翻訳記事:コロナウィルス が絶滅に瀕する大型類人猿を脅かす可能性 科学者たちが警告

コロナウィルス が絶滅に瀕する大型類人猿を脅かす可能性 科学者たちが警告

ワシントンポストが配信した記事を、AJFが翻訳・紹介するものです。
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Coronavirus could threaten endangered great apes, scientists warn

2020年03月26日 ワシントンポスト

世界中に拡大しつつある新型コロナウイルスは、すでに生物種の垣根を飛び越えた。このウイルスはおそらくコウモリが起源であり、センザンコウに感染した後に人間を攻撃した可能性がある。現在、霊長類の科学者たちは、ウイルスが私たちに最も近縁の現存する仲間であるチンパンジー、ゴリラ、その他の大型類人猿などに致命的な脅威を与える可能性を懸念している。

絶滅の危機にさらされた類人猿の全ての種が、人間に新型コロナウィルス感染症を引き起こすウイルスに感染するという証拠はまだない。しかし、水曜日にNatureで発表された書簡で、25人の疾病研究者、科学者、その他の専門家が、霊長類が人間の呼吸器疾患にかかりやすく、時には致命的であると指摘している。いくつかのアフリカの国において、人間由来であり、人間に軽度の症状を引き起こすいくつかのウイルスによって、類人猿が病気にかかったり、死亡したりした。

「私たちは非常に心配しています。なぜならこれらの主要な死亡事例は、人間には軽症である人間からの呼吸器疾患に関わっていることがわかったからです。」とEmory 大学の疾病生態学者で書簡の筆頭執筆者であるThomas Gillespie氏はインタビューで述べた。 「類人猿は、主に生息地の消失と密猟が原因で絶滅の危機に瀕しています。加えて病気が彼らをますます絶滅の脅威にさらす重大な追加原因になりつつあることが確認されています」

書簡は、野生の類人猿の個体群が存在する国々に、野生生物ツーリズムの停止と野生生物のフィールド調査の削減を検討するよう求めた。しかしGillespie氏は、密猟と森林破壊のような類人猿に対する他の脅威を防ぐために不可欠な職員が現場に留まるための追加の資金を必要とするだろうと述べた。

ガボンやルワンダを含む一部の国では、すでに野生生物ツーリズムは中止され、広範囲にわたる国境閉鎖と航空便のキャンセルにより、海外旅行は大幅に減少した。しかし、Gillespie氏によると、主な懸念は、まだ空いている観光地への安価な航空便とアクセス料金が、若い旅行者を引きつける可能性があるということである。彼らは大型類人猿を見るために自然の中を歩き回る志向が強く、また、新型コロナウィルスに感染していた場合、軽い症状しか示さない可能性が高い。

国際自然保護連合の3月15日の声明では、野生の類人猿の10メートル(約33フィート)以内に人間が近づかないようにと「強く」勧告している。また、過去14日間に、病気にかかった人あるいは病気の人と密接に接触した人は、大型類人猿の生息地への訪問を許可しないことを忠告している。以前は、そのような指導は7日間に上限が定められていた、とGillespie氏は言う。

「パンデミックは明らかです。より長い隔離期間が必要です。」とGillespie氏は述べている。 「私たちは、感染しても症状が現れない、軽度の症状の人が出てくることを懸念しています」

この書簡はまた、類人猿を飼育管理する動物園や保護施設にも向けられていると、ミネソタ大学獣医学部の准教授であるこの手紙の共著者Dominic Travis氏は語った。アフリカの野生動物の保護施設においても十分な資金がある欧米の動物園においても、これらの施設の職員は通常、病気のアウトブレイクと脅威に対処する準備ができています。彼によるとそうした場所での動物展示は人間の病原体を中に入れないように設計されている。このことはすべての施設がこのパンデミックに対処するための方策を持っているという意味ではありません、と彼は述べた。

「このウイルスには直接的な脅威があります。その脅威の大きさはわかりませんが、存在することはわかっています。そして、それがこの書簡が意味するものです。この書簡は、”Hey、すべての類人猿の人たち、気をつけて”、と言っています」と野生生物の疫学と獣医公衆衛生を研究しているTravis氏は述べた。 「類人猿はこのコロナウイルスに感染しうるのか?ウイルスそれ自体にはすでに多くの証拠があります。私たちは用心深くなるためにもっと証拠が必要でしょうか?おそらく違うでしょう」