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セネガル:タンバクンダで「食料危機」現象を見る

Senegal : Watching food crisis in Tambacounda

『アフリカNOW』 No.81(2008年6月30日発行)掲載

執筆:楠田 一千代
くすだ かずちよ:1986-89年、青年海外協力隊に参加(セネガル、獣医師)。カナダ留学を経て、国連ボランティア計画(UNDP/UNV)本部参加型開発部に勤務、アフリカ地域草の根開発支援プログラムを担当。現在、途上国援助のコンサルタント会社に勤務。一宮の看護学校非常勤講師(国際交流論)。1998年AJF運営委員、2008年よりAJF理事。


セネガル滞在中お世話になっているドライバーのババカールさんが興味深いことを教えてくれました。タンバクンダ(Tambacounda)州タンバクンダ市にある食料安全保障委員会(Commission de la securite alimentaire)の倉庫脇に止まった、荷をいっぱいに積んだ10台ほどのトラックを指差して、少々憤り交じりに「以前タンバクンダに大統領が送ってきたコメは、業者が隣のマリに売り払ってしまったから、あらためてトラックを送ってきたんだ」と。

タンバクンダ市は、かつて東部州と呼ばれていたタンバクンダ州の州都。セネガルの内陸部にあり、隣国マリとの国境にある交易の町キディラ(Kidira)まで車で2時間少しの位置にあります。マリにコメを横流しするのは難しい話ではありません。しかし、どうやら横流しの米を運搬中のトラックが事故を起こし、それでたくらみが明らかになったということのようです。今年6月7日には、840トンものコメを再びマリに運び出そうとしていたトラック24台がキディラで差し押さえられました。

以前、世界食糧計画(WFP)が買い付けている援助米(セネガル北部のセネガル川流域のかんがい稲作地帯で買い付け、食料不足地域に配布する)の質の悪さが問題になったことがあります。WFPはお金を出すだけで、質についてのチェックはされず、契約どおりの重さと量に沿うように小石を入れて調整する農民もいるという話さえ聞かれました。現場レベルでは、援助食料が意図するように届けられているとは限らないことを示す具体的な例でした。

2008年4月、日本政府はセネガルに対する5,560トンのコメの緊急援助を決めました。この援助は総額14億CFAフラン(約4.5億円。CFAフラン=セーファーフランは旧フランス領の西アフリカ諸国を中心に使用されている共通通貨)に相当し、コメは米国とベトナムから半分ずつ調達しています。

セネガルでは今回の国内市場における穀物不足への対応策として輸入米の再輸出を禁止し、小売での価格上昇を抑えるために、小売りに対し助成金を出しています。しかし、一般に流通されているこれらの輸入米も冒頭で紹介したように一部が隣国に流れていました。別に5月には北部国境から隣国モーリタニアに再輸出されようとしていた67トンのコメが差し押さえられています。モーリタニアではセネガルの国内価格の50%以上増しでコメが売れます。セネガルではコメの流通は自由化されていますので、至極当たり前の現象だとも言えなくないです。政府の特別措置が終われば、モーリタニア向けのコメの流れが再度活発になることもありえます。

古いニュースになりますが、2004年9月のセネガル日刊紙”Wal fadjiri(ワル・ファジリ)”インターネット版に、セネガル政府の穀物備蓄の開始についての記事が掲載されていましたので、以下に概要を紹介します(円換算金額と省庁名は当時のものです)。穀物備蓄の開始は、同年5月3日に開催されたセネガル政府省庁間評議会で国連食糧農業機関(FAO)、WFPやイスラム諸国会議機構(OCI: Organisation de la Conference Islamique)ほかから出された共同提案を受けての動きで、市場における実勢価格と生産者価格のギャップを埋めようとする政策でもあるようです。

「食料安全保障」
セネガル政府は、78億6,500万CFAフラン(約16億円)の予算をかけて、次の3種類の形態で、計41,500トンの穀物(ミレット、コメ、トウモロコシ)を確保する。穀物備蓄倉庫は全州(region)・全県(departement)に設置される予定。
(1) stock de securite(25,000トン):永続的な備蓄。毎年1/3を入れ替え、市場における穀物価格高騰時などに放出して、価格調整をする。
(2) stock d’urgence(12,000トン):洪水や砂漠バッタによる被害などの天災による被害者に対する緊急時救済のための備蓄。2005年度予算でまず3,000トンのコメと1,000トンの現地生産の穀物を調達する。
(3) stock d’aide alimentaire courante(4,500トン):宗教セレモニーのときやダーラ(イスラム学校)、食料不足地域への供給のための頻繁に出し入れのある備蓄。
国内で穀物を購入し、セネガル川流域のコメ生産者農家などを買い支えすることも意識している。担当省はMinistere delegue charge de la Solidarite nationale(国家連帯省)で、現場ごとに、現地における買い付け・分配のための委員会(Commission)を設立するように、大臣から指示が出された。
(出典: “Wal fadjiri”紙、2004年9月8日)

次に、セネガルの首都ダカールに本部があるセネガルのNGO、草の根発展促進のためのセネガル協会(仮訳、ASPRODEB: Association Senegalaise pour la Promotion du Developpement a la Base)の第一副会長サリゥ・サール(Saliou SARR)さんへのインタビュー記事の抜粋を紹介します。このインタビューは、2005年にセネガルの日刊紙に掲載されたもので、当時のセネガルの農業生産計画の実際が分かるものです。今でも状況はほとんど変わっていません。

「政府の農業予算は不充分である」
コメ生産農家は今シーズン、総計50億CFAフランの生産貸付け金にアクセスができたが、肝心の肥料が手にはいらない。まず農民の肥料入手時期が遅れ、そして、政府の補助金は予定の50%に留まっている。このままでは、肥料の不足分を政府助成のされていないTTC(フルに税金がかかった価格)で購入しなければならなくなる。資金が不足すれば、肥料も十分な量を買えず、収量にも影響があるだろう。

Q) 政府が「2005/06年農業計画」でうたっている目標値には達しないということか? コメやミレットでは?
A) コメに関しては問題があるだろう。投入財、特に肥料の尿素の入手が遅れている。それで私たちは、安く十分な肥料を適時に手に入れられるようにするように助成金を政府に申し入れている。

Q) あなた方の今年度の生産目標はどの位か? それは可能なのか?
A) 今年の目標は、籾で20万トン。可能な数字だと思うが、心配している。まず肥料の遅配のために、予定通りの面積を作付けすることができなかった。政府との間では当初30万トンの精米を生産するよう協議してきたが、条件が揃わず、下方修正をして、30,000-35,000ヘクタールの作付けとなった。肥料不足により収量が落ちると考えている。

Q) あなたは毎年、肥料がない、種子がない、農機具が不足している、資金がないといった同じ問題を取り上げているが、政府はそんなことはないと言いっている。なぜだろうか?
A) 政府は「努力している。可能な支援は提供している」と言っているが、もともと政府の支援額が不十分だというのが私たちの主張なのである。たとえば、落花生栽培を85万ヘクタールで行うという目標を立てる。1ヘクタールあたり100kgの種子を使うとして、単純計算すると85,000トンの種子がいることになる。政府の種子支援は40,000トン。十分だといえるだろうか。コメに関して言えば、12,000トンの尿素が必要なのに、政府補助を受けた尿素は6,000トンだけだ。ミレットの種子と肥料についても同じことである。つまり、政府はシーズン当初に決めた目標に到達するのに十分な投資をしていない。年間300億CFAフラン(約60億円、当時)の予算では不充分なのだ。以前、ワッド大統領は、最低1000億-1200億CFAフランを農業分野に回したいと言っていたが、300億CFAフランではあまりにも少ない。国家予算総額の1兆2,000億CFAフランに比しても少なすぎる。

Q) なぜ同じ問題が毎年繰り返されるのか?
A) 私たちが政府に言い続けているのは、生産者を含めた関係者全員の協議のもとで、5~10年のスパンで農業計画を決めるべきだということだ。目的を明確にして、予算をしっかりとつけて、そして実行することが必要だ。どのセクターが問題だとか、作物の多様化を進めようなどと言うべきではない。農民たちの合意も取りつけずに、特別プログラム(Programmes speciaux)を乱発してはいけない。

Q) 特別プログラムは成功していないのか?
A) 特別プログラムは、キャッサバにしてもメイズ(トウモロコシ)にしてもゴマにしても、今年のビサップにしても失敗している。関係者の参加が確保されていないからだ。

(出典: “Wal fadjiri”紙、2005年9月7日)


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