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ACTアクセラレーターに必要な資金は「4兆円」、誓約されたのはその7%

=国際連帯による急速な資金動員と、収益構造の歪みを質す両面作戦が必要=

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言したのが1月30日、パンデミックが宣言されたのは3月11日でした。そこからそれほど間を置かずに、4月24日、COVID-19に関する新規技術開発と平等なアクセスを一体で手掛ける「COVID-19製品アクセス促進枠組み」(ACTアクセラレーター)が4月24日に設立されました。

必要な資金は「4兆円」、既存の誓約は3150億円

このACTアクセラレーターが9月24日、COVID-19の克服のためにどれだけ資金が必要かを算出し、ドナー国や民間財団などに資金拠出を要請する「インベストメント・ケース」を発表しました。これをみると、ワクチンや治療薬、検査薬・装置を開発し、保健システムの構築を通じて平等なアクセスを実現していくために必要な多額の資金に対して、各国や民間財団などが十分な資金を拠出していない状況が明らかになっています。

「インベストメント・ケース」によると、これから2021年3月末までにACTアクセラレーターとして必要とする資金は合計380億米ドル(約4兆円)。ところが、現在までに拠出が誓約されている資金は30億ドル(3150億円)と全体の7%に過ぎず、資金ギャップは350億米ドル(3.7兆円)に上ります。ACTアクセラレーターには、ワクチン、治療薬、診断・検査、保健システムの4つのパートナーシップがありますが、その中でもっとも拠出誓約額が多いのはワクチンで、30億ドルのうち、20億ドルはこちらになります。しかし、ACTアクセラレーターのワクチン・パートナーシップであるCOVAXが必要とする資金は160億ドル(1兆7000億円)と極めて多額に上ることから、最も大きな資金ギャップを抱えていることになります。一方、治療薬パートナーシップについては必要額70億ドルに対して3億ドル、検査・診断パートナーシップについては必要額60億ドルについて3億ドル、保健システムに至っては必要額90億ドルについて1億ドルの資金誓約しかなく、全く追いついていないというのが現実です。

「ワクチン国家主義」は克服できるか

国際協調により、世界全体でCOVID-19を克服していこうという「ACTアクセラレーター」の取り組みの最大の阻害要因が、いわゆる「ワクチン国家主義」です。WHOとともに、ACTアクセラレーターの設立や運営に大きくかかわってきたのは米国のビル&メリンダ・ゲイツ財団(BMGF)ですが、同じ米国のトランプ政権は、COVID-19に関わる国際協調には一切背を向けています。同様にこの設立に強く関与した欧州連合も、ワクチンに関しては一時COVAXへの参加を見合わせるなど(9月に参加)、必ずしも国際協調に全面協力してきたわけではありません。COVAXへの積極的な関与を示してきたのは、英国、カナダ、日本、韓国など非米・EU先進国ですが、これらも、ACTアクセラレーターに数億ドル規模の資金を拠出しつつも、それとは比較にならないほど巨額の資金を自国のためのワクチンや機材、医療機器、薬剤党の購入に充てています。また、中国やインド、ロシアなど経済規模の大きな新興国も、様々な理由から、ACTアクセラレーターへの協力や資金拠出を行っていません。

この状況から、ACTアクセラレーターがどのように資金の面で巻き返し、必要な資金確保に道を開いていくのかが問われます。国際保健に取り組む市民社会の中では、この資金ニーズに対して、世界のGDPに占めるドナー各国の資金規模から「適正拠出額」(フェア・シェア)を算出したり、各国の景気刺激策の1%を目安にACTアクセラレーターに対する拠出を働きかけるなどの戦略が検討されています。

国際保健の収益構造の「歪み」を質す取り組みも必要

一方で、もう一つ検討されるべき論点としてあるのが、COVID-19克服にかかるとされる巨額の資金自体が、COVID-19に関わる新規技術を開発する巨大な開発系製薬企業の収益構造や、旧来の先進国がこれらの新規技術を独占する構造を前提としたものではないか、という点です。実際のところ、5月29日にWHOとコスタリカが主導し、37か国の支持によって設立された、新規技術の自発的ライセンシングのための枠組みであるC-TAP(COVID-19技術アクセス・プール)とACTアクセラレーターの関わりは十分に見えていません。国境なき医師団の必須医薬品アクセス・キャンペーンや米国のアドボカシーネットワーク「パブリック・シチズン」、「ヘルス・ギャップ」(Health GAP)などは、こちらの問題についても警鐘を鳴らしています。

COVID-19パンデミックは、3月のパンデミック宣言から6か月で合計100万人に上る人々の命を奪い、米国をはじめとする多くの国で収束の方向性が見えないまま、越年する状況になりつつあります。地球規模でCOVID-19を克服していくために、国際連帯の枠組みに必要な資金をグローバルに動員しつつ、今後のパンデミックもにらんで、新規技術開発に関わる保健・医療の現在の制度や構造のゆがみを正していくことも必要となっています。

<参考>

ACTアクセラレーター「インベストメント・ケース」(英語)

The ACT-Accelerator needs $35B more funding. Here’s what’s at stake if it fails (DEVEX)