多国間政策プラットフォームへの政策提言の取り組み

アフリカ日本協議会は、日本の他のNGO/NPO、市民社会のグループと連携して、国連やG7、G20などの多国間の政策プラットフォームに対する政策提言を行ってきました。それは、こうした多国間の政策プラットフォームで作られる政策が、国際保健政策をはじめとして、アフリカや「南の世界」(途上国・新興国)の政治、経済、社会や人々の生活を大きく左右してきたからです。特に保健分野を中心に、これらの取り組みを紹介します。

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G20への取り組み

G20大阪サミット
G20大阪サミットのメディアセンターで、各分野の成果を点数付けする市民社会参加者(2019年)

G20は2008年の「リーマン・ショック」に始まる世界金融危機をきっかけに「首脳会議」となり、先進国と大きな経済規模を持つ新興国19か国と欧州連合でつくる多国間のプラットフォームとなりました。G7と同様、200か国に及ぶ世界の主権国家と、そこに生きる80億以上の人々に影響を及ぼす政策を、主要国で決めてよいのか、という根本的な問題があり、世界の市民社会は、本来、グローバルな政策を決めるための機関は国連であるべきという立場を保ちつつも、その影響力の大きさに鑑み、G20についても積極的に取り組んでいます。2016年の中国・杭州でのG20サミット以降、G20は国際保健をはじめとする開発分野についても主要な課題としてきました。
市民社会は、G20へのマルチステークホルダー(多主体)での参画を担保する8つの公式の「エンゲージメント・グループ」の一つとして「C20」(Civil-20)を担っています。

日本の市民社会は、特に2019年のG20大阪サミットに向けて、2018年のブエノスアイレス・サミット(アルゼンチン)から2020年のリヤド・サミット(サウジアラビア)までの3年間、アルゼンチンやサウジアラビアの市民社会とともに、C20のリード役を担いました。アフリカ日本協議会の国際保健分野ディレクターの稲場雅紀は、特に、2018年と2019年にC20の国際保健ワーキンググループの共同コーディネイターを担いました。

<詳しく知りたい方へ>

2018年アルゼンチンC20サミットの「政策提言書」(日本語)
https://ajf.gr.jp/wp-content/uploads/pdf/C20_Policy_Pack_2018_JPN_ENG.pdf

2019年大阪C20サミットの「政策提言書」
https://www.janic.org/wp-content/uploads/2019/06/C20_policypack_japanese_2019.pdf

2021年イタリアG20サミットと「C20国際保健ワーキンググループ」

G20サウジアラビア
G20サウジアラビアで、イタリアとサウジの取りまとめ役、モロ教授(左)とヌーフ王女(中)(2020年)

2021年のG20サミットはイタリアの首都ローマで開催されました。その主要テーマは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの回復」でした。2020年のサウジアラビア・サミットに引き続き、国際保健の課題が主要テーマとしてとりあげられたわけです。また、今後のパンデミックに向けて「パンデミック予防・対策・対応」(PPR)が取り上げられ、2019年の日本G20から始まった「G20財務相・保健相会議」を今後のPPRのガバナンス機構として成長させるという案も出ています。

保健に関わる市民社会は、2022年のインドネシア、23年のインドに向けて、アジアの市民社会のリーダーシップを確保するという観点から、イタリアのステファニア・ブルボ氏(イタリア国際保健ネットワーク)、アルゼンチンのクルト・フリーデル氏(客人協会(HIV/AIDSに取り組む団体)に加え、シンガポールのレイチェル・オン氏(グローバルファンド活動者ネットワーク・アジア太平洋)を共同コーディネイターとして、C20の国際保健ワーキンググループを組織しました。C20国際保健ワーキンググループは、5月に開催された「G20グローバル・ヘルス・サミット」からG20保健大臣会合、さらに財務相・保健相会合まで積極的に政策提言を行い、10月に行われたC20サミットに向けても、包括的な政策提言を策定しました。

G20大阪サミット
G20大阪サミット2018年のアルゼンチンから2023年インドまでの市民社会の代表が勢ぞろい(2019年)

2022年のインドネシアG20サミットに向けては、インドネシアでエイズや三大感染症に取り組む市民社会などを中心に、積極的な政策提言活動を行う予定です。

<詳しく知りたい方へ>

2021年C20国際保健ワーキンググループ 政策提言書(日本語訳付)
※英語:https://civil-20.org/2021/wp-content/uploads/2021/08/C20-Policy-Pack-2021-Buildiing-a-sustainable-future-for-all-1.pdf


G7への取り組み

伊勢志摩サミット
伊勢志摩サミットの市民社会記者会見:各分野の成果を点数付けする市民社会代表たち(2016年)

1976年に始まるG7サミット(主要国首脳会議)は、7つのいわゆる「主要国」の首脳が、世界の政治・経済に関わる政策について合意形成をしていくプラットフォームです。その「先進国クラブ」としての特権性は常に市民社会から批判されてきました。日本でも、歴史的に、市民社会や社会運動は、G7への反対運動・抵抗運動を含め、より批判的な立場からG7に取り組んできました。G7に対して、政策提言という立場から政策提言の働きかけが行われるようになったのは、2000年の九州・沖縄サミットが最初です。
その後、2008年のG8北海道・洞爺湖サミット、2016年のG7伊勢志摩サミットでは、市民社会は環境、反戦・平和・人権、国際協力と開発に関わるNGO/NPOを中心に幅広いプラットフォームを形成し、開催地の市民社会のネットワークと協力して政策提言活動や「市民サミット」を開催するようになりました。
国際保健については、2000年の九州・沖縄サミットで「沖縄感染症対策イニシアティブ」が打ち出され、2002年のグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)設立につながったという成果をベースに、日本政府は自国開催のサミットにおいて積極的に保健のイニシアティブを打ち出してきました。2008年には、保健システム強化をベースに「洞爺湖国際保健行動指針」が打ち出され、2016年には、西アフリカでのエボラ・ウイルス病拡大の教訓を踏まえて、国際保健安全保障に関する一定の仕組みが整備されました。アフリカ日本協議会は、他の国内外の市民社会とともに、「Civil G7」の市民社会ワーキンググループを担ってきました。
2023年には、再びG7を日本が開催します。これに向けて、日本の市民社会として政策提言への取り組みをしていく必要があります。

<詳しく知りたい方へ>

G8サバイバル・キット 国際保健とG8
・洞爺湖サミットでのアフリカ日本協議会とCivil G7国際保健ワーキンググループの活動をベースに作成した、市民社会向けのG7活動ガイドブックです。(日本語英語

G7伊勢志摩サミットと日本の市民社会
https://www.janic.org/wp-content/uploads/2017/08/civilsociety_report_g7_2016.pdf
・伊勢志摩サミットでの日本の市民社会プラットフォームの活動報告書です。国際保健や三大感染症に関する取り組みも大きく紹介されています。

2023日本G7サミットへの取り組み

・G7広島サミットでも成果文書発表:C7(市民7)国際保健ワーキング・グループ、これらを評価する第1次声明を発表

・C7(市民7)国際保健ワーキンググループ、G7長崎保健大臣会合成果文書に対する第1次声明を発表 


国際連合の保健プロセスに関わる取り組み

アジア太平洋エイズ会議)
バンコクでのアジア太平洋エイズ会議でエイズの課題をどうやってSDGsに入れるか討議(2013年)

アフリカ日本協議会は、保健分野にかかわる国連のプロセスへの政策提言に体系的に取り組んできました。国連は、2001年の「国連エイズ特別総会」以降、結核や非感染性疾患(いわゆる「生活習慣病」)、また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)など保健に関わる様々な課題について、多くの特別総会やハイレベル会合を開催し、多くの宣言や成果文書を出してきました。これらは、これらの課題の現状や今後の取り組みの在り方について、世界の共通認識と共通の指針を作るために行われているもので、これらの課題のグローバルな解決のためには非常に重要なものです。ですので、こうした会合に対しては、世界中の市民社会が連携して働きかけを行うのです。

国連エイズ特別総会・ハイレベル会合プロセス

2001年の「国連エイズ特別総会」は、2000年前後に極端に深刻化したエイズ・パンデミック(地球規模感染症)についての世界の取り組み方針を決定するために開かれました。単一の疾病に関して国連が「総会」を開催したのはこれが初めてです。この総会では、世界が共同でどう取り組むかを定めた画期的な「コミットメント宣言」が発表されました。その後、国連は5年に一回、エイズに関するハイレベル会合を開催しています。アフリカ日本協議会は2006年および2011年の2回、メンバーを政府代表団の一員として派遣しました。

<詳しく知りたい方へ>
2006年国連エイズハイレベル会合の記録

https://ajf.gr.jp/lang_ja/activities/ungass2006.pdf

その他の保健関係ハイレベル会合等への参加

結核ハイレベル会合(2018)
AJFが主催した結核サイドイベント 国連結核ハイレベル会合の議長を務めた別所国連大使と各国市民社会の対話(2018年)

国連は2018年に、三大感染症の一つであり、現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に次いで多くの人の命を奪っている「結核」に関するハイレベル会合と、非感染性疾患(いわゆる「生活習慣病」、NCDs)に関するハイレベル会合を開催しました。また、2019年には、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関するハイレベル会合(「すべての人に健康を」ページ参照)を開催しました。アフリカ日本協議会は、それぞれにメンバーを派遣、結核については、2018年7月に開催された国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)において、結核ハイレベル会合に向けたサイドイベントを開催しました。

<詳しく知りたい方へ>
2018年HLPFサイドイベント「結核への人間中心のアプローチ」の報告
https://ajf.gr.jp/report-hlpf20180711/