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アフリカの現場から:エチオピア

On the Spot in Africa :Ethiopia

エチオピアのNGO事情

『アフリカNOW』86号(2009年11月30日発行)掲載

執筆:渡辺 英樹
わたなべ ひでき:2002年にAJFインターン。2008年からAJF理事を務め、AJF中期ビジョン策定などを担当。2009年6月よりJICA所員としてエチオピア駐在中。国際開発学会員。関心分野はアフリカ、ガバナンス、コミュニティ開発など。


エチオピア人にとって、NGOは必ずしも遠い存在ではありません。街を歩けば、あちこちでNGOの看板を見かけます。また登録NGOのように組織体制はしっかりしてはいませんが、葬式講(※1)や結婚式講のようなグループも存在し、政府の支援が及ばないところで、住民自身が自助努力・相互扶助の精神で生活を少しでも良くして行こうという姿も垣間見られます。毎年、深刻な食料不足が伝えられるエチオピア(※2)。今回は、そのエチオピアにおいて活発に活動する現地NGOの代表格の一つCRDAを紹介します。

CRDAの活動内容

CRDA(Christian Relief and Development Association)(※3)は、1973年のエチオピア国内の飢餓を契機に設立されました。自らをNGOの中のNGOとしての位置づけ、2008年時点で350団体が登録しています(そのうち70%が国内NGO、30%が国際NGO)。
CRDAの『2008年度年間活動報告書』によると、2007年度の収入は27,910,874エチオピアブル(=約2,232,800米ドル)、支出は34,620,457エチオピアブル(=約2,769,600米ドル。2009年9月時点)で、男性36名と女性22名のスタッフを抱えています。主な活動目的は、(1)メンバーNGO間の情報共有、(2)メンバーNGO間の協力とネットワーク化の支援、(3)メンバーNGOの能力強化、(4)④メンバーNGOの活動に関わる意見の集約・発信、(5)メンバーNGOの活動の効果を高めるための政策調査・分析、となっています。
CRDAは国際援助機関などの支援も受け、その規模や活動内容ともに、通常のNGOとは桁外れの巨大な規模のNGOなのです。吹き抜けのある4階建てのビルを所有し、ビル内にはインターネット設備やNGOに関する図書を収集した資料室などがあり、エチオピアにおけるNGOのリソースセンターとなっています。
CRDAはエチオピアのNGO代表として、各種ドナー会合にも積極的に出席しています。2009年9月上旬に行われた農業分野の会合CADAP(Comprehensive Africa Agricultural Development Programme)でも、米国際開発庁(USAID; US Agency for Internationai Development)などの先進国ドナーと共にエチオピアNGO代表として出席し、発言しています。
さらに、CRDAのNGOとしての対外戦略には目を見張るものがあります。2009年7月23日には、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)のエクゼクティブ・ディレクターであるMichele Kaztchkineさんを招へいし、討論会を開催しています。その討論会の席でKaztchkineさんから、「GFATMの理事会は26名で構成されているが、NGOとコミュニティ組織に対して3名の割り当てがあるので、CRDAもその枠に応募してはどうか。また、エイズや結核、マラリア対策について、CRDAとアドボカシー・パートナーシップを築いていきたい」といった発言を引き出しています(※4)。
その他にもCRDAは、以下の活動も行っています。
(1)NGOにおけるグッドプラクティス・コンテストの実施:エチオピアの英字週刊紙”Reporter”などの有力新聞に広告を掲載し、エチオピアのNGOにおけるグッドプラクティスを募ってコンテストを行っています。同コンテンストを通じたNGO間のグッドプラクティスの紹介・共有を行っています。
(2)NGO – JICAデスクの設置:日本のNGOとの関係では、2009年度にエチオピアにおけるNGO情報提供の窓口であるNGO-JICAデスクの設置先としても活躍し、エチオピアに関心のある日本のNGOへの各種情報提供や、エチオピアにおいて成果を出している日本のNGOのエチオピア国内への紹介などを行っています。最近では、アフリカ理解プロジェクトへのインタビューなども行われ、CRDAのウェブサイトに掲載されています(※5)。
さらに2006年と2008年には、TICAD市民社会フォーラム(TCSF)やJICA、在エチオピア日本大使館と協力して、パートナーシップセミナーを開催。森元首相がエチオピアを訪れたときに、パートナーシップセミナー参加NGOでまとめた要望書(※6)を手渡しています。

CSO法とその影響

エチオピアでNGOの活動が活発に行われている一方で、エチオピアのNGO活動に大きな変化を起こしうる法律が最近作られました。Charities and Societies Proclamation No.621/2009(Proclamation to Provide For the Registration and Regulation of Charities and Societies)、通称CSO法(※7)が2009年2月13日付けの官報で公布されたのです。
CSO法では、NGOを(1)エチオピア人NGO(全員がエチオピア人で海外からの資金援助が10%以下であるNGO)、(2)エチオピア住民NGO(予算の10%以上を海外からの支援に頼るエチオピアに住む人々で構成されるNGO)、③海外NGO(エチオピア以外の国籍の人を含む、あるいは海外からの援助を10%以上受けているNGO)に3分類しています。この分類に基づき今後は、具体的にそれぞれのカテゴリーのNGOに対する処遇などが決められてくることが想定されています。
そして、同法に基づいてCSA(Charities and Society Agency)(※8)が設置されました。CSAは総裁と理事会などから構成され、NGOの登録や免許発行、監督を担当することとなっており、エチオピアのNGOの運営において重要な位置を占めることが想定されています。CSO法以前に登録されていたすべてのNGOは再登録の必要があります。9月末から再登録手続きが開始され、現在5,000近くのNGOが再登録手続きを進めているといわれています。
こういった特徴を有するCSO法は、詳細な制度規定によりエチオピアにおけるNGOの質を担保する一方で、政治的な活動を行うNGOを排除し、行政によるNGO統制を強める側面を有する可能性も秘めています。例えば100,000ブル(900万円程度)以上の年間予算を使うNGOについては外部監査を義務付けて、予算執行の透明性を確保するように義務付けています(79条)。一方で、すべてのNGOに対して、ロゴマークやフィールドオフィスの設置といった細かい事項まで事前報告・登録制を義務付け(72条、74条)、さらにCSAは、登録NGOに対する質問送付の権利(84条)や解散権も有しています(93条)。
CSO法がエチオピアのNGOに対して今後どの程度の影響をもたらすのかについて、いろいろな憶測が飛び交っていますが、実際にはまったくわからないのが現状です。この国のガバナンスのあり方、政府と市民社会との関係を考えるのに有効な視座の一つを提供する材料となるかも知れません。現在、CRDAは同法に関する情報提供や対応策の提供(ウェブサイトに掲載)、CSA関係者との対話などを行っています。CRDAの関係者は、現在は移行期なので、新CSO法の施行による影響はまったくわからないと語っていましたが、CSO法の施行への対応において、CRDAがNGOの立場で一定程度の役割を果たすのは間違いなさそうです。
アディスアベバの市街を歩くと、さまざまなNGOの看板が目につきます。アディスアベバのメイン通りの一つに当たるボレ通り沿いでも、Munchen fur Munchen(ドイツ系NGO)など、多様なNGOのロゴが目に入ってきます。エチオピアの援助の世界では、国際NGOが大きな役割を果たし、プレゼンスも高いのが事実なのです。
一方で、なかなか顔が見えにくいものの、地域に根差した活動をしている現地NGOも多くあり、さらにNGOと言った組織体でなくとも住民の助け合いも活発に行われています。小規模のNGOの場合、なかなか単体では声をあげにくいといった実情もあるようです。その意味においてCRDAには、現地NGOの一代表として、多様なNGOの声を集約して政府に伝え、交渉する機能があるでしょう。CRDAの活動とCSO法の動向には今後も目が離せません。

(※1)エチオピアでは葬式に多額の費用がかかるため、「講」の形でグループ内で一定額を貯蓄し、誰かが死亡した際に同金額を使うインフォーマルな互助組織(アムハラ語で「イェッデル」と言う)が存在する。
(※2)2009年10月23日のBBCでは、今年はエチオピアで約620万人の食料不足が予想されるとの報道がなされた。
(※3)http://www.crdaethiopia.org/html/
クリスチャンとうたっているものの、キリスト教以外の価値観を持つNGOも参加しているため、名前やロゴなどの変更が現在議論されている。
(※4)”CRDA Newsletter” July-August 2009より
(※5)http://www.crdaethiopia.org/html/061609rikai.php
(※6)http://www.ticad-csf.net/home/pr080201.htm
(※7)CSO法は、基本的には70%をプロジェクト活動、30%を人件費に活用する組織を登録対象としている。すなわち、30%以上の人件費を計上する団体はNGOとして登録できないということになる。
(※8)ここでのCharityは、貧困削減や災害救助、社会開発、環境保護・改善など、15のカテゴリーに属する団体(CSO法第14条)を意味する。


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