「オゴニの人々の生存のための運動」その後

ラザルス・タマナ氏との対談から

『アフリカNOW 』No.16(1995年発行)掲載

ナイジェリアのケン・サロ=ウィワ氏をはじめとする「オゴニの人々の生存のための運動」(以下MOFOP)のメンバーに対して死刑執行が行われた。すでに本誌でも何度か関連記事を掲載しているが、去る12月3日、協議会事務局長尾関葉子がジンバブエから帰国途中に、トランジットで立ち寄った南アフリカで、ナイジェリア人のラザルス・タマラ氏(Mr.Lazarus Tamara)と面談する機会を持った。タマナ氏はイギリスのロンドンをベースに活動しているThe Ogoni Community Association(UK)の代表。ヨハネスブルグで開かれた作家会議出席のために南ア入りした。同国内で各界の人々と会い、活動に対する支援を要請していた。以下は氏との対談の要旨である。 (文責:尾関葉子)


オゴニはナイジェリアのリバース州のナイルデルタに暮らす40~50万人の民族である。その多くが古くから農業と漁業で生活を営んでいる。彼らの土地「オゴニランド」が作り出す作物はオゴニだけでなく、リバース州全体の食糧を支えていた。

1950年後半にこの土地から石油が発見された。ナイジェリアで大量に石油が発見されたのはこのときが最初である。その後、石油はナイジェリアの経済を支えることになる。オゴニランドで石油が取れることに関して、政府と石油会社は現地の人々がその恩恵を受けることを約束したにも関わらず、その約束は実現されておらず、その上村の中を走るパイプラインが破裂し、周囲の環境が汚染されるなどの事故が起こっている。

石油が取れるようになってから人々の生活は様変わりしてしまった。それまで自給していた食糧を買い求めなくてはならなくなった。酸性雨が作物をだめにし、水源は汚染されてしまった。パイプラインは村の畑の中までも通り抜けているのである。

こうした状況が世界に知られるようになったのは1993年の国際先住民年の初めである。オゴニの人々は作家でもあるケン・サロ=ウィワ氏を通じて自分達の声を上げることができた。

MOSOPは非暴力キャンペーンを展開した。このキャンペーンは一時はシェル石油のオペレーションを止めることに成功したが、その代償は大きすぎた。武装集団がオゴニの村々を襲った。1000人以上の人が殺され、家や畑を焼き討ちされているという。

シェル石油は移動警察をつかってオゴニの人々の活動を阻止しようとしたと言われている(移動警察は暴力を使うことで有名であった)。サロ=ウィワ氏も繰り返し迫害を受けたとされる。

1994年5月21日にオゴニの著名人4名が何者かに殺害された。軍はサロ=ウィワ氏をその殺害を企てたかどで、すぐに起訴なしで逮捕した。4名が殺害された日にサロ=ウィワ氏が別の場所にいたことは明白にも関わらず、である。その上、氏は弁護士やかかりつけの医者と連絡をとることも許されなかった。ジャーナリストは彼との面会を許可されず、MOSOPの副代表と接見しようとした環境団体や人権擁護団体のメンバーは軍によって殺されたり、脅かされたりした。

オゴニに対する軍の迫害は筆舌につくしがたいと言われる。1995年の4月までに1850人のオゴニが殺されており、30の村が破壊され、そこに住む何千人もの人々が国内避難民となった。その他にも153人が不法なことだが、起訴なしで逮捕されている。1994年に逮捕されたクレメント・ツシイマ氏は拷問を受けて殺されてしまった。ベンジャミン・トーウェン氏は避難先である森の中で死んでいた。

10月31日にサロ=ウィワ氏は他のメンバーと共に死刑を宣告された。11月10日、ナイジェリア政府は死刑が執行されたことを発表したが、その執行までの間、氏の夫人は夫に会うことも差し入れをすることも許されず、氏は体を洗うための水も与えられなかったという。

タマラ氏のグループが掲げているアピールは以下の通りである。

A.早急にアビオラ氏とMOSOPのメンバーや支援者を含む全ての政治囚を無条件に釈放すること

B.11月10日に処刑された9人の遺体を早急に家族のもとに返還すること

C.ナイジェリアに言論と集会の自由を取り戻すこと

D.ナイジェリア・デルタに駐留する軍が早急に撤退すること

E.アバチャ政権の解散とそれに続く選挙による民主的な政府を取り戻すための策が取られること

F.特にナイジェリア・デルタにおける石油産業によって引き起こされている環境汚染の影響を受けている人々に対し、ナイジェリア国内で操業する石油産業が補償をすること

G.石油会社が現存する環境汚染を除去し、今後はイギリス、ヨーロッパ、北アメリカと同様な厳しい環境基準の元で操業すること

以上のことがらを達成するために、以下の行動がとられることを求める。

(1)ナイジェリアの石油とガス関連製品への国際的な禁輸措置

(2)ナイジェリアの石油・ガス関連製品の取引停止

(3)軍事政権と関係したナイジェリア人、とくに9人のオゴニの処刑を認めた暫定的な指示した議会のメンバーのすべての個人的財産と海外の銀行口座の凍結

(4)ナイジェリアに対する人道的援助を除く全ての援助、とりわけロメ協定のEUのプログラム、およびUSAIDのプログラムの停止

(5)現在契約されようとしている、およびナイジェリアに搬入されようとしている凶器や兵器の売却に対する早急な世界的・強制的な禁止

(6)軍事政権と関係したすべてのナイジェリア人に対する世界的なビザ発給制限の措置

(7)民主主義を復活するためのキャンペーンを続けるためのナイジェリアの民主主義支持者と人権擁護組織への支援

(このアピールはグリーンピース、地球の友などの環境団体や人権擁護団体の支援を受けている。)

タマラ氏は「オゴニは幸運にも声を大にして世界に訴えることができている。声を上げることもできない少数民族がもっと国内にいる」と言っている。

氏は12月5日にロンドンに戻り、活動を続けているが「日本でもこの問題を人々に考えてほしい。そして行動を起こして欲しい」とのメッセージである。

尚、インターネットを通じて、世界規模でキャンペーンがおこなわれている。サロ=ウィワ氏とオゴニに関して何が起こっているのかということを知りたい人は www.the-body-shop.comでアクセスができる。


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