グローバルファンドの第7次増資準備会議はアフリカ5か国が共同開催

「増資ラッシュ」の2022年、三大感染症終息への資金確保は待ったなし

「増資ラッシュ」の2022年

2022年は保健に関わる国際機関の「増資ラッシュ」の年となっている。途上国で必要なワクチン開発を担う「感染症対策イノベーション連合」(CEPI)が3月8日に英国で増資会議を行うほか、「女性・子ども・若者のためのグローバル資金ファシリティ」(GFF)も、2025年までに必要な資金の一部について、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による取り組みの遅れを取り返すという文脈で、昨年から始めた増資プロセスを継続している。WHOは、COVID-19により財政的安定性が試されたということで、より財政力を強化するための増資を検討している。COVID-19に関わる製品開発と公平なアクセスのための枠組みであるACTアクセラレーター(COVID-19関連製品アクセス促進枠組み)のワクチン部門であるCOVAXも、直面する資金不足を補うための緊急の増資プロセスを計画している。

「顧みられない熱帯病」(NTDs)への新規技術開発を担う日本の基金である「グローバルヘルス技術振興基金」(GHITファンド)も、2023-27年の「第3期」に向けた増資を行うこととなっている。このほか、世界ポリオ根絶イニシアティブ(GPEI)も早期のポリオ根絶のための資金確保のために増資を行うとされている。こうした中で、エイズ・結核・マラリア対策と保健システム強化に資金を拠出する国際機関「グローバルファンド」(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)も、2024-26年の3年間分の資金の増資プロセスを2022年に行うこととなっている。

増資準備会議は2月23-24日にアフリカ5か国が共催

グローバルファンドの増資プロセスは、年の初めに開催する増資準備会議で、資金調達目標が記された「投資計画書」が採択されることで始まり、その後、旧来の援助国を中心としつつ、民間財団や民間企業、対策実施国(途上国)なども資金誓約を行い、秋に行われる増資会議で、資金目標の完全な達成を図るという形となっている。前回の第6次増資は、COVID-19パンデミックが始まる前の2019年に行われ、資金目標とされた140億ドルが確保された。日本は全体の6%にあたる8.4億ドルの拠出を誓約した。この拠出は事実上、暦年2022年内に完遂される予定となっている。

今回の第7次増資については、増資会議の方は2022年の後半に米国バイデン政権がホストすることが決まっており、年の前半に行う増資準備会議がどうなるかが注目されていた。これについて、1月26日、アフリカのコンゴ民主共和国(フェリックス・チセケディ大統領)、ケニア(ウフル・ケニヤッタ大統領)、ルワンダ(ポール・カガメ大統領)、セネガル(マッキー・サル大統領)および南アフリカ共和国(シリル・ラマポーザ大統領)の5名の大統領が共同でホストし、オンラインで開催されるということが明らかとなった。前回第6次増資の準備会議はインドが主催したが、これに続いて、対策実施国(途上国)側のホストによる開催となる。

注目は資金調達目標が記載された「投資計画書」

第6次増資の際も、三大感染症対策が、持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた「2030年までの三大感染症の終息」に向けた軌道から外れている、ということで、市民社会は、大胆かつ野心的な金額を資金調達目標に掲げるように主張した。この際は結果として、第5次増資から10億ドル積み増した140億ドルに落ち着いたが、今回は、COVID-19パンデミック下で三大感染症対策を進めなければならない。これは対策実施の上で大きな制約条件となる。また、パンデミック下においてグローバルファンドは「COVID-19対応メカニズム」(C19RM)を実施し、さらにACTアクセラレーターで診断および保健システム部門を担当することで、相当の資金をCOVID-19対策に供給している。これを鑑みると、本来、今回の資金調達目標は大幅に積み増される必要があることになる。

GFANやその地域ネットワークなどの市民社会は、「投資計画書」について、以下の要望を行っている。まず、資金調達目標を大胆かつ野心的なものにすること。実際、グローバルファンド提言者ネットワーク(GFAN)は、資金調達目標を前回の2倍以上の285億ドルに設定すべきという提言書を発表している。これは、2018年の国連結核ハイレベル会合や21年の国連エイズハイレベル会合などで国際社会が合意した金額などに依拠したものであり、市民社会は、グローバルファンドの資金調達目標は、これら、すでに採択されている世界計画と同期したものである必要がある、と指摘する。また、市民社会は、COVID-19による打撃で途上国の財政が傷んでいる以上、途上国自身が三大感染症対策に拠出できる資金については現実的な見通しを持つ必要があること、一方で、民間セクターや民間財団、資産家などへの働きかけを強化する必要があることを付記している。

また、市民社会は、今回の「投資計画書」において掲げられるべき金額は、あくまで「三大感染症対策」に関するものであるべきで、パンデミック対策については、これとは分けて、別の形で資金を調達すべきと指摘している。というのは、グローバルファンドは三大感染症対策のための基金であり、COVID-19下でも三大感染症対策の優先順位は本来落とされるべきでないこと、また、COVID-19によって「三大感染症の終息」というSDGs目標の達成が遅れている状況にある以上、三大感染症を優先するのは当然、という考え方である。これに関連して、市民社会は、グローバルファンドが、対策の鍵となる脆弱なコミュニティとパートナーシップを結び、その人権を守りつづけることを再確認してほしい、と要望している。