• info@ajf.gr.jp
  • 〒110-0015 東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル3F

ACTアクセラレーターの2022年に向けた戦略計画・予算案が公表

アクセスの不平等への取り組みに集中、必要な年間予算は234億ドル

ACT-Aが取り組む世界のワクチン格差

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン、予防、診断、治療、保健システムに関する研究開発とアクセスの改善を手がける多国間枠組みとして昨年4月に誕生したACTアクセラレーター(COVID-19関連製品アクセス促進枠組み、以下ACT-A)は、10月15日に第7回運営評議会を開催した。運営評議会では、数か月の作業の末に10月8日に発表されたACT-Aの中間戦略レビューを踏まえて、ACT-Aの役割を少なくとも2022年9月まで延長した。発表された運営評議会共同議長による成果文書によると、会合では、2021年10月から2022年9月までの新戦略計画と予算がおおむね支持され、10月19日までに各委員がコメントを出すこととなった。新戦略計画と予算は10月28日に世界保健機関(WHO)のACT-Aウェブサイト上で公開された。

COVID-19関連製品へのアクセスの不平等に取り組むことが最優先に

新戦略計画の冒頭では、COVID-19パンデミック開始から2年弱の間に複数のワクチンや治療薬、検査などが迅速に開発され、COVID-19への取り組みのあり方が大きく変わったこと、一方で、これらのCOVID-19関連製品へのアクセスにおいて、高所得国と低所得国・中所得国の間に大きな格差が生じ、結果として、これらが普及している高所得国と、普及していない低所得国・中所得国の「二つのトラック」が生じていると分析。そのうえで、ACT-Aの役割について、これまでの「COVID-19関連製品の公平な配分を行うことで、COVID-19の地球規模の解決をもたらす」ことから、COVID-19関連製品へのアクセスが不十分な国や地域にこれらを供給することで、「COVID-19関連製品へのアクセスの不平等の拡大に対して取り組む」ことにシフトすることを宣言している。

ワクチン、検査、治療、PPEについて数値目標を立てた取り組みへ

そのうえで、その役割を果たすための優先課題が示される。まず、(1)ワクチン、検査、治療、PPEのアクセス格差について全体的に把握。そのうえで、(2)ワクチンについては、2022年内に、すべての国で人口の70%のワクチン接種を完了させること、(3)検査については、低所得国や下位中所得国では現在、人口10万人あたりの一日の検査数が50回程度にとどまっているところ、これを倍増して100回に持っていくこと、(4)治療および保健システムについては、今後1年間で世界全体で約2億人がCOVID-19を発症すると推定されるところ、このうち低所得国・中所得国で生じる1.2億人のCOVID-19を治療することと、同じく低所得国・中所得国の270万人の保健医療従事者の命を守ること、そして、これらの取り組みの実施を、(5)各国のCOVID-19対策計画に統合すること、が優先課題として掲げられた。

2022年9月までの必要な予算は234億ドル

この新戦略計画および予算では、これらの目標を実施するために必要な予算額を、合計234億ドル(約2.64兆円)と算出した。この内訳は、まず、研究開発や製品のアセスメント、政策等のいわゆる「上流」課題に8億ドル、格差を埋めるためのワクチンや検査・治療・予防に必要なCOVID-19関連製品の調達に111億ドル、COVID-19関連製品の普及率を拡大し、供給に伴うリスクを提言するために84億ドル、最後に、これらの調達を実施する機関への技術協力や供給の支援に30億ドル、となっている。また、各要素でみると、ワクチンについては69.81億ドル、治療については35億ドル、診断については69.84億ドル、保健システムについては58.81億ドル、その他のコストについては1500万ドルで、合計が234億ドルという数字となっている。

新戦略に向けた市民社会の要求は果たされたか

今回の新戦略計画と予算は、これまでのACT-Aの取り組みに対する戦略的レビューとほぼ同時並行で作られた。この戦略レビューおよび新戦略計画・予算の形成プロセスについては、いくつかのグローバルな市民社会のネットワークが問題提起や政策提言を行っている。問題は、戦略計画・予算にこれらの提起や提言がどの程度反映されたかということである。

まず、大手の国際NGOやアフリカCDC、民間財団などが参加する、ACT-Aに向けた政策提言やキャンペーンのためのグローバルなネットワークである「パンデミック行動ネットワーク」(PAN)は8月23日、参加している多くのNGOとともに、ACT-Aの戦略計画・予算の策定に向けて「COVID-19対応に向けたグローバル行動計画のための枠組み」(Framework for a Global Action Plan for COVID-19 Response)を提案した。この提案では、COVID-19対策に向けた地球規模の指導力の強化や、世界の主要国の指導者が合意する形で「グローバルCOVID-19対応ロードマップ」の策定と実施を求めていた。現在、国際社会では、COVID-19後のパンデミック対策・対応や国際保健安全保障についての議論が進んでいるが、一方で、COVID-19の終息に向けた国際社会が合意したロードマップの策定については、9月に米バイデン政権のイニシアティブで開催された「世界COVID-19サミット」などを超えた形での形成は十分になされているとは言えない。

次に、ACT-Aの運営評議会や各パートナーシップの委員会等に参加する市民社会代表を選出してきた「ACT-A市民社会・コミュニティ代表プラットフォーム」(Platform for ACT-A Civil Society and Community Representatives)も、この新戦略に向けて声明を発表している。このプラットフォームは、ケニアを拠点とするアフリカの保健・医療にかかわる市民社会団体であるワキ・ヘルス(WACi Health、旧「世界エイズキャンペーン」)、英国のHIV/AIDSキャンペーン団体である「ストップエイズ」およびグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)にかかわる市民社会のネットワークである「グローバルファンド提言者ネットワーク」(Global fund Advocates Network)が共同で設置しているものである。こちらの声明は、ACT-Aの戦略計画の策定やガバナンスが、市民社会やコミュニティの意義のある参画を保証していないこと、ACT-Aの保健システムを担当する「保健システム・コネクター」(新戦略計画で、「保健システム・対応コネクター」に名称変更)が十分に統合的にビジョンを共有する形で運営されておらず、保健医療従事者の個人予防具の課題に偏っていること、軽症者向けの経口抗ウイルス薬であるモルヌピラビルの実用化が間近となっているのに、これを活用して「検査・治療戦略」(Test and Treat Strategy)を実施する方向性が見えないこと、総じて、COVID-19対策におけるコミュニティからの取り組みの位置づけが弱いことを批判している。

実際のところ、ACT-Aの新戦略計画においては、低所得国・中所得国や市民社会、コミュニティの代表制を強化することについては、その重要性は認めつつも、ガバナンスのシステムを変革するのでなく、既存の枠組みにおける参画の機会を増やすことで対応する、というにとどめている。また、COVID-19対策におけるコミュニティ・レベルの取り組みの重要性についても、言及はしているものの、具体的に取り組みを強化する方策については述べられていない。このように、ACT-Aの新戦略・予算は市民社会の提起・提案については十分に応えられたものとはなっていない。