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アフリカにおける農業普及教育活性化の動向

2006年 食料安全保障研究会 公開セミナー 報告

開催日時:2006年3月11日 午後6時半~8時半
講師:稲泉博己さん(東京農業大学)
会場:丸幸ビル2F JVC会議室

報告

講演趣旨

笹川アフリカ財団が行っている取り組みは、現場の話をどう吸い上げるか、という問題に取り組んでいて興味深い。

I. 農業普及事業の重要性

エチオピアを例にすると、とうもろこしの生産が1996年は増加したが、また増減している。

これは穀物の栽培面積が増減しているため、生産量が変動する。穀物の生産量は、1ヘクタールあたり5トンが世界平均だが、エチオピアは半分以下となっている。(アフリカにおける小麦の主産地は、ケニア、ジンバブエであり、白人のプランテーションで栽培されているので、あまり差がない)。単位あたり収量は低い。面積が増減するだけ。

アフリカの大多数の農民が従事しているのは自給農業であり、リスク分散思考(食べるものを作る)。これは、近代農業(商品作物の大量生産)とはギャップがある。

先進国の援助は、近代農業中心であり、アフリカ諸国政府も商品作物を作ろうとするが、農民の実態に即していない。

アフリカの農業は産業として重要である。(労働人口、外貨獲得)。しかし、技術普及は、うまくいっていない。

技術普及のパッケージ作成(Top-Down方式)では、適用試験をしたあと普及させるに5~10年がかかる(GMO=遺伝子組み換え作物含む)。

問題点:ボトムダウン方式での普及方法でない。

これに対し、笹川アフリカ財団(Sasakawa Global2000;SG2000)の取り組みは、

  • 現場での技術支援
  • NGO同士の連携
  • エチオピアに長期滞在するスイス人経営SALAMとの連携。
    孤児支援から、始まり、教育、仕事の訓練(APPRENTICESHIP)などを取り入れている。
  • SGの農業機械導入時に、機械の作成を、SALAMで作成する。
II. SAFE(Sasakawa Africa Fund for Extension Education)の目的

アフリカ諸国の農業大学での、農業普及カリキュラムや、教育方法の改正。中堅農業普及員を訓練し、現場で実習させながら、TOPDOWNだけでなく、現場で改良する。および、大学も活性化できる。

ガーナ、エチオピア、ウガンダ、マリ 他 2004年で1000名

SEP(Supervised Enterprise Project/Practice)の概要:

  1. 視察、セミナー、などで、他の地域の担当者と会う機会ができる。
  2. 学内SEP、学外SEP計画。また、監督の下で、自学自習をする。
  3. 実習
    • 事前学習により実習の効果が上がる。
    • 先生が現場に訪れる。
    • バックアップとしてリソースセンターが存在。(雑誌、コンピュータ)(エチオピアAlemaya大学)
III. 現場について

A氏は、SEP前、10年の現場経験があった。農家から、害虫の深刻な状況の再確認(BOTOM UP)をし、資料室で、LEISAという雑誌で、その害虫の低コストな防除法を発見。その後、防除法は定着した。その後、農民自身で、他の植物の有効性に気がついた。農民自身の地域素材の再発見、意識化を達成。それに対し、普及員A氏が気がつき、大学で検証した。

B氏は、ドイツNGOで5年働いていた。B氏はファシリテーターとしての自覚が沸いてきた。双方向のやりとり。又、他のNGOとのやり取りができるようになった(SEPの紹介)。

C氏は15年の現場経験の後、SAFEへ、その後、連邦農業省へ。そしてSAFEのマイナス面の指摘(昇進)。

D氏13年の現場経験の後、SAFEへ。SEPでは、ジャガイモの保存に関するプロジェクトを構想。資料の不足を、CIPで(ペルー)の情報を使うことで補った(昇進)。

E氏は15年の経験のあと、知識と能力の向上。SEP準備から、農民主導の技術開発に留意。降雨の問題を再確認し、早生サツマイモ品種(高収量)開発のIARの研究を大学の検索で発見。SEPの素材に選定し、農家に提供し、家計、栄養の専門を招き、利用法について指導。多くの農家に普及。

また、ガーナでも成功。普及員も昇進していく。

  • 関係機関、ステークホルダーとの密接なかかわり。
  • 成果:現状把握、計画立案、コミュニケーション能力(農民から聞く)&応用力、評価と反省
  • SAFEプログラムの課題と将来展望
  • 経費の外部からの支援が必要。-車の維持管理。(現状では支援なしでは不可能)

これに対し、2003年でガーナでSG2000が撤退した後、政府予算、UCC独自財源や、他のNGOとの提携で、お金、人の援助をうけ、続けることも不可能ではない。

  • SAFEプログラムの機能とインパクト
  • SAFEの同窓会が、ロビー能力を備えつつある。
  • 農民が意見を聞いてくれる普及員にたいして、協力体制をとりつつある。
  • 質的変化。

結論

  • 農民、普及員の双方に気付きと、主体性ができた。
  • 普及員が集団になり、政策等に影響を及ぼす可能性をもつ。
  • 農業普及事業が変革期となっている(普及事業の有料化、マーケティング?自覚的意識、態度の変化が必要。)わが国でも参考になる。

質疑応答

Q:エチオピアでは、農業普及員は減少している。ドイツのNGOが知識を与えている。コーヒー組合のセミナーで農家が直接が情報をやりとりする。農業普及員は必要か?

A:直接の普及ができるなか、農業普及員は必要でないときもある。ただ、現場から情報をとってくることができる。農業普及員がロビーストにもなれる。例えば日本は、農水は現場を知らない。普及員は農家を知っている。

Q:アフリカ諸国における、農業分野の衰退がある。財政以外の問題は? ボトムアップは規模が小さいのでは? 指導員が入った村と入らない村の格差は?

Q:SEPの事前学習の前と後の期間:テーマの再確認のしたいテーマは普通、持っているのか?

Q:アフリカの農業を見るとき、小農と全体の食料の増産とは?

Q:トップダウンの援助とボトムアップの兼ね合いについて(これ以外についても)。

Q:テフの品種改良の状況

Q:嗜好性の強い作物カットによる現金収入

Q:NGOの政策立案について、ロビー活動の方法について

Q:ステークホルダーを誰がまとめるのか?NGOは無理だろう。

Q:施肥の問題(土つくり)有機肥料の無理な場合、ボトムアップで出てきた知識はあるか?

Q:農業普及と研究部門の関係

A:ステークホルダーの調整は受け入れ大学が実施する。(大学関係者と農業省、アドバイザーとして、東アフリカ、西アフリカコーディネーターが実施)。普及と研究の関係は、統一してしまわず、いろいろな方法でやればよいと思う。大学、学生、農民の活性となるのでは?外からのインプットだけでなく、ミクロな視点もあっていいと思う。

主催者から

資料集に「The role of language in rural development」を収録した。普及活動にとっても言語の問題は大きい。機械の操作などはトップダウンになるだろうし、地元に即した活動のためには、ボトムアップが必要だろう。AJF食料安全保障研究会は、情報提供・意見交換のメーリングリストを持っている。

講師から

普及、教育に関して、教えられるものと教えられないものがある。無理に統一すべきでない。それをどうつなぐかが教育であると思う。

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