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TICAD VI:何が変わったの?どう変わったの?

What’s new around TICAD VI?

『アフリカNOW』108号(2017年5月31日発行)掲載
特集:2016年ケニアでのTICAD Ⅵから2019年日本でのTICAD Ⅶへ

執筆:斉藤 龍一郎
さいとう りょういちろう AJF 理事。2000年4月から2016年10月までAJF 事務局長。立命館大学生存学研究センターで、生存学ウェブサイトのアフリカ関連情報データベース作成・更新を担当。

 

 

 

アフリカ連合委員会が開催地決定を調整

2008年のTICAD IV までの4回のTICAD では、アフリカ諸国は招かれて参加するゲストであった。2011年にアフリカ連合委員会(AUC)がTICAD 共催者に加わり、2013年のTICAD V からはアフリカ諸国もAUCを通してTICAD の準備・運営に関わるようになった。2013年3月にアディスアベバ(エチオピア)で開かれたTICAD V 直前の閣僚会議で、AUC から「(中国=アフリカ協力フォーラムにならって)日本とアフリカで交互開催」が提案されたことを受けて、TICAD V で採択された横浜宣言では(1)「5.2 我々はTICAD プロセスの実績に基づくとともに、アフリカの開発ニーズや開発課題におけるアフリカのオーナーシップをより効果的に反映するため、TICAD プロセスを更に発展させることをコミットする」と明記された。
そして、TICAD VI の開催地として名乗りを挙げたケニアとガンビアの間にAUC が入って調整を進め、ガンビアでTICAD VI 閣僚級準備会議が、ケニアでTICAD VI が開催されることになった。「(1993年の最初の)TICAD の主たるテーマは『オーナーシップ』と『パートナーシップ』」(2) ということばが、23年目にしてようやく現実のものとなったと言えるだろう。
TICAD を3年ごとにアフリカと日本で交互に開催するというTICAD プロセスの変化について、ジェトロ理事の平野克己さんは「今やアフリカを巡ってサミットは競争であり、(中国、韓国、インド、米国など)色々な国がサミットをやっている」と語った(2015年2月、よこはま国際フォーラム「次回TICAD VIはアフリカで!?」での発言)。また、AUC 以外にも、国連アフリカ担当特別顧問(OSAA)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行と、日本政府以外のTICAD 共催者は、アフリカに関わる課題に取り組むことを主要な業務の一つとしており、それぞれの機関には多数のアフリカ人がスタッフとして働いている。かつてUNDP の局長だったリベリアのサーリーフ(Ellen Johnson Sirleaf)大統領のように、国連や世銀での勤務を終え、母国へ戻り政治家や経済人として活躍するアフリカ人も少なくない。日本のアフリカ理解、歴史的背景や現状を踏まえた関わりが、TICAD プロセスを通してこれまで以上に問われることになる。

アフリカ市民社会の取り組みの広がり

AUC がTICAD 共催者の一員となったこと、そしてアフリカでTICAD が開催されることは、アフリカの市民社会にとって、課題を提起し取り組みを進める場が広がったことを意味している。

2008年のTICAD IV ではフォローアップ・メカニズムが設けられ、2009年から毎年開かれてきたフォローアップ閣僚級会議(2009年ボツワナ、2010年タンザニア、2011年セネガル、2012年モロッコ)の際に、TICAD に長らく関わっているアフリカ市民協議会(CCfA: Civic Commision for Africa)および開催国・近隣諸国の市民社会組織(CSO)が戦略会合を持ち、閣僚級会議へオブザーバーとして参加し、提言活動や発言を行ってきた。とはいえ、CCfA の活動がなかなか広がらなかったこともあって、アフリカ市民社会からTICAD プロセスに継続的にアプローチしていく取り組みがあったとは言えなかった。
2013年6月にAU の総会で、TICAD の3年ごとの開催と、横浜でのTICAD V から3年後の2016年にアフリカでTICAD VI を開催するために日本を含む関係者とアフリカ側が協議をすることが決定されたことを踏まえ、市民ネットワーク for TICAD (Afri-Can) は、2015年7月にケニアとエチオピアに世話人らを送り、ケニアの市民社会との連絡・調整やAU などへのアプローチを進めていった。
アフリカの市民社会も同年11月にナイロビで戦略会合を行い、2016年3月には主要メンバーが来日し、「みんなのTICAD フォーラム」でプレゼンを行った。またAfri-Can と一緒に、2016年3月にジブチで開かれた高級実務者会合と6月にガンビアで開かれた閣僚級準備会合に対する取り組みを進めてきた。
2016年6月に、閣僚級準備会合に向けてナイロビで開かれたTICAD VI 非国家主体啓発会議に100名におよぶケニアの市民社会関係者が参加したことは、8月のTICAD VI 本会議直前にナイロビで取り組まれた市民社会によるサイドイベントにつながった。

「世界経済の最後のフロンティア」アフリカへの注目の高まり

 TICAD VI には、日本とアフリカの市民社会だけでなく日本の企業も関心を示していた。多くの報道記事(3)の中から、日本社会、特に企業のアフリカとTICAD VIに向けた関心をうかがわせる記事を2本紹介する。 「アフリカ南東部のモザンビーク。1人当たり国民総所得が700ドルに届かない最貧国の一つが、日本のアフリカ開発の突破口になろうとしている。/数日前、2隻目の船がキミツに向けて出航したよ」。首都マプトから北へ1500キロメートル。インド洋に面したナカラ港の桟橋で現地の担当者が語った。/キミツとは新日鉄住金君津製鉄所(千葉県君津市)のことだ。今年5月、ここから積載量17万トンの大型輸送船を使った日本向けの原料炭輸出が始まった。」(4) 「TICAD には約100の日本企業・団体が参加した。豊田通商と日本郵船は仏複合企業ボロレと組んでケニアに合弁企業を設立、タンザニアやウガンダを含む東アフリカ地域で完成車の物流事業を始める。豊通はケニアで手掛ける地熱発電の事業拡大に向けた調査を開始するほか、エチオピアでも同発電を始める計画だ。/ NEC はコートジボワール国家警察に指紋などの生体認証技術を導入し、テロ対策などセキュリティーの強化をめざす。三井住友銀行はアフリカ開発銀行やアンゴラ開発銀行などと覚書を結び、人材育成や顧客紹介などを通じ、具体的な融資案件つなげる狙い。/三菱商事は仏トタルや日本貿易保険と組み、ケニア中部で40メガワット規模の太陽光発電所を建設・運営する。丸紅はウガンダやカメルーンなどで病院運営や地域医療のインフラ整備で協力する。」(5)
モザンビークでは政府に批判的なジャーナリスト・研究者の暗殺や拉致が相次ぎ(6)、また武装紛争を恐れる人々が隣国マラウイへ難民として逃れている(7)。オデジャネイロ・オリンピックのマラソンで2位になったエチオピアの選手が抗議のポーズをとり「9ヵ月で1,000人以上が殺害された」と訴えて(8)、世界中から注目を浴びたのも2016年8月のことであった。
2016年10月には国際通貨基金(IMF)が、資源に頼るアフリカの国々の経済成長が停滞し財政赤字膨らんでいくことへの警告を発している(9)。これと前後して、予想されていたモザンビークの債務返済不可能が2017年1月16日に明らかにされた。このことを伝える”The Economist” の記事(10) は、’In 2014Mozambique seemed a good place to host the IMF’ s“Africa Rising” conference.’ と書き始められている。
企業のアフリカ進出にとって、アフリカの国々の状況と政治・社会の今後への見通しをしっかりと理解しフォローしていくことが、これまで以上に重要になっている。それに対して現状では、適切な情報の提供や分析が不十分であり、大きな課題になっている。

(1) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page3_000209.html
(2) Afri-Can ウェブサイトの「連載インタビュー『私とアフリカ、私とTICAD』(2) 黒河内康さん」
http://afri-can-ticad.org/interview_top/interview_002/
(3) http://www.arsvi.com/i/2-ticad.htm に収録。
(4) 日本経済新聞 2016年8月18日「アフリカ12億人市場争奪 日本の官民総力/インフラ、国またぐ広域開発テコ」
(5) 日本経済新聞 2016年8月28日「アフリカ投資、日本企業・団体が73件で覚書/首相『さらなる発展へ協力』」
(6) Mozambique news reports and clippings ‘Mozambique:Gilles Cistac gunned down’, 3 March 2015
http://allafrica.com/stories/201503040921.html
(7) UNHCR ‘UNHCR begins relocating Mozambicanasylum-seekers in Malawi’, 15 April 2016
http://www.unhcr.org/news/latest/2016/4/5710d5746/unhcr-begins-relocating-mozambican-asylum-seekersmalawi.html
(8) http://www.cnn.co.jp/special/rio_olympics2016/35087848-2.html
(9) Reuters ‘IMF urges African states to cut deficits as growth grinds lower’, Oct 25, 2016
http://www.reuters.com/article/us-africa-economy-imfidUSKCN12P0IM?il=0
(10) The Economist ‘Boats and a scandal, Mozambique’s default’, Jan 19th 2017
http://www.economist.com/news/middle-east-andafrica/21715030-mozambique-fails-pay-its-debtsmozambiques-default


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