アフリカの都市に対する食料供給問題

アフリカの都市に対する食料供給問題-ウガンダにおける実態調査より

2006年第5回 食料安全保障研究会公開セミナー 報告

日時:2006年9月28日(木)18時~20時
講師:吉田昌夫さん(日本福祉大学大学院教授)
会場:JVC・2F会議室(AJF事務局隣のスペースです)

吉田座長を講師に食料安全保障研究会公開セミナー『アフリカの都市に対する食料供給問題-ウガンダにおける実態調査より』を開催しました。

参加者は、講師・スタッフも含め13人、70分ほどの報告・提起を受けて、50分の質疑を行いました。

講師の吉田さんからは、 アフリカの都市への食料供給問題に注目することの重要性および基礎となる食品流通に関するデータをどのようにして得て行くのかについて報告と提起があり、さらには都市にどのような食料がどのくらいどんな形で供給されているのかといった基礎的データ収集作業に援助を投入することも考慮すべきとの提言もありました。

質疑応答

Q:カンパラ、ジンジャで主食となっているバナナは、どのくらい保存できるのか?
A:一週間くらいだ。だから、毎日、バナナ生産地から10トントラックで運ば れてきている。

Q:米の供給量も増えているのか?
A:ウガンダ国内で生産されているジャポニカ米も、インドやパキスタンから輸入されるインディカ米も増えている。ジャポニカ米は、中国から導入されたスーパーという品種が主流だ。インディカ米はホテルやスーパーへホールセールされているので、今回調査した市場ではあまり流通していない。

Q:トラックは、運ぶ食料品を限定しているのか?
A:バナナを運ぶトラックは、ほぼバナナだけを運んでいる。ルワンダ国境に近いジャガイモ産地と都市を結ぶ便もジャガイモだけを運んでいる。都市に近い農村からはさまざまな食料を積んだトラックが市場に入ってくる。

Q:「生産者価格」が小売価格の49%余りとの説明があったが、すべてが生産者の取り分なのか?
A:農村の集積所で運送卸し商が購入する際の価格なので、農村内で集荷をやっている人たちの取り分も含まれている。参入しやすく競争の激しい仕事なので、運送卸し商や小売商のもうけは小さい。そのために、一度、取引がうまくいかないと次の仕入れができないということも起きているようだ。

Q:ウガンダ北部の難民キャンプに供給されるインゲンなどは、カンパラ周辺で加工されて北部へ運ばれるのか?
A:そうだ。難民キャンプへ供給される食料は、WFPやNGOが食品加工業者から直接購入するので市場には出てこない。

Q:配布された資料によると外食への支出が20%近くになっているが、どんなものを食べるのか?
A:調理に手間がかからないので米を使った食事が多い。タバコやビールなどの嗜好品への支出も多い。

食料安全保障研究会MLで出された報告の追記

都市化が進行することによって、人口に対して生産が追いつかない、需要を満たせないなどの食料供給の問題が浮上しています。しかし、農業統計のデータが不十分であるため、どのように都市に食料供給がなされているのか、流通経路などは不明確です。

吉田先生によると現在の食料流通は順調だそうですが、将来的には困難も予想されるようです。

たとえば、石油高による運送コストの値上がりは、運送卸し商にとって大きな負担になっています(運送卸し商はトラックの借り賃と燃料費に相当額を使っている)。

流通のキーパーソンである運送卸し商たちの貯蓄が困難であり、また現在高利のマイクロファイナンスに頼っている状況に対して金融業の整備が必要とされています。

アフリカの食料問題は流通の問題といえるほど重要であるにもかかわらず、市場自由化導入以後、十分な調査がなされていないのが現状だそうです。今後の食料安全保障問題の課題となりそうです。

参加者の声

先日の公開セミナーでは、都市の状況や生活の細かい点も知ることができて、ウガンダについての理解が一歩深まりました。

事前にコピーを読んだ論文の中では、ウガンダの大都市はどこか、というところが興味深いものでした。

2002年9月の人口調査で、首都カンパラ(首都圏、カンパラ県)の人口121万人に次ぐのは、北部のGulu(11万3000人)、Lira(8万9000人)、そして第4位が東部のJinja(8万6500人)。

GuluとLiraは、「難民の流入という特殊事情に負うところが大きい」ので、カンパラとジンジャの2都市について、食料供給の実態調査を行なうことにした、とのことです。(10年前、タンザニア北西部のガラの町が、ルワンダとブルンジからの難民の流入で、人口では、ダルエスサラームに次ぐ第2の町にふくれあがった、いう話を思い出しました)。

51項目からなる「カンパラ県の1月あたり平均世帯食料消費額(2002年5月~2003年4月)」は圧巻でした。

消費額のトップは、質疑紹介にあった、「外食(食事)」。元は項目もなかったのが増えて、主食の料理用バナナを上回ります。(料理用バナナ(マトケ)の調理法も印象に残りました。固い皮をむき、バナナの葉にくるみ、なべの上にのせて蒸し、葉っぱごとマッシュする、というもの。おかずは豆か、肉か魚)。

3番目は、牛肉(肉の中では一番安くて、固い)、次に、生牛乳(パック入りは、以前のケニア製からウガンダ製に)、砂糖(朝食はお茶と砂糖)、ビールと続きます。

質問の時間に、農産物の流通に関することのほかに、個人的な興味でお酒について聞いてしまい、他の参加者に「さも、ありなん」と言われました。

「余剰のバナナは酒造りに回したりするか」
(「酒造りはのバナナは別の種類」とのこと)

「蒸留酒のワラジは、バナナから作るのか、それともシコクビエか」
(どちらも使用するようです)

ナイル・パーチと「ダーウィンの悪夢」の話も出ました。

まずは、見てみなければ、と思っています。

※吉田さんが「フーベルト・ザウパー監督による映画『ダーウィンの悪夢』について」を書きました。こちらでごらんください。

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