『アフリカNOW』 No.20(1996年発行)掲載
日本協議会 会員の集い」が開かれた。「会員の集い」は、年1回の会員総会さる4月20日(土)、アジア経済研究所9Fの国際会議場において「アフリカとは別に会員が集い、協議会の活動の課題や計画についてざっくばらんに話し合うために開かれているもので、今回で3回目。以下がその簡単な報告である。
(文責:運営委員 壽賀一仁)
今回は会報で案内をしただけだったためか、出席者は20名ほどと少な目だったが、運営委員など日頃活動を担っているメンバーに加え、新会員や地方の会員、また最近まで海外で活動していた会員が参加して、活発な討議がおこなわれた。
1995年度活動報告
最初に運営委員の長門から、1995年度の活動の概要を以下の8点にまとめた報告がなされた。
1. 外務省の委託でアフリカで活動する日本のNGOの文集「体験から協力へ」を製作した(2500部)。
今後も貴重な資金源として、広報・販売を継続していく。
2. 「アフリカ理解講座」は、協議会に関わる研究者らの協力によるビギナー向けの企画だが、昨年度はジンバブエ・セミナーに人手をとられ、結局3回しか実施できなかった。また1994年度の理解講座の冊子化は、まだ終わっていない。
3. 人々の耳目を集めるテーマからアフリカに関心を向ける主要企画としては「ジンバブエ・セミナー」を実施した。北京女性会議開催の年でもあり、女性と協同組合に焦点を合わせた。なかでも東京でのセミナー第3部で、外部の者が地域の開発に関わるということの問題点を現地の人が自らの失敗を例に語り、みんなが考える機会を得たのは大きな成果として挙げられる。
しかし、一方、人々の関心やメディアへのアピール度から毎年テーマを変えるという形の限界として、沙漠化防止などの過去の取り組みの内容を深め、協議会の蓄積としていくことがなかなかできないという問題もある。
4. アフリカを伝える活動の一環として、地方自治体などの企画に協議会の人脈から「講師派遣」を実施してきたが、これは講師料をAJFに寄付してもらうという自己資金獲得の側面を持っている。
5. 講師派遣と同じく、アフリカを伝えることと自己資金獲得の両面を持つ「原稿執筆」は、事務局長が主として担っている。
6. 会員に活動を伝える「会報」は、1996年より装丁を一新した。
7. 情報センターの機能としては、通常の電話応対、訪問客の対応に加え、FAXニュースリリースの発行などがあるが、これらが逆に日常業務を圧迫している面もある。
8. 1995年度の「事務局」は、尾関事務局長(有給専従)と篠崎(無給専従)、内野(有給非専従)が事務局を離れるため、協議会の活動を左右する事務局の力の低下が懸念される。
活動報告に引き続き、尾関事務局長より1995年度の会計報告として、収入(外務省NGO事業補助金、トヨタ財団助成金、会費、会員の自己負担など)と支出(ジンバブエ・セミナーほか)がほぼ均衡した決算見込みや237名の現会員数(昨年度から60余名の増加)などが報告された後、質疑応答がなされた。全般を通して財政基盤と事務局の強化の必要があらためて確認された。
その後、参加者が2つの小グループにわかれ、活動報告をふまえて意見交換をおこなった。やはり少人数で話しやすかったためか、自己紹介の後、ざっくばらんな雰囲気でいろんな意見が出された。なかでも講師派遣活動の拡充、地方での活動拡充、学生の多様な参加形態などについては、活発な意見交換がなされた。
1996年度活動家提起
休憩の後、運営委員の望月から1996年度活動の事務局案として、
・理解講座、講師派遣、会報、FAXニュースリリース等日本向けの活動
・アフリカおよび欧米のNGO向けの英・仏語によるニュースレター
・沙漠化防止会議のフォローアップ/国際会議出席
・財政安定化の努力(会員拡大、講師派遣リスト充実、物品販売強化等)
などが説明された後、今年度の年間テーマ及びシンポジウム/セミナーのテーマとして「食料問題」を取り上げたいとの提起がなされた。
「食料問題」は、またかという声もあるが、同時に未だ解決されていない、皆が多様に取り組んでいる問題であり、1993年のアフリカシンポジウムや沙漠化防止シンポジウムなど、過去の協議会の活動でも取り上げられていた。
また、アフリカ開発会議や北京女性会議のように人々の耳目を集める事柄からアフリカに関心を向けるという点においては、今年11月にワールド・フード・サミットがローマで開かれるということもあり、今年アフリカに取り組む切り口のテーマとして「食料問題」を取り上げたい。
1990年代に入って、アフリカでは降雨量が再び減少している。また趨勢として、換金作物も含めて生産高が減少している。この生産量の低下は、
1)農業技術の問題(地力の低下、持続性等)、
2)流通の問題、
3)食料消費の問題などによるものと考えられるが、これは国際市場をも含む膨大な問題である。取組に当たっては、専門的分野の情報収集、セネガルなど現地での調査・分析など課題はいろいろあり、どうグループで取り組んでいったらいいか意見を出してほしい。
この提起に対して、国際開発センターの高瀬氏をはじめ参加者からいろいろな提案や意見が積極的に出された。その主なものは以下の通りである。
・「農業、環境、貧困の3つをまとめて解決する以外にはない」という認識が世界の一般だが、難問なので誰もそれを口にして取り組まない。国際開発センターでは、環境と貧困の数量化という難しい課題に取り組んでいる。
・レスター・ブラウン氏の悲観論、FAOやIFPRI、サヘルクラブなどの楽観論、世銀や西川潤氏の中間的な意見など専門家でも様々な意見がある。
・アフリカでは特に「人」の問題(クレジット、NGO、流通などすべてを含む)が重要。世銀とUNDPでは、ジンバブエで人材育成の共同事業に取り組んでいる。
・アフリカシンポジウムでの成果を農業分科会を中心に、女性や教育の分科会からも引き出して、積み上げていくことが大切。
・穀物だけではないという意味で、食「料」の文字を使う意図に賛成。その意味で、畜産、漁業などにも焦点を当ててほしい。
・視点として、アジアとアフリカの差や貧富の差、男女の差、等々を考慮することも必要。
・「食料問題」はあくまでも切り口であり、協議会が光を当てる焦点は一貫して「アフリカの草の根の人々の生活と取り組み」だということに留意。
・専門家だけの取り組みになってしまわないように、運営に留意してほしい。
・アウトプットを明確にして「そのアウトプットに向かってどうするか」といった形で考えていくほうがいい。その上で、誰に呼びかけるのかといったターゲットを明確にするべき。
最後に、これらの意見を参考に運営委員が中心となって1996年度中心企画「食料問題」シンポジウム/セミナーのためのタスクフォース結成を呼びかけていくことを決め、今回の会員の集いは終了した。