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アフリカのビジネス

ー南部アフリカ衣料産業への中国インパクトー

イベント概要

  • 日 時 :2008年1月19日(土)14:00-16:30
  • 講 師 :西浦 昭雄さん
  • 会 場 :JICA地球ひろば セミナールーム202

アフリカといえば紛争や飢餓、野生動物や農村を思い浮かべることが多いと思いますが、アフリカにおいても、携帯電話の急速な普及、石油関連ビジネスの展開など、活発化するビジネスへの注目が高まっています。特に南部アフリカの経済はここ数年、世界の他の地域を凌ぐほどの成長を続けています。その原動力は投資の流入で、近年、直接投資が急増し、さらに増加する傾向にあります。その中でも、中国政府・企業の活動への注目が高まっています。

今月のアフリカひろばは、南部アフリカの企業活動について研究をしている創価大学通信教育部准教授の西浦昭雄さんをお迎えし、南部アフリカの衣料産業を例にあげ、この産業への中国が与えるインパクトを考えていきます。

講師プロフィール

西浦 昭雄さん

創価大学通信教育部助教授。アフリカ経済論専攻。創価大学経済学部卒業。同大学大学院博士課程修了。ナイロビ大学(ケニア)、ウィッツウォータースランド大学(南アフリカ)に留学。主な研究として『アフリカ経済学宣言』(共著)など。

イベント報告

今回の講演では、衣料産業が経験した近年の国際環境変化の影響、とりわけ中国インパクトを南アフリカ、レソト、スワジランドの事例を通じて紹介し、アフリカにおける経済のグローバル化の一端を明らかにすることを目的にお話していただきました。また、話の間には写真を見せながら、現地の様子も紹介してくださいました。 参加者は大学院生、企業(貿易)関係者、学校関係者、国際協力関係の機関や企業で働く職員と、非常に様々でした。23名(会員2名、非会員21名)、ボランティア7名の計30名となりました。

以下、お話の概要です。

まず、なぜアフリカの衣料産業に注目するのか?ですが、①鉱業分野(mining)が中心のアフリカへのFDI(海外直接投資)の中で、数少ない大規模な製造業への投資がある ②アフリカ製造業を代表する軽工業で、労働集約性の高さから雇用への貢献が期待できる ③国際的な資本移動の動きが活発な産業である(ミシンなど初期投資が比較的安価ですみ、労働力の安いところに移動しやすい) ④アフリカでは、AGOA(アフリカ成長機会法)による効果と、MFA(多国間繊維取り決め)撤廃や中国製品流入による悪影響を受けてきた、の4つが挙げられます(※AGOAとMFAについては、後で詳しく説明)。よって、アフリカ経済のグローバル化をみる上での最適な題材になりうると考えました。ちなみに綿から糸や布にする状況は「繊維産業」といい、布地を裁断したり縫製したりして衣服を作る状況を「衣料産業」といいます。

 

西浦昭雄さん

次に、なぜ南部アフリカに注目するのか?ですが、アメリカやEU向け衣料品輸出が多いアフリカ上位ヵ国中5ヵ国が南部アフリカに集中していることが挙げられます。よって、2000年以降のグローバル化のうねりの中に最も巻き込まれているのが南部アフリカといえます。また、HIV/AIDS感染者増加に伴う産業への影響もあります。衣料産業で活躍していた熟練工が倒れていく、働き盛りの職員がHIVに感染して出勤できなくなるといったことから、事業主が工場内でARV(抗レトロウィルス薬)を配布したり健康診断を行ったりする事例も見られます。
特に南部アフリカ3カ国、南アフリカ共和国・レソト王国・スワジランド王国に注目していきます。南アはアフリカ最大の衣料・繊維(textile industry)を抱え、中国製品の流入による打撃が最も大きいこと、レソト・スワジランドは台湾・中国系投資の増加と衣料品輸出増加を経験していることが挙げられます。

参考文献としてひとつご紹介です。衣料産業を知る一般書として「あなたのTシャツはどこから来たのか?」(ピエトラ・リボリ)がお勧めです。アメリカのテキサスでとれた綿花が、中国に送られて布になり、Tシャツに変わり、アメリカに輸出されてアメリカのビーチに並ぶ。そして、中古となった衣料品がアフリカのタンザニアに行って、売られている。そういった衣料産業の歴史や流れが丁寧に書いてある良書となっています。

さて、本題の、近年の南部アフリカ衣料産業をとりまく国際環境の変化についてお話します。
AGOA(アフリカ成長機会法)とは、2000年5月にアメリカ議会で可決した、アメリカ市場へのアフリカ製品促進措置です。原則、無制限で輸入し、関税を免除します。現在は審査に通った38ヵ国に受益資格があります。当初は2008年まででしたが、2015年まで延長されました。成果があった国は限られましたが、主たる製造業がなかった国に投資を呼び込み、雇用を生み、周辺産業も活性化し、実際に現地での生活レベルが改善している面が見られます。プラス面の影響をもたらした点を考えても、今後の支援策を考える上で良い事例として出てくるのではないかと思います。
低開発受益国は、2012年まで第3国からの原材料輸入が可能になっており、その結果、レソト・スワジランド・マダガスカルは、軒並み3倍以上の輸出額の伸びが見られました(2000-2004年)。逆に、南アフリカやモーリシャスは低開発受益国ではないため、あまりAGOAの恩恵は受けませんでした。 特に、レソトやスワジランドには、台湾との外交関係があることから、台湾の資本が流入しました。台湾からアメリカに輸出すると、かなりの関税がかかりますが、レソトやスワジランドから輸出すると関税が免除されるからです。

もうひとつのキーワード、MFA(多国間繊維取り決め)とは、先進国が途上国からの繊維・衣料品輸入を制限することを目的に1974年からスタートしました。この取り決めは2005年1月1日に失効し、すべての輸入制限が撤廃、その後一年もたたないうちに失効による影響が顕著になりました。2005年には中国の対アメリカ向け衣料品輸出が1.7倍(2005年)になり、アメリカ市場での競争が激化しました。
MFA失効後の動向ですが、2005年10月と2006年10月の1年間で、レソトでは輸出減に伴い、1年間で1.3万人が職を失い、スワジランドでも、輸出が減少すると共に8社の閉鎖、1万人以上の雇用が減少しました。衣料産業の従事者が2.4万人のスワジランドで、約半分もの人の雇用が失われたことになります。
このことからも、衣料産業が、国際環境のわずかな変化に敏感に反応する産業であることがわかります。そしてそのことが、人々の生活基盤をも揺るがすことが見て取れます。

一方、南アフリカへの中国からの繊維・衣料品輸入の急増を見てみると、2003年まで緩やかに輸入が増え、その後、爆発的に輸入増になっています。現地では「洪水」と呼ばれるほどでした。その結果、南ア衣料品輸入の中国シェアは72%(2005年)になっています。南アフリカに行って、デパートで怪しまれつつタグを1個1個見ることがありますが、ほとんどが中国製です。その影響で、衣料産業の雇用は12.3万人→7.7万人(2005年)に減少しました。アフリカでは、1人あたりの扶養している家族が多い傾向にありますので生活面での影響は甚大です。先日、南アフリカの衣料産業を取り扱っている弁護士に聞いたところ、南アフリカでは労働者1人あたり平均で15人の扶養家族や親せきがいると言われています。つまり、約4万人の雇用がなくなるということは、4万人×15人=60万人に影響を及ぼしました。衣料産業でも議論を呼び、南ア政府に衣料産業界が何度も陳情をした結果、2007年1月1日より、中国からの衣料品輸入制限が始まりました。しかし、すでに衣料メーカーは、中国に委託生産をして、南アフリカに輸入する方向に転換していました。また、ランド(南アフリカの現地通貨)高により、輸出が低迷してしまいました。南アフリカは天然資源が豊富で、特に最近では金やプラチナが高騰しているのでランド高にあります。ランド高による輸出の困難さと、中国衣料製品の輸入増加という二重のインパクトを受けたわけです。

最後にまとめですが、中国インパクトに関しては4つのレベルがあります。(1)中国製品の流入(南アフリカ)(2)台湾・中国系直接投資(レソト・スワジランド)(3)アメリカ市場での中国製品との競合(南アフリカ、レソト、スワジランド)(4)中国系技術者の役割(レソトでは約1,000人が移住)、になります。 当面の課題は、2008年末にアメリカ・南アフリカによる中国製品輸入制限が終了します。さらに中国製品が入ってくると、南アフリカの衣料産業は壊滅的な打撃を受けかねません。今年末までに、繊維産業、衣料産業、小売産業の連携を強め、産業クラスターを形成して、体力を強化していくべきです。たとえば、輸送コストを南ア経由からモザンビーク経由にすることによって、生産コストを下げることができます。このようにして状況を打開するしかないと考えられています。
アフリカの労働者の最低賃金は、アジアに比べると高いのが現状です。よって、ウガンダのオーガニックコットンを使ったシャツなど、何らかの工夫をして、付加価値をつけていく努力が必要とされています。 今回は三カ国の衣料産業絞った話でしたが、多少なりともアフリカにおける経済のグローバル化による影響の一端が感じてもらえるとありがたいと思います。

 

アフリカのビジネスについて学ぶ

ここでアンケートに寄せられたメッセージを紹介します。

  • 私が抱いていたアフリカとは違う、経済・産業などのお話をうかがえてとても勉強になりました。(20代男性)
  • 普段知ることが難しい「アフリカのビジネスの現状」を知ることができてよかったです。アフリカと言えば、貧困という切り口しかなかったので新鮮でした。(20代女性)
  • もし機会があったら、次回は貿易の話が聞けたらと思います。(30代女性)
  • 南アのみならず、スワジランド・レソトにおける状況が興味深かったです。南アの政治・経済的状況は他のサブサハラ諸国と比べて特殊(比較的いろいろと恵まれている)であるために投資を呼び込めているのではないか?と思いました。(20代女性)

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