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バスケットがつなぐ母の想い

ウィメンクラフトに出会って
I found WomenCraft – Mothers’ love is woven into the baskets

アフリカNOW』112号(2019年3月31日発行)掲載

執筆:星 智子

ほし ともこ:1974年8 月大阪生まれ。東京都多摩市在住。二男一女の母。学生時代にケニアとタンザニアを旅行し、ストリートチルドレンの姿にショックを受けたことがきっかけで、国際貢献の道を志す。イギリスで開発学を学び、国際協力関係の就職を目指したが挫折。一般企業で勤務後、結婚・出産・育児を経て、2015年4月よりフェアトレードショップ「Kicheko(キチェコ)」として、イベント出店やネット販売を中心に活動中。


私は、アフリカのフェアトレードショップ、Kicheko(キチェコ)を運営しています。大学時代は東アフリカの文化と言語を学んでいたこともあり、在学中にケニアとタンザニアを旅行しました。近代的なナイロビ市街の光景とは対照的に、私を取り巻くストリートチルドレンにショックを受け、「自分も何かできないか」と強く思いました。 その想いを実現すべく、途上国の子どもに関わることができそうな財団や団体への就職を試みましたが力及びませんでした。一般企業に就職して結婚・出産・育児にと、忙しい日々を送り、末の娘が幼稚園に通い始めたのを機に社会復帰を考えるなか、ある一冊の本に出合いました。関東を中心に展開するフェアトレードブランド「ピープルツリー」の創業者サフィア・ミニー氏の『おしゃれなエコが世界を救う』(日経BP 社、2008年5月)でした。彼女の生きざまに魅了され、子育てをしながらでも夢を実現する勇気をもらいました。そして、学生の頃に抱いた想いを形にしようと決意したのです。

子育てと両立できるように、ネットショップを中心としたフェアトレード雑貨販売を始めることにしました。子どもの笑顔を願って、お店の名前は「Kicheko(キチェコ)」(スワヒリ語で「笑い声」)に決めました。

WomenCraft との出会い

フェアトレード雑貨を販売し始めてから半年ほどたったころ、元青年海外協力隊員の女性からWomenCraft というブランドの美しいバスケットを紹介してもらいました。取引を検討するためにお試しセットを注文したのですが、箱を開けた瞬間、ふわっと広がる草の香りと色鮮やかなバスケットが目に飛び込み、一瞬で心を奪われてしまいました。「なんて美しいバスケットなんだろう! ぜひ日本中に広めたい!」そう思いました。 WomenCraft は、国際フェアトレード機関の認証ラベルを取得している社会企業で、ルワンダとブルンジに隣接するタンザニアのンガラ(Ngara)にある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の難民キャンプで活動を開始しました。難民女性たちのニーズとして一番高かった「現金収入の機会をつくるプロジェクト」として、UNHCR とパートナーシップを組み、女性の伝統工芸であるかご編みでビジネスを展開していました。しかし、難民の帰還によりキャンプが撤退してからは、単独で事業を継続しています。2007年に活動を開始し、2018年にはタンザニア国内の小売店33カ所、ケニアやヨーロッパ、アメリカ、アジアなどの海外40カ所に輸出するなど、販路を拡大し続けています(2018年11月15日現在)。

生産体制

WomenCraft は、地元の人々による運営を最終目標にして活動しているため、一部の海外スタッフ以外は、11人のローカルスタッフが生産管理や物流管理などを担っています。生産者は400名(2018年現在)ほどいて、ンガラから半径60km圏内の5つのエリアに点在しており、本部でオーダーを受注するとそれらの生産者グループリーダーに振り分けられます。

リーダーたちは、ソーラーパワーのiPad を巧みに使いこなし、連携しながら生産管理をしています。生産者として働く前に、女性らはまず技術指導を受けます。美しく編めるようになってからも、スケールなどを使った厳しい品質チェックを受けてパスしないと納品できない仕組みになっています。納品と引き換えに収入を得ることができるので、女性たちも真剣に仕事に取り組んでいるのです。

デザインについて

地域に伝わる伝統工芸とデザイン性を組み合わせたオリジナルデザインのバスケットをつくっています。天然草とキテンゲ(東アフリカの伝統布)を編みこんだデザインは世界的にも大変珍しく他では見られません。2017年からは、デザイナーと共にブルンジ難民限定のデザインを開発し、2018年から販売を開始しました。配給される穀物の袋を使った特徴的なデザインで人気となり、50人だった生産者は2018年末には100人に増え、2019年にはさらにンドゥタ(Nduta)難民キャンプでの生産も始まります。国際的な支援が少なく、水や食料不足・医療や教育面で劣悪な環境での生活を余儀なくされているブルンジ難民にとって、WomenCraft の収入は生活向上に大きく貢献しています。

販売と課題

WomenCraft のバスケットなら百貨店で扱ってもらえると考え、新宿の百貨店に飛び込み営業をしました。そこからご縁がつながり、催事などで出店を重ねていきました。しかし、人々の目は引くものの、なかなか売上げには結びつきませんでした。出店には常にノルマが課せられ、目標に満たなければ次の出店も危ぶまれます。厳しい現実を前に、考え付くことを片っ端から試すしかありませんでした。ポップ・写真パネル・ディスプレイなどを工夫したり、商品タグをイメージに合ったものにリニューアルするなど、様々なことを試みましたが、目覚ましい効果は得られません。

一方で、ビジネスのつながりを求めて大きな展示会に出展したりもしましたが、一般的なビジネスの土台にはフェアトレード商品はそぐわないということが分かりました。納期・在庫・品質などが不安定で、価格もそう安くはないからです。

売上ばかり求められることに違和感を持ちつつ、売れなければビジネスとして成立しないのですから、この現状を打破するために今も試行錯誤の連続です。大切なことは、商品の魅力を伝えて丁寧に販売することだと考えているので、そのスタイルを守りつつ、売り上げにつながる方法を見つけたいと思っています。

信頼関係を築くために

WomenCraft の窓口を務めるカラ・フック(Kara Hook)とはこまめに連絡を取り合うようにしています。出店や展示会の報告をしたり、写真や動画を使ったマーケティングの様子などを伝えてきました。商品に不具合があれば細かく説明し、品質の向上に努めてもらうようにもしています。その他、少しでも気になることがあればカラに相談してきました。Kicheko のオリジナルデザインのバスケットを作ってもらう機会に恵まれたのも、コツコツ積み上げてきた信頼があってこそだと、とてもうれしく思っています。このように、タンザニアに行くことなく、素晴らしい商品をご紹介できるのは、すべてカラのおかげだと、心から感謝しています。

母として

WomenCraft と取引を始めて4年、生産者の様子や商品にまつわるストーリーなどを見守ってきました。逆境の中でも笑顔でせっせとバスットを編み、家族を養う女性たちを見ていると、「母は強し」という言葉は万国共通なのだとしみじみ思います。子を想う母の気持ちに共感するからこそ、一人でも多くの人にこのバスケットを知ってもらいたい、そう願いながらお客様に紹介してきました。

私にも「お店屋さん、頑張ってね」と送り出してくれる娘がいます。自分の部屋が雑貨だらけでも「こんなの作れるってすげーな」と感心する息子たちもいます。中学2年生と小学4年生の息子、そして小学3年生の娘(2019年3月現在)。我が子らが巣立つまでの間は、母として思い切り子育てを楽しみつつ、Kicheko も大切に育てていきたいと思っています。

 

 

Kicheko フェアトレード雑貨の生産者グループ

ウガンダ:Atute Pi Yenyo Kwo Women Group(APYK 女性グループ)

20年間、北部ウガンダで続いた内戦により、地元民族のアチョリ人は首都のカンパラに逃れましたが、働く場は郊外の危険な採石場しかありませんでした。一日働いても100円程度の収入にしかならないため、2006年からAPYK 女性グループとして活動を開始。2007年にNGO として登録されました。ビーズ細工の販売で得た利益で経済的自立を目指しています。「Atute Pi Yenyo Kwo(APYK)とは、アチョリ語で「I am struggling for survival.(生存のために奮闘する)」という意味。現地で支援する日本人女性がおり、デザインや品質の向上に貢献しています。

ケニア:Amani ya Africa(特活アマニ・ヤ・アフリカ)

1999年1月から活動を始め、キベラスラムの支援活動の他、職業訓練所の運営を通じて、フェアトレード商品の開発・制作・販売を手掛けています。「Amani yaAfrica」とはスワヒリ語で「アフリカの平和」を意味し、アフリカと日本の架け橋として、自然と人々との調和の取れた平和な世界を目指しています。現地の職人には養う家族が大勢おり、生活面は決して楽とはいえません。だからこそフェアトレードを継続していかなければ意味がないという想いで活動しています。
特活アマニ・ヤ・アフリカ http://www.amani-ya.com

タンザニア:WomenCraft(ウィメンクラフト)

2007年に設立。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の試験プロジェクトとしてスタートしました。隣国のルワンダやブルンジから逃れてきた難民とその受け入れ国であるタンザニアの女性たちが、3カ国の国境付近にあるNgara(ンガラ)で活動しています。職人はすべて女性です。周辺の村々に点在する300人以上の職人が、伝統的な技法でかごを編んでいます。国際フェアトレード機関(WFTO) の認証を取得しており、東アフリカ諸国をはじめ、アメリカやドイツに輸出しています。日本では、Kicheko が初めて取り扱いをスタートしました。タンザニア:Vikapu Bomba( ビカプボンバ)(現在は取引を中止)

2011年、タンザニア人の大学生キャサリンによって設立されました。職人はすべて女性。日々の家事や育児をこなしながら生産活動に励んでいます。8人で始まった

活動は、2015年には35人に増加しました。今後、100名以上の職人を雇用する計画が進められています。主力商品は、イリンガの伝統工芸品であるイリンガバスケットをベースにして開発された、オリジナルのマルシェバッグです。日本での取り扱いはKicheko が初めて。「Vikapu Bomba」( ビカプボンバ) とは、スワヒリ語で「Fantastic Baskets( 素晴らしいかご)」という意味です。

出典:http://kicheko.net/?mode=f2


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