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アフリカ農業が直面するバイオ燃料の嵐

African agriculture is faced with biofuels’ storm

『アフリカNOW』 No.81(2008年6月30日発行)掲載

執筆:稲泉 博己
いないずみ ひろき:1992年3月、東京農業大学大学院博士課程修了後、国際熱帯農業研究所(在ナイジェリア)研究員などを経て、1998年4月から東京農業大学教員(現在、准教授)。1992年4月に赴任した農業実践学園で、ジャガイモ、サツマイモ、落花生、大麦などの栽培を手がけ、以来イモへのこだわりを持つ。それが高じて、2003年9月?2004年8月、キャッサバの原産地の一つとされるブラジル留学(サンパウロ大学ルイス・デ・ケイロス農科大学客員研究員)を経験する。

*本稿は、3月5日に開催されたAJF食料安全保障研究会公開セミナー「アフリカ農業とバイオ燃料問題」での筆者のプレゼンテーショをもとに執筆されたものです。


バイオ燃料は、2005-2006年ごろから非常に注目されるようになりました。最初、日本でも、気候変動に対する救世主という扱いを受けてきたのですが、最近ちょっと違う状況が生まれています。アフリカ農業に関して言えば、「バイオ燃料問題の嵐」が吹き荒れています。本稿では、「2007年3月、嵐の始まり」にいたるプロセスを追いながら、問題の所在を明らかにしていきます。

バイオ燃料生産大陸アフリカ?

2006年1月、米国ブッシュ大統領は一般教書の中で、バイオ燃料生産目標を明示し、とうもろこし原料のエタノール生産にエネルギー補助金を支出することを表明しました。この教書を契機に、アメリカではバイオ・エタノール生産が急速に伸びています。ヨーロッパでは、それ以前から、菜の花からバイオ・ディーゼルを生産するなどの取り組みがありました。ブラジルでは1970年代からエタノール100%の自動車燃料が製造され使用されています。ブラジルでは、普通のガソリンにもエタノールが25%混入されています。
問題となるのは、2007年からアフリカにバイオ燃料作物を作らせようという動きが出ていることです。アフリカは、農業的にも経済的にも世界のマージナルといわれる周辺地域、最貧地域です。アフリカの多くの国では、ミレニアム開発目標(MDGs)にかかげられた、飢餓・貧困の克服、初等教育の普及、保健衛生などの目標達成が困難と言われています。その中にあって、去年あたりから「豊かな資源、エネルギーの供給大陸」アフリカへの注目が高まっているのです。
今年2月、外務省と国連工業開発機関(UNIDO)主催の「アフリカのバイオ・ディーゼル」というセミナーが開かれました。このセミナーは、客観的にバイオ・ディーゼル生産の可能性を追求するというものではなく、推進派の総決起集会と言うべき集まりでした。現実をふまえた発言が無視される、あるいは発言自体ができないという、非常に恐い集まりでした。「アフリカ:豊かな供給大陸」という表現の内実が、ここに現れていると感じます。
本稿では、バイオ燃料原料としての作物生産が、ホントにばら色の未来を開いてくれるのか、現状から考えられるところを整理してみました。立場が違えば、アフリカでのバイオ燃料生産に関する期待・評価も180度違うこともありえます。また、日本がメインアクターになる課題でもあり、「アフリカのもの=遠いもの」だと考えてはいけないことも明らかにします。

バイオ燃料のメリット・デメリット

バイオ燃料のメリットとして、化石燃料とは違って再生が可能であること、燃料消費に伴って発生する二酸化炭素(CO2)を吸収しながら生産されるという意味でカーボン・ニュートラルである、また石油代替エネルギーとして有望であることなどが言われています。最近では、バイオ燃料原料作物をつくることが農業の振興につながるとも言われています。アフリカの場合、農業振興が一番強調されています。
デメリットは、一言で言うと食料との競合です。食料生産つまり土地・水・投入財・労働力、すべてにおいて競合するという恐れがあります。それでは新規開発した農地でのプランテーションであったとしたらどうか? 今までのプランテーション農業が示しているように、大規模単一作物栽培はどうしても土壌の肥沃度を低下させる傾向があります。肥料などの投入を続けていっても、ですアメリカの穀倉地帯の現状がいい例です。生物多様性も当然ながら落ちていきます。作物にもよりますが、食用とならないものを作っていると、地域の水系が汚染されるという懸念もあります。また、バイオ燃料を製造する段階での水需要および排水の問題もかなり大きいと考えられます。

2007年3月、嵐の始まり

昨年7月、ABN(Africa Biodiversity Network)が「アフリカのアグロ燃料」という報告書を発行しています。この報告書は、旧来の薪や糞などのバイオ燃料と区別して、大規模単一作物栽培によって生産されるバイオ・エタノール、バイオ・ディーゼルをアグロ燃料と呼んでいます。この報告書が指摘するような、新たなバイオ燃料作物開発に対して緊急に対応策が必要であるという認識が高まったちょうど一年くらい前から、アフリカにおけるバイオ燃料問題という嵐が始まったと言えます。
去年の3月9日、米国のブッシュ大統領がブラジルを訪問しました。現在、米国とブラジルは、世界中のバイオ・エタノールの70%以上を生産しています。この両国が手を組んでバイオ燃料生産国機構(Green OPEC)を立ち上げようと言う提案があったとされています。ブラジルのルーラ大統領は提案を受けて、米国と戦略的同盟を結ぶことで中東依存からの脱却が可能になり、化石燃料の場合の慣行、すなわち中東やごく一部の産油国への依存を変えることができると言っています。同じ年に、今度はルーラ大統領がワシントンに行き、話を詰めています。今年3月には、北米と南米をつなぐ、バイオ燃料についてのホットラインがつながっているはずです。ブッシュ大統領には中東依存、そして反米的なベネズエラの石油への依存を抑えたいという思惑があるでしょう。また、ルーラ大統領を取り込み、ベネズエラやボリビアなど反米的な国と対立させたいと考えているだろうとも指摘されています。
これだけでしたらアフリカにはあまり関係なさそうですが、この年の3月には、アフリカに関わるバイオ燃料の会議が非常に多く開かれています。

アフリカのバイオ燃料に関わる動き

ここでアフリカのエネルギー、特にバイオ燃料に関わる動きを振り返って整理してみます。
1958年、国連アフリカ経済委員会(ECA)の持続開発部門が、農業、水、環境、科学技術ともにエネルギー分野を担当すると宣言しました。
1980年4月のアフリカ統一機構(OAU)のサミットで、ラゴス行動計画が出され、この中に中長期にわたるアフリカのエネルギー問題の解決を目指す、そのために特別な機関を設けるべきだと、明記されました。
1994年にはアフリカ開発銀行(AfDB)がエネルギー政策を発表しています。同年、アフリカ経済共同体(AEC)の基礎となるアブジャ協定が発効し、その中に新たな再生可能エネルギー開発促進がうたわれています。
2002年にOAUがアフリカ連合(AU)に再編された際、インフラストラクチャー・エネルギー理事会という付属機関が設置され、1980年のラゴス行動計画から20年経ってようやく2001年に、エネルギー問題のための特別機関、アフリカ・エネルギー委員会が設置されることになりました。この時点での活動目的は、データベース構築、人材育成、そしてネットワーク確立でした。2001年段階では、バイオ燃料には言及されていなかったと思われます。
また、2001年に南アフリカのムベキ大統領ほかがニュー・アフリカ・イニシアティブ(NAI)を提起しました。このNAIは、セネガルのワッド大統領らが提唱したオメガ計画と統合され、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)へと変わっていきます。
2004年には、国連アフリカ・エネルギー委員会(UNEA)が設置されました。この委員会は、世界経済と環境問題の総合的解決を促進することを目的としており、低コストで信頼性の高い農村で利用できるエネルギーが必要であると提唱しています。アフリカ農村の大部分では、電気が通っていませんから、薪や炭が使われています。薪や炭の使用量を減らしていかないと、環境の劣化や地球温暖化にもつながることを問題にしています。一説によれば、ケニアではエネルギー使用量の50?60%が薪や炭でまかなわれていると言われています。このUNEAには、国連砂漠化対処条約(UNCCD)と連動したアフリカ再生ネットワークも置かれ、同じ会議で閣僚宣言を発出しました。
2005年には、アフリカ・エネルギー閣僚フォーラムが開かれました。アフリカの国々のエネルギー閣僚が集まり、エネルギーの効率的利用のための政策的なイニシアティブを取ろうとしたのです。また、工業目的の近代的バイオマス技術の探求が目標とされました。これがバイオ燃料にあたります。ここで近代的と言っているのは、アフリカ農村でもともと燃料として使われてきたバイオマス、薪なり糞尿などとは違う、植物由来のものを工業的に使うという意味です。具体的には、農村で使用されるエネルギーの50%、都市のエネルギーの75%を、電気やプロパンガスといった近代的エネルギーを使うようにしようという目標が立てられました。また学校、診療所、コミュニティーセンターの75%に電気をつなぐことも目標とされています。
同じ2005年の9月には、科学技術に関する行動計画というのが出されました。この行動計画には、2006年から重点目標としてバイオ燃料を含めた再生可能燃料資源を探索することが盛り込まれています。同じ年の12月、今度は、燃料関係者の政策対話フォーラムが開かれました。
2006年3月、AUの第一回電力関係閣僚会合がエチオピアのアディスアベバで開かれ、アフリカ大陸の有望な再生可能エネルギー源は水力である、と宣言しています。ところがその後、2006年の終わりに近づくにつれ状況が変わってきました。
2006年11月、ナイジェリアのアブジャで開かれた第一回アフリカ南米サミットでは、再生可能資源に対する南米からの投資促進が、非常に強調されています。ここで投資の対象とされたのがバイオ・エタノール、投資主体はブラジルです。
2006年12月には、砂漠化対処条約の補強を目的とした緑の壁イニシアティブが出されました。域内燃料が過度に伝統的バイオマス燃料に依存することを改め、再生可能な代替燃料使用の促進をうたっています。同じ月、クリーンかつ再生可能な燃料開発をうたう、アフリカの協力と連帯に関するカイロ宣言が出されました。
2006年の初めには、アフリカで可能性が高いのは水力だと言われていましたが、12月には、バイオ燃料の次のエネルギーと言われる炭化水素が開発対象とされています。
そして2007年1月、気候変動に関する宣言も出された第8回AUサミットで、緑の壁イニシアティブが正式に承認されました。再生可能燃料、森林資源、農業研究開発促進ということが言われます。
そして2007年3月6?7日に、ベルリンに220名のアフリカやヨーロッパの政府、研究機関の関係者が集まり、アフリカ・ヨーロッパ・エネルギー・パートナーシップ会議が行われました。この会議では、近代的、安定的な燃料事業展開がミレニアム開発目標(MDGs)達成のカギであると確認されました。
続いて、3月22?23日に、日本と国連機関が主催するアフリカ開発会議(TICAD)プロセスの一つとしてTICAD「持続可能な開発のための環境とエネルギー」閣僚会議がケニアのナイロビで開かれました。この会議の議長総括では、クリーン・エネルギー開発に民間部門に大きな参入余地がある、特にクリーン・エネルギーの中でもバイオ燃料や低コストの分野が大きなビジネスチャンスが存在することに言及されています。他の色々な報道を見ても、様々な企業がその前からやっているといいますが、このナイロビ会合がアフリカにおけるバイオ燃料推進の発火点と言われるくらいになっていると思います。
その翌週、アフリカ・エネルギー閣僚会議がモザンビークのマプトで開かれました。そこでは、伝統的なバイオマス燃料への依存が健康・環境に負の影響を与えていることへの注意が喚起されました。環境については当然ですが、健康面は薪を家の中で燃やすことによって煙が充満し、呼吸器系をやられてしまうということです。一方で、見捨てられている豊かな燃料資源をどんどん利用する必要があると提起されています。ナイロビとマプトの会合が合わさって、非常に大きなうねりが始まったと思われます。
2006年の後半から2007年の3月にかけて、急速にアフリカにおける「バイオ燃料」という嵐が吹き荒れ始めたことがわかります。この嵐の中で、アフリカの各地で農地の取り合い、穀物価格の高騰に対するデモなど、さまざまな動きが始まっています。

ナイジェリアのキャッサバ:食料、それともバイオ燃料原料

アフリカ南米サミット後、世界最大のキャッサバ生産国であるナイジェリアでは、キャッサバをバイオ燃料にしようという試みが始まっています。2006年までは、大統領イニシアティブの一つであるキャッサバ・イニシアティブが食品加工をメインの目的に実施されていました。このイニシアティブの中にも、エネルギーという項目もありましたが、実際にナイジェリア国内で動いていたのは、食品加工の高度化という食品分野でした。ところが去年、ブラジル国営石油企業ペトロブラスが、ナイジェリアに入ってきてエタノール工場を作りました。
ブラジルは、1970年代の石油危機の時に代替燃料としてバイオ・エタノールを作り始め、車の燃料に100%あるいは25%混入しています。そのブラジルで1970年代には、エタノール原料としてサトウキビとキャッサバの間で競争がありました。キャッサバをエタノールにするときに、加水分解の過程というワンステップが必要であり、手間とコストがかさむということで、現在、ブラジルではエタノール原料としてサトウキビが使われています。世界で一番効率の良いバイオ・エタノールを作っています。
つい最近ブラジルで、バイオ・エタノール製造に適したキャッサバの新しい品種を見つけた、あるいは開発したというニュースが入ってきています。そうした新品種がナイジェリアに持ち込まれ、バイオ・エタノール事業に向けられることも予想されます。

アフリカ諸国でのバイオ燃料導入の動き

マラウイは、ブラジル製のフレックス車を導入しました。マラウイでは、サトウキビを原料にしたバイオ・エタノールを10%混入した自動車燃料を認定すると言われています。
ちなみに、日本は去年、E3というのをやりました。フランスからエタノール(ETBT)を買って3%混ぜるという不思議な方法を取っています。
ポルトガル語圏で、ブラジルの影響を受けているモザンビークでは、ソルガムとサトウキビを原料に、バイオ燃料を開発しようとしています。モザンビークの産業アナリストのヴァンデルワアルによれば、降水量が十分で集約的なサトウキビ生産の経験があるモザンビークは、アフリカ南部で最もバイオ燃料生産の可能性が高いそうです。
スワジランドでは、バイオ燃料向けのキャッサバ栽培が、最近、ヤトロファに代わりつつあります。政府が農地を海外資本に売ったと言う報道もあります。スワジランド政府によれば、海外の企業が入り、バイオ燃料プラントが入ることで、農村部で雇用が促進される、うち捨てられていた綿花栽培のプランテーションが再生される、そしてプランテーションで働き賃金を得て、食料を買うことができる、というのです。2006年の世界食糧計画(WFP)レポートは、当初スワジランドで22万人の食料不足人口を見積もっていました。ところが10月以降、食料不足人口は36万人に増加したと予測されています。このように食料不足が生じている状況の下で、雇用を促進して賃金を得たからといって、食料へのアクセスは確保できるのかは疑問です。

日本のバイオ燃料政策がアフリカの食料安全保障を脅かす

2007年6月8日付英ファイナンシャル・タイムズの海外投資情報記事は、多くのヨーロッパ諸国はバイオ燃料混入を義務づけているが、ほとんどが国内生産では間に合わないと報じています。日本や韓国にとっても同じ状況とも報じられています。記事は、南アフリカにとって、ヨーロッパ諸国や日本、韓国はバイオ燃料の有力な輸出先になると続けています。
日本の場合、国で決めた「バイオマス・ニッポン総合戦略」達成のためには、国内のバイオ燃料需要量の9割を輸入しないといけません。南アフリカのバイオ燃料企業エタノール・アフリカの推計によれば、2012年に日本は国際エタノール市場の流通量の75%を輸入することになるそうです。現時点では、この推計の信頼性は不明ですが、こうした推計が出されることには、注目する必要があります。

アフリカの食料安全保障を脅かすバイオ燃料への投資

アフリカの農業は、同じ畑に同じ時期にさまざまな作物を植える混作が主体です。混作農業にメリットもありますが、効率が良いとは言えません。西アフリカの半乾燥地域中心に綿花栽培が導入されたことで、混作主体のアフリカ農業が変わって効率が上がった、同様にバイオ燃料作物栽培もプラスの面があると言っている人もいます。
また、食料と競合しない廃材などを原料に、セルロースを分解してバイオ燃料を製造することが大切という提言もあります。他に、遺伝子組み換えトウモロコシと乾燥トウモロコシ分離法を組み合わせる、あるいは先に触れた新しいキャッサバ品種を導入してバイオ・エタノールを製造する方法も提起されています。
1990年代に国際食料政策研究所(IFPRI)が開発したIMPACTという将来の農産物価格予測モデルがあります。2007年に、IMPACTを使って推定されたところでは、バイオ燃料開発への投資額が2006?2007年段階と同じであったとしても、2020年にはトウモロコシ価格が26%、油脂作物類が18%上昇するとの予測が出ています。今後、投資額が倍になった場合には、トウモロコシ価格は72%上昇すると予測されています。その場合、サハラ砂漠以南アフリカでは2020年までにカロリー摂取量が8%以上低下すると予測されます。同様にバイオ燃料生産への投資が、現状と変わらないままでも、あるいは倍になった場合でも、世界中どこの地域でもカロリー摂取量が減るものと予測されています。
アフリカの栄養状況を見ると、1990年に全人口の36%が栄養不足であったのが、2002年で32%と、あまり改善されていません。この上さらにカロリー摂取量が8%減ると、1990年より状況は悪化するものと考えられます。

アフリカ農業の課題:土地、水、労働力

世界中の投資家や、アフリカ諸国の政府は、アフリカにはバイオ燃料生産のための広大の土地や水や安価な労働力があると主張しています。タンザニアや南アフリカでは、農地が拡大する一方で森林面積が減少しています。また、ギニア湾岸地域では、耕作可能な国土の57%のうちすでに46%が使われています。すなわち、この地域では、すでに耕作可能面積の4割以上が農地として使われており、人口の4割から5割が農業を行っていますので、これ以上の農地拡大や農業生産の拡大が簡単にできるかどうか疑問です。
アフリカ諸国の部門別年間水使用量の8割近くが農業で使われています。食料生産とバイオ燃料原料生産は水をめぐっても競合することが予想されます。また、エジプトのように、国内で使用する飲料水・工業用水の97%が国外からやってくる国もあります。南部アフリカで最もバイオ燃料生産に向いていると言われるモザンビークでも、国内の降雨量で供給されるのは54%にすぎません。
このようにアフリカには、広大な土地がある、豊富な水があるとは言えません。また労働力についても、ナイジェリアの農村部で新しい技術を取り入れたいという場合、障害となるのは労働力というのが現状です。こうした現状を踏まえ、持続可能な農業を考えると、急に大規模な資源を投入してバイオ燃料作物を栽培するのは危険です。

夢の作物ヤトロファ?

先述した今年2月の「アフリカにおけるバイオ・ディーゼル」セミナーは、ヤトロファ(ジャトロファ)に関するセミナーでした。荒廃地での栽培も可能とされるヤトロファに大きな期待と関心が集まっています。しかし、食料とは関係ない荒廃地にヤトロファを栽培したとしても、水に関する競合は避けられません。また、ヤトロファもキャッサバと同じトウダイグサ科であり、毒があります。『世界有用植物』という本に、ヤトロファの解説があります。すでに作物として栽培されている植物の場合、作型や単位あたりの収穫量などが書かれていますが、ヤトロファに関しては、何も記されていません。このバイオ・ディーゼル・セミナー講師の一人、日本植物燃料の合田さんは、ヤトロファはまだ作物になっていない、と言っていました。
現在必要なことは、ヤトロファに関する農学研究が早く蓄積されることです。また、小規模なNGOなどが技術指導などを行っているヤトロファ・プロジェクトでは、家庭用燃料として使うことで、薪の使用量を減らすことができて、環境保護にもつながっているケースや、石けん製造によるインカム・ジェネレーションにつながっているケースも報告されています。

世界最大の食料輸入国・日本に暮らす私たちの課題

アフリカ大陸で食料を最も大量に輸入しているのはエジプトで、年平均1,000万トンを輸入しています。第2位がナイジェリアです。しかし、日本は、エジプトの2.5倍にあたる年平均2,500万トンを輸入しています。日本が買いすぎているから、アフリカの食料をなくしてしまっているとも言えるのです。実際に1993年、日本でコメ不足が起きて、タイなどから緊急にコメを輸入したことがあります。西アフリカ諸国が輸入してきた、タイ米を始め東南アジア諸国のコメを日本が輸入してしまったわけです。アフリカのバイオ燃料問題を考えるにあたり、カロリーベースで39%に落ちた日本の食料自給率が、世界に及ぼしている影響も考えなければなりません。


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