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ご賛同のお願い:新型コロナと公正なアクセス

新型コロナに関わる知的財産権保護免除の

要請書にご賛同お願いします。 

昨年12月10日に開催された世界貿易機関(WTO)の「貿易関連知的財産権協定」(TRIPs)理事会で、南ア・インド等による「新型コロナ(COVID-19)に関連する知的財産権保護の免除」提案が審議され、この結論が3月10-11日に開催される次回TRIPs理事会に持ち越されることが決まりました。

これを踏まえ、世界の市民社会は、この提案に反対している主要先進国などに対して、COVID-19の収束に向けて「独占でなく共有」「競争でなく協力」を掲げて、この提案への支持、もしくは少なくとも反対しないことを求めて、働きかけを進めています。

私たち「連絡会」も、日本政府がこの提案に反対するのでなく、支持もしくは、少なくとも反対をしないことを求めて、日本政府に対して働きかけていこうと考え、呼びかけ団体にて「要請書」を作成いたしました。現在、日本政府の担当省庁等に働きかけ、公式の要請を行うべく取り組んでいるところです。

※本要望書における「途上国・新興国」という用語の使用について、注釈を加えました。本ページ末尾、要望書の後にありますので、御関心の方はご覧いただければ幸いです。

つきましては、要請書への賛同団体を募集しています。以下、要請書をご確認の上、登録フォームにご登録をお願いいたします。

登録フォームはこちら

以下が要請書の文面となります。ご確認ください。

(PDFファイルのダウンロードはこちら)

2021年1月12日

内閣総理大臣 菅  義偉 様
財務大臣   麻生 太郎 様
外務大臣   茂木 敏充 様
経済産業大臣 梶山 弘志 様

新型コロナに対する公正な医療アクセスを
すべての人に!連絡会

日本政府への要請:新型コロナ克服のための取り組みを世界全体で進めるため
医薬品・医療技術の知的財産権保護を緩和し、共有化・協力の促進を

「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の世界的流行は、北半球における冬の到来や、感染力の強い変異種の登場により、深刻さを増しています。2019年末、東アジアに始まり、欧米を席巻したCOVID-19は、中東・北アフリカ、中南米、南アジア、サハラ以南アフリカなどの途上国・新興国にも拡大し、世界保健機関(WHO)によると、1月10日の段階で8904万人以上の感染、193万人以上の死者をもたらしてきました。日本においても、再び緊急事態宣言が発出されており、抜本的な対策が必要となっています。

COVID-19は世界各国の社会、経済、環境に多様かつ甚大な影響を及ぼしており、その対策も多岐に及びます。世界はこの1年足らずの間に新規医薬品の研究開発、社会・経済的影響の緩和のためのIT技術などの開発と実用化ほか様々な既存技術の活用を行ってきました。特に新規医薬品の開発は、製薬企業への民間投資のみならず、各国の国立研究機関や、開発促進に取り組む国際機関を通じた公的資金の投入や、途上国を含む世界各国での臨床試験の実施など、公的資金や、公共の利益を目的とした人々の善意の協力によって実現されています。開発された新規医薬品への世界全体の平等なアクセスを含め、COVID-19を克服するための手段は世界に開かれたものであるべきです。しかし現在、平等なアクセスのための国際支援は大幅に不足しており、富裕国がワクチンを独占する一方、途上国は取り残され、十分な普及は2021年内には実現しない見通しです。このパンデミックは、全世界で封じ込めない限り、収束することはできません。COVID-19がかつてない異次元の脅威であることをふまえ、既存の枠組みや方法を超える革新的な対応が、緊急に求められています。

2020年10月2日、南アフリカ共和国(南ア)とインド政府は、世界貿易機関(WTO)の「貿易関連知的財産権協定」(TRIPs)理事会に対して、各国が医薬品、診断薬、有望なワクチン候補、その他COVID-19対策に関連する技術や製品の開発・製造を拡大できるようにするため、COVID-19の収束までの期間、COVID-19に関わる予防・封じ込め・治療に関連する知的財産権(著作権および関連諸権利(TRIPs協定第2部第1節)、意匠(同第4節)、特許(同第5節)および開示されていない情報の保護(同第7節))の免除を含む提案(以下、「南ア・インド等提案」と表記)を行いました。南ア・インド等提案には、南部アフリカのエスワティニ王国とモザンビーク、ケニア、パキスタン、ボリビア、モンゴル、ジンバブウェが共同提案国となり、100か国以上が完全支持もしくは歓迎を表明しています(2021年1月6日時点)。また、世界保健機関(WHO)や国連合同エイズ計画(UNAIDS)を始め、国際機関や国連人権専門家、保健医療、人権、貿易・投資に関わる多くの国際市民社会組織がこの提案を支持しています。しかし日本、米国、欧州連合をはじめとする先進国などが反対の立場をとり、合意が見いだせなかったため、12月10日のTRIPs理事会にて、3月11-12日のTRIPs理事会に向けて審議を継続することが決まりました。

以上より、私たちは、世界の市民社会の一員として、日本政府に以下のことを要望します。

  1.  COVID-19対策に必要な医薬品・技術への公正・迅速なアクセスを地球規模で確保するため、上記南ア・インド等提案を支持すること、もしくは反対しないこと。
  2. 上記に加え、かつ矛盾のない形で、「C-TAP」(COVID-19技術アクセス・プール)等、グローバルかつオープンに知的財産権を共有するイニシアティブを支援・促進し、COVID-19の予防・封じ込め・医療に関わる技術へのアクセスの障壁を取り除き、共有化を促進することで新規技術開発のグローバルな促進を図ること。
  3. 同様に、「ACTアクセラレーター」(COVID-19関連製品アクセス促進枠組み)および各パートナーシップに関わる国際機関への拠出を、国際的な協調の下で拡大し、同枠組みが途上国への新規技術の平等なアクセス実現に十全に役割を果たせるようにすること。
  4. COVID-19克服のための医薬品や新規技術への公正かつ開かれたアクセスをグローバルに保障することを求める日本と世界の市民社会との対話を行うこと。

上記要望の理由は以下の通りです。

  1. 日本など先進国政府が南ア・インド等提案に対して示す「TRIPs協定の柔軟性で対応可能」「知財保護免除で医薬品開発のインセンティブが損なわれる」等の反対理由について、提案国・支持国は根拠を挙げて反論しています。これら基本的な立場・主張の相違が、旧来の先進国と途上国の経済や開発を巡る対立の上にあることは明らかです。COVID-19収束の為には、こうした対立の早急な克服と地球規模の協調の実現が不可欠です。それは知財分野で優位に立つ先進国の歩み寄りなくして実現しません。
  2. COVID-19の流行に際して、先進国はその資金力で個人防護具(PPE)や医薬品を大量購入しつつ、開発系製薬企業とワクチンの事前大量買い取り契約を結び、これらの市場を独占しています。結果として、世界の大半を占める途上国・新興国が、必要物資を確保するのに大きな支障が生じています。
  3. この問題の解決のため、昨年4~5月、WHOおよび保健に関わる国際機関、民間財団の連携で、新規医薬品等の開発と平等なアクセスを一体で手掛ける「ACTアクセラレーター」(COVID-19関連製品アクセス促進枠組み)と、COVID-19に関する技術の知的財産権をプーリングし、途上国での安価な供給を促進することを目指す「C-TAP」(COVID-19関連技術アクセス・プール)が発足しました。しかし、ACTアクセラレーターは12月22日段階で、緊急に必要な資金37億ドル、本年分237億ドルの資金不足に直面しており、C-TAPも、先進国からの支持がなく、機能が発揮できない状況です。COVID-19への取り組みを世界全体で推し進めるには、ACTアクセラレーターが十全に機能を果たせるように資金拠出を拡大すること、C-TAPへの先進国や技術保有国、技術保有企業の協力を確保することが必要です。
  4. 一方、COVID-19の収束には、既存の多国間援助の枠組みの活用だけでは不十分です。途上国・新興国でのCOVID-19関連技術の平等なアクセス実現には、途上国・新興国自身の資源動員と、医薬品の開発や製造、普及の能力と意欲の拡大こそ重要であり、その障壁となっている現行の知的財産権保護を含む貿易ルール等の変革が不可欠です。南ア・インド等提案は、COVID-19に対しては、現行のWTOのルールで、国ごと、製品ごとに知的財産権の障壁に対応するのでは限界があることを認識し、その変革に向けて、世界を大きく前進させる可能性を持っています。
  5. COVID-19の脅威は、世界の社会・経済・環境の持続可能性の低下と強く結びついています。COVID-19は「最後のパンデミック」ではありません。世界は将来のパンデミックへの準備度を向上させるとともに、パンデミックのリスクを拡大する各種の非感染性疾患などへのレジリエンスを増大させる必要があります。そのためには、COVID-19の教訓を踏まえ、知的財産権など国際保健に直接・間接に関わる諸制度を柔軟に変革していく必要があります。

日本政府は、G7、G20においても、ワクチン等へのグローバルなアクセスの必要性を主張し、特許プールなどの仕組みの必要性を訴えました。また、グローバルなCOVID-19対策への貢献については、(1)新型コロナウイルス感染症対応能力の強化、(2)強靭かつ包摂的な保健システムの構築(将来の健康危機に備える保健医療体制の強化)、(3)感染症に強い環境整備(より幅広い分野での健康安全保障のための環境整備)を掲げています。上記3つの目的を実現するためにも、必要な量の医薬品・医療技術への、迅速、公正かつ平等なアクセスのグローバルな保障が不可欠と考えます。私たちは、一刻も早くCOVID-19をグローバルに克服し、パンデミックに強く、しなやかに対応できる世界をつくるためにも、日本政府に対して、南ア・インド等提案を支持、もしくは反対しないことを求めるものです。

「新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!」連絡会
呼びかけ団体(五十音順)
(特活)アジア太平洋資料センター(PARC) 共同代表 内田聖子
(公財)アジア保健研修所(AHI) 理事長 斎藤尚文
(特活)アフリカ日本協議会 共同代表理事 津山直子・玉井隆、国際保健ディレクター 稲場雅紀
(特活)国境なき医師団日本 会長 久留宮隆
(特活)シェア国際保健協力市民の会 共同代表 本田徹、仲佐保
世界民衆保健運動(People’s Health Movement) 日本代表幹事 宇井志緒利
(公社)日本キリスト教海外医療協力会 会長 畑野研太郎

「新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!」連絡会は、COVID-19パンデミック下において、途上国・新興国への新規医薬品・新規技術の公正・平等なアクセスをグローバルに保障していくことを目的に政策提言を行う市民社会団体の連絡会として設立されました。連絡先は以下の通りです。

  • 連絡会事務局 (特活)アフリカ日本協議会(担当:稲場雅紀、廣内かおり)
  • 東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル3F 
  • 電話:03-3834-6902 E-mail:ajf.globalhealth@gmail.com
 
 
この要望書では、便宜上、「先進国」と「途上国・新興国」という用語を使っています。私たちは、この用語を、最も適切な用語と考えて使っているわけではありません。グローバル化が進んだ現在においても、高い技術を持つ先進国が、知的財産権の強化や世界化によって利益を上げる一方、途上国・新興国がこれによって損害を被っているという分断構造は存在しています。こうした分断構造を表す、より適切な用語としては、以前から、北半球に先進国が多く、南半球に途上国・新興国が多いことから、先進国を「北の世界」(グローバル・ノース)、途上国・新興国を「南の世界」(グローバル・サウス)と呼んで<おり、その方が、より適切な用語と言えるかと思います。しかし、日本では、これらの表記が必ずしも一般的でないことから、本文書では、便宜上「先進国」「途上国・新興国」という用語を使っています。
 
国際分業の形成の中で、技術を開発した先進国由来の多国籍企業が、知的財産権によって技術と最終利益を独占しながら、製造については途上国・新興国の企業に委託して大量生産を行うのが通例となっており、こと製造・生産能力については、一部の途上国・新興国と先進国の間に、差はなくなってきています。ところが、知的財産権を活用して利益を独占する側(先進国)と、それによって公正なアクセスを阻害され、損害を被る側(途上国)の分断は、例えば生産能力において差がなくなってきているにもかかわらず、知的財産権などのルールによっていまだに厳然と存在しています。この提案は、COVID-19という未曽有の脅威を前にしてもなお、こうしたルールによる分断とそれによる不公正を維持し、技術の共有化とイノベーション、公正なアクセスを阻害し続けるのか、それとも、COVID-19の収束のために、共有と協力に向けた新たなルール作りに進むのか、ということを問うているものです。