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HIV/AIDS・結核・マラリアとユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のシナジーを探して

Finding synergies between fighting HIV/AIDS, TB, Malaria and achieving UHC

『アフリカNOW』104号(2015年12月31日発行)掲載

スピーチ:川田龍平

皆さん、こんにちは。日本へようこそお越し下さいました。私は、日本で参議院議員を務めている、川田龍平と申します。大変光栄なことに、私は超党派国会議員で構成される、グローバルファンド日本委員会の国会議員タスクフォースのメンバーをつとめさせて頂き、そしてまた、2011年から本年までは、列国議会同盟のHIV/AIDS諮問グループのメンバーでもありました。

私自身は生後6ヵ月で血友病と診断され、その後、血友病患者の治療のために米国から輸入された、HIVの混入した血液製剤により、HIV に感染した薬害被害者の1人です。

1993年、当時17歳だった私は、東京薬害エイズ訴訟原告団に匿名の原告として参加しました。その裁判は、非加熱の血液製剤が危険であることを知りながら、血友病患者のための医療市場に非加熱製剤を供給し続けることで多くの被害者を出した、日本政府と製薬企業の責任を問うものでした。裁判は匿名で行われていましたが、当時未成年だった私は途中で自分がHIV に感染していることを公表する決意をし、日本初の未成年実名公表感染者として、この薬害エイズ裁判の「顔」となったのです。

この裁判は若い世代を中心に世論を大きく動かし、私たちは歴史的な勝利を勝ち取りました。しかし、それは私にとって、決して「終わり」ではありませんでした。国が責任を認め謝罪した瞬間、「いのちが守られる社会の実現」は、私の生涯の夢になったからです。それは、「薬害エイズは氷山の一角にすぎない、同じ悲劇が繰り返されないよう、その闇の元を絶たねばならない」という、強い思いでした。

私は2007年、「いのちを守る」ことをスローガンに国政選挙に出馬して当選し、参議院議員になりました。その後2013年に再選され、現在、2期目を務めています。

参議院では厚生労働委員会に所属し、医薬品の安全性確保や、患者の権利を守るための法案作りなどに取り組んでいます。薬害のない社会を作るためには、その温床である政府と製薬企業の癒着を断ち、製薬企業の過度な影響力を規制する仕組みの実現は不可欠だからです。

日本だけでなく世界中で、HIV/AIDS との闘いは続いています。私は今日、その闘いの最前線に立っている皆さまとお会いできて、とても幸せです。

日本のエイズの歴史は、闘いの歴史であるとともに、「共に生きる」(Living Together)社会を作ってきた歴史でもありました。1994年に横浜で開催された国際エイズ会議において、日本の市民社会は、世界のHIV陽性者の運動と連帯し、HIV/AIDS に関する差別や偏見と闘い、「ともに生きる社会」を作るという意思をはっきりと示しました。これはその後、1994年12月のパリ・エイズ・サミットにおける「『HIV 陽性者の参画拡大』の原則」(Greater Involvement of People living with HIV/AIDS: GPIA)の形成に結びつきました。

近年、日本では、LGBT の権利獲得が大きく前進し、世田谷区と渋谷区では、同性間パートナーシップの法的保護(Legal protection of same sex partnership)の制度が導入されました。これも、’Living Together’ の歴史の輝ける成果の一つに他なりません。

‘Living Together’ の理念は、人間の安全保障の理念にも通じています。2000年に提唱された「エイズと闘う世界基金構想」は、皆さんが今日参加しているワークショップのテーマの一つである「グローバルファンド」として2002年に花開きました。「グローバルファンド」は日本の国際保健政策の大きな成功例として、我が国が世界に誇る、数多い宝もののひとつであります。

2016年のG7 サミットにおける日本からのメッセージは「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(UHC)です。「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」というのは、聞きなれない言葉かもしれませんが、簡単に言えば、全ての人が、お金の壁にぶつかることなく、質の高い保健医療サービスを受けられるようにすることです。これは、’Living Together’ の精神、人間の安全保障の精神を、より普遍的な形で世界に打ち出そうというものです。おりしも先月、国連で、「持続可能な開発目標」(SDGs)を含む成果文書「我々の世界を変革する〜持続可能な開発のための2030アジェンダ」(Transforming our world: the 2030 agenda for sustainable development)が採択されました。「すべての年齢のすべての人に健康を保障し、福利を増進する」というSDGs の保健に関する目標は、まさに日本が掲げるUHC の考え方と共鳴するものです。

しかしながらUHC には、いくつかの超えるべき課題があります。まず第一に、UHC を機能させる為には、そのコンセプトである「誰も置き去りにしない」(Leave no one behind)を軸にした制度設計をしなければなりません。従って各国が設立するUHC スキームは、例えばエイズの問題について、社会的な偏見や差別ゆえに大きな影響を受けている主要なグループ、例えば男性とセックスをする男性(Men who have sex with men: MSM)、セックスワーカー、薬物使用者などを、排除しないように作ることが重要です。

また、UHC は、行政、NGO やコミュニティ、民間セクターが力を合わせて達成されるべきであり、中でも行政の能力向上は欠かせません。UHC の中で、「お金の壁」を乗り越えるための仕組みの中核をなすのは、何といっても、日本の健康保険をはじめとする、国や地方自治体による公的医療保険制度です。しかし、こうした制度は、迅速でクリーン、柔軟かつ高い対応能力と執行力のある行政システムがあって初めて機能するものであり、したがって、高い行政能力が不可欠なのです。そのためには、第三者としてしっかりとそれを監視する「ウォッチドッグ」、市民社会の存在がカギとなるでしょう。

さらに、UHC を実施する際は、コミュニティやNGO の積極的な関与が大きな役割を果たします。コミュニティによる保健問題の対応機能を促進し、それを統括する保健システムが必要となります。財政面ばかりに焦点が当てられるこれまでのUHC 議論を見直し、今後はより包括的視点から普遍的な保健システムを作ってゆくことに力を注がなければなりません。

私は、市民社会の立場から三大感染症に取り組んできた皆さんが今日ここに集まってくださったのは、UHC をもう一度定義し直し、真の意味で持続可能なものにしてゆくためだと理解しています。UHC が、「持続可能な開発」を目標とするいまの時代の国際保健政策の主流になることは、間違いありません。そして皆さんのように市民社会での日々の取り組みを続けることこそが、UHC の「ユニバーサル」を言葉だけでなく、ほんものにしていく原動力になると、私は心から信じています。

私も一国会議員として、2016年5月のG7 伊勢・志摩サミットでもこの問題が取り上げられるよう尽力し、その後も引き続きUHC の世界的拡大に向け、ここ日本から最大限の努力を続けます。全ての人々にとって、「いのちが守られる善き世界の実現」のために、国境を越え、共に手を取り合って進んでゆきましょう! 他の誰でもなく、私たち自身の手で、未来を作ってゆくのです。最後まで,ご清聴ありがとうございました。

 

2015年10月26日 砂防会館別館「穂高」会議室

※ 川田議員は英語であいさつをしました。あいさつの原文は以下で読むことができます。

http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/seminar-event/kawada20151026.html


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