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【報告】セミナー「ブルンジで大統領の急死、過去・未来」

6月22日、緊急セミナー『ブルンジで大統領の急死、過去・未来』をオンラインで開催しました。短い広報期間だったにもかかわらず、70名以上の方にご参加いただきました。大統領の急死に揺れるブルンジ情勢について、ブルンジ在住のドゥサベ友香さんに現地よりご報告いただき、その後、アフリカ研究者の武内進一さんにコメントしていただくきました。聞き手は津山直子・アフリカ日本協議会代表理事が務めました。

ブルンジで15年間に渡り権力の座にあったンクルンジザ大統領が、6月8日、急死しました。5月20日に行われた大統領選挙で、ンダイシミエが次期大統領に選出された直後でした。前大統領の急死と、それにより予定より前倒しとなった新大統領の就任は、ブルンジにどのような変化をもたらすのでしょうか。

【ドゥサベさん講演の概要】

ブルンジは美しい自然に恵まれている一方で、経済状況は非常に厳しく、人口の7割以上が貧困ライン以下で生活し、人間開発指数は189カ国中185位、飢餓指数や幸福指数は世界最下位である。ベルギーから1962年に独立したが、独立後は長く紛争が続き、虐殺も繰り返し起きた。和平交渉を経て2005年にンクルンジザが大統領に就任し、紛争は終結。しかし2015年に、大統領の任期を2期までと定めた憲法の規定を無視してンクルンジザが3期目となる大統領選に出馬したことから、深刻な政治危機が生じた。

3期目の大統領任期中に、さらに在職期間を延長できる憲法改正もおこなわれたが、今年2020年の選挙では、ンクルンジザは自ら立候補せずに腹心のンダイシミエを大統領候補に立て、当選させた。これは、ンダイシミエを操り、陰の権力を保持しようとしたものと見られていたが、6月8日、ンクルンジザは急死することになる。死の真相はわからないが、ブルンジ国内では、操り人形になるのを嫌ったンダイシミエがンクルンジザを殺害した、という内容の真偽不明のWhatsAppメッセージも出回っている。

現在のブルンジは少なくとも表面上は平穏。ンクルンジザの権力に惹かれていた支持者は、新たな権力者であるンダイシミエへと急速に支持を切り替えているようにも思われる。ンダイシミエは、前任者がほぼ何もしてこなかったコロナ対策に大統領就任演説で言及するなど、期待を持てそうなところもある。しかし、期待しすぎると外れたときの落胆も大きくなるので、過度な期待はしないほうがよいかもしれない。ブルンジに家族とともに永住する者として、この苦難の先に、平和、発展、民主主義が実現してほしいと願っている。

【武内さんコメントの概要】

ブルンジの政治体制は、1990年代までのツチ政党UPRONAの支配から、2000年代以降は公職に占めるフツ・ツチの割合を固定するエスニックな権力分有制度へと移行したが、どちらも実態としては軍事エリート(1990年代以前はツチ、2000年代以降はフツ)による支配であるという点で、鏡の裏表のような関係にある。エスニックな権力分有制度は形式的には今回の選挙でも遵守されているが、ンクルンジザの三選問題が発端であり、元来エスニックな問題ではなかった2015年の政治危機がツチへの迫害をも招いたことから、結果として特に治安部門の権力分有体制が崩壊している。

ンクルンジザの急死は、選挙が実施され、腹心が次期大統領に決まったタイミングで起きた。ブルンジは、個人独裁体制というよりは与党CNDD-FDDによる統治体制なので、ンクルンジザが死んでも変わらないことの方が多いだろう。他方で、アンゴラの例を考えれば、トップが代わることによる影響が今後出る可能性も考えられる。2015年の政治危機以降、ブルンジ国内では反体制勢力、メディア、人権活動家が徹底的に抑圧され、多くの難民が国外へと逃れた。主要ドナーは援助を停止し、ブルンジに強い外交圧力をかけてきたが、ンクルンジザの死は外交関係改善の契機となるかもしれない。

>>>ゲストのプロフィール

◆ドゥサベ友香(ともか)さん

名古屋市出身、神戸大学大学院国際協力研究科修士課程修了。2016年よりブルンジ在住、永住している唯一の日本人。仕事と育児の傍らで、伝統工芸の「ラフィア編みバック」の商品化、雑貨店経営、母子支援、バイオガスプロジェクトなど手がけている

◆武内進一(たけうち しんいち)さん

東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター・センター長、JETROアジア経済研究所・上席主任調査研究員

以上