エイズ治療薬をキーワードにアフリカのエイズ問題を追ってきて見えてきたこと
『アフリカNOW』 No.60(2002年3月31日発行)掲載
執筆:斉藤龍一郎
現在の推定では、世界中のHIV/AIDS感染者の7割以上がアフリカの国々で暮らしていると言われる。一昨年12月アディス・アベバで、昨年4月にはアブジャで、エイズをテーマとしたアフリカ諸国会議が開かれ、各国の政府・NGO・PWA(People With HIV/AIDS:HIV/AIDS感染者)団体そして国連ほかの国際機関が参加した。昨年6月に開かれた国連エイズ特別総会でもアフリカ諸国におけるエイズが大きく取り上げられている。こうしたニュース・資料を共有する中から、問題を理解し解決に向けて努力を促すために、感染症研究会は、さまざまな形でニュースの紹介を試み、「エイズとアフリカ資料集」第一集・第二集の作成・発行および感染症研究会ホームページを作ってきた。
しかし、断片的なニュースではとらえがたい問題も多い。また、問題の把握・課題の抽出をして議論を深めるために行ってきた公開講座・勉強会(昨年9月に公開講座「保健と知的所有権」、10月に勉強会「エイズ戦略の必要性」、12月に公開講座「ケニア・ウガンダに見るエイズ戦略の課題」を行った)を通して、私たちが今最も重要だと考えている「感染者が治療に応じることこそが最大の予防」という観点は、まだ広く共有され、議論の対象となっているとは言えない。
簡単には感染しないものの、一度感染してしまったら現在の医療技術では完治することも感染できなくすることもできたい、というHIV感染の性質から、予防の重要性は繰り返し語られてきた。しかし、予防のための取り組みがともすれば「説教」になってしまい、PWAは「不道徳者」「自業自得を負うべきもの」とされてしまいやすい状況がある。そうした中で、一部の人びとが周囲の冷たい視線を感じながら「目の前にエイズで苦しんでいる人がいるのに、直そうとしないのか?」という問いかけを発し続けてきた。この問いかけは、現に目の前にいるPWAときちんと向かい合おう、という呼びかけでもあった。
一方「不道徳者」「自業自得を負うべき者」という視線の圧力の中でもPWA自身の生きることを求める、自らを否定されることを跳ね返す闘いが、カミングアウト、エイズ治療薬の要求運動などなどを通して続けられてきた。
昨年一年で進行した抗レトロウイルス薬の劇的な価格低下は、PWAに対し治療を受けて生きのびることを、手の届かない夢ではなく現実的な目標として提示した。そして、治療薬を求めてカミングアウトするPWAが、それぞれの生き方を垣間見せることが、HIV感染予防にも結び付くことがあきらかになりつつある、というのが私たちの現時点での認識である。この点について、コメント・意見・批判をあおぎたい。
エイズ治療薬をめぐる動き
南アでの裁判
昨年2月再開され世界的にさまざまな波紋を呼んだ南アフリカ共和国での改正薬事法の並行輸入条項(注1)をめぐる裁判に私たちが注目したことから、この感染症研究会につながる動きが始まった。前述した資料集やホームページで紹介しているニュース・資料は、南アでの裁判の意味するものを解き明かそうとしてきた努力の結果である。
南アの裁判に関わる動きは、1997年に南アフリカ政府が薬事法を改正し並行輸入条項を設けたことに端を発している。この薬事法改正は、TRIPS協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights:知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)の元で特許法が欧米諸国並みになったことと合わせて、薬事法も欧米並みに整備しようとした試みと思われる。ちなみに昨年秋、炭疽菌騒ぎの際にカナダ政府はcompolsory(強制特許実施)条項(注2)を行使して、独バイエルが特許を持つ炭疽菌被爆治療薬の国内生産に踏み切ろうとした。アメリカでも何人かの上院議員が同様の条項を使って炭疽菌被爆治療薬の国内生産に踏み来るべきだと主張した。このように欧米の法律は、緊急時には特許権よりも国民の安全を優先するという姿勢を明示した条項を持っている。
この改正薬事法に対して、すかさず米政府が知的所有権侵害につながるとクレームをつけ、また南ア製薬会社の提訴によって、改正によって追加された条項の「施行を暫定的に禁ずる裁定」が出されたこともあって、南ア政府はこの条項の発効を凍結した。
一方、ブラジルやタイでは、政府がアメリカの経済制裁の恫喝に抗しながらcompulsory条項を講師して、抗レトロウイルス薬を含むエイズ治療薬の生産とPWAへの配布事業(ブラジルは無償で配布している)に取り組み始めていた。
それを見た南アのPWAたちもTAC(Treatment Action Campaign:治療実現キャンペーン)を中心に、compulsory条項を行使しての治療薬生産あるいはブラジルなどからの並行輸入を求めて「すべての感染者に治療薬を」というキャンペーンを推し進めていた。
2000年、ダーバンで開かれた世界エイズ会議への行動の中で、南アのPWAたちと欧米のNGOが接点を持ち、これを契機に欧米でも製薬会社へ治療薬を安価に供給することあるいは特許権を放棄することを求める行動が始まった(例えば「エイズとアフリカ資料集 第一集」収録『エイミーとゴリアデ』)。
2001年2月、インドの大手製薬会社支部らが、年間一人当たり350ドル(日米欧では10000~120000ドルかかる)で三剤カクテル療法用の抗レトロウイルス薬セットを供給し、フランスに本部を置く国際NGO、国境なき医師団(MSF)が東アフリカでPWAに無料配布する計画が公表された。またシブラは、アフリカ諸国の政府に対しては年間一人当たり600ドルで販売する用意があることも明らかにした。
上記のシブラのアナウンスで安価な治療薬供給の可能性が一挙に高まった。このことが、南アでも欧米でも「すべての感染者に治療薬」キャンペーンを勢いづけた。一方、危機意識を持った欧米の製薬会社は、アフリカ諸国向けに割引販売していた治療薬の割引率を引き上げた。また、南アの製薬会社40社(1社はその後提訴取り下げ)は、南アへの並行輸入を阻止するために1998年に出された並行輸入条項の「施行を暫定的に禁ずる裁定」からさらに進んで条項そのものを憲法違反で削除することを裁判所に求めた。
3月に開かれた公判で、裁判長は、「製薬会社の訴えに応えるのは、政治の問題」として訴えを確認しただけで休廷、4月に公判を行うこととした。
この裁判の進行にあわせて、インターネットでの署名活動、グラクソスミスクライン、ファイザーなどの大手製薬会社に対する要請行動(この行動のなかでは、“GSK=Global Serial Killer”と書かれたチラシもまかれた。GSKは世界的連続殺人者という意味で、グラクソスミスクライン社の頭文字をもじっている)が展開された。
「人殺し」とまで呼ばれた製薬会社は、大きな社会的圧力を感じて、4月の公判直前に提訴取り下げ、和解あっせんを裁判所に求めた。裁判所はこれを受けて、製薬会社と南ア政府の交渉をあっせんした。
抗レトロウイルス薬によって生きのびることができる
上記の裁判の争点となったエイズ治療薬には、二系統の薬がある。一つはHIVの増殖そのものを抑える抗レトロウイルス薬、もう一つは、エイズで免疫力が落ちたために発症する日和見感染症と呼ばれる病気(結核、真菌症など)の治療薬である。
日和見感染症は、まだ免疫力の弱い子どもや疫力の落ちた高齢者にも見られる病気だ。なので治療薬も古くから開発されておりすでに特許切れのものも多く、比較的安価である。それに対し、抗レトロウイルス薬は、1981年のエイズ発見以降に開発されたものばかりで、特許に保護されていて高価である。また、日和見感染施用治療薬は、日和見感染症が発症している間だけ服用すればよいが、HIV族食を防ぎ続けるためには、抗レトロウイルス薬を生涯服用しなければならない。
二系統のエイズ治療薬に加えて、日本に住む私たちにとってはあって当たり前の消毒薬や解熱剤などを、アフリカ諸国に暮らすPWAの手に届くものにすることは、彼ら・彼女らが生きのびることを支援することにつながる。このことは、先進諸国のPWAの現状を見れば明らかだ。
治療を受けながらPWAが生きのびて暮らし続けることは、次のことを意味する。
1)労働力の急減な減少を防ぎ、技術・技能伝承の時間を稼ぐことができる
2)エイズ孤児が発生する可能性を小さくできる
3)HIV感染の疑いを持った人びとが、HIV検査を受け治療を求めることを促す
4)HIV感染の経路を絞り込んでいくことができる
1)2)は、特にアフリカ諸国においては重要だ。3)4)はそのままHIV感染予防策の第一歩と言うことができるだろう。
まだまだ高価なエイズ治療薬
南アでの裁判が製薬会社の提訴取り下げで終わったことがきっかけとなって、並行輸入条項やcompulsory条項を持った工業所有件法廷制定の動き(cfケニア)、そして大幅な割引価格で提供されるエイズ治療薬を使った治療プログラム実施の動き(cfナイジェリア)がアフリカの他の国々でも始まった。
また、TRIPS協定によって知的所有権保護政策を推進しているWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)も、医薬品の特許権に関する特別会合を開き、2001年11月のWTO閣僚級会合では、公衆衛生に関わる取り組みが知的所有権によって疎外されることはない、という宣言を発するに至った。
特許権で保護されたエイズ治療薬の値段の高さが、HIV/AIDSに対する取り組みへの大きな障害となっていることは、このように広く認識されるようになり、その圧力が特許権を主張する欧米の製薬会社にも、特別割引価格での販売(アフリカ諸国のほとんどを含む世界の貧困国を対象としており、製薬会社がそれぞれに対象国を決めている)を強いている、と言える。
2001年頭には、抗レトロウイルス薬を使用する治療は、一人当たり年間1000ドル以上をかけてアフリカ諸国の一部のみ試みられていた。2001年秋以降、薬の供給者は、シブラなどインドの製薬会社、欧米の製薬会社、欧米の製薬会社から特許権供与を受けたアフリカの製薬会社、そしてタイやブラジルから技術供与を受けたアフリカの製薬会社とバラエティに富むようになり、価格は一人当たり年間350ドル前後にほぼ一本化されるようである。
とはいえ、アフリカの多くの国々の一人当たりGDPは300ドル前後にすぎない。2000年以前および日欧米の価格に比べ30分の1となった現在の価格であってもとても個人が購入できる価格ではない。日本のようにほぼ全国民をカバーする健康保険制度や生活保護などの社会保健もない多くのアフリカ諸国では、国あるいはNGOが薬の購入費用を負担するにしても、まったく新しい財源が必要なる。ここに、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)(注3)の必要性がある。日本政府も3年間で2億ドルの拠出を決定しているGFATMがどのように運営され、どのようなプロジェクトに資金を許与していくのかに注目しながら、GTATMの必要性をさらに多くの人びとに伝え、日本はじめ先進諸国の拠出額の増加を訴えていくことが求められているのだろう(この3月、米国では学生グループが25億ドルの拠出を求めて連邦議会への請願行動を転換した)。
新たな治療薬開発とワクチン
現在、抗レトロウイルス薬は、三剤カクテル療法と呼ばれる、3種の薬を定められた時間ごとに服用する方法で使用されている。カクテル療法は結核をはじめとする多くの感染症治療で用いられている方法であり、耐性菌・体制ウイルス発生を予防するために行われている(結核の場合は、治療を始めて2ヵ月は四剤カクテル、その後4カ月は二剤カクテルになる)・すでに先進諸国では、薬が効かない、副作用が強すぎて治療継続が困難といった事例が報告されており、新たな治療薬開発が求められている。新薬開発・市場への登場の際に、再度、特許権をめぐる問題が出てくることが考えられる。
また、ケニア、タンザニア、タイなどの国々のPWAを被爆者に、エイズ・ワクチンの実用化試験が行われている。このワクチン開発に関する報告を受け、私たち感染症研究会では討議を行っているが、まだ論点整理まで至っておらず、次の議題とした。
前述のように、私たちは、主としてエイズ治療薬をめぐる動きを中心にアフリカのエイズ問題を追いかけてきた。その中で、女性感染者、母子感染、エイズ孤児を重要なキーワードとして感じ始めている。現時点、提示できる議題を以下に記して、注目を呼びたい。
女性感染者
PWAの55%は女性?!
2001年10月、JICAの研修に招かれて来日したコートジボアールのNGO/Femme face au Sida(エイズと向かい合う女性たち)のメンバーの説明によると、コートジボワールのPWAの55%は女性だという。12月に行った公開講座の際に配布されたウガンダ・ケニアの現状紹介レジュメでも、ウガンダ・ケニア両国での女性の感染者が男性より多い。これは、男性の感染者が圧倒的に多い先進諸国の状況とは大きく違っている。
なぜこのような状況なのかを理解し判断するには、材料があまりに少ない。現時点では
1)妊産婦検診でHIV感染が判明するケースが多い
2)性交渉を通じての感染が多いのだろう
3)夫婦がそろって感染者というケースが多そうだ
という見通しにたって
4)母子感染
5)エイズ孤児
という問題と直結していることを確認することができるくらいだろう。
一方、1)のような形で血液検査含む検診を受ける機会の多いことから女性感染者の数が多く見積もられていることも考えられる。
母子感染
ネビラピン投与をめぐる南アの動き
上述したように妊産婦検診でHIV感染が判明するケースが多いアフリカ諸国には、PWAである母親の出産時の出血を浴びて新生児がHIV感染しないよう、妊婦へ抗レトロウイルス薬であるネビラピンほかの抗レトロウイルス薬を投与するプロジェクトを開始した国々がある。ネビラピン投与によって感染率を半減できると言われている。
南アでは、昨年4月の裁判終結後も、抗レトロウイルス薬をPWAに供与する施策は政策としては実現していない。南ア政府は抗レトロウイルス薬の副作用を大きな問題点として主張しているが、世界で最も多いと言われるPWAへのケアを行うためのインフラ整備、供与する薬の購入に要する費用など、財政的な問題が一番のネックとなっていると考えられる。
そうした状況の中、TACは、母子感染防止のための妊婦へのネビラピン投与を行わないのは、政府の怠慢と訴えを起こし、これを受けた裁判所は訴えを認めた。この裁判所の決定を受けて、クワズールー・ナタール州やハウテン州の公立病院が妊婦へのネピラピン投与を開始したところ、南ア政府がストップをかけるという事態になっている。
この件に関して、ネルソン・マンデラ前大統領がターボ・ムベキ現大統領を批判した、というニュースも伝えられており、政府の態勢(内部の意思形成、財源確保の見通しなど)が整えば、ネビラピン投与は順次実施されるだろうと思われる。とはいえ、まだまだ注目していかなくてはならない。
エイズ孤児
1300万人のエイズ孤児
母子感染でHIVに感染した子どもたちの多くは2歳前後までに死んでしまうと言う。その意味で、母子感染防止は非常に大きな意義を持つ。
一方、アフリカ諸国では、父親あるいは母親が、中には両親そろってエイズのために死んでしまい、子どもたちだけが残されてしまった、エイズ孤児が1300万人いると言う。多くは祖父母やおじ・おばなどに引き取られるそうだが、子どもたちだけの世帯もたくさんあるという。
子どもは私たちの未来、と言う意味でも注目していかなくてはならない。
具体的な動きの中でしか展望は見えない
現在、私たち感染症研究会は、ピースボートのメンバーと協力して、4月27日に「Viva! HIV/AIDS アフリカに祝福を!」と題したイベントを開催するために準備作業を行っている。南アのフリーダムデー(アパルトヘイト廃止と全人種参加による選挙実施で新生南アが誕生したことを祝う記念日)である4月27日には、ジョハネスバーグでの大コンサート、アフリカ35ヵ国、欧米100都市でのイベントとが予定されている。私たちもその一翼を担って、アフリカのエイズへの注目を訴え、GFATMなど現在進行形の取り組みへの参加を呼び掛けていこうとしている。
他のメンバーからの報告にあるように、ケニアのPWA自身の活動やナイジェリアのHIV/AIDSに取り組むNGOの活動にも触れてきた。KENWAのメンバーと会った、話した、若干のカンパをした、で終わらせないでどのような形で今後も歓迎してくれたナイジェリアの自生のCBOなどとの連絡・交流・支援をどのようなものとして考えていくのか、と言った議論も現在進行中である。
2002年度には、4月27日のイベントを第一歩に、関西ほかでのエイズ戦略めぐる集中講座と討議、そして接点のあるNGOやCBOとの交流・連携を意識したアフリカへの現地調査・スタディツアーなどを具体化していく。
感染症研究会への参加を希望される方、またニュースや情報の共有を求める方は、AJF事務局にE-mail、Faxなどで連絡ください。
注1
並行輸入とは、ある国で特許に従って製造されたにも関わらず別の国で廉価で販売されている製品を、特許権者の許可なしに販売国から輸入するものである。TRIPS協定は、特許権者がその国籍を理由に差別されていない限り、並行輸入を認めている政府に対する訴えをWTOの調停機構に持ち込むことはできないとしている。
注2
実際に協定で用いられている用語は「権者から権利付与なしに、他者が使用する」である。これは、政府に権者の同意なしに権者以外の製品製造を許可することを認めるものである。強制実施権が許諾される前に、申請者は合理的な商業条件に基づいた実施権の取得を試みなければならない。もし、強制実施権が許諾された場合、特許権者に対して、市場価格に基づいた実施料を支払わなければならない。強制実施権は国内においてのみ有効で、条件が変更された場合は直ちに無効とされる。TRIPS協定には、政府が特許製品の強制実施許諾に踏み切ることを制限する条項はない。さらに、国家の緊急事態が生じたときには、特許権者から許可を得るための試みを行うことなしに、強制実施権を許諾できるとしている。
注3
The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis & Malaria (「世界エイズ・結核.マラリア対策基金」)設立までの経緯と組織
2001年4月、国連事務総長のコフィ.アナンが提唱
10-11月にかけて、事務局が各地域・関係者とヒアリングを行い、2002年1月発足
基金の最高意志決定機関は理事会(Board)で、メンバーは-議決権を持つメンバー 18:途上国 7(ブラジル、中国、パキスタン、ナイジェリア、ウガンダ、タイ、ウクライナ)、先進国 7(アメリカ、日本、フランス、イタリア、欧州委員会、スウェーデン、イギリス)、民間企業 1(代表:アングロ=アメリカンPLC)、
ビル・ゲイツ財団、
南のNGO代表(ウガンダのMilly Katana、交替要員はタンザニアの Fidon Mwombeki)
北のNGO代表(ドイツのChristoph Benn、交替要員はイギリスのPeter Poore)。
-議決権を持たないメンバー 4:世界銀行、WHO、UNAIDS、エイズ・結核・マラリアと生きる/影響を受けているコミュニティの代表(米Philippa Lawson、交替要員はカナダのチャールズ・ロイ)。
NGO代表は公募され、移行委員会で選ばれ、各国政府代表と同等の立場で理事会に参加。
初代理事会議長は、ウガンダの無任所大臣クリスプス・キヨンガ氏(基金発足までの移行運営委員会(TWG)の議長を勤めてきた)。最初の任期は1年で、新たに1年更新可。
事務局はブリュッセルからジュネーブに移行。
当面次の理事会会合で新しく常設事務局が設置されるまで、現在の事務局が日常業務執行。
新事務局長は公募中で、スウェーデンの Dr.Anders Nordstrom が当面の事務局長。
WHOが事務局運営を補佐。
世界銀行が管財人。世銀は基金の財政管理だけに制限して介入することに合意している。
基金は、各国が資金案を作成し、基金に提出したものを、様々な分野からの提案評価の専門家によって構成される専門審査委員会(Technical Review Panel、略称TRP)が審査。
専門審査委員会メンバーは700以上の応募から選ばれた17人:Jonathan Broomberg(南ア); Alex Godwin Coutinho(ウガンダ); Usa Duongsaa(タイ); Paula Fujiwara(米); Sarah Julia Gordon(ガイアナ); Ranieri Guerra(イタリア); Michel Kazatchkine(フランス); Peter Kazembe(マラウィ); Mary Ann Lansang(フィリピン); Fabio Luelmo(アルゼンチン); Kasia Malinowska-Sempruch(ポーランド); Jane Elizabeth Miller (英); Toru Mori(日本); Peter Sandiford(ニュージーランド); Amadou Sy Elhadj(セネガル); Valdilea Veloso Dos Santos(ブラジル); Kong-Lai Zhang(中国)
最終的な承認は理事会が行い拠出が決まる。
最初の提出期限は3月10日で、この日までに提出された案は3月25日から4月5日までジュネーブでTRPが審査、その結果が4月23・24日の第2回理事会へと回され、ここで基金から最初の資金が分配される。
その後に提出された資金案は、4ヵ月ごとの理事会議で審査されていく。
専門審査委員会は、各国が資金案を練る段階で、国家調整機構(country cordination mechanism:CCM)を作り、きちんと各関係者の意見を反映しているかどうかを重視する。
調整機構とは、「政府、NGO、エイズ・結核・マラリアと共に生きる/影響を受けているコミュニティのメンバー、そして民間企業など、全ての関係者を含んで、包括的な協力関係を持って機能するべきもの」と想定されており、これら全関係者が計画立案、意志決定および計画された活動の実施に関わるものとする。
つまり、NGOがCCMで十分な役割を果たしている資金案のみが拠出の対象となる。
例外は、各国の調整機関にNGOが参加を認められない状況がある場合で、NGOは基金に直接資金案を申しこむことが許可されている。
これは特にvulnerable group(MSM、CSW、IDUなど)のためのNGOなどで、政府から法的に認められていないが、重要なサービスを提供していると思われる場合などが考えられる。
また正当な政府が存在しない国、紛争や自然災害に直面している国、NGOが抑圧されていたり、政府とNGOとの協力関係が出来ていない国などにも、同様の例外規定が適用される。
こうした例外はきちんと文章化され根拠を示されなくてはいけない。
GFATMのホームページは、http://www.globalfundatm.org/ です。
感染症研究会について
昨年6月のAJF会員総会の決定を踏まえ設けられ、8月に第一回目の会合を、横浜エイズ文化フォーラムが開かれている神奈川県民センターで開いて、本格的な活動を開始しました。
アフリカに関わる活動歴も長い林達雄、アジア太平洋エイズ会議やエイズ指針めぐる厚生省との交渉に参加するなどエイズ・アクティビスととして活動してきた稲場雅紀の二人を中心に、AJF会員ではないメンバーも含めて、これまで打ち合わせ・勉強会・公開講座を行ってきています。
この感染症研究会特集号および2冊の「エイズとアフリカ資料集」そしてホームページを見てもらえば判るように、エイズ治療薬めぐるさまざまなニュースを共有していく中から、保健と特許権、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)の意味・問題点・今後の課題を論じ、私たち自身が何をすればよいのか? 何をすべきなのか?を考えています。
これまでの取り組みは、以下の通りです。
2001年2月 電子メールでAJF会員ほかへエイズ治療薬めぐるニュース送信を開始
4月19日 南アの薬事法めぐる裁判が、製薬会社の提訴取り下げで終了
5月23日 「エイズとアフリカ資料集 第一集」(A4版 32p)発行・会員に配布し、希望者に販売
8月5日 第一回打ち合わせを開き、感染症研究会スタート
8月末~10月末 林達雄、ヨーロッパ・ケニア・ウガンダで関係機関などを訪問
9月23日 公開講座「保健と特許権 TRIPS協定成立の背景と21世紀の課題」(講師・上山明博さん)
「エイズとアフリカ資料集 第二集」(A4版 48p)発行
10月28日 勉強会「エイズ戦略の必要性」(レポーター・稲場雅紀さん)
12月9日 公開講座「ケニア・ウガンダに見るエイズ戦略の課題」(講師・林達雄さん)