アフリカと国際保健に関する取り組み

HIV/AIDS アフリカ日本協議会の保健への取り組みの出発点

ロケさんスピーチ
2013年のTICAD Vで来日したナイジェリアのHIV陽性者運動のリーダー、ロラケ・オデトインボさん。2003年のTICAD IIIの際にも来日して治療アクセスの重要性についてスピーチ

アフリカ日本協議会が国際保健の分野に取り組み始めたのは、90年代後半のアフリカのエイズ危機がきっかけです。90年代を通じてアフリカではHIV/AIDSが急拡大し、南部アフリカでは、成人の20-40%が感染、特に働き盛りの20-40代の人々が命を落とす状況となり、「世界の一地域が壊滅する」というリスクすら生じていました。一方、90年代を通じて世界化・強化された知的財産権保護により、96年に実用化されたHIV治療薬の多剤併用療法は年間一人当たり200万円前後につりあげられ、途上国の人々には手が届きませんでした。そこで、アフリカをはじめ、世界のHIV陽性者の運動が立ち上がり、2001年、世界貿易機関(WTO)は「ドーハ特別宣言」を出して、知的財産権に関する柔軟性を認めました。2002年のグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)設置、2003年の米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)開始、さらに世界保健機関(WHO)・国連合同エイズ計画(UNAIDS)の「3×5イニシアティブ」(2005年までに300万人に治療を届ける)実施により、途上国でのエイズ治療に道が開かれたのです。アフリカ日本協議会は、こうした変化を作り出した世界の市民運動に日本から参加しました。

<詳しく知りたい方へ>
アフリカ日本協議会のウェブサイトには、アフリカのHIV/AIDSと当事者運動に関わる情報が多く掲載されています。以下は代表的なものです。

南アフリカ エイズ裁判(林達雄、2001年)
https://ajf.gr.jp/lang_ja/message/200104.html

アフリカでHIVとともに生きる人々にとって必要なものは何か
(ロラケ・ンワグ ナイジェリア治療アクション運動、2003年)
http://www.arsvi.com/2000/030805nr.htm

「『治療アクセスと知的財産権の闘い』の歴史と現在」(稲場雅紀、2017年)
https://ajf.gr.jp/globalhealth/aids-treatment/history/


アフリカ開発会議(TICAD)などでの保健への取り組み

TICAD6サイドイベントi
2016年のTICAD VIでは、グローバルファンドのマーク・ダイブル事務局長(当時、写真中央)を招いてサイドイベントを開催

アフリカ開発会議(TICAD)は、日本の対アフリカ外交や援助、また、日本・アフリカ関係を束ねるイニシアティブとして、1993年から開催されています。TICADでは、アフリカの保健課題への取り組みも、特にアフリカの社会開発の分野における柱の一つとして、大きく取り扱われてきました。アフリカ日本協議会は、2003年の第3回アフリカ開発会議(TICAD III)以来、HIV/AIDSや保健に取り組むアフリカの市民社会と連携して、TICADに関する保健分野での政策提言に取り組んできました。当初は、HIV/AIDSを中心としていましたが、その後、保健人材、保健システム強化、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジにおける連携・協力へと取り組みの幅を広げています。

グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)に関する取り組み

TICAD7で来日のグローバルファンド事務局長と市民社会代表
2019年のTICAD7で来日したグローバルファンドのピーター・サンズ事務局長と西アフリカの市民社会代表イダ・ユグバレ氏(ブルキナファソ)

グローバルファンドは、アフリカのエイズ、結核、マラリア対策への国際的な資金供給の最も重要な柱の一つです。この基金は2000年のG8九州・沖縄サミットをきっかけに設立されていることや、同基金の運営がマルチステークホルダーで効果的に行われ、「人間の安全保障」を体現した存在ともいえることから、日本政府は多額の資金を拠出してきました。アフリカ日本協議会は、TICADの場において、「グローバルファンド提言者ネットワーク・アフリカ」(GFAN Africa)や「アフリカ保健市民社会プラットフォーム」(CISPHA)、ワキ・ヘルス(WACi Health: 旧・世界エイズキャンペーン)などと協力して、日本政府のグローバルファンドへの拠出増に向けた働きかけを行ってきました。

<詳しく知りたい方へ>
グローバルファンド「コミュニティ・権利・ジェンダー(CRG)戦略イニシアティブ」:CRGの地域プラットフォームは、アフリカ日本協議会が長年連携してきた「東アフリカ地域国家エイズ・サービス組織ネットワーク」(EANNASO、タンザニア)と、「必須医薬品アクセス連合」(RAME、ブルキナファソ)が担っています。

>>詳細はこちら https://ajf.gr.jp/covid19_29aug20/

幅広い保健分野に関わる取り組み

TICAD7に向けた市民社会イベント
2019年のTICAD7に向けた市民社会イベントで、外務省アフリカ部の紀谷昌彦参事官(当時)に要望書を手渡すアフリカの保健分野に取り組む市民社会

アフリカ日本協議会では、HIV/AIDSに加えて、結核の課題、また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の課題にも取り組み、特にTICADの場においては、アフリカの市民社会と連携して働きかけを行ってきました。政策アドボカシーの文脈では、アフリカにおけるエイズ治療の導入・主流化が既定路線になった2003年以降、アフリカをはじめとする途上国から先進国への医療人材の流出や、先進国側からのリクルートが大きな課題となり、また、保健人材の育成の課題も注目されて、世界的にも「世界保健人材同盟」(GHWA)の設立にもつながりました。アフリカ日本協議会では、これについて、2010年に米国の「人権のための医師団」(Physicians for Human Rights)と連携して、日米の保健人材支援のあり方の比較と政策提言を行っています。

<詳しく知りたい方へ>

・「途上国の保健人材支援に関する日本と米国の役割 日米市民社会による政策レビュー」(2010-11年):現地取材では、ケニアの保健分野NGOネットワークであるHealth NGO Network (HENNET)などの協力を得ました。報告書はこちらをご覧ください。(日本語) (英語)

・「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とエイズ・結核・マラリア対策のシナジーを求めて」国際ワークショップ(2015年):アフリカ日本協議会では、HIV/AIDSなど感染症に取り組む市民社会の中でUHCに関する認識を広げるため、2015年10月、アフリカをはじめ、世界各地からエイズなどに取り組むコミュニティ活動家たちを日本に招へいして国際ワークショップを開催しました。このワークショップをきっかけに、エイズにかかわる市民社会がUHCをリードする方向性が作られました。その点で非常に画期的なワークショップだったといえるでしょう。

ワークショップ報告と成果文書など
https://ajf.gr.jp/lang_ja/seminar-event/20151026gf_report.html

>>第8回アフリカ開発会議(TICAD8)と保健に関する取り組み(準備中)