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COVAXのワクチン、初めてガーナに供給

途上国への公正なワクチン供給に向け、

課題は山積

 

COVAXの資金不足は解消に向けて前進

アフリカ共和国ツワネの豪州大使館前で行われた公正な医療アクセスを求めるアクション ©Candice Sehoma/MSF

2月15日、世界保健機関(WHO)は英国アストラゼネカ社とオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、「緊急使用リスト」(EUL)への掲載を行った。これを踏まえ、ACTアクセラレーター(COVID-19関連製品アクセス促進枠組み)においてワクチンを担当するCOVAXが、同アストラゼネカ社のワクチンの供給に踏み切り、2月24日、西アフリカのガーナがCOVAXワクチンの最初の受け取り国となった。ガーナが受け取ったのは、インドのセーラム・インスティチュート・オブ・インディア(SII)製のアストラゼネカ社ワクチンである。その後、2月26日には、ガーナの隣国であるコートジボアールに同ワクチンが陸揚げされた。COVAXは2月3日に、低所得国向けの「事前買取誓約」(AMC)によるワクチンおよび「自己資金参加」(SFP)によるワクチンの供給計画「臨時供給見通し」を発表しており、今後、この計画に基づいて、各国にワクチンが供給されることとなる。

COVAXは昨年末の段階で78億ドルという巨額の資金不足に悩まされていた。しかし、バイデン民主党政権に交代した米国がWHOへの復帰とCOVAXへの当面20億ドルの拠出誓約を行い、また、2月19日に開催された、COVID-19に関するG7首脳会議において、COVAXについて合計55億ドル、ACTアクセラレーター全体について合計75億ドルの拠出が誓約され、一部が実際に拠出されたことによって、当面の資金の目途とともに実際のプログラムが動き出すこととなった。

製薬企業との交渉には課題山積

ただ、COVAXが抱える課題はいまだに大きく、また、COVID-19ワクチンへのグローバルな「公正なアクセス」に関する途上国の疑念は必ずしも払しょくされていない。一つの課題は、既に実用化され、また、今後早急に実用化されてくるワクチンの中で、COVAXが供給できるワクチンの種類が限定的であるという点である。実際、COVAXの「臨時供給見通し」に掲載されているワクチンは、上記SII社および韓国のSKバイオサイエンス社が製造するアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン、および米ファイザー社と独ビオンテック社が開発したのmRNAワクチンの二種類しかない。特に、米モデルナ社のmRNAワクチンは、COVAXの枠組みで研究開発の促進を担当するCEPI(感染症対策イノベーション連合)が開発資金の一部を拠出して開発されたにもかかわらず、いまだにCOVAXとの契約がなされておらず、COVAX経由での供給の見通しが立っていない。このことは、開発系製薬企業において、COVID-19ワクチンが「国際公共財」として認識されていないことを如実に示す事例であると言える。

もう一つ、途上国を悩ます大きな問題は、COVAXによるワクチン調達が各国の人口の20%しかカバーしないということである。集団免疫を形成するためには、最低限、人口の65%において免疫が形成される必要があるとされているが、COVAXによる多国間協調の取り組みが成功したとしても、それによりワクチンにアクセスできる人口は全体の20%にすぎず、残りの45%については、各国が製薬企業との二者間交渉によって確保するしかないのである。

新興国・途上国は開発系製薬企業との間で極めて厳しい交渉を強いられている。実際、米ファイザー社が中南米のある国の政府の交渉担当者に対して、「将来の訴訟リスクに備えるため」として、大使館のビルや軍事基地などについて抵当を設定することを要求したとの報道がなされている。政府の交渉担当者は、ファイザー社の交渉態度について、「ハイレベルないじめ」「ワクチンを盾にとって身代金を要求するような態度」であったと述懐しているという。

IMFの「特別引出権」配分が新提案として浮上

必要なワクチン確保のための資金については、国際社会の文脈では、世界銀行や地域開発銀行(RDB)が途上国に譲許的ローン(利率の低い借款)を提供し、それによって途上国がワクチンを購入する案や、2009年のリーマンショック時に行われたように、国際通貨基金(IMF)が新たに各国に相当額の「特別引出権」(SDR)を配分し、途上国がその資金によってワクチンを購入する案などが検討されている。このうち、新たな特別引出権の提供については、オックスファム、GCAPなど200以上の市民社会組織が、総額3兆ドルの特別引出権の配分を求めている。IMFの新たなSDR配分については、G20財務トラックでも有力な手段として検討されており、米国のジャネット・イエレン財務長官も、新たなSDR配分ラウンドについて前向きな立場を表明していることから、今後、COVID-19対策への世界的な資金不足を補完する有力な方法として早急に検討が進むことが期待される。