Biofuel boom is accelerating food crisis in Africa
『アフリカNOW』 No.80(2008年3月31日発行)掲載
執筆:AJF食料安全保障研究会
世界的に高騰する食料価格
昨年末以来、カップ麺、パンなどの値上げが実施され、また、飼料価格高騰のために倒産する養鶏農家があいつぐといったニュースが流れている。この食料・飼料価格上昇の背景には、輸送・加工に要するエネルギー源である石油価格上昇、中国などの食料輸入の増加、そして、これまで食料として流通していた米国の余剰トウモロコシのバイオ燃料原料への転用による供給減に加え、小麦の大輸出国であるオーストラリアで干ばつにより収量が大きく減少したなどの事情がある。その結果、世界中で食料価格が高騰し、人々の生活に影響を与え始めているという。
基本的な食料を輸入するアフリカの国々
アフリカの多くの国々は、トウモロコシ、小麦、米など基本的な食料を輸入に頼っている。AJFが国連食料農業機関(FAO)および横浜市と共催した「市民シンポジウム~アフリカの食と農を知る」(2008年1月26日開催)で基調講演を行ったセネガルの駐日大使は、「コメ代金の悪夢」を語っていた。綿花や落花生、水産物などを輸出して得た外貨がコメ代金に消えていくという「悪夢」であった。悪夢から逃れるために、ヒエ類やキビなどアフリカで広く栽培されている作物の新種改良を進めて欲しいと求めていた。現在の食料価格上昇は進行中の事態であり、しかも、これまで国際的な食料援助に大きく寄与してきた米国でトウモロコシをバイオ燃料へ転用する取り組みが急速に進んでいることなどから、食料危機が拡大していくと予想されている。先進国に比べて国際的な食料市場での購買力が弱いアフリカの国々は、食料危機に真っ先に直面することになる。
アフリカに食料危機を招き寄せるバイオ燃料原料作物大規模生産計画
現在、歴史的に先進国市場向け農産物の生産地とされてきたアフリカの国々で、土地・水・労働力などに関して食料作物と競合するバイオ燃料原料作物の大規模生産計画があいついでいる。それに対して、アフリカ各地から危惧の声があがっている。詳しくは、AJFのウェブサイトに掲載されている公開セミナー「アフリカにおけるバイオ燃料問題」(2007年12月5日開催)および「アフリカ農業とバイオ燃料問題」(2008年3月5日開催)の記録を参照してほしい。 日本が地球温暖化対策の一環として定めたバイオ燃料導入計画の数値目標を達成するためには、大量のバイオ燃料を主として熱帯・亜熱帯地域の途上国から輸入しなければならないことに注意を促したい。先進国の地球温暖化対策によって、アフリカ諸国の食料安全保障が脅かされているのだ。
「アフリカの食料安全保障を考える」を出版
AJFは(財)国際開発センター21世紀開発基金の助成を得て、『アフリカの食料安全保障を考える』を出版しました。アフリカにおける飢えている人々、気候や食生活に呼応した多様な営農体系や土壌、WTO農業交渉についての基本的な知識をまとめた章、より具体的に現在の食料安全保障の課題を論じた章、そして、生活を支えることのできる営農のために人々がどのような工夫をしているのかを紹介しつつ、農業開発の課題を論じた章からなっています。ウェブサイトでも公開しました。
1章 アフリカの食料安全保障問題 斉藤龍一郎・松村愛・吉田昌夫
2章 アフリカの食料安全保障問題に関する体験的考察:モザンビークの経験から 田中清文
3章 アフリカにおける「飢えている人々」の規模 -飢餓人口 吉田昌夫
4章 アフリカ農業の多様性を営農体系から理解する 吉田昌夫
コラム アフリカの食におけるイモ類の重要性 志和地弘信
5章 アフリカの土壌の特徴 小崎隆
6章 アフリカ農業開発における留意点 廣瀬昌平
7章 アフリカ開発会議に対する食料安全保障分科会提言(ACT2003)に向けて 高瀬国雄
8章 グローバリゼーションのなかのアフリカ 池上甲一
編者:斎藤龍一郎・田中清文・吉田昌夫
発行:(特活)アフリカ日本協議会 2008年1月