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知的財産権フリーの新型コロナワクチンが登場

CEPIは14種類のワクチン開発に資金を投入

途上国へのワクチン供給:「ギャップ」解消はまだ

2021年11月末に登場した「オミクロン株」により、世界の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染動向は大きく変貌した。既存のワクチンについては、重症化や死亡リスクの低減については相当の効果はあるものの、感染や発症リスクについては、特に半年以上過ぎるとかなり低減するとされ、特に先進国では「ブースター接種」が進められている。一方、ワクチン・ギャップはいまだ解消されておらず、UNDP等がつくる「グローバルワクチン公平性ダッシュボード」では、高所得国で1回以上ワクチンを打った人は全体の67.53%であるのに対して、低所得国では11.8%と、差が縮まったとはいえ、いまだに6倍の差がついているのが現状である。一方、COVID-19関連製品の開発と途上国への供給に取り組む国際機関・民間財団の連合体であるACTアクセラレーターのワクチン部門、COVAXは、インドがワクチン輸出を再開したことなどから、途上国へのワクチンの供給を大きく増やし、現在までに11億本のワクチンを供給している。また、中国のClover社が開発するワクチンなど、新規に開発されつつあるワクチンの調達にも一定、道を開きつつある。

欧米メガファーマ以外の新規ワクチン開発にも投資するCEPI

ワクチン開発に資金を拠出する国際機関「感染症対策イノベーション連合」(CEPI)は、現在、14のワクチン開発ポートフォリオに投資をしている。もちろん、アストラゼネカなどの欧米のメガファーマやモデルナなど創薬ベンチャーなども含まれているが、韓国、インド、中国などの企業によるワクチン開発についても、資金を投入している。CEPIが資金を投入している中国の新規ワクチンで、実用化された場合にCOVAXが相当数の調達を予定しているのが、クローヴァー・バイオファーマシューティカル社(三叶草生物製薬公司)のワクチンであるが、これは、米国ダイナヴァックス社からの技術提供を受けて開発されつつあるもので、現在、世界保健機関(WHO)の緊急使用許可を受ける一歩手前の段階に進んでいる。その他、CEPIが投資するワクチン開発企業には、インドの製薬企業で、米印日豪の安全保障対話枠組みである「QUAD」のワクチンイニシアティブにより米国から製造能力向上の支援を受けている「バイオサイエンスE」社や、韓国でアストラゼネカ社のワクチンのライセンス生産を行っているSKバイオサイエンス社などがある。

一方、CEPIは公的資金を投資する基金として、設立当時には、CEPIの資金で開発されたワクチンの価格や知的財産権保護などについて、一定の規制を行っていたが、メガファーマの抵抗にあい、2018年にこれらの規制の多くを撤廃し、途上国での公正なアクセスを掲げる市民社会から厳しく批判された。COVID-19についても、CEPIの資金を受けて開発されたワクチンにおいても、公平なアクセス面での問題が生じている。

知的財産権フリーのワクチンも登場

一方、知的財産権を設定せず、世界全体に公平に供給することを目指したワクチン開発も行われている。米国テキサス州ヒューストンにあるベイラー医科大学「ワクチン開発のためのテキサス子ども病院センター」(Texas Children’s Hospital Center for Vaccine Development at Baylor College of Medicine)で、マリア・エレーナ・ボタッツィ氏(Maria Elena bottazzi)とピーター・ホーテス氏(Peter Hotez)によって開発されている「コルベバックス」(CORBEVAX)がそれである。

ボタッツィ氏とホーテス氏は以前、SARSのワクチンを開発しており、このコルベバックスは、その際に採用した技術を援用したものである。このワクチンは、米国とインドで臨床試験を行い、インド当局の許認可を受けているが、WHOの緊急使用リストにはまだ掲載されていない。同製品は他のCOVID-19ワクチンと比べて安価であり、上記にも触れたインドのバイオサイエンスE社がライセンスを獲得しており、2022年2月から、同社が途上国向けに大量生産する予定となっている。このワクチンについてとりあげた「The Conversation」の記事は、「先進国だけでのブースター接種ではCOVID-19パンデミックを終わらせられない。むしろ、コルベバックスのような地球規模でアクセス可能なワクチンを開発する方が、パンデミックを終わらせる上で重要な第一歩となるのではないか」と結んでいる。