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グローバルファンド第7次増資の必要金額は180億ドル

=増資準備会議、2025年時点での中間目標も発表=

資金ターゲットは180億ドル

グローバルファンド投資計画書
グローバルファンド投資計画書「闘う、真に価値あるもののために」

途上国のエイズ・結核・マラリアおよび保健システム強化に資金を拠出する国際機関、「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)は2月23-24日の二日間、オンラインで増資準備会議を開催し、同機関の2024-26年の3年間の必要資金を最低180億ドル(約1兆9400億円)とする資金到達目標を掲げた投資計画書(Investment Case)を採択した。この計画書には、「闘う、真に価値あるもののために」(※AJF仮訳、Fight for What Counts)という題名が付けられているが、これはグローバルファンドの2022年を通じた増資キャンペーンのスローガンでもある。

増資準備会議は、コンゴ民主共和国のチセケディ大統領、ケニアのケニヤッタ大統領、ルワンダのカガメ大統領、セネガルのサル大統領、南アフリカ共和国のラマポーザ大統領という、アフリカ5か国の首脳の共同の呼びかけにより、オンラインで開催された。今後、ここで示された「最低180億ドル」という資金ターゲットに向けて、主要援助国をはじめ、新興援助国、対策実施国、民間財団、民間企業、資産家等による拠出誓約が行われ、9月~10月の間にバイデン米国大統領がホストして米国で行われる増資会議でその成果がまとめられることとなる。

2025年で達成すべき中間目標も発表

今回の増資プロセスは、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で行われる最初の増資プロセスとなる。2020年からの2年間、COVID-19の影響により、三大感染症対策は停滞し、医療機関、コミュニティの保健への取り組みがともに阻害されたことから、2021年は三大感染症対策の成果が大きく損なわれる結果となった。これは、グローバルファンドが発表した2021年の成果報告書においても明らかとなっている。前回の目標金額140億ドルに対して、今回の目標金額が28.5%増額の180億ドルとなっているのは、COVID-19下において三大感染症対策の実施やそれに関わる保健システムの構築がより困難で費用のかかるものとなっていること、対策の後退を巻き戻して、持続可能な開発目標(SDGs)の国際公約である「2030年までの(世界の健康上の重大な脅威としての)エイズ、結核、マラリアの終息」を実現するには、より大きな資金が必要となることが反映されたものである。グローバルファンドはこの資金により、2025年までに以下の目標を達成することを掲げている。

  • HIV:95-95-95目標の達成(HIV陽性者の95%が自らの陽性を知り、その95%が持続的にHIV治療を受け、その95%のウイルス量を検出可能値以下に低下させる。
  • 結核:結核の罹患率および死亡率を2015年比でそれぞれ50%、75%低下させる。結核菌の保菌者の90%(特に、結核対策の鍵となる脆弱な人口層における保菌者の最低90%)が診断され、適切な治療を受ける。結核の診断を受けた人の最低90%で治療を成功させる。
  • マラリア:2015年比でマラリア死亡率を最低75%減少させる。最低20か国でマラリアを排除する。全てのマラリア排除国でマラリアの発生が阻止される。

「180億ドル」は十分に野心的か?

三大感染症対策の資金需要総額とグローバルファンドのシェア

今回のグローバルファンドの資金ターゲットについては、より野心的であるべきとの主張も存在する。COVID-19下において、三大感染症の終息という2030年目標を達成するために2024-26年の三年間に必要な資金は1302億ドル(約14兆円)と推測されるが、今回の資金ターゲットの算出においては、この78%しかカバーされておらず、残りの22%(284億ドル、約3兆円)は空白とされていること、また、この必要額の45%(586億ドル、約6.3兆円)が「対象国の国内資金動員」に振り分けられているが、途上国の財政はCOVID-19の被害と貿易等の途絶などで大きなダメージを受けており、三大感染症に振り向けられる資金の低下が懸念されることが理由である。実際、グローバルファンドに関わる世界の市民社会で構成する「グローバルファンド提言者ネットワーク」(Global Fund Advocates Network: GFAN)は、ここ数年、結核、HIV/AIDS、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)をテーマに行われた国連ハイレベル会合での政治宣言などをもとに独自にグローバルファンドの資金ニーズを計算し、285.5億ドルを資金ターゲットとすべき、との提言を行っている。これに比べると、最低180億ドルという目標金額は、相当抑制されたものということができる。

新たな地球規模の危機のリスクをどうカウントするか

また、この数字は基本、2024-26年という未来において、新たなパンデミックや、「地球の限界」に関連する大きな災害、対策を困難にしかねない大規模な紛争や、新規科学技術の無計画な導入による大量失業や貧困化の急激な進行などが生じる可能性を前提としたものとはなっていない。こうした危機の発生リスクが高まっている現代において、これらの危機の可能性をどうカウントするかは、増資を行う各国際機関にとって、隠された、しかし現実の課題である。各国際機関が自らの活動に集中できるようにするためには、それとと同時並行的に、パンデミックへの地球規模のファイアーウォールとなる仕組みの確立や、地政学的危機、科学技術イノベーションの導入に関わる効果的なガバナンスの構築、および、実際に危機が生じた際に十分な資金が供給できるような地球規模の安全保障体制の構築が進んでいくことが必要である。本来は、こうしたグローバルな危機を見据えた、「持続可能性の危機」に対するグローバルな安全保障の確立について、早急にグローバルに検討し、合意を確立することが急務であるといえるが、現状では、実際に検討がなされている「パンデミックの防止」や気候変動などの地球規模課題以外には、このような検討がなされる可能性は非常に低いのが現実である。