SDGs 市民社会ネットワークに関わる中でみえること

Findings through the activities of Japan Civil Society Network on SDGs

『アフリカNOW』108号(2017年5月31日発行)掲載

執筆:長島美紀
ながしまみき 政治学博士。専攻は難民政策。2004年からTICAD 市民社会フォーラムに参加。2005年度より早稲田大学政治経済学部助手を務めるかたわら、同団体の事務局長、理事としてキャンペーン事業を担当。現在はMalaria No More JapanやSDGs ジャパンのアドバイザーとして広報・キャンペーン企画に携わる他、食に関するコンサルティングも行っている。


SDGs 市民社会ネットワーク(通称:SDGs ジャパン)が2016年4月に発足した。そのアドバイザーとして久々に古巣のAJF に通うようになって1年。10 年以上ぶり(!)のAJF での仕事も懐かしく、また感慨深いものがあるが、この1年を通じての自分自身のキーワードは「ローカライズ」と「あらゆるセクターとのつながり、協働し、活動すること」の意味の大きさだ。
2008年に開催されたTICAD Ⅳ以降、私自身は音楽事務所で某アーティストのアフリカ支援や社会貢献活動を経験した。音楽事務所、そしてその事務所が立ち上げた財団を退職して2年近くが経った今も、その得難い経験ができた7年余りには感謝の気持ちしかない。

ソーシャルインパクトとは何か

感謝の気持ちの中で現在、認定NPO 法人MalariaNo More Japan の理事やSDGs ジャパンでキャンペーンのアドバイザーを担当しているが、広報キャンペーンに携わっていると陥りがちなのが、問題解決ではなく、話題作りを目標に据えることだ。
話題作りは悪いことではない。自分自身の経験を踏まえてだが、著名人を使ってメッセージを発信するのは、取り上げたい課題を「まったく知らない人へ伝える」という目的からは外れているわけではない。
しかし大切なのは何をしたいかだと、いつも答えている。ただ著名人を使ってメッセージを発信しても、その人に気持ちがなければすぐばれる。薄っぺらさが伝わってしまい逆効果だ。大切なのは伝えたい気持ちをお互いに共有できること。そして伝えることは何か、最終目標は何かを共有できていることだ。
広報でぶれがちなのは何が最終目標かということである。SDGs ジャパンに関わっていてよく言うのは2つの軸、メインストリーム化するためのマス向けキャンペーン、そして政策提言するためのロビイングが必要ということだ。この2つは実は方向性は全く異なる。そして求められるスキルも違う。TICAD ⅣでTICAD市民社会フォーラム(TCSF)に関わっていたとき、ある意味で幸せだったのは、TCSF 内でこの2軸の方向性も、求められるスキルや行動原理も違うことのコンセンサスができていたことだ。だから私自身は当時ロビイング活動に関与せず、マス向け広報やキャンペーン事業だけに邁進することができた。当時の人材や資金の制約を考えると、非常に恵まれていたと感じている。

誰ひとり取り残さないために

SDGs の最終ゴールは誰ひとり取り残さないこと。大まかに言ってしまえば、貧困問題と持続可能性を取り扱っている。そのために具体的指標として17のゴールを掲げているわけだ。一見するとどのゴールもバラバラだ。また「先進国も評価対象になるのは良いけど、アフリカの現場の声と日本の声はつながるのか」という意見ももっともだと思う。
例えば貧困をとっても、もちろんアフリカの現場と日本は違う。しかし、6人に1人の子どもが貧困と言われる国内状況や、学生と話して感じる未来へのネガティブな予測に、私自身は、アフリカをはじめとするいわゆる「途上国」で日本の市民社会が地道に草の根で取り組んできたこととのつながりの可能性を感じる。かつてアフリカで「国際協力」の名の下に行われてきたことは、今日本の地域再生の文脈で使えるのでは? そんな気持ちも持っている。
大切なのは課題をいかに自分事にできるか。そのためにNGO だけではなく、あらゆるセクターが手をつなぎ、行動することが求められている。
かつてアフリカは大半の人に遠い世界だった。今、SDGs というツールを使い、いかに自分たちの身の回りと世界をつなげられるかが問われている。


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