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ケニアの人はユーモラスで、よく歩き、誇り高い

Kenyans are humorous, walk a lot and have high self-esteem

『アフリカNOW』76号(2007年3月25日発行)掲載

執筆:大倉 純子
おおくら じゅんこ:債務と貧困を考えるジュビリー九州運営委員、AJF会員。翻訳書に、『世界の貧困をなくすための50の質問』(原著者=エリック・トゥーサン他)、つげ書房新社(2006)。


アイルランド経由ケニア行き

普段「アフリカの債務が…」などとエラソーなことを書いているくせに、実はそれまでアフリカの地に足を踏み入れたことがなかった。 昨年10月、家族でアイルランドに移住した。3人の子どもたちは英語がほとんどわからず、地元の小学校で悪戦苦闘中。 しかも、急に引っ越し話が持ち上がり、世界社会フォーラム(WSF)に参加するとなると、私の不在中に連れ合いと子どもたちで全部片づけるはめになりそうだ。 ということで、今回、参加すべきかどうか非常に迷ったのだが、結局は行くことにした。 だって、ずっとケニアに行きたかったんだもーん…。 余談になるが、アイルランドは植民地支配をしたことはない(逆に12世紀中頃からイギリスの干渉・支配を受け続け、それは現在でも完全には解決していない)が、援助に関してはアフリカとのつながりが深い。 私たちが移住した頃は、アイルランドのNGOによる「アフリカの子どもたちにクリスマスプレゼントを」キャンペーンが、学校や大手スーパーを巻き込んで大々的に行われていた。 ローカル新聞にも、アフリカ諸国でボランティアをしてきた人たちの報告や、アフリカでの事業のための資金集めのチャリティイベントの記事がしょっちゅう載っている。 先日、6年生1クラス8人という田舎の小学校を訪問する機会があったが、壁に大きくミレニアム開発目標(MDGs)の内容とアイルランド政府が援助している国の世界地図が貼ってあった。 びっくりしたのは、日本が「その他の援助受け取り国」に色分けされていたこと。アジアはやはり遠いのね。 アイルランドでは、チャリティの精神や援助に関する意識が人々の中に根付いているのを感じる。これはやはりキリスト教国であり、宣教の歴史によるものだろう。 またアイルランド政府は、2012年までに援助予算の対GDP比0.7%を達成すると公約している。 連れ合いの親族など、「NGO」という言葉さえ知らない人たちだが、「貧し」くされている国々に対して「豊かな」国が負っている責任に関して、言えばすぐに理解し、受け止めてくれる土壌があるので、そういう面では非常に楽だ。

WSFの場での債務帳消しキャンペーン

ということで、ケニアである。 WSFは毎年、世界の債務帳消し運動のキャンペーン(ジュビリー・キャンペーン)の活動家が集い、現状を分かち合い、これからの戦略を練る場としても利用されている。 会場がアフリカということで、債務問題は今回のWSFでもっとも大きく取り上げられていたイシューといっても過言ではない。 ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ(Wangari Maathai)さんも満員の聴衆を前に債務帳消しを訴え、ケニアの新聞”Daily Nation”にも大きく取り上げられた(1)。 今回のWSF自体の問題は、おそらく他の人が報告していると思うのでここでは触れないが、債務問題の会議の場としてはWSFはよく機能していたと言えるだろう。 2000年以降のジュビリー・キャンペーンの流れを見てきた者としては、南と北の運動がこの間につちかってきた信頼と連携北の運動が南の運動の視点や主張にまず耳を傾け、南も北からもたらされる情報や北のジュビリー・キャンペーンの戦略を尊重する関係が現れていたように思う。 現在、ジュビリー・キャンペーン全体としては、「返済を請求することは理にかなっていない、不当な契約に基づく債務(Illegitimate Debt)」の概念を債権者側に認めさせ、その債務を帳消しさせる、という方向で動いている。 実際に昨年、ノルウェー政府が、 1980年代に自国の造船不況を救済するために行った5ヵ国への船舶の輸出契約に基づく債務を「不当であった」という理由で帳消しにしている。 さまざまなセミナーやワークショップの後、最終日の1月24日朝9時から会場内で債務帳消しを訴えるマーチを行った。 ケニアの債務帳消し運動は、特にカトリック教会が力を入れていて、シスターたちがスラムの子どもたちをたくさん連れてきていたので、にぎやかなパレードとなった。

「アフリカ、ラテンアメリカ、アジアの債務」と書いたダンボールの棺桶を運び、最後に火をつけた。 パレード後、行動提起を含む宣言文を検討した。 行動提起としては、これまで中心的に取り組まれてきたことを元に、次の3点が宣言された。

(1) 「不当な債務(独裁者や役に立たないプロジェクトに、それと知りつつ貸し出された債務)」の概念を広め、国際的認知を得る。
(2) 市民による債務監査を実施し、それを元に政府に債務契約の監査を請求する。
(3) 監査の結果から北は債務帳消し、南は支払い拒否を各政府に求めていく。

さらに、議会や市民が関与して、さらなる債務蓄積をふせぐ仕組みを作っていく必要性から、南北共に、「責任ある貸付に関する議員宣言」に署名してくれる議員を増やすなど、議員への働きかけの重要性が確認された。

ケニアが抱える債務

ケニアは最初、重債務貧困国(HIPICs)イニシアチブ(2)の対象になっていたが、途中から「返済能力あり」という理由で外されてしまった。 しかし、ケニアの債務帳消しキャンペーン団体のKENDREN(Kenyan Debt Relief Network。マータイさんはKENDRENの元代表)の資料によると、次のように指摘されている。 ・ ケニアの人口の約60%が絶対的貧困状態にある。

・ 2005/2006年の債務返済額は、予算の22%を占める1,120億ケニア・シリング(KSh)で、教育・保健医療の予算を上回っている。

・ 現在の債務総額は7,500億KSh(国内債務を含む。世界銀行の”World Development Finance”によると2003年のケニアの対外債務は67億ドル)だが、対外債務に関しては、これまで170億ドルの元金に対し、510億ドルを返済してきた。 また、WSF期間中の”Daily Nation”には、毎年200億KShがあれば、セカンダリースクールの授業料がただにできるという記事が載っていた(3)。 KENDRENのスポークスパーソンのンジュキ・ギセスワ(Njuki Githethwa)さんは、「日本大使館に話に行っても、門前払いで会ってくれない。 現在、国会議員の中で債務帳消しに理解のある議員は残念ながらいない。実は今年の選挙に立つつもりでいる。 自分が当選したら、債務、教育、社会福祉に力を入れたい」と話していた。

【注】
(1) ”Daily Nation”, 23 January 2007
(2) 1996年に世界銀行と国際通貨基金(IMF)が開始した重債務貧困国の債務帳消しプラグラム。
(3) ”Daily Nation”, 22 January 2007