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アフリカでのコロナ・ワクチン製造に向けWHO・アフリカCDCとメガ・ファーマ双方から新たな動き

アフリカをはじめとする低所得国・中所得国での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐるワクチンの技術移転、製造、供給をめぐって、世界保健機関(WHO)や南アフリカ共和国政府、同国のワクチン製造企業などと、ファイザー、モデルナなどメガ・ファーマの双方から、注目に値する動きが展開されている。

アフリカの「メッセンジャーRNA技術移転ハブ」設置の動きが進展

7月29日、WHOと医薬品特許プール(MPP)は、南アフリカ共和国の製薬企業であるアフリゲン・バイオロジックス&ワクチン社(Afrigen Biologics and Vaccines)およびバイオバック社(南部アフリカ生物製剤・ワクチン研究所 Biovac: Biologicals and Vaccines of Southern Africa)、南ア医学研究評議会(SAMRC)およびアフリカCDCとの間で、COVID-19に関する技術移転のハブの設立に向けて協力すること、および各機関・企業の役割分担について定める協定書(Letter of Intent)に署名した。これにより、この技術移転ハブの設置に向けた企業、政府、研究機関、国際機関の連携によるコンソーシャムが誕生したことになる。(注1)

WHOは、COVID-19ワクチンをめぐる先進国と途上国の巨大な「ワクチン・ギャップ」の克服にむけ、ワクチン接種が最も遅れているサハラ以南アフリカをはじめとする各地域に技術移転を促進し、ひいては各地域でワクチンの製造・供給を進めていくために、去る4月16日、「COVID-19メッセンジャーRNAワクチン技術移転ハブ」の設立に向けた協力呼びかけを発出していた(注2)。この呼びかけに対して、南アのシリル・ラマポーザ大統領は「COVID-19は先進国と途上国の間の巨大なワクチン・ギャップの存在を明るみに出した。このギャップが世界の保健安全保障を危機にさらす中で、WHOの『技術移転ハブ』設置のイニシアティブは大きな前進である」と述べ、これに積極的に呼応することを表明した。また、アフリカ連合およびアフリカCDCは、「アフリカ自身のワクチン製造能力の強化こそがカギ」と何度も表明してきたCOVID-19ワクチン特別代表でジンバブウェ人のストライブ・マシイワ氏を筆頭に、この構想の実現に協力してきた。

これを踏まえ、南アのアフリゲン社およびバイオバック社を軸に、ハブの設置に向けた動きが本格化し、7月29日の協定書調印による新たなコンソーシャムが設立されたものである。

この「技術移転ハブ」は、南ア・インドが主導し、現在62カ国が世界貿易機関(WTO)に共同提案し、米国が支持している「COVID-19関連知的財産権の一時・一部免除」提案を踏まえたものである。この提案が通った場合、COVID-19関連製品の知的財産権保有者と、各地域でワクチンの製造能力がある主体との間で、より対等なパートナーシップに基づいて技術移転を進め、地域レベルでの製造を拡大する必要がある。特にニーズの高いワクチンについて、先取りして技術移転を進めよう、というのが、ハブ設置を呼び掛けたWHOの意図である。

独ビオンテック・米ファイザーは南アのバイオバック社と連携してファイザー・ワクチンをアフリカで製造・供給へ

一方、COVID-19のメッセンジャーRNAワクチンを初めて開発した独ビオンテック(BioNTech SE)および米ファイザーは7月21日、同社のワクチンが来年以降、南アのバイオバック社により製造、出荷されると表明した(注3)。この声明によると、バイオバック社は来年以降、ビオンテック・ファイザーのワクチンを年間1億本以上出荷することになるという。しかし、途上国での公平な医薬品アクセスを目指す米国のアドボカシー団体「ヘルスギャップ」のブルック・ベイカー教授は、ビオンテック・ファイザーとバイオバックの協力には限界がある、と主張する。ベイカー教授によると、バイオバック社はビオンテック・ファイザーの「子会社」としてワクチンを製造できるようになるだけで、同社が製造したワクチンは価格も含めてビオンテック・ファイザーの独占的管理下に置かれるという。一方、バイオバック社が製造したビオンテック・ファイザーのワクチンは「アフリカ55カ国のみに供給される」ということで、ベイカー教授はこの点については評価している。

WHOやアフリカCDC、南ア政府などとバイオバック社、アフリゲン社との協力で「mRNA技術移転ハブ」構想が進むなかで、ビオンテック・ファイザーがバイオバック社を引き込んだこの動きは、ビオンテック・ファイザーが米国、欧州、アフリカなどによる技術移転や製造拡大の圧力に応答しつつ、知財権免除の動きにくさびを打ち込むためのものであると解釈されている。

一方、ビオンテック・ファイザー企業連合においてメッセンジャーRNA技術を確保してきたビオンテック社は7月26日、メッセンジャーRNA技術を用いてマラリア・ワクチンを開発するプロジェクトを同社が設置したと発表した(注4)。この構想はWHOやアフリカCDCとも連携したものであり、今後の進展によっては、COVID-19を含む、アフリカにおけるワクチン製造の技術移転を促進するものとなる可能性がある。

注1:南アでワクチン製造を促進する新たなコンソーシャム発足(WHO、2021年7月30日)

注2:WHOがCOVID-19メッセンジャーRNAワクチン技術移転ハブ設置を呼びかけ(WHO、2021年4月16日)

注3:ビオンテック・ファイザー、南アのバイオバック社と連携してアフリカ向けメッセンジャーRNAワクチン製造に合意

注4:ビオンテック社、アフリカの感染症の解決に向け新たなプランを提示