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アフリカにおける食料安全保障について

2004年 食料安全保障研究会 第一回会合 記録

日 時:2004年6月19日(土)18:40~21:20
会 場:東上野区民館202号室(東京)
参加者:10名(NGO、研究者、コンサルタント等)
内 容:以下の手順で進められた。

  • 報告:本研究会の活動とTICAD(河内伸介)
  • 提案:ミレニアム開発目標(MDG)について(林達雄)
  • 講演:アフリカにおける食料安全保障問題について(吉田昌夫)

その後、意見交換が進められ、下記が確認された。

  • MDGを目標のひとつとする。
  • 勉強会(月1回)とミーティング(月1回)を継続する。
  • 具体的なテーマを選んでいく。

報告・提案・講演

1.本研究会の活動とTICAD(河内)
事務局担当の河内から報告があり、その後、いくつかのコメントを受けた。

[報告]

セミナー・公開講座を9回実施。個別課題に関する議論は深まった。その結果が、配布した提言書になった。この提言書は、TICAD共催者ではなく、ACT2003に提出した。ACT2003では、農村開発分科会が提言をまとめたが、その中に盛り込むこととなった。また、国際会議に対する提言活動の過程は、アフリカのNGOおよび日本国内のNGOとのネットワーク強化過程でもある。まだまだ不充分だが、TICADの経験はAJFがこれまで行ってきた多くの活動の線上にあったと思われる。
これまでの課題としては、以下の3点を挙げる。
 ・マクロな観点の不足
 ・食料補助金、NEPADなど個別ケース・技術中心
 ・全体マトリックスの不足 他セクターとの連携不足

注:これらの内容は、AJFの会報『アフリカNOW』64号にも所収されている。

[コメント]

  • 食料安全保障というテーマは、確か副題として「農村開発と環境」となっていた。アフリカの最多数が居住する農村地域における食料安全保障が重要なのだという認識が前提としてあり、その中で環境や農業も位置づけて考えてきたと思う。
  • マクロな観点が足りなかったというのは確かにあるかも知れないが、今後の課題ということだろう。また、まだまだ個別のデータが不確かな状態なのであるから、簡単に言えないことも多いかと思う。
  • TICADは、AJFが生まれたきっかけであり、TICADに対する活動を軸にAJFは動いてきた。今後は、TICADだけでなく、より世界的な課題に取り組むことを考えたい。TICADは、その中のひとつとして捉えればよいと思っている。

2.MDGについて(林)

[報告]

  • ミレニアム開発目標(MDG)とは、国連が世界の開発目標として定めた8つの目標のこと。2015年までに世界の飢餓人口および貧困人口を半減させる、という目標は、直接この研究会が関わっているものだが、全て連関している。
  • このMDGは、あちこちで触れられている。TICADでも、このままではどこもMDGが達成できる国はないだろうと、アフリカのある国の代表から指摘された。
  • 重要なことは、世界中のほとんどの国々が合意した目標であるということ。つまり、「国際責任」が生じている、ということ。例えば、食料補助金や気候変動などについて、世界が世界全体の課題として対応した形で動くことを要求されているのだ。
  • 5年ごとに取り組みの方向を見直し、決める区切りの都市を設けている。来年がその第1回目の区切りに相当する。また、2005年、G8サミットが英国で行われる。その中でも、焦点化する課題のひとつと言われている。こちらに向けて、動きを作っていこう。
  • この目標は、国連が作ったものなのだが、NGO側でも主軸になって動けば良いのではないか、と考えている。
  • NGOの世界的な動きというのは、まだはっきりしていないが、Action Aidなどが動き出そうとしており、それらと連携することが必要と考える。日本国内でも第1回の勉強会が始まった。今はそういう段階だ。

[コメント]

  • 補足として3点。東アジアの貧困削減、HIV/AIDSへの取り組み、教育分野の活動等は、既に中心となるNGO、労組などが決まっており、今後も動いていくと聞いている。
  • 昨日、外務省とNGOの定期協議会があった。今回は、ODA政策協議に関する内容だ。MDGに関する質問も出され、外務省(調査計画課)が答えた。「諸外国が取り組んでいる中で動かないわけにはいかない。今年度中には、日本政府としての見解をまとめなければならないと考えている。」ということだ。
  • 内部からの動きにはなかなか対応しないが、外からの動きに対応するのが日本政府だ。
  • 我々は、国際的な争点になりそうな部分できちんと議論を深め、提案すべきだ。

3.アフリカの食料問題(吉田)

配布されたレジュメおよび資料にしたがって、説明がなされた。ポイントとなる点を以下に記す。

  1. 早期警報体制
    • FAO/WFPは、かなり戦略を持っている。ただ、あまりにも大雑把過ぎるのではないかと思う。実際に草の根まで行き渡ったかどうかという疑問がある。ミレミアムゴールの困難さについては、FAOでも自覚しているようで、横浜の事務所(FAO日本事務所)を訪ねた時、「言っていることの実現は、大変なのではないか?」とFAOの人から逆に訊かれた。
  2. 食料農産物統計の整備
    • これまであまりにも穀類の増産、消費にばかり目が向けられてきた。実際には、キャッサバなど穀物以外の生産、消費が非常に多い。特に重量計算の場合、ほぼ食料消費量の半分以上を穀物以外のものからとっている国が、サハラ以南のアフリカにはかなり多い(FAO統計資料より)。
  3. 世界食料調査の開始
    • 「飢餓」と「栄養不足」は異なる。例:江戸時代の日本
    • 栄養不足(食料摂取状況)と栄養不良(生理的状態)の違い:国全体の食料供給量から食料消費必要量を出す。このとき年齢別、性別の人口分布をその国の統計から割り出し、その人口分布に見合ったカロリー消費量を計算する。これを全人口で割ってその国の1人あたり食料消費量を出し、それを食料消費必要量 (通常の国の人口分布では1日1人当たり1800kcal 程度)と比べて必要量以下の食料しか摂取しないであろう人口を計算し、これを栄養不足人口とする。「栄養不足」という。
        →アフリカは、人口の40%が栄養不足。
    • 身体測定法:身長不足・体重不足、身長に比べた時の体重不足などを実測し、それらが最低基準のカットオフ・ポイントに満たない場合、「栄養不良」という。
        →カロリーだけの限界を補うものとして登場した。
    • この点については、いくつか隠れている要素がある。以下の2点を考慮すべき。
      • 病気という要素。
      • 前よりも栄養摂取の良くなっている人口も増えているのではないか。
    • 提案:今行われている「世界食料調査」について、どういうものか皆で確認しよう。
  4. 世界食料サミット(ローマ)
    • ここで、「2015年までに飢餓人口の半減」が目標として出された。
       (1990-92年の栄養不足人口は8億3000~4000万人)
    • その具体的内容と地理的分布を詰める必要がある。
    • 方法論はこれでよいのか?
       →これらを皆で検討していこう。
  5. 世帯・コミュニティレベルでの問題:アマルティア=センの「ケイパビリティ」理解
    • 自給自足のみにこだわらず、食料へのアクセスを重視している。
    • 個々人の所得やSocial Networkを考慮すべき。
       →(村)コミュニティレベル、アフリカの社会政策の変化、マクロの変化
    • コミュニティレベルでの食料増産活動への戦略として考慮すべきこと
      • 農業投入財すなわち種子、肥料、農薬、農機具などの購入困難とその対策。
          →貧しい農民に届けるためには?
      • 民営化の影響:
         (例)農業普及員が削減された。
          →さまざまな技術、物資が農村に届けられない状況に陥っている。
      • 行政の地方分権化への動きは、今の流れとなっている。
          →この流れ自体がよいかどうか、ケースによる。
          →サービス・デリバリーを改善できるかどうか。
      • 商業資本がどのように農民とかかわれるか?
          →流通活動、金融、品質管理、関係の永続性は、どうか?
      • 農民組織の立て直し:協同組合の再建か、新農民組織か?
          →協同組合は、多くの国で機能しなくなってきている。       
      • 伝統的在野組織(local organization)の活用?
          →水利、講、土地紛争処理などに有効か?
      • 自然環境保護と土地制度改革:
          →資源管理の重要性増大、住民へのインセンティブ(自発性誘引)は?
  6. NGOができることは何か
    • 住民主体の開発を支援?「組織作り」と「技術支援」を行う
    • 援助の仕組み改善のアドボカシーとモニタリング(例:KR2の見直し)
    • 情報の共有?現地NGOとの交流と相互啓発が重要

【コメント・意見交換】

T:(抜刷より)アフリカは指標が良くない。「緑の革命」は、長期的な農村開発である。中期計画(6)のミクロ面は、フィリピンとインドネシアで必要。AJFの今回の主要テーマは、食料だけでなく、貧困(所得)・健康・教育などを含んだ広義の「農村開発」とすべきではないか。この5月に中国(上海)で、世界銀行の会議があった。83ヵ国の途上国が参加しているが、これらの総合視点が、国際会議の主流となってきた。

K:MDGは有意義だ。わかりやすいが、不正確だ。ひとつのきっかけにして考えていけばよい。これまでの研究会では、個別のケースを扱うことが多かった。今回のような全体の見取図をつくるということは、確かに必要なことと考える。(6)は、もう少し組み替えましょう。今、アフリカは市場にどう向き合うのかという問題に直面している。ここをMDGと合わせて考える。アジアにおける緑の革命なども国家の関与が大きい。伝統的組織/農民組織がどう「工業監査」や市場とどう向き合うのか? 例えば、フェアトレードの観点を取り込まねばいけない。市場 国家 伝統的な組織、この3つをNGOとして見ていくことが重要。その点では、Global Governanceを課題にするべき。Global Governanceを実現するには、国際的なルールを作ることが必要だ。非常に偏ったGlobal GovernanceであるWTOではなく、他の方法を考えよう。また、センのケイパビリティ(Capability)は、エンタイトルメント(Entitlement)という方が妥当ではないか。

H:今の流れは、それだ。

K:市場の力に任せておくと、うまくない。規則というと難しいが……。パキスタン米が流入している。国内で米を作るには、それらに勝たねばならない。食料自給は、なかなかできていないのだ。そのことは、アフリカ学会で平野氏が指摘していた。アフリカの輸出は、実質的に伸びていない。伸びているのは、鉱物資源なのだ。農産物・食料を輸入し、鉱物資源を輸出しているのが現状だ。

S:片足は必ずアフリカの農村社会におく必要があるだろう。そこで何が起きているのかを見据えつつ、マクロな観点の獲得や政策提言の展開になると考える。AJFの研究会でやるなら、その点は忘れないことだ。

N:アフリカは、農業だけで食えるのか?

Y:難しいのではないか。

F:1998年、日本で行われたシンポ(食糧自立国際シンポジウム)の記録がここにある。世界の農民運動との連携。アフリカは、ベニン、セネガルのNGOが参加した。ビア・カンペシーナという小農民の連合グループ。’Sustainable Agriculture’ と言ってよいかな。さまざまな場において、NGOの動きは影響を与えていると思うが、WTOの場でも、FTAについて、NGO側が一枚岩にはなっていない。IFON(国際有機農業ネットワーク)について述べる。これは、有機の認証システムだが、ある種のせめぎ合いが起きている。これに対しては、フェアトレードの観点がくっつき、共同基準作りが進められている。今秋、ウガンダでは有機コーヒーの会合が行われる。これは、有機農業については、国がサポートする、という図になっており、連帯できないだろうか?

H:そういった活動では、MDGを取っかかりにすることができるか?

F:出来るが、まだまだ。

H:ここと一緒にやればよいだろう、というNGOは?

F:マーク=リッチ氏(米国)のNGOは、がんばっていたのだが、今は全体として拡散期という印象が強い。

H:国連との関係は?

F:国連の文章は、NGOが作らせたという面もある。一緒に動ける部分は活用すればよい。

H:世界の動きの中で、今平和を言うのも白々しいというか、テロとの戦争という観点ではなく、より大きな悲惨として捉えることが必要だと思う。

Y:基本的な立脚点については、今日の話の中で大体出てきたと思う。具体的な作業について確認しましょう。

K:やはり勉強会とミーティングをそれぞれ月1回ずつ行って、進めていくということになるでしょう。

T:しかし、「1人のスピーカーによる勉強会」は狭くなりがちなので「テーマを共有したシンポ」のような方法で進める方が、広い関心を呼び、結論へと導き易いのではないか。

Y:まず、いろいろな統計がかなりいい加減なので、シンクタンクを意識するなら、そこを皆で調べたい。私は、アフリカの食ということに強い関心があるが。

K:そちらの方をどんどん進めていきましょう。あと、林さんや古沢さんが指摘したグローバリゼーションについても、地道に勉強会を続けることでしょうか。、飢餓とMDGをキーワードにし、グローバル化、アフリカの多様性、日本のODAなどに焦点を当てながら考えていければと思います。まずは、全体マトリックスのようなものを作っておきます。

H:本日は、皆さん、ありがとうございました。

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