日本とケニアでTICAD Ⅵに関わって
Reflecting on my TICAD VI experience
『アフリカNOW』107号(2017年2月28日発行)掲載
執筆:ウィリブロード・ゼ= ングワ
Willibroad Dze-Ngwa 2015年11月よりCCfA 副代表(アフリカ問題担当)および中央アフリカ地域選出理事。非識字・紛争・人権侵害に反対するアフリカ・ネットワーク(ANICHRA; African Network against Illiteracy, Conflicts and Human Rights Abuse)事務局長。
ケニア・ナイロビでのTICAD VI 本会議、そして日本およびジブチでのTICAD VI 準備会合への参加は、人生を変えるほどの経験でした。特に、アフリカが持っている資源を能動的に活用しまたパートナーとなる国々が何をなすべきかを決定することを支援しようとする取り組みを知り、アフリカ−日本関係の印象がきわめて大きなものになりました。日本の市民社会組織が実りある開発を目指し、注意深く持続的に積み重ねてきた努力に基づく模範的な協力に触れて、私は世界の平和と相互理解を求める気持ちをさらに強くしました。市民ネットワーク for TICAD(通称:Afri-Can)がアフリカ市民協議会(CCfA; Civic Comission for Africa)と一生懸命協力していることを目のあたりにしました。2016年3月、アフリカと日本のNGO ネットワークであるCCfA とAfri-Can は、力を合わせ積極的にジブチでの開かれたTICAD 高級実務者会合(SOM)に参加しました。二つのネットワークは8月の本会議に向けて、重要分野で同じ立場を取ったのです。
SOM の後、私たちは日本へ行き、東京でAfri-Canおよびアフリカ日本協議会(AJF)が共催した「みんなのTICAD フォーラム〜アフリカと日本の新しい船出」に参加しました。日本のネットワークが、アフリカ大陸を発展させていくための各分野での協力について、日本人とアフリカ人が一緒になって討論するフォーラムを開催したのです。このフォーラムを良い機会として、CCfA の代表団は、持続可能な開発目標(SDGs; Sustainable Development Goals) 達成に向けて重要な提起を行いました。私は熱意を込めて、アフリカにおける平和と安全保障に関して提起しました。CCfA の代表団は、ナイロビで開催が予定されているTICAD VI でCCfA が果たす役割を説明するために、駐日ケニア大使館への表敬訪問も行いました。
東京から京都へ移動し、私たちは5月に開催されるG7 サミットに向けたCivil G7 対話に参加しました。CCfA は、G7 がアフリカの発展のために適切な取り組みをなすべきことを呼びかけるという重要な役割を担いました。北の国々そしてアジアの国々の代表たちがアフリカの問題にまったく関心を持っていない中、Afri-Can がCivil G7 対話への私たちの参加を準備しました。CCfA はCivil G7 対話に参加した唯一のアフリカの団体でした。
3月23 日に京都で開いたCCfA 理事会で、ナイロビで開催されるTICAD VI に向けた直前の取り組みにいて討議しました。(TICAD Ⅴで採択された)横浜宣言をレビューし、市民社会組織(CSO)が達成できた目標と達成されていない目標について検討しました。TICAD VI の重要分野と考えられるこれまでとは違った分野、そしてSDGs に焦点をあてた分析となるよう注意して検討しました。私たちは、ガンビアで開催されるTICAD 閣僚級会議および民間セクターやメディア、アカデミア、在外アフリカ人、アフリカ連合(AU)、各国の外務大臣らが参加してナイロビで開かれるTICAD VI 非国家主体啓発会議に向けた準備も進めました。CCfA とAfri-Can は、TICAD プロセスに関わるさまざまな関係者に考えを伝えるために充実したサイドイベントを準備しました。
TICAD VI に向けた取り組み、そしてTICAD VI 後の取り組みの経験から、日本がアフリカとしっかりとつながっていこうとしていることを理解しました。日本政府は、日本のCSO が事前に会議のアジェンダへ提言する機会を提供していました。日本の民間セクターの重要な人々がケニアへやってきたことも、協力する意志の強さを示していました。私たち自身の経験と知恵に基づいて、TICAD 宣言の起草に関わる機会を与えられたことも興味深いことでした。
アフリカ市民社会が直面する課題
以上の成果はあるものの、アフリカ市民社会は以下の課題に直面しています。
・アフリカ市民社会の最大の課題の一つは、自律的な活動を進めていくに充分な資金を持っていないことです。そのためにCCfA は、活動の一部について、日本のネットワークに依拠せざるをえませんでした。アフリカのCSOを資金的に支援することは成果をあげるために重要です。
・他の大陸のCSO がG7 プロセスをそれぞれの課題を提起する場として活用しているにもかかわらず、アフリカの現実はG7 プロセスの中でしっかりと伝えられていないことも課題です。したがって、CCfA と日本のネットワークはCSO 全般にとっての課題だけでなくアフリカのCSO 特有の課題を提起するためにG7 プロセスの中に参加しなければなりません。
・アフリカのインフラストラクチャー、産業化、レジリエンス、持続可能な保健システム、社会保障に関わる課題を広く知らせるために、TICAD プロセスにおける起案、実施、モニタリングと評価に関与していきます。
・アフリカ市民社会はリーダーシップの課題をかかえています。体制順応と反体制、仏語圏と英連邦圏そして親日本、といった関心領域の違いがあり、一つの大きな声で語ることができないでいます。
・土地収奪という大きな課題にも直面しています。TICAD VI に基づく農業への膨大な投資が、小規模農民を排除し小規模農民の苦境をさらに悪化させることがないのか、はっきり示されていません。人権の問題があり、また一部のアフリカの国々の政府が市民を国外の暴虐な雇用者の手に委ねてしまったという悲しい経験があります。
・アフリカ市民社会は、周辺化、社会的排除、失業、暴力的原理主義、若者たちの過激化に立ち向かい、社会を安定させ平和を持続させるという課題、そして国家構造を強化し、法の支配を促し、自由で透明で信頼のおける選挙の実現と人権と自由の尊重を推進し、良い統治を定着させ、腐敗と不処罰を許さず、決定過程への包摂を確実にするという課題にも直面しています。
カメルーンにおけるCCfA の活動
私はCCfA 副代表(アフリカ問題担当)および中央アフリカ地域選出理事として、カメルーンおよび周辺諸国でCCfA の活動を行うことも重要です。2016年2月27日、ヤウンデで開いた会合を踏まえて、6人のメンバーによる暫定CCfA 中央アフリカ地域組織委員会を立ち上げました。IPD(Institut Panafricain pour le Developpement)に所属する日本人の友人、土手香奈江さんは、いつも会合を手伝ってくれます。
日本とケニアへ旅立つ前、私たちは、国際協力機構(JICA)カメルーン事務所の梅本真司所長、在カメルーン日本大使館の岡村邦夫大使を表敬訪問しました。2016年3月3日に大使を訪問した際には、ANICHRA(African Network against Illiteracy, Conflicts and Human Rights Abuse) の文化担当者のMrs. Achuo Rosemary、Dr. Apisay Eveline Ayafor と一緒でした。大使は、日本政府とCCfA との協力について、ユニセフ、国連開発計画(UNDP)、国連難民高等弁務官(UNHCR)、世界銀行といった国連機関を通した間接的なものになることを説明しました。また大使は、カメルーン国内におけるボコ・ハラムの活動にも懸念を示していました。
TICAD VI に関わる、ナイロビでの会議前・会議時そして会議後の経験をふまえて、ヤウンデで開催したTICAD VI 報告会には、40を超えるCSO が参加しました。この報告会には、TICAD VI に共に参加し、アフリカ中部地域の小規模農民による活動を代表するMrs. Langsi Ruth Yeloma も参加しました。私たちは、TICAD VI に関わる活動の詳細な報告を行い、参加者およびメディアに、ナイロビ宣言と実施計画を配布しました。また、アフリカ市民社会、日本の市民社会が共同で発したプレスリリースも配布しました。
その後、TICAD プロセス全体を伝えるメディア(ラジオとテレビ)への広報キャンペーンも行いました。ANICHRA を通して、カメルーンのブエア、ドゥアラ、ウム、ヤウンデで「市民と平和教育」「若者の過激化を防ぐ」「暴力的原理主義を封じ込める」「宗教間対話」「コミュニティの発展」をテーマにしたワークショップも開催しました。これらのワークショップを通じて、カメルーン人の福祉の改善につながる能力を向上させることができました。
(翻訳:斉藤 龍一郎)