ストリートの鼓動

ーコートジボワール、アビジャンの若者達ー

イベント概要

  • 日 時:2006年9月23日(土)14:30~16:30
  • 講 師:鈴木裕之氏
  • 場 所:丸幸ビル2F共用会議室(台東区東上野1-20-6丸幸ビル2F)

西アフリカのコートジボワールの大都市アビジャンで、社会からも家庭からも疎んじられ、街角にたむろする、いわゆる不良、ワルといわれる若者たち。一見、無秩序に見えながらも、そこには既成の近代的な西欧式秩序とも、部族的な伝統文化秩序とも異なる、彼らなりの秩序が存在しています。彼らの間だけで通じるスラング、約束ごと、身体表現、行動様式と、それに基づくコミュニケーション。このストリート文化は、外国から流入してきたレゲエやラップと触れ合って自己表現の場を得、逆にこれらの音楽をコートジボワール独自のポピュラー音楽へと昇華させてきました。ストリートの若者と密に接し、ユースカルチャーを肌で感じてきた鈴木さんに、現地の映像などを交えながら、『コートジボワール・首都アビジャンのストリート』の現実を鮮明にお話いただきます。

鈴木裕之さんのプロフィール

1965年山梨県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。現在、国士舘大学教授。在学中に政治学が肌に合わないのに気づき文化人類学に転向。その後、同大学大学院社会学研究科に進学し、調査研究のために20代の半分は西アフリカのコートジボワールで過ごす。

調査テーマは「アフリカのストリート・ボーイと音楽(レゲエ、ラップ)」。コートジボワールの大都市アビジャンで10代、20代の若者たちと付きあいながら、彼らのストリート文化と音楽の関係を研究してきた。最近は、西アフリカのギニアで「伝統音楽とポピュラー音楽の関係」を調査している。
著書:ストリートの歌 現代アフリカの若者文化(世界思想社、2000年3月)

イベント報告

9月23日(土)に行われたアフリカひろばVol.11「ストリートの鼓動~コートジボワール、アビジャンの若者達~」のご報告です。

20代の後半を、コートジボワール、アビジャンのストリートボーイの研究に注がれた国士舘大学教授の鈴木裕之さんに、アフリカのストリートカルチャーについてお話しをしていただきました。

参加者は25名(AJF会員9名 非会員16名)で、アフリカの文化系NGOの方から、鈴木さんの近所の方まで、多様な方々にお越しいただき、2階の会議室はいっぱいになりました。

お話の内容ですが、まず、大都市のアビジャンの説明に始まり、アビジャンのストリートボーイが「ヌゥシ」と言われるようになった理由やその背景、また、ストリートの経済活動やカテゴリー、ストリート文化の生成、マス・メディアの影響などが語られました。その後は空手映画のインパクトやラップやヒップホップ、レゲエの影響などについて年代を追って説明していただきました。最後は、除け者たちの逆襲、ということで、一度主流社会から締め出されたストリートボーイたちが、マス・メディアを通して、逆に主流社会に影響を及ぼすという相関図を説明していただきました。

パワーポイントでの説明の合間には、実際現地で撮影された映像をふんだんに見せていただき、鈴木さんのトークが軽妙なこともあって、講義の途中で何度も爆笑の渦が巻き起こりました。現地で売れているストリート出身アーチストのビデオクリップなどが流れると、リズムを取って踊りだしそうな参加者もいました。

その後は、会場から質疑応答を紙に書いてもらい、集計しました。「ストリートガールはいるのか?」「どうやってストリートボーイと仲良くなれたのか?」「成功しなかったストリートボーイはどうなる?」など様々な質問にも、ユーモアを交え全て答えていただきました。最近のコートジボワールについても触れられ、クーデター内戦の中、「治安維持」の名の下、有力なヌゥシが殺害されるという事態が起き、ストリートボーイの憧れの職業である自動車番を政府がやるようになったため、ストリートボーイが押し出されるというような事態になっているようです。一方で、近隣のギニアやブルキナファソでは都市化やマスメディアの発展に伴い、ストリートカルチャーが芽生えてきているようです。ブルキナファソについては、11月のアフリカひろばで、首都ワガドゥグでラスタの研究をされている清水貴夫さんにお話をしていただく予定です。こちらもご期待ください。

交流会も、講師であるにもかかわらず、一人一人のコメントに鋭いツッコミやジョークを連発していただき、参加者の方が笑いっぱなしの1時間でした。

アンケートから学んだことや講師に対するメッセージが寄せられましたので、一部を紹介します。

  • 非常に楽しい講義を有難うございました(30代女性)
  • 映像がたくさんあってリアリティがあってよかったです(20代女性)
  • ストリート社会の中での、人々の色々な違いを少しでも知ることができてよかったです。いつかルバのダンスを習いたいです。(20代女性)
  • 「悪いことが必ずしも悪くないと考えるようになった。ストリートボーイと付き合って人生が少し楽になりました」という鈴木さんのコメントについて、自分の頭で考えているだけでしたが、改めて他人から聞くと一層勇気が湧いてきました。(40代女性)
  • 映像を含めたプレゼンが大変刺激的だった(20代男性)
  • 本を読ませていただきましたが、実際の歌やダンスが見られてよかったです(30代女性)
  • アフリカのストリート文化を知る機会はなかなかないので大変貴重な経験になりました(10代女性)

短い時間で多岐に渡るお話をまとめながら、提供して下さった鈴木さん、ありがとうございました。

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