AJF・HFW・JVC・明治学院大学国際平和研究所共催連続公開セミナー第1回 報告
日時:2008年7月3日(木)18時30分~20時30分
講師:板垣啓四郎さん
会場:明治学院大学白金校舎 本館10階大会議場
AJF・HFW・JVC・明治学院大学国際平和研究所共催連続公開セミナー「食料価格高騰がアフリカ諸国に及ぼす影響」第1回「なぜ高騰する食料価格:食料価格はどうやって決まるのか?」の講演、質疑をまとめました。
農業者が経営の主体性、資源へのアクセスを持てるかどうかがポイント
- 食料生産は人口増にともなって増加しており、今年度も史上最高を更新する見込みである。
- この3年間の小麦、粗粒穀物、米の生産と消費の変動は、今年に入ってからの価格高騰を予期させるものではない。
- 世界最大のトウモロコシおよび大豆の生産国であり輸出国である米国で、2005年エネルギー法制定、2007年新エネルギー法制定によりトウモロコシのバイオ・エタノール原料への転換が急速に進んでいる。
- 上記の結果、大豆からトウモロコシへの転作が進み、大豆が減産している。
- また、トウモロコシの備蓄が、FAOの設定する危険ラインである15%を切っている。
- トウモロコシ、大豆、小麦などの生産が、一部諸国に集中している。
トウモロコシ:米国、中国
大豆:米国、ブラジル、中国
小麦:米国、カナダ、オーストラリア - 小麦の主要な輸出国であるオーストラリアでの2年続きの干ばつにより、小麦価格は急上昇した。
- 米国のトウモロコシ生産地域での大洪水が、トウモロコシ価格に影響するだろう。
- 米は生産国での消費も多く、国際市場での流通量は変動しやすい。
- 小麦、米、大豆の備蓄も数十年来の低水準だが、危険ラインには達していない。
- 今年前半の米価格急上昇は、流通の各段階での買い占め、出荷制限によるものだと思われる。
- 小麦、トウモロコシ、大豆などの国際市場、流通は、米国に基盤を置く穀物メジャーの強い影響下にある。
- 穀物メジャーは流通量コントロールなどを通して市場価格に強い影響力を持っている。
- 輸入食料依存度の大きな途上国は、大きな影響を受けている。
- 途上国の農民の生産コストよりも安価な食料輸入は、農民に市場への出荷意欲を失わせる。
- 輸入価格が高騰すると、自身も食料購入者である農民も困窮する。
- アフリカの独自の食料であるプランテンバナナ価格もウガンダでは高騰しており、4~5年前の倍ぐらいになっている。
- キャッサバやヤムイモの価格がどうなっているのかを調査する必要がある。
- 原油高が輸送費、生産コストに影響していること、諸物価も高騰していることが、バナナ価格の上昇に関わっているものと思われる。
- ネリカ米が喧伝されているが、米の生産は、食慣習、共同体による水管理や共同耕作などと深く関わっており、アフリカでどのくらい広がるのか疑問だ。
- 農業者が経営の主体性、資源へのアクセスを持てるかどうかがポイントであり、日本を含めた世界の国際協力、NGOあるいはアフリカにおける政策立案者との会合は、そのことが可能になる秩序をどういうふうに作っていくのか、という問題意識を持ってなされるべきだ。
冊子「飢餓を考えるヒント」について
これまでのセミナー記録をもとに作成した冊子「飢餓を考えるヒント」のpdfファイルをダウンロードできます。
- 飢餓を考えるヒント:2008年度開催連続公開セミナー「食料価格高騰がアフリカ諸国に及ぼす影響」の記録を中心にした冊子です。
- 飢餓を考えるヒントNo.2:2009年度開催連続公開セミナー「飢餓を考える」の記録を中心にした冊子です。