南アフリカの現状と将来の計画

-個人的観点から-

『アフリカNOW 』No.10(1995年発行)掲載

執筆:ドミサニ・ノチウェレカ


南アフリカの固有の文化

1652年以来の南アフリカのバンツー族の文化の基本は共同体でした。
ある家族が牛を屠殺する時は、共同体のメンバーは誰でもそこに参加できました。また、ある家族が砂糖や塩やお茶などを買えない場合、近所に子供をやり、少し貰うのです。この文化は、今でも南アフリカの田舎の黒人社会に残っています。
私はこの文化を支持し、励ましています。これは、まさに世界のあるべき姿なのです。
残念ながら、都市部での南アフリカ社会は西洋の資本主義的習慣の影響が混ざってしまっています。

経済・健康・住宅・教育

南アフリカが経済的限界状態に耐えているのは事実です。重要なのは他のアフリカ諸国の落ちた罠にかからないことです。
1994/1995年度において、前年の経済の落ちこみから立ち直り、2.5%の経済成長があったことは励ましでした。1995/1996年度には、3.5%の成長が見込まれています。
南アフリカは32%にのぼる失業率を減らすために外国よりの投資を必要としており、日本のビジネスが南アへの投資にのり気になって欲しいと切望しています。
健康サービスについては、これもアパルトヘイトによる状態からの変化の過程にあります。以前の白人用病院はすべての人種用になりました。医療費は、妊婦と6歳未満の子供は無料です。
住宅については、19万6千軒の新しい住宅が2ヵ月のうちに建設されることになっています。ドイツ政府はRDPの住宅政策を促進するために、独自の住宅計画を始めています。オーストラリアとマレーシア政府は専門的知識や低価格住宅の資金提供を申し出ています。政府と南ア内の大手銀行との交渉で400億ランド(1995年6月現在R1ランド≒30円)の住宅ローンが低所得者に貸し出されることが合意されました。先年、37万世帯に電気がつきました。
教育については、南アフリカ全体に大改革が起こっています。バンツー教育ではどうしようもないのです。大学では白人用の大学が全人種用大学に変わりました。中学・高校、小学校もです。今年は1万3千の学校で500万人の生徒が毎日無料の給食を受けています。ANCの公約どおり、10年の無料の義務教育ができ、教科書も無料です。
田舎の子供たちは、いまだに都市部の子供たちよりも困難にあっています。都市部の子供たちは、コンピュータや他の教育教材を国際的組織や企業から寄付されます。田舎の子供たちは最も必要としているのにもかかわらず、忘れられているのです。私は皆さんに、南アの不利な立場の田舎の子供たちへの直接の寄付を訴えます。

世界の熱い視線に応えて

全世界が、将来の南アに何が起こるか熱い視線を送っています。
今現在は順調にいっていますが、将来については多くの要因に依るところが大きいのです。例えば、1999年に誰がネルソン・マンデラ氏を引き継ぐのか、多くのプロジェクトの資金はどうなるのか、などです。
ネルソン・マンデラ氏の後継者について言えば、多数の者がいます。懸念を鎮めるために、マンデラ氏を大統領の上の権限を持つ最高指導者とするのもいいアイディアでしょう。そうすれば、日々の消耗的な仕事から解放され、国の進歩を監視する時間を持てるでしょう。
プロジェクトの資金については、ほとんどの途上国がIMFと世界銀行に頼っています。この二つの金融機関の高金利のため、結果としてそれらの国々のローンにはまり込み、返済できずにいます。もうひとつの問題は、これらの機関は国の社会生活に相反する条件を付けてくることです。例えば国家公務員の数を減らすように要求する、などです。
南アには、白人と黒人の生活標準の差を縮めて発展させる計画のための資金が必要です。これまで、南アフリカは外国から補助金や低金利のローンを受けてきました。それらの国の一つが日本です。このようにしてIMFや世銀のローンに頼ることを避けてきたので、ほとんどのアフリカ諸国のように貧困に陥らずに済んだものです。

南アの問題は何年もかかる問題であり、それには国民の忍耐が必要です。また、政府とANCには、いつも国民に報告する義務があります。国民があるプロジェクトに義務があります。国民があるプロジェクトに期待を寄せているのに一定期間に終わらない場合は、政府は予定どおりに終了しない理由を説明しなければなりません。
私はこの機会に南アフリカのためにいろいろ援助をしてくださった日本の方々、特に「アジア・アフリカと共に歩む会」の皆さんに感謝したいと思います。私たちの国は皆さんの助けがとても必要です。どうぞ田舎の子供たちを忘れないでください――彼らが最も助けを必要としているからです。

※ドミサニ・ノチウェレカ氏は学生時代よりANCに参加、連合の小学生として現在、上智大学で学ぶ。

■「アジア・アフリカと共に歩む会」の活動について。

1992年4月設立。専従スタッフのいない市民グループ。中古の英語の本を集め、教科書や本の不足に悩んでいる南アフリカの黒人の居住区の学校や地域のセンターに送っている。加えて日本で廃車になった移動図書館車を整備し直して、南アフリカに送っている。国内の活動としては、阪神地震被災の朝鮮学校と中華学校の再建と維持の援助活動を行っている。


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