミュニティが主導するプラットフォームを支援しています。

パートナーシップを進める取り組みも行っています。パートナーシップに関しては、あまりに多くの活動が特定のCBO に集中し、重複やリソースの無駄が生じないように、様々な関係者に働きかけることが重要ですし、共同の取り組みを促すことも重要です。一つのプラットフォームに参加するさまざまな組織が、違った分野の活動の状況、たとえば人権分野で活動する組織の中で、どの組織がジェンダー問題に関わっているのか、子どもの権利に関わる組織はどこか、といったことをどうやって知ることができるようにするのか、どうやってすべての参加組織がwin-win の協働をできるのか、ということが課題です。

調査と情報提供の取り組みもたいへん重要です。というのも、ケニアで私たちが接する統計やデータには、今日においても、村レベルでの開発や周辺化された集団、障害者など、コミュニティレベルの情報がほとんどないか、あってもごく限られているからです。どうやってエビデンスに基づいた取り組みを進めることができるのでしょうか。先に触れたように、私たちはケニアの国家ビジョン2030、アジェンダ2063、アジェンダ2030 を比較・対照して検討し、その結果をウェブサイトで公開しています。この結果を政府にも提示し、ケニアの国家ビジョン2030の評価に使うことができました。市民社会にとって、他の分野の関係者との協力を実のあるものにしていくことは、SDGs 達成のためにもたいへん重要です。

2017年7月10-19日には、ニューヨークで国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)2017 が開かれます。2015年のSDGs 採択をうけて毎年開かれているこのフォーラムでは、SDGs 達成状況について各国が自発的に報告をすることが決められています。昨年(2016年)の最初のフォーラムでは33ヵ国が報告しました。今年は44ヵ国が報告することを明らかにしており、日本とケニアも報告します。ですから、報告に向けた取り組みをどう準備していくのかについて話し合うことは重要です。SDGs ケニア・フォーラムが、SDGs 達成に向けた取り組みの一環としてレポートの準備を進めていることによって、SDGs ケニア・フォーラムに多くの組織が参加するようになりました。

SDGs ケニア・フォーラムのメンバーは、タイムテーブルに沿って、市民社会レポート作成に向けた取り組みを進めてきました。ケニア政府との交渉も行いました。CSO はレポートを作成して政府に提出する。政府は44省庁からの報告を受けてレポートを独自に作成する。CSO のレポートは、民間セクターのレポートと同じように、政府の手でナショナル・レポートに統合され、市民社会に関するセクションが設けられ、課題に対するコメントも収録される、ということになっています。そこで、参加組織に報告の対象となる目標に関するレポートを依頼しました。今年(2017年)の対象となる目標は、SDGs の目標1、2、3、5、9、14、そして17 です。目標17に関する報告は毎年行われることになっています。しかし、私たちは参加組織から目標16に関する報告も受け取っています。というのは、ケニアにおいて目標16への注目がまだ十分ではなく、また、きわめて重要なものだからです。いくつかのグループに分かれ、それぞれのグループが別々のゴールに関する報告をまとめました。それぞれの目標に関する多様な報告をとりまとめるために、報告はドラフティング・チームに集約しました。フィードバックを得るために最終ドラフトを参加組織に提示しました。その後、フォーラムは政府にドラフトを提出しました。その時までに、政府も全国レベルのドラフトを準備していました。現時点で、フォーラムの報告書は編集担当者の手で内容を確定し最終化されているところです。これから2週間以内にケニア・チームのためにとりまとめた報告書を公開できるでしょう。

以上のことをまとめてみると、SDGs ケニア・フォーラムは、報告書を作成することによって第一歩を歩み出しました。これから協働の取り組みを進めていきます。SDGs ケニア・フォーラムはHLPF の期間中、ケニア政府と一緒にサイド・イベントを開催します。そのサイド・イベントで、CSO はどのようにして全国的な協力関係が構築されてきたのかを紹介します。また私たちは、日本のSDGs 市民社会ネットワークと、南南、北北そして南北の協力に関するサイド・イベントをどうやったらうまく協力し合ってやることができるか相談しているところです。北は日本、そして南はアフリカになります。

現在、ケニアで進行中の自発的進捗評価(Voluntary National Review)について、市民の中から、政府がモニタリング、市民との直接対話、参加プログラム、コミュニティ・エンパワーメント・プロジェクト、障害者自身による/障害者と共に行うアドボカシーに焦点をあてた特別のプログラムを実施する必要がある、という声があがっています。政策決定過程への参加、障害者のコミュニティ・メンバー、予算と計画作成プロセスにつながる成果もあがっています。他方で、ケニア人障害者への現金給付制度にすべての当事者がアクセスできていない、などの課題も明らかになりました。CSO は、報告作成プロセスに参加したことにより、貴重なアドボカシーに関する情報とツールを得ました。現状ではきわめて脆弱なデータ収集の仕組みをどのようにして改善するのかも課題です。報告を最終的にまとめる中で、個々の目標に対する具体的な提言も明確になりました。それらの提言を地域レベル、国レベル、世界レベルで実行していくことも、市民社会の戦略になります。このようにして私たちは、どのようにして活動を前進させるのか、国レベルでエビデンスに基づいた取り組みを行うのかに関する情報を得てきました。

ケニアのCSO は、SDGs の自発的進捗評価のプロセスに参加したことで、フォーラムのメンバーの多くが十分な時間も専門性も持っていなかったなどの多くの課題があったにせよ、多くのことをなしとげました。人々は、そうした報告のプロセスに参加することがとても重要であることを学んだと言えます。たくさんのことが成し遂げられました。そしてSDGs ケニア・フォーラムのメンバーは、国際的なレベルとのつながりを欠いたままで行ったことについて、どのようにして継続していくのかを学びつつあります。私たち自身が学び、経験を共有していくために、市民社会やCSOがSDGs 達成状況に関する報告を提出することをさらに促していくためには、どのようにすればよいのかということも課題になっています。

(1)ハイレベル・パネル:国連加盟国が自ら用意したSDGs に関する取り組みについて報告する会議で、毎年開催される。国連においてSDGs が採択されたことに合わせて設けられた。


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