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南アフリカこの1年

『アフリカNOW』 No.8(1995年発行)掲載

執筆:藤本義彦


1995年3月末に2年間の南アフリカへの留学を終え帰国しました。昨年4月に行われた南ア史上初の全人種参加の普通選挙と、その前後1年間、南アに滞在できたことは、私にとって非常に有意義な体験でした。

アパルトヘイトが「撤退」された南アでは、社会が大きく変化しています。

以前の「目にも見えるアパルトヘイト」はかなりの程度姿を消しています。異人種間でも結婚できますし、社会施設を別々に使うというようなこともなくなっています。昨年まで14に分離していた教育関係の統括官庁も、今年から一つに統合され、教育の格差を是正しようとしています。

また、大学に進学する黒人の数も近年増加しています。私の留学していた大学でもここ数年の間に黒人学生の数が急激に増加し、今年1月からの新入生のうち約5割が黒人学生だと聞いています。

しかし、長年のアパルトヘイトの「後遺症」は、今なお南ア社会の中に大きな傷跡を残しています。

今年2月から3月にかけて私の留学していたヴィッツ大学で大学労働者によるストライキがありました。彼らの要求は二つあり、(1)1月に行った賃上げストライキの期間に支払われていない給与の支給、(2)窃盗のため解雇された労働者2人の解雇の撤回、です。

この要求を大学当局に認めさせるために、大学本部のある建物のロビーにピケを張り、ゴミ箱を倒したり、水を撒いたりするということをしていました。大学当局は、労働者の要求は不当なものだとし、なるべく刺激しないようにとの配慮から「無視」の姿勢を取り、静観していました。

労働者の第1の要求については、大学当局も前向きな姿勢を示していましたが、第2の要求に関しては、大学当局は一切認めないとの立場を取っていました。

私自身も第1の要求については理解できますが、第2の要求は「無理強い」ではないかと思います。

労働者の要求は、それ自体では感情的で説得力を持ちませんが、その背景となる社会的な格差、経済的な格差、そして黒人社会の慣習などを考慮にするとある程度は理解できるものでもあります。

失業率が46%といわれる南アでは、仕事を一度失えば、再就職は容易ではありません。また、黒人社会には「互助」意識とでもいうべき慣習・意識があり、困っている人を助けるというのが一般的です。

一方、白人社会には「個人主義」「能力主義」な側面が色濃くあります。いわゆる「白人リベラル」の人々も、そうした考えを基礎としていますので、大学労働者の要求を「社会や大学のルールを無視した暴挙」として捉えるのでしょう。

黒人社会、白人社会の中にある考え方の基本的な相違、そしてアパルトヘイトが「撤廃」された後も、依然として残る社会・経済的な格差が、両者の対立、あるいは摩擦を引き起こしています。

昨年4月の選挙後、ソウェトで行われたANCの集会でANC幹部が、「これで反アパルトヘイト闘争の第1段階が終了した。これからは経済的な格差の是正などの反アパルトヘイト闘争の第2段階に入るのだ」という言葉が思い出されます。


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