Looking back on civil society activities towards TICAD VI
『アフリカNOW』107号(2017年2月28日発行)掲載
執筆:藤井 泉
ふじい いずみ 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科国際関係論専攻修了後、在ルワンダ日本国大使館勤務。AJF インターンを経て、現在、ネットワーク事業担当としてAJF に勤務。アフリカのネットワーク形成やセクター間の連携、政策形成過程に関心がある。
2016年8月に開催されたTICAD Ⅵに向けて市民ネットワーク for TICAD(Afri-Can)は、政策提言と国内啓発を中心に、約3年間活発に活動してきた。国内啓発イベントの企画や実施、TICAD プロセスへの参加に関するTICAD 共催者(1) との調整や招聘業務など、TICAD プロセスへの市民社会の位置づけのデザインを考え、実施することや、また、アフリカの人々と日本人との間に立ち、細かな対応を臨機応変に行うことも楽しかった。
市民ネットワーク for TICAD (Afri-Can) の形成
TICAD に取り組む市民社会のネットワーク組織は、TICAD 終了後に解散され、その後、次のTICAD プロセスへの参加に向けて結成し直すということが続いてきた。アフリカや日本の市民社会からは、TICAD プロセスにおける市民社会の活動の継続性や、AJF 以外の団体も積極的に関わることができる体制を整えることの必要性が求められていた。
そこでTICAD VI に向けたネットワーク設立に向けて、(1)ネットワークの一体性の確保、(2)加盟団体間での協調した運営、(3)アフリカ市民社会との連携強化を目標とした。加えて、専門家が職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するプロボノ企業として、デロイトトーマツコンサルティング合同会社と㈱チームビルディングジャパンに協力してもらうことができた。また、ネットワークのミッション、ビジョン、基本戦略を策定し、ネットワークが目指す政策提言のあり方や様々な組織との協力関係、組織の運営方法などを設計すると共に、参加する30団体の中から運営の中心を担う5名の共同代表(世話人)を選出し、広報、渉外、情報収集の部門を設置した。こうして市民ネットワーク for TICAD というチームを形成し、TICAD VI に向けて一丸となって取り組む体制が整えられた。
TICAD VI に向けて
TICAD Ⅵプロセスのスケジュールや、準備会合と本会議の開催国がなかなか決まらない中、2015年2月にはカンパラ(ウガンダ)で開催したAfri-Can とアフリカ市民協議会(CCfA: Civic Commission for Africa)の合同会議においてTICAD Ⅵに向けた市民社会の提言書を策定し、共催者に提出した。同年7月には本会議の開催が見込まれていたケニアの市民社会との連携の強化、および政策提言において重要な鍵を握るアフリカ連合委員会(AUC)との関係を築くためにケニア、エチオピアを訪問した。TICAD プロセスが動かない中で行ったこうした市民社会の取り組みは、TICAD 共催者からも評価された。2015年12月には、TICAD Ⅵに向けた外務省との対話にてTICAD Ⅵの重点課題などが説明され、以後、各方面での対話が活発に行われるようになった。
TICAD VI の日程は、第26回AU 総会開催中の2016年1月31日にケニアのウフル・ケニヤッタ(Uhuru Muigai Kenyatta)大統領と日本の河井克行総理大臣補佐官が共同記者会見を行い、ようやく明らかにされた。AU 総会に参加し、2月上旬に来日したルシアン・クアクウ(LucienKouakou)国際家族計画連盟(IPPF)アフリカ事務所長と日本の市民社会との意見交換では、2月のTICAD共催者リトリート会合、3月のジブチでの高級実務者会合やその先に向け、市民社会の参加や提言書の内容がどのようになっていくのかについて、期待が述べられた。これを受けて、リトリート会合前に行われた外務省との対話に向けて、日本の市民社会側も、アフリカ側の意見も聴取しつつ、TICAD Ⅵで取り上げられるべき主要課題について提言。成果文書の骨子が議論された高級実務者会合で行われた「市民社会との対話」セッションではCCfA と最終化した提言を行った。まさに、「動きだしたら一気に進む」というプロセスであった。
2016年6月の閣僚級準備会合は、開催国ガンビアの意向により予定より1週間遅れの開催となった。CCfA のイニシアティブで急きょ閣僚級準備会合の前にナイロビ(ケニア)で開催されたTICAD VI 非国家主体啓発会議にて採択された市民社会の宣言文をもって、ガンビアでTICAD VI の事務レベルを統括する外務省アフリカ部長と対話。あわせて、すべての分科会の中で市民社会が発言した。
TICAD Ⅵ首脳会議に向けて動き出したのは2016年7月末だった。7月20日にようやくロゴの使用やサイドイベントの登録手続きが始まり、識別証の登録も7月27日に開始された。以降、本会議への参加、Afri-Can による3日間にわたる市民社会サイドイベントの開催に向けての準備・調整などが本格化した。
ナイロビでのTICAD Ⅵには日本の市民社会から40名、アフリカ側からは200名が参加した。8月22〜23 日にAfri-Can とCCfA の準備会合、24〜25日にCCfA がAUC との協力で開催したサイドイベント。26〜28日は本会議への参加と並行し、ジャパンフェアへのブース出展の他、Afri-Can 加盟団体を中心に14のサイドイベントを開催した(2)。
初めてのアフリカでのTICAD 開催で、市民社会事務局が参加するための資金を確保するため、広く寄付を募るクラウドファンディングにも挑戦した。多くの方々のご支援を得られたことにも改めて感謝したい。TICAD Ⅵ終了後もAfri-Can の活動は継続し、TICAD Ⅶを見据えた計画を策定し、実施に向けて動き出している。ネットワークのビジョンやミッションを忘れず、中長期的な視点を持ってネットワークの運営事業の実施をし、2019年の日本でのTICAD Ⅶの開催に向けてさらなる飛躍をしていきたい。
(1)TICAD Ⅵ共催者は、日本政府、アフリカ連合委員会(AUC)、国連アフリカ担当特別顧問(OSAA)、国連開発計画(UNDP)、世界銀行。
(2)TICAD VI への取り組みや評価に関しては、『TICAD VI 市民社会報告書』を参照。
http://afri-can-ticad.org/wp-content/uploads/2017/01/5cba24406a1c801f0183d878107a46b4.pdf