リチャード・フィーチャムGFATM事務局長との対話

Meeting with Richard Faechem,GFATM’s Secretary-General

『アフリカNOW』No.63(2003年3月31日発行)掲載記事

執筆:斉藤龍一郎

AJF感染症研究会は昨年11月23日に、2003年11月に第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP)が開かれる神戸で、外務省の招待で来日中のリチャード・フィーチャムGFATM(世界エイズ・マラリア・結核対策基金)事務局長と対話する機会を持った。神戸で開催した国際シンポジウム「市民が変えるエイズ政策」に出席したフォロゴロ・ラモスワラさん(TAC:南アフリカ治療行動キャンペーン)、アスンタ・ワグラさん(KENWA:ケニア・エイズとともに生きる女性たちのネットワーク)、プロンブーン・パニックパクさん(TNCA:タイNGOエイズ連合)と森元誠二GFATM副議長もまじえ、なごやかな雰囲気の中で、忌憚なく建設的な意見がかわされた。

まずフィーチャムさんは、アジアのエイズの状況は悪化する一方で、次回のICAAPおよび日本政府と市民が果たす役割は大きい、とコメント。さらに、日本を含む先進国がGFATMに拠出している資金は、必要額にはあまりにも遠く、拠出金額を増やすように市民がもっと政府に働きかけることを要請した。

KENWAのワグラさんは、ケニアのCCM(国家調整機構)がエイズ支援組織やNGOと十分協力せず、エイズNGOを排除することもあるため、KENWAはGFATMに直接申請を行い、申請案に修正を加えれば認可される「ファースト・トラック」に指定され、見事に基金を勝ち取ったと報告。GFATMは各国のCCMを良く監視して、NGOを含んだ民主的な運営が行われるるように指導すべきだという意見を述べた。TNCAのプロンブーンさんも、CCMは政府官僚に支配されており、NGOメンバーが参加しているにもかかわらず、民主的に運営されているとは言い難いと指摘。CCM内でNGOの地位を高めるために、GFATMから「CCMの副議長はエイズNGOかPHA(HIV感染者)とすること」という規定を設けてはどうかという提案を行った。

フィーチャムさんは2人の提案に賛意を示した上で、CCMの運営状況が国によって差があることを認識していると述べ、主な問題点として、イスラーム諸国でMSM(Men who have Sex with Men: 男性と性行為をする男性)への予防啓発活動をしているNGOなどがCCMから排除されていることをあげた。GFATMはこの問題への対応策として、CCMの最小限の基準を設定し、これを満たさないCCMから提出された申請は受け入れない方針を出す、また、よく運営されているCCMを例にとった「ベスト・プラクティス」を指定して、他の国のCCMのモデルにしてもらうことも検討していると述べた。また彼は、CCMを改善して行くためには、GFATM事務局と市民社会がともにCCMを監視していくことが必要であることも付け加えた。

TACのラモスワラさんは、対話の中で語られた「治療と予防はエイズ対策の両輪」という言葉を引用しながら、GFATMが採用した南アフリカから申請した3つの案件のうち、2つが治療ではなく予防対策用のものであったことは問題だと指摘。また、南アフリカのように先進国のプレッシャーで国内でのジェネリック薬生産ができない国を含め、途上国でのジェネリック薬導入に対するGFATMの考え方について、事務局長の意見を求めた。これに対してフィーチャムさんは、2002年10月10~11日にオーストラリアで開かれたGFATM理事会が、(1)公開・競争入札(2)可能な限り最も安い価格(3)品質の保証(4)国内・国際的な薬の規約との適合性をはかることを決め、ジェネリック薬に門戸を開く政策を取ることを伝えた。さらに、シドニーで11月中旬に開かれたWTO(世界貿易機関)小規模閣僚会合で、 アメリカ・日本・ヨーロッパなどの先進各国がジェネリック薬の並行輸入に反対せず、並行輸入推進に向けた第一歩が開かれたことを強調した。

感染症研究会が、昨年8月のジョハネスバーグ・サミットに出席する小泉首相宛にGFATMへの資金拠出を増加することを求める要請書を提出したことを報告すると、要請書の文面を見て、フィーチャムさんは笑みを浮かべていた。

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